葱焼海参・物語

一　一擲千金・壱

◆主人公【男性】の場合◆

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臘八粥

「南無阿弥陀仏！空桑に謎の怪物が目撃された！それは、真っ黒な生き物で、目には緑色の光が射す！毎日午後には牧場の池に現れるという！どうやら「小豆で鬼退治」臘八粥の出番かな！」

「それは一体宇宙の生物なのか、それとも冥府からやってきた幽霊なのか？

　『空桑通信』特約記者臘八粥は空桑の施主と共に、民を救いに現場へ行く――」

煲仔飯

「何と恐ろしい…

　空桑のわかさまも記者も、ハイリスクな仕事なんだねぇ…」

それは暑苦しく、物静かな日だった。牧場の池には、黒く人の姿をしているものが静かに池を漂い、時に風に吹かれてはゆらゆらと浮き沈みしている…

臘八粥

「やはりいたな、化け物め！この数珠を持って来た甲斐があったな…

　あ、○○！それに近づかないで、怪我をしたらどうする！」

？？？

「○○、どうしてここに…？」

臘八粥

「おのれ！人の言葉を話すとは！

　下がってくれ！鬼退治の技、その一！小豆撃ち！」

？？？

「ちょっ――！？」

臘八粥

「あっ、池に落ちた…しかも、泳げないようだが？」

「仏曰く、「人助けすると報われる」！施主、ここはとにかく人助けしましょう！」

臘八粥

「葱、葱焼海参じゃないか！？」

「臘八粥からの速報、「池の怪物」はなんと空桑一のお金持ちだった！この謎に隠された真実とは一体何なのか、『空桑通信』の報道を引き続きお楽しみに！」

葱焼海参

「池の怪物？僕はただ、午後の日光浴を堪能していただけなんだが」

選択肢

日光を？

葱焼海参

「ああ、龍須酥の観測では、最近の午後は日照が一番強い時間らしい」

「ここで数日日光浴をしているが、確かに肌が焼けている気がするよ」

「彼に投資した天体観測機器はやはり価値があるらしい。よし、多めに購入しよう」

暑いから、熱中症に気を付けて

葱焼海参

「気遣いありがとう。前回のような事態を避けるように、既に熱中症予防の薬は用意しているから」

「しかし半月も日光を浴びたが、全然黒くなっていないなんて…このフェイスパックも効かないようだ…」

「やはり海外の工場に投資して、日焼けスプレーでも開発してみるか…」

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臘八粥

「まだ投資する気なのか！？」

葱焼海参

「もし彼らが僕の欲しがっているものを開発できたら、もちろん彼らが欲しがっているものをあげるよ」

選択肢

やってみたい！

葱焼海参

「ほう、やる気か？手伝ってくれるのか？」

「特別なプレゼントを用意してやろう、試してくれればいい」

騙されないようにね！

葱焼海参

「使っているのが科学的な美黒製品だから、騙されやしないよ」

「しかしまあ、その気遣いは有難くいただこう。報酬として、特別なプレゼントをやろう」

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臘八粥

「葱香水が欲しいか？それとも貴重な鰐が飼いたいか？」

葱焼海参

「？？？」

臘八粥

「南無阿弥陀仏。『空桑通信』の匿名投票によると、貴方が施主に贈るプレゼントの内、第一位は葱香水で、その次は鰐だな」

「今回は施主の好みに合うプレゼントでも贈ってみたらどうだ？

　こっちには『一冊で分かる、施主の好み！』というガイドブックがある、参考になると思うぞ」

葱焼海参

「昨日見たドラマでも言っていた、サプライズというのは、関係を維持するには欠かせないものだと…」

選択肢

朝ドラ？

葱焼海参

「君もそれを…？」

「道理で朝早くに部屋からテレビの音がしていたわけだ」

泣けるドラマシリーズ？

葱焼海参

「僕が見たのは朝ドラだが…泣けるドラマは何だ、面白いか？」

「薦めてくれるなら、今度見てみようかな」

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葱焼海参

「○○も僕の意見に賛成したから…その『一冊で分かる、若の好み！』、買った！」

臘八粥

「いや、お金で買えるものではないぞ。これは、今回のセール大会の特別賞だからな！」

葱焼海参

「セール大会だと？」

臘八粥

「そう、最近果樹園では大豊作でな、倉庫のスペースも足りなくなってきた。仏の信者として、やはり何物も大事にしたい、だからセール大会を開催しようかと。しかしまあ、今のところ、商品はこの本のみだけど…」

葱焼海参

「足りない資金は俺が補おう、特別賞は…十万にすればいいんだな？」

担仔麺

「！？」

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二　一擲千金・弐

◆主人公【男性】の場合◆

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臘八粥

「第一回空桑セール大会、本日から開始したいと思います！　今回の選手たちはこちら――葱焼海参と担仔麺！」

「これから七日間、売上と利益で勝負する！施主たちも是非とも、彼らを応援してください！」

蜜汁叉焼

「あれ？葱焼海参おにいちゃんも参加したの？毎日日焼けするのに忙しいんじゃないの～？」

春巻

「そうですね！担仔麺お兄さんも自分の商売のことで忙しいようですが、どうして参加したのでしょうか？」

臭桂魚

「わ、私聞いてしまいました…担仔麺兄さんの独り言…なんだか最近、流動資金が…た、足りないって…」

葱焼海参

「流動資金が足りない？」

選択肢

自分も聞いた

葱焼海参

「ほう？物資は欲しいが、資金がないと？」

「ならば手助けをしても構わないが…」

彼に投資する？

葱焼海参

「ハハハハ！当たりだな！」

「投資したら、海に出る時に連れて行ってくれないかな…」

「黒くなったのがよく海に出るからだと、カ仔煎も言っていた…」

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葱焼海参

「今すぐ聞いてみよう！」

臭桂魚

「で、でも今回の大会は…特等賞が十万もありますから…もし担仔麺兄さんが優勝すれば、お金の問題が解決できるかも…」

大会開始早々、担仔麺のフルーツショップは賑やかな状況に…

担仔麺

「よってらっしゃい、みてらっしゃい、フルーツは採れたてです！絶対に見逃さないでくださいね！」

「毎度あり！気に入ったらまた買いに来てくださいね！」

担仔麺

「今日は目標額以上の任務を達成しましたね。明日も多く仕入れた方がよさそうです。でもおかしいですね…もう三日目ですけど、葱焼海参になんの動きもありません…」

「初日から投資したいって言われたけど、拒否したら二度と現れませんでした…もしかして傷つけちゃったのでしょうか？」

「こんなハイリスクな投資は認めませんが…生産拡大して、万が一売れなかったら…　このままではいけません、やはりちゃんと話さないと！」

心を決めた担仔麺のそばから、大勢の人がさっと駆けて行った。

葱焼海参

「そう焦らずに、まだまだたくさんある――」

陸吾

「干し魚ジュースはあるかにゃ？一つ頂戴にゃ！」

蜜汁叉焼

「陸吾が楽しく飲んでる～、尻尾をピンと立てるくらい美味しいんだね！叉焼もあま～～いジュースが欲しいな～！」

陸吾

「ピ、ピンと立ててないにゃ！さては誹謗だにゃ～？訴えるにゃ！」

餃子

「あいやや、ここのジュースショップは、ジュースで様々な味をアレンジしてくれると聞いたけど、漢方薬味もあるかい？」

葱焼海参

「もちろんあるよ」

選択肢

思いつくものなら、なんでも出来る

葱焼海参

「響きのいいキャッチコピーだ！」

「今すぐそのキャッチコピーをスローガンにして、ここに貼ってやろう」

か、漢方薬ジュース？

葱焼海参

「事前調査によれば、餃子は漢方薬が好きならしく、このジュースを開発したわけだ」

「興味があれば飲んでみたらどうだ？」

「ほう…こう激しく首を振られるとは…お断りのようだな」

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葱焼海参

「おや？担仔麺じゃないか。なぜここに？」

担仔麺

「こ、こちらの販売方法を見に来ました…」

葱焼海参

「方法なんてないさ。今日の午後から、二人の客にジュースを無料提供しただけだ」

担仔麺

「無料！？」

「無料なら確かに一時的な繫盛はありますが、そう長くは続きませんよね。ここ二日間は商売もしていませんし、今日になって無料キャンペーンまで開催するなんて…利益の方は大丈夫ですか？」

「って、どこからのお金ですか？」

選択肢

それは貸付金

葱焼海参

「○○の言う通りだ。それは彼が貸してくれた起業資金だ」

「大会終了後に元利ともども返す予定だ」

大道芸人をやって稼いだお金

葱焼海参

「そうだ。○○はうちのネギちゃんにイルカのようなボール遊びを学ばせるなんて！」

「しかも一分間もたないとお金も貸してくれない」

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葱焼海参

「心配しなくていい、公平な競争だから、手持ちの金は使わないと約束する。君も彼から借りてもいいぞ」

担仔麺

「いいえ、いいです。過剰消費はいけません！こんなに多く借りて、売れなかった場合は元も子もないです！」

「やはりリスクが高すぎるので、地道な努力をした方がよほどいいですよ。こうすれば自分で事業を起こすことができます。信じたくないのでしたら、大会の結果を見ればわかりますよ！」

葱焼海参

「過剰消費じゃない、必要な投資だ」

「その気がないなら、無理はしなくても結構だ。ジュースを飲んでみるか？」

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三　一擲千金・参

◆主人公【男性】の場合◆

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ついに最終日が訪れた

蜜汁叉焼

「今日は勝負が決まる日だな～！優勝は誰かな？気になる～！担仔麺おにいちゃんの果物は新鮮だけど、葱焼海参おにいちゃんの甘いジュースも美味しいんだよ～！」

餃子

「あいや～、漢方薬味のジュースは本当にいいねぇ。そう言えば、葱焼海参が美黒以外のことに真剣に取り組むなんて、空桑に来て以来かもしれないねぇ。」

蜜汁叉焼

「餃子おじいちゃんの言うとおりだよ！葱焼海参おにいちゃんは、『一冊でわかる、若の好み！』って本のために参加したらしいよ～！すごそうな本だな～。叉焼もわかさまの好みが知りたい～！」

臘八粥

「なんと、果物はこの七日間で完売！すばらしい！

　売上を比較すると、今回の大会優勝者は――」

「葱焼海参！おめでとうございます！」

担仔麵

「……」

「一つ聞きたいことがあります。投資以外で…きみが不在の二日間は、一体何をしていたんですか？」

葱焼海参

「何人かを雇って、皆の好みを調査してから、開発用の工場に投資して…まぁこのくらいか。」

選択肢

マーケティングが必要

葱焼海参

「〇〇、君のアンケートは特別なもので、他のやつとは違うからな。」

「君の好み、覚えさせてもらうよ。」

地獄の沙汰も金次第

葱焼海参

「まあそれは確かに。」

「けど、最近気がついたんだ。一つ、金では買えないものがある。」

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担仔麺

「そう…ですか。」

葱焼海参

「大事なのはそれじゃない。」

担仔麺

「！？」

葱焼海参

「商売を志すつもりはないが、腐っても商人に育てられた身だ。どんな経営方法であろうと、最も大事なのはその心境――謂わば「果敢さ」ってやつだな。」

担仔麵

「果敢さ？…なるほど。わたしは慎重な性格で、冒険をするどころか、過剰消費をする勇気もありません。その点については、よく他の商人たちに注意をされましたが、とても理解しがたいです…」

「きみの経営方法も通用するものだと、今回の大会結果が証明してくれました。商売の方法に正誤など存在しません。ありがとうございます。感服しました。」

葱焼海参

「ハハハ！感謝するなら、いっそあっちで工場でも設立しようか？」

担仔麺

「ええ、是非！」

臘八粥

「南無阿弥陀仏。ただのお金持ちではなく、商売の才能があるのか。

　ではなぜ、自分の強みを無視して、あえて美黒に執着する？」

葱焼海参

「商売の才能があるからって、「じゃあ商売の道に進みます」ってわけではないだろう。僕は、ただやりたいことをするだけだ。」

「美黒にしたいから、金を使って色々な方法を研究する。もちろん今回もそうだ。

　あの『一冊で分かる、若の好み！』を手に入れたくて、努力して獲得した！ただそれだけだ。」

選択肢

夢を追う人が一番かっこいい！

葱焼海参

「誰でも自分なりの目標を立てて、それに向かって努力する人が一番かっこいいと？」

「ハハ！優しい人だな、〇〇は。」

美黒できますように！

葱焼海参

「ハハハ！ありがとう、君なら絶対認めてくれると思ったよ。」

「成功とは、人によって形はそれぞれ、他人の考えとは関係ないんだ。」

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臘八粥

「……！」

「拙者は昔、仏学の書籍を読んだ時、「万物は本質で見ると、平等であり上下はない」という言葉の意味をまだ理解できなかったが、

　今になってようやくその意味が理解できた。今すぐ記録しに行く！」

葱焼海参

「おい、ちょっと待て！どういうことだこのリストは！「〇〇は葱香水が大嫌い」って！？」

「〇〇！この前言っていたじゃないか！僕が贈った香水が好きって！」

選択肢

あれは嘘

葱焼海参

「！？」

「僕の行為を拒否するのが忍びないから、つい嘘をついてしまったのか？」

あなたが贈ったから

葱焼海参

「……」

「君が好きだと思ったから、ずっと贈っていたんだが。」

「その匂い、好みじゃなかったのか……」

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葱焼海参

「無理しなくてもいい。元々好みは成功と同じで、人によってバラバラだ。」

「僕の秘書として、そんなことで無理してどうする？」

「なんだその目は？」

「もちろん。僕自身も許さないからな。」

葱焼海参

「〇〇、新しい差し入れだ！」

「今回は君の好みに合うものを厳選した、嫌いなものは一切ない！」

選択肢

いくら何でもドアを壊すわけには…

葱焼海参

「いやぁ、プレゼントが多すぎて、押し込んでみたらまあ、こうなってしまったんだ。」

「大丈夫だ、ちゃんと確認したら謎の部屋に運ぶ予定だ。あそこを君専門のプレゼントルームにしたからな。」

今回は変なにおいがないらしい

葱焼海参

「心配するな、今回葱香水は入ってないぞ。」

「あの匂いが恋しくなったのか？今からオーダーしてあげようか？」

「ハハハ！そう慌てるな。冗談だよ、冗談。」

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葱焼海参

「今回のプレゼントは気に入ったか？それならよかった。」

「この前までずっと君を僕の世界に連れ込んで、僕の好きなものを好きになって欲しかったが…

　今はまあ、君の世界に飛び込んでもいいかもしれない。」

「金では手に入れられないものがあるからな、実に興味深い。」

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