カムイ・思い出

カムイの思い出とボイス

思い出1

？？？

…………

クマが出た。

キャトラ

クマだぁ―――っ！！？

アイリス

あら、大きなクマさん。

キャトラ

そそそそんなこと言ってる場合じゃ

ないでしょアイリスぅ～！？

キャトラ

クマよクマ！

食べられちゃうぅ～っ！！

キャーっ！　キャーッ！！

ア、アタシおいしくないよぉ～！

？？？

あ、いえ、すいません、

僕としても生肉はちょっと……

キャトラ

フツーにしゃべったぁ―――！？

しかも生肉ダメなのぉ―――！？

？？？

おや、お恥ずかしい……

カムイ

僕はカムイ、本日から、

この飛行島でお世話になります。

どうぞよろしくお願いします。

あ、これ、つまらないものですが。

アイリス

わあ、大きな新巻鮭！

ありがとうございます、

どうもごていねいに……

キャトラ

待って！　待って！

おかしくない？　おかしくない！？

なんでクマがフツーにしゃべってて

し・か・も・礼儀正しく新巻鮭！？

カムイ

新巻鮭はシャケを塩漬けにしたもの

で、シャケのうまみを保ちつつ長期

保存が効くため、贈答品に向いて

いると聞きまして―――

キャトラ

うんゴメン別に新巻鮭を選んだ

理由を知りたいわけじゃなくて！！

なんでクマがしゃべってるのかが

疑問なのー！！

カムイ

あなたも猫なのに

ふつうにしゃべってますよね。

キャトラ

それ言われると弱い！！

思い出2

キャトラ

えーっと、カムイ？

アンタって獣人じゃあないのよね？

カムイ

はい、ただのしゃべるクマです。

キャトラ

ただのクマは

しゃべらないと思うんだけど

アタシじゃ何も言えない……！

カムイ

実は、僕も、僕自身が何者か、

まるでわかっていないんです。

アイリス

そうなんですか？

カムイ

はい。どうやら、ある村の近くで

おぎゃあおぎゃあと泣いている

ところを拾われたらしく――

キャトラ

産声からしてクマじゃないわね！？

カムイ

その村には＜龍神信仰＞があった

ので、これは神の使いに違いないと

育てていただいたんです。

カムイ

僕はすぐに人間の言葉を覚え、

教わる限りの知識を吸収し……

カムイ

その話を聞いた、

ある魔法学園の理事長に招かれて

都会に出たんです。

キャトラ

クマが都会に出るって字面、

フツーにただの事件だわ……

アイリス

……ってことは、カムイさん、

魔法学園に通ったんですか？

カムイ

ええ、数年前に、

白魔術科を首席で卒業しました。

キャトラ

アッタマいぃ～！？

え、じゃあアンタ魔法使えるの！？

カムイ

理論上は、魔道書に載っている

あらゆる回復魔法を使えます。

アイリス

理論上は？

カムイ

この手だと杖がうまく持てなくて、

魔法を発動させられないんです……

キャトラ

あー……それは豚に真珠っていうか

猫に小判っていうか……

アイリス

クマにサンショウ、

コイにコショウ？

カムイ

それは食い合わせが悪いと言われる

例ですから、この場合は違いますね。

アイリス

そうだったの？　ごめんなさい！

キャトラ

これが首席パワー……！！

思い出3

カムイ

王手。

キャトラ

ぎにゃーっ？！

また負けたぁーっ！！

アイリス

すごい、カムイさん……！

連戦連勝だわ……！

キャトラ

むぅぅぅぅう～！　カムイ、アンタ

ズルしてんじゃないでしょーね！

カムイ

ははは、ズルなんてしてませんよ。

カムイ

単に頭の中で常に100手先まで

シミュレートしているだけです。

キャトラ

知能がズルい！！

アイリス

すごいですね、カムイさん……

クマさんとは思えないです。

カムイ

おやあ恐縮です。

でもね、アイリスさん。

これは僕の知恵じゃないんですよ。

カムイ

展開の読み方や機先の制し方……

そういったノウハウは、すべて

偉大な先人たちが築いてきたもの

なんです。

カムイ

僕程度では、まだまだ

それをお借りしているだけに

過ぎないんですよ。

キャトラ

そういうもんなのぉ～？

カムイ

ええ、だから僕は常々、人間って

本当にすごいなって思います。

カムイ

これだけ多様な文化を築き上げる、

そのポテンシャルはまさに筆舌に

尽くしがたいものがあります。

カムイ

都会は特に、知識のるつぼです。

常に新たな知見が更新され続け、

どれだけ学んでも果てがないという

喜びが―――

キャトラ

あ、うん。そうね、わかるわかる。

カムイ

古来、＜畑をいたすは

物にいたるにあり＞と

言われておりますように……

キャトラ

ウン、ワカルワカル…。

アイリス

目が死んでる……！

思い出4

キャトラ

気になってたんだけど。

カムイ

なんでしょう。

キャトラ

アンタのくわえてるソレ、なに？

カムイ

これはシャケです。

キャトラ

なんでシャケ。

カムイ

クマですから、

イメージもありますし。

キャトラ

だったらなんで切り身なのよ！？

ていうか誰がさばいたわけ！？

カムイ

板前のトシさんです。

キャトラ

うんゴメンそこはどうでもいい！！

キャトラ

いい？　クマのイメージが

うんたらって言うなら

くわえるシャケは

未加工であるべきじゃないの！？

カムイ

……！

気がついて、しまいましたか……

キャトラ

気がつかいでか！！

カムイ

苦手なんです。内臓とか。

キャトラ

クマなのに？！

アイリス

あ、他に苦手な食べ物ありますか？

参考に聞いておきたいんですけど――

カムイ

そうですね、あとは生肉とか、

レバーとかタンとか……

基本、生ぐさい系ＮＧです。

キャトラ

アンタ、クマよね！？

カムイ

他の何に見えます？

キャトラ

ぐぬぬ！

カムイ

ほら、僕、シティボーイなんで……

そういうのホントダメなんです。

虫とかもねー、ああいうのねー、

イヤ、ホントマジダメですねー。

キャトラ

いきなり言い回しが雑になったわね！？

カムイ

いやー、虫とかねー、ホントマジ

畏怖嫌厭きわまりないっすねー。

キャトラ

とってつけたように

難しい言葉を使うんじゃないっ！！

思い出5

カムイ

がおー！　がおー！！

キャトラ

ど、どうしたのよ、カムイ！？

いつもの知性は

どこやったの？！

アイリス

まさか……野獣の雄叫び！？

キャトラ

こんな迫力のない雄叫びがある？！

カムイ

はぁ、はぁ……やっぱりだめだ、

息が続かない……！

キャトラ

今のですら！？

アイリス

カムイさん、いったい何が

あったんですか？

カムイ

ええ、実は……

悩んでいるんです。

カムイ

僕は人の文化と知識に触れすぎて、

野性の心を持たずに育ちました……

アイリス

じゃあ――それを

コンプレックスに感じて、

野生を取り戻そうと……？

キャトラ

えっ、そのへんで悩むそぶりなんて

ぜんぜんなかったのに

今になって唐突に！？

カムイ

実は、最近都会で＜野性味あふれる

肉食系男子＞がキテると

言われまして……都会っ子として

流行に乗り遅れるわけにはッ……！

キャトラ

それが理由？

カムイ

他になにが？

キャトラ

シャーッ！　シャーッ！

フシュルルルー！！

カムイ

ひぃ、怖いッ！

これが野性……！

やっぱり僕には無理だ！

カムイ

どうしましょう、

主人公さん……

カムイ

何かうまいこと特別な伝説のパワー

か何かで僕の悩みを何かイイカンジ

に解決してくれませんか！？

キャトラ

アンタ、ヘボいこと言うときだけ

言い回しが雑になるわね！？

アイリス

飛行島の端っこから命綱をつけて

バンジージャンプするとか

どうでしょう？

カムイ

あ、もっと楽なのでお願いします。

ぎりぎり一瞬チクッとするくらいは

ガマンしますんで。

キャトラ

ぐぅるるるるるるぉぉぉぉぉおん！

アイリス

いけない、このままじゃ

キャトラの野性が

目覚めてしまう……！

思い出6

カムイ

おお――これは……！

カムイ

なんと麗しく幽雅な光でしょう……

それでいて雄雄しくたくましく――

カムイ

力が……あふれるゥゥゥー！

がぉぉぉおおぉお―んッ！

カムイ

今なら……今ならわかります！

野性だけでも理性だけでもダメだ！

僕はその両立を目指さなければ！

カムイ

ありがとう、

主人公さん……

見ていてください、マイ野性！！

カムイ

生ぐささなんて……

克服してやるゥゥゥ――――！！

カムイはすさまじい勢いで

タウンの池に駆け寄ると、

ばしゃあッ！　と豪快に

腕でシャケを獲った！

アイリス

すごい！　あの一瞬で

泳ぐシャケの動きを先読みして

からのクリティカルヒット……！

これが理性と野性の両立――！

キャトラ

待って！　シャケって

池にいるもんだっけ？！

カムイ

がおー！　がおがおがおーん！

食うぞ食うぞ、シャケを食うぞー！

食うたるぞー！

カムイの鋭利なる牙が、

ぴちぴち暴れるシャケの

銀色の皮に突き刺さ――

アイリス

……カムイさん？

どうしたんです？

カムイ

今、気づいたんですけど、

カムイ

生ぐささ以前に……僕、

シャケの皮とかダメみたいです。

このぬめっとした感触が

生理的にキツいっていうか、ええ。

キャトラ

そーれ。

背後からタックルされ、

カムイは池へと

野性味あふれるダイブを果たした。

ボイス

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