パステル・思い出

パステルの思い出とボイス

思い出1

飛行島の端っこに、

色とりどりの華やかな服装をした

少女が立っている。

？？？

一つ目の消失点はあそこで決まり、

二つ目はあそこ……ああ、でも

これだとパースが急になるかな―――

キャトラ

ちょっとアンタ！

はやまっちゃダメよ！

？？？

えっ！？

急になにっ？

う、うわ！　お、落ちる落ちる！

えっ、ええっ！？

？？？

――なーんてねぇ♪

キャトラ

もう！　おどかさないでよ！

急に声をかけちゃったアタシが

言うのもなんだけど……

アイリス

こんなところで

何をしてるんですか？

？？？

ここから風景を描きたいと

思ってね～。ここまで空に

溶け込んだ＜オリオンブルー＞は

なかなかないよ～。

アイリス

なるほど。

絵描きさんなんですね。

パステル

そっ♪　私はパステル。

こう見えて、けっこー

名の知れた風景画家なんだ～。

パステル

そんでぇ～。

気晴らしに塔のてっぺんで

絵を描いていたら――

パステル

なんか空に島が浮いてるっ！？

おもしろそう！　行ってみよう！

と、ノリで来ちゃったってわけ。

キャトラ

アクティブね～。

パステル

ん～、この島から見える風景は

最高なんだけど

構図が決まらなくてねぇ～。

どうしよっかなぁ……たとえば――

パステル

こうして視点を変えてみると

どうなるかなっ――とぉ！

と、パステルが元気いっぱいに

飛行島のふちでブリッジをする。

パステル

むむむ…なんのこっちゃ？

キャトラ

なんのこっちゃって

なんのこっちゃ！

パステル

それこそなんのこっちゃ！？

キャトラ

バカやってる場合じゃないわね。

主人公止めて！

あの子が島から落ちないように！

パステル

ねえねえ、そこの君ぃ～。

暇なら私を肩車してよぉ～♪

キャトラ

こらこらこら！

そんなことしたら余計

危ないってばっ！

パステル

いいじゃん、いいじゃん。

減るもんじゃないし。

お邪魔するよ～♪

パステル

おっ！　高い高い～♪

うんうん、いい構図いい構図♪

よ～し、このまま描くから

あんまし動かないでね～。

パステル

っ、とと、と……

グラグラしちゃ描けないよ～。

あっ――――――！？

キャトラ

落ちた……

思い出2

パステル

いやー、この間は危なかったねぇ♪

恐怖で顔が＜あさぎいろ＞に

なっちゃったよ～。

キャトラ

まったくよ！

ついでにその例え

よくわかんないから！

パステル

めんごめんご～♪

おわびにこの絵が

完成したらプレゼントするよ～。

キャトラ

あら、キレイな絵ね～。

キャンパスの上でほんとに

花が咲いてるみたい。

パステル

もう少し待ってね～。

あとは花弁をちょいちょーいと

塗るだけだから。

キャトラ

よくこんな色が出せるわね～。

パステル

それはね～。

まあ、見てて♪

パステルが左手を掲げると、

パレットに埋め込まれた石が輝く。

パステルは巨大な筆先で

パレットをなぞり、

濃い赤紫色を宿らせると――

その筆をキャンバスに向けて

力強く走らせ、花弁の影を

色鮮やかに染めていった。

パステル

よーっし！　これで完成っと♪

アイリス

今のはなんですか？

パステル

これは＜色彩のルーン＞って

言ってね。人や自然のソウルから

色を感じとって引き出すことが

できるんだ～。

パステル

たとえば、空にパレットをかざすと

――こんなふうに＜そらいろ＞が

生まれるの。

キャトラ

便利ね～。

それさえあれば絵の具は

必要なさそうね。

パステル

そそっ♪

いつでもどこでも

絵が描けるんだ～。

キャトラ

なんでそんなもの持ってるの？

パステル

８歳の誕生日のときに、

画家だったおじいちゃんが

ゆずってくれたの。

アイリス

そのときから

絵を描き始めたんですか？

パステル

もっと小さいときから

描いてたよ～。いろんなところに

落書きしてよく叱られたけどね～。

キャトラ

絵を描くことが

好きでしょうがないのね。

パステル

そうなの、そうなの♪

白い壁とか、白い食器とか、

白い風船とか、白いものはなんでも

キャンバスに見えちゃうんだ～。

キャトラ

ふんふん。

パステル

だから、キャトラを見て思ったの。

その光沢感のある白い毛並みを

虎模様に塗ってあげたいって。

アイリス

キャ虎……

キャトラ

アイリス……今、

ぜったい変な想像したでしょ？

させないからねっ！

思い出3

キャトラ

ねえパステル～。

風景ばっか描いてて飽きないの～？

パステル

飽きないよ～♪

キャトラ

たまには似顔絵なんてどう？

アイリスをモデルに

描いてみせてよ～。

アイリス

えっ？　私？

パステル

うーん……

久しぶりに、描いてみよっかな……

キャトラ

はやくはやく～。

パステル

じゃあ、アイリス……

＜色彩のルーン＞の力で、

あなたの心から色を

分けてもらうね。

アイリス

それはどういう……？

パステルはアイリスに

パレットを向けたかと思うと――

赤、青、黄色、緑……

と多彩な色を引き出して筆に宿す。

キャトラ

すっご～い！

これが色彩のルーンの力なのね！？

巨大な筆はキャンパスを駆け回り、

アイリスの似顔絵を描いていく。

パステル

よーっし、完成！

キャトラ

完成っ！　……って……

何よ、この気味の悪い色は……？

アイリスはこんなんじゃないわよ！

パステル

あいたたた。

＜もえぎいろ＞に＜うつぶしいろ＞

を混ぜたような色になっちゃった……

パステル

ちょっとぉ……

風景画はあんなにキレイなのに、

どうしてこうなっちゃうのぉ？

キャトラ

……自然から分けてもらった

色でなら、キレイな絵が

描けるんだ。

パステル

でも、人の心から

色を分けてもらうと

どうしても上手く描けなくて……

パステル

人の心ってさ、

悲しみの＜あお＞だったり、

喜びの＜きいろ＞だったり、

怒りの＜あか＞だったり――

パステル

いろんな色が複雑に

混ざり合ってるんだよね。だから

上手く色を操れないんだと思う。

キャトラ

絵の具でやっちゃダメなの？

パステル

それはやりたくないんだ…

パステル

約束したんだ。

このルーンを使いこなして、

おじいちゃんを超える人物画を

描けるようになるって。

パステル

おじいちゃんが色彩のルーンで描く

人物はいつもキラキラしてて、

心の素晴らしさを伝えてくれた。

パステル

誕生日に私の似顔絵を

描いてくれたんだけど…

そこにはまるで、

私の心があるみたいで…

パステル

ルーンを譲ってくれた

おじいちゃんの想いに応えるために

いつかこれを使いこなして

みたいんだ。

思い出4

パステル

どうしよ、どうしよ！

キャトラ

騒がしいわねぇ。

何があったのよ？

パステル

国王陛下から

絵の依頼を受けたの……

キャトラ

すごいじゃな～い！

なのに、なんで

がっかりしてんのよ？

パステル

それが…色彩のルーンを使って

王女様の肖像画を

描くことになってね……

アイリス

それは困りましたね…

パステル

私の絵のファンらしくてね。

……けど王女様、私が人物を

描けないって知らないから……

あいたたた……

キャトラ

断るにも断れない状況ね～。

パステル

んがぁー！　どうしよぉ！

もしも失敗したら、

国外追放されるかも～！

アイリス

時間があるかぎり、

練習しましょう！

パステル

えっ？

キャトラ

やるだけやってみようじゃない。

アイリス

私たちをモデルにしてください。

付き合いますよ。

パステル

……そうだ……よね。

うん、みんなありがとう！

パステル

よーし！　こうなったら、

特訓開始だ！

描いて描いて描きまくるっ！

パステル

そうと決まればまずは構図を……

うーん、そうね……

アイリスはそこに座って！

アイリス

はい！

パステル

やっぱり、立って！

アイリス

はいっ！

パステル

キャトラは逆立ちして！

キャトラ

こ、こうかしら！

パステル

主人公は

アイリスの後ろに立って笑って！

パステル

もっと笑って！

もっと！

パステル

っもっとぉおおおおおおおおおお！

パステル

ぜったい上手く描いてやるううう！

思い出5

パステル

ふう…これで460枚目か……

キャトラ

似顔絵、

だいぶ上手くなってきたわね～。

パステル

これじゃダメだ……

キャトラ

ちゃんと描けてるように

見えるけど？

パステル

そうなんだけど……

そうなんだけどさぁ。

なんか、表面的というか

心がないっていうか……

パステル

やっぱり……

おじいちゃんみたいには

描けないよ……

キャトラ

何がダメなのかしらね～。

アイリス

とにかく練習あるのみです――

！？　いたた……

キャトラ

アイリス、大丈夫？！

どうしたの？

アイリス

いたたた……

足がつっちゃった……

キャトラ

ずっと同じポーズ

とってたからね……

少し休みましょう。

パステル

ごめんね、みんな……

私のせいで……

アイリス

私は大丈夫です……

気にしないでください！

パステル

ありがとうアイリス……でもね……

もう無理だよ……

間に合わないよ……

アイリス

パステルさん……

パステル

何度描いても……

心の色がわからないんだ……

パステル

人の心は複雑で……色んな感情が

混ざり合って黒くなる……

パステル

考えれば考えるほど

わからなくて黒くなる……

いまの私の心は、真っ黒だ……

パステル

おじいちゃん……ごめんね……

約束……果たせそうにないよ……

思い出6

パステル

なんて……キレイな光なの……

パステル

これは心の色……いや…

＜色＞じゃない……＜光＞……

パステル

赤……オレンジ………黄色……緑……

青……藍色……紫……

心はまるで＜虹＞みたいだ……

アイリス

パステルさん……

何かつかんだんですね。

パステル

……あはは。

もうだいじょうぶ……大丈夫だよ。

パステル

＜心＞は真っ黒なんかじゃない……

パステル

怒りも、喜びも、悲しみも、

ちゃんと見つめて

全部重ねて束ねれば……

パステル

虹のように輝くんだ！

パステル

私、描きたい！

みんなの絵を……

みんなの心を描きたいっ！

色彩のルーンが七色の光を放つ。

パステルが筆を大きく振るたびに、

ルーンから飛び出した光の虹が

嬉しそうにそれを追いかける。

筆がキャンバスの上を

無邪気に駆けまわり、そこに

主人公たちが

きらびやかに描かれていく。

――できたっ！

そこには燦然と輝く

主人公たちの

笑顔があった。

パステル

どう……かな？

アイリス

素敵です。

これが私たちの心の色なんですね。

キャトラ

つられて

笑顔になるわ～。

パステル

ありがとう。

みんなのおかげだよ。

キャトラ

おじいさんの絵より

上手く描けた？

パステル

まだまだおじいちゃんの絵には

かなわないよ……でも、いいんだ。

パステル

今は、目の前にいてくれる人の心を

ありのままに描き出したい……

ただそれだけだよ。

パステル

そんじゃあ、そろそろ行くね。

キャトラ

さっさと王女様に素敵な似顔絵を

描いてきてあげなさい。

戻ったら練習再開するわよ～。

アイリス

ふふっ。新しいポーズを

考えて待ってますね。

パステル

うん♪　楽しみにしてるよ～。

パステル

よ―――――っし！

みんなの心をカラフルに

描き出してみせるよ！

ボイス

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