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鬼城麻辣鶏・物語

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一 鬼途の奇情・壱

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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鬼城麻辣鶏

「最新号の『美人雑誌』は適当過ぎないか……?」

「右の美人は顔は悪くないけど、あいつの方がよっぽど上品だよな」

「左のやつは……ダメだ! 何を見てもあいつのことが浮かんでくる!」

【選択肢】

・左の方が美人かな

・「あいつ」って誰?

選択肢

左の方が美人かな

鬼城麻辣鶏

「――!?」

「あいつ」って誰?

鬼城麻辣鶏

「あいつが誰かって? ああ、今頃滝の下でメニューでも暗記してるんじゃ……」

「――!?」

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鬼城麻辣鶏

「○○、いつ来たんだ? 全然気づかなかったぞ?!」


ホラー映画鑑賞会に参加する食魂が続々と活動室に入ってきた。


魚香肉絲

「若はもはや優秀会員だな。ホラー映画には欠席したことがないし」


太極芋泥

「事実は恐らく、これを盾にして郭執事の夜稽古から逃げたいだけでしょう」


年糕

「臘八にいちゃんが村と妖怪がなんちゃらの映画を見つけてきたんだ。年糕の物語とすっごく似てるね!」


臘八粥

「村と妖怪の要素以外は全然違うだろう」

「これはホラー映画ランキングTOP3に輝いた名作だぞ! 拙者は蛋仔に頼み込んだ挙句、ようやくデータを見つけたんだからな!」

【選択肢】

・危ない部分はちゃんと伏せてね

・あれ、今声がかき消されなかった?

選択肢

危ない部分はちゃんと伏せてね

臘八粥

「『村○○○○』!」

「○○○○と○○○○が、最後に○○○○した話だ」

あれ、今声がかき消されなかった?

鬼城麻辣鶏

「怖いって、どんくらい怖いんだ?ネットでも噂になったあの(ビー)」


魚香肉絲

「盛り上がっているところすまないが、一体何の映画だ?」

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臘八粥

「ゴホン。宮保鶏丁が夜回りでこの活動室に来る前に、さっさと見てしまおう!」




臘八粥

「うわーっ!!!」

「――うあああーっ!! な、なんて……なんて恐ろしい結末なのだ!」


鬼城麻辣鶏

「おい臘八粥、貴様はそれでも降魔使いか? こんな三流ホラー映画にも耐えられないのかよ?」

「全部俺様が人間界で遊び飽きたものよ! これより百倍不気味なもんだって見てきたんだからな!」


魚香肉絲

「夜も更けてきたことだし、もっと刺激を求めてもいいだろう?これ以上の怖い話を知っているなら、ぜひここで聞かせてくれ」


鬼城麻辣鶏

「ははっ! そんなに聞きたいってんなら話してやるよ……

 ガタガタ身震いしても知らんけどな!」

「これはな、どこかの小さな村で起こったことだ。町から離れた辺鄙な村だったが、出鱈目な規則を厳格に守り続けていた」

「貧乏な秀才に声が出ない未亡人、雄鶏のお化けに凶暴な村人、そして冥府の鬼使い……ホラー映画でよく見る要素なら全部入ってたな!」




貧乏な秀才

「京では再婚する未亡人も沢山いると聞いた。彼女たちは再婚したって、周りにつべこべ言われないらしい。やはりこの村の規則は時代遅れだと思う」

「惠娘、私は京に行き科挙試験に合格し、官職を得たらすぐ戻り君と結婚する。私たちが京へ引っ越してしまえば、もう誰にも虐められることはない」


声が出ない未亡人

「……」


???

「ぷっ――」


貧乏な秀才

「――誰だ?!」


???

「何だよ。お前らイイ面してんな、もっとよくその顔、見せてくれよ? いいだろ、減るもんじゃねぇし」


そこには、低い壁の影に隠れているのは村でも有名なならず者――「鬼城」と呼ばれる青年が立っていた。

彼は所謂「常識に反する」もので、村の規則をいつも軽蔑していた……

そう思い、秀才は慌てて未亡人を自分の後ろに隠した。


貧乏な秀才

「なっ、何をするつもりだ?」


鬼城麻辣鶏

「女は美人だし、男も顔が良い。堂々と一緒になりゃあいいだろ? なんでコソコソしてんだ?」


未亡人は彼の話を聞くと慌てて頭を横に振り、手話で何かを伝えようとした。

今にも鬼城に土下座しそうな素振りだった。


貧乏な秀才

「でたらめ言うな! あっ、あいつに見つかってしまう……」


鬼城麻辣鶏

「――うううっ!」


驚きと苦痛が混じったような表情を見せた秀才が、鬼城の口を塞いだ。


鬼城麻辣鶏

「ぺっ、ぺっ! 青二才のくせに力はあるようだな! あいつって誰だ?」


貧乏な秀才ははっきり告げず、代わりにある方向を指差した。

鬼城が目を細めてその先を眺めると――

夜が更け、村の規則が刻まれた牌坊は大きく開いた獣の口のようになった……まるで「常識に反する」者を全て吞み込もうとしているみたいに。




鬼城麻辣鶏

「奥さんさ……お相手が傍にいないなら、もっと気を付けないと!」


声が出ない未亡人

「……」


金持ちのお坊ちゃん

「気を付けるべきなのはお前だろう! 日頃から良家の婦人を揶揄うのも十分に酷いが、未亡人にまで手を出すとは!」


鬼城麻辣鶏

「なんだお前、自分の罪を俺に押し付けるつもりか?!さっき俺に追い払われたばかりなのに、まさか大勢を引き連れて戻ってくるとはな!」


金持ちのお坊ちゃん

「誰が悪人だって?陳寡婦、怖がらないで……言ってみろ、あんたを辱めたやつは誰なんだ?」


その話を聞いて、声が出ない未亡人は終始震えていた。

彼女は破れた服を引っ張り肌を隠して、目を固く閉じて鬼城を指差した――


痩七

「おいおい見ろよ、陳寡婦はこう言ってるぞ。鬼城めが寡婦まで辱めたんだとよ!」


胖九

「そうだそうだ! 間違いなくあいつだ!」


鬼城麻辣鶏

「悪犬め、俺様に痛いところを突かれたから慌ててるんだな? 俺様に罪をなすりつけるって魂胆か?」

「いいだろう! 村の不祥事は全部俺様がやった! 貴様らは皆潔白善良な一般村人だよ、これで満足か! クハハハハッ!」


金持ちのお坊ちゃん

「皆、こいつのでたらめな話を聞くな、こいつが陳寡婦を辱めたんだ。痩七、胖九、やれ!」


鬼城麻辣鶏

「――クッ!」


どれぐらい時間が経ったかわからない。

鬼城は一連の村人に容赦なく殴られ、息絶え絶えの状態で地面に横たわった。

このとき『惠娘』と呼ばれた未亡人は悪人が去ったのを確認し、勇気がようやく出たようで、鬼城に水が入ったお椀を渡そうとした。


鬼城麻辣鶏

「退け!」

「貴様、どうして俺を指した! 助けてやったのは俺だろうが!」

「お前は声が出ないからって臆病すぎるんだ。何をやってもオドオドしやがって、俺はそんな貴様に同情しないからな! 貴様と貧乏秀才に借りがなかったら、俺はとっくに――」


未亡人は旦那を早く失い、よく村の者に虐められていた。

同村の貧乏な秀才は彼女を愛しており、彼女の麻辣鶏研究にこっそり援助し、そのおかげで彼女はようやく生計を立てることができた。

鬼城は自分の誕生は彼らのおかげだと思っている。それ故、いつもでたらめで理屈に合わない鬼城だが、未亡人と貧乏な秀才だけには優しくしていた。


鬼城麻辣鶏

「震えてないで書いてくれよ……一体誰がやったんだ? 貴様は何に脅されてるんだ?」


声が出ない未亡人

「……」


三日後、鬼城は例の金持ちの青年を殺した。しかしどこからか消息が漏れ、道端で処刑が決行された。昼、役人の処刑が終わっても、彼は死ななかった。夜、村人が僕刑を下しに来ても、彼はやはり死ななかった。

そのとき、人々の群れから『こいつは化物だ』という声が上がり、皆がこぞって攻めた。火や刀、手に取れる器具、すべてを使って……

処刑は深夜まで続いた。最終的に彼らは力尽き、家に戻って寝ることにした。

そのため、彼らは血まみれの鬼城を鉄の鎖で縛り、村の規則が刻まれた牌坊の下に封印しようと試みた……


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二 鬼途の奇情・弐

◆主人公【男性】の場合◆

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やんちゃな子供

「鬼城が雄鶏になったぞ! 雄鶏が化け物になったぞ!」

「化物が白黒無常に連れて行かれちゃった! キャハハハハハーッ!」


村の子供が裸足で走りながら、楽しそうに叫んでいる。


村人A

「騒いでるのは誰だ! 眠れないだろうが!」


村人B

「なんか『鬼城』とか『雄鶏』って言ってるな……そういえば、鬼城のやつはどうなったんだ?」


村人A

「俺は先に帰って寝るから、お前に見張りを頼んだんだろう! どうしてお前まで帰ってきてるんだよ?」


村人B

「やつを鉄の鎖で縛っておいたから、明日の朝になってから――」


村人A

「いや、万が一のこともある。見に行こう!」


村人は松明を持って、恐る恐る牌坊の下にある鉄の鎖に近づいた……

しかし――

鬼城の姿はどこにもなかった!

その場に残ったのは解体された雄鶏だけだった……

まるで彼らを嘲笑しているような光景だ。


鬼城麻辣鶏

「笑っちまうぜぇ! 食魂が死ぬわけないだろ!」

「でもまあ、あんなに斬られたんだ。死ぬほど痛いのに死ねない……それはそれで哀れだよなぁ? ハハッ!」


鬼城の黒い服からは血が滲み出ていた。深い傷も浅い傷も山ほど残されている。覚えているのは、自分が人間に解体されたことのみ。気力が回復したら、すぐに鉄の鎖を振り解いた。

彼は鎌で目の前にある茨を切り分け、森から村を脱出しようとした。

しかしそのとき、森の奥からふたりの子どもが騒ぐ声が微かに聞こえてきた……


???

「白、早く行かないと幽冥司に戻る時間に間に合わないぞ!」


???

「黒くん、足が茨に引っかかっちゃったんだ。早く助けてよ……」


鬼城は木の茂みから飛び出し、小麦を切る鎌でその茨を除いた。子どもの肌には傷一つ付けなかった。


鬼城麻辣鶏

「おい餓鬼共、こんな夜中に何やってんだ?」


???

「あれ? 白黒無常が見えてるの? 白、こいつ人間じゃないぞ!」


鬼城麻辣鶏

「白黒無常だと? まさか、お前らが? ははっ、へそで茶を沸かすくらい面白い冗談だ」


黒無常

「俺らを舐めてるのか? お前こそ人間でもなければ鬼でもない、奇妙な存在だろう!」


鬼城麻辣鶏

「なんだと――」


何回か言葉を交わしていく内に、彼らはお互いのことをだんだん理解してきた。

目の前にいる二人は確かに白黒無常だと、鬼城は半信半疑になり……


鬼城麻辣鶏

「貴様らは本当にあの幽冥の鬼使い――白黒無常なのか?」

「鬼使いは人から魂や命を奪う能力があると聞いた。俺様にもやらせてくれないか?」


黒無常

「あはは~! 白、俺の聞き間違いじゃないよな? 自分から、鬼使いになりたいって言ったのか?」


白無常

「ちゃんと覚悟はできてるの? 鬼使いは毎日人の死を見るし、特に処刑する酷吏は『ああいうもの』を嫌になるほど見る。鬼でも耐えられなくなって狂ったヤツ、つい最近でも数人はいたと思う……」


鬼城麻辣鶏

「クハハハ……! 俺様はとっくに人の心を捨てた。 人間を憎んでいる! 人間界を憎んでいる! 心の底から憎んでいるものに、怖がることなどないだろう……」


白無常

「黒くん、彼は鬼道に入ることを願ってるんだし、やらせてみようか? それに、今年の鬼使いの枠を早く埋めないと、僕らが……閻魔大王様に嫌味言われちゃう」


鬼城麻辣鶏

「コソコソ話が長ぇぞ。貴様ら、ハッキリ言えよ。OKなのか、NGなのか?」


黒無常

「うん、コホン……まあ、いいんじゃないかな」


鬼城麻辣鶏

「ハハッ! そんじゃ、俺様は今夜から出勤ってことで、貴様らと一緒に初の任務を果たしに行ってやる! つーか、もしかして……鎌に斬られた悪ガキの魂を取りに来たのか?」


白無常

「いや、彼なら昨日取ったよ。今日は首つって死んだ女の魂を取りに来たんだけど――」


言い終わらないうちに『白い影』がゆらゆらと白黒無常の後ろから姿を現した。


鬼城麻辣鶏

「あなたになっていただろうからっ!」


鬼城は心の中で「まさか」と呟いた。『白い影』があの未亡人だったとは――


以前鬼城に見られたときよりも服が乱れており、細い首には紐――白綾が絡まっていた……

彼女は視線を合わそうとせず、白い綾を持って、よろよろと鬼城に前に来る。

白綾の末端には、血を付けた指で書かれた歪んだ三つの文字があった――

『ご、め、ん。』


三年後


語り部

「白黒無常が鶏の化物を連れて行った三年後、村では怪しいことが続々と起きていた」

「村人が理由もなく死んでいく。噂によれば鶏は鬼使いとなり、幽冥司から人の魂や命を奪いに来たらしい……」


村人A

「不吉だな。最近は本当に物騒だ。また死人が何人が出たらしい」


村人B

「そう言えば、あの時俺たちもあの鶏の化物を斬っただろう。次は俺たちなんじゃ……」


村人A

「で、でたらめ言うな!」


名無しの旅人

「……」


語り部

「ありがとう、いつもありがとう」

「おや、お客さん。その服装から見ると、町から来たお方でしょう。急ぎの用でなければ、夜は村へ行かないほうがいいですよ」


名無しの旅人は笠のつばを引っ張り、静かに相槌を打った――


名無しの旅人

「……約束するよ」



鬼城麻辣鶏

「――クハハハハハッ! 叫べ、もっと叫べよ! 貴様の叫び声が大きいほど、俺様は――興奮すんだよ!」

「俺様を斬った時はどんな気分だったよ? 楽しかったろ?! 今日は貴様にも解体される苦しみを味わわせてやるよ!」


痩七

「きっ、鬼城――お前はもう死んだはずじゃ…… ああ! 幽霊だぁ! 来ないでくれ、来ないでくれぇっ!」


鬼城麻辣鶏

「幽霊?」

「ハハハハハッ! テメェの足を見て見ろよ? 今は誰が人間で、誰が幽霊だと思う?」


痩七はようやく自分に足がないことに気付いた!

さっき逃げ回っていた時も、実は宙に漂っていたのだ。


痩七

「――!!!」

「俺を殺したのか! 村の噂は本当だったんだ…… お、お前が復讐に来たって……」


鬼城麻辣鶏

「鬼使いが人間の生活に影響を出すのは御法度だ。俺様は貴様なんぞの為に、そんなことしねぇ! 貴様はな、親友の手によって幽冥司に送られてきた」


痩七は激しく動揺した。『親友』とはまさか、胖九のことか?

自分の死因についてまだ何も思い出せない状況で、鋭い鎌に体を引き裂かれる。彼はあまりの痛みに、助けを求め始めた。

しかし、人に幽霊の叫び声が聞こえるはずもない。


鬼城麻辣鶏

「これから、楽しい拷問タイムが始まるぜぇ……クハハハハハ!」


鬼差A

「鬼城様、人間界で幽霊に私刑をかけることは良くないのでは?」


鬼城麻辣鶏

「フハハッ! クソガキが、俺様の教えを忘れたのか?」


彼は部下の顔を軽く叩いて、大きな声で笑った。


鬼城麻辣鶏

「こういうのはな、人間界では『私刑を濫用する』っていうんだよ。けどよ、幽冥司では……お役目を果たしているだけだ! クハハハハハ――」


そのとき、森の奥から微かな物音が聞こえた。

こんな真夜中だというのに、誰かが森に入ってきたようだ。


鬼城麻辣鶏

「ん……?」

「貴様、とりあえずこいつを幽冥司の尋問室に閉じ込めておけ! 俺様はまだ……『用』がある!」


野原の丘には、文字のない墓碑が並んでいる。

鬼城が暗い夜に身を潜め、静かに覗き見ると……

名無しの旅人が笠を取り、貧乏な秀才の顔が現れた。彼は感情に揺れる視線で目の前の墓碑に触れ、愛する人の名前を一回また一回と呼んでいる。


名無しの旅人

「惠娘……惠娘……」

「すまない、遅れてしまった。君に苦しい思いをさせてしまった」

「京から帰ってきて、君が人に辱められたことを聞いた……私たちのことが人に知られないように、あの金持ちの言いなりになったと。そして……恥辱のあまり自害し、君を助けた鬼城さんも、殴り殺された、と……」

「死ぬべきなのは、あいつらの方なのに!」


静けさの漂う夜、彼は低い声で復讐の計画を告げた……


鬼城麻辣鶏

「道理で村の死人が多くなったわけだ。貴様が俺様の名を借りて、金持ちのお坊ちゃんらと、村の名士を調略で混乱させたんだな」

「人を殺す一番凶器は、人の心と利益だ。フハハッ! まあ貴様のおかげで、俺様の尋問室も賑わってきたしな!」


名無しの旅人

「大丈夫だ、すぐに……やつらを道連れにしてやるからな。そうしたら私も……君の後を追うから」


鬼城麻辣鶏

「すぐ? すぐっていつだ?」


鬼城麻辣鶏

「彼女は幽冥司で貴様を三年も待ってるんだぞ!」


名無しの旅人、即ち貧乏な秀才は墓碑に縋り、無様に泣き喚いた。あの時の深い愛情は、すべて恨みに変わってしまった。


鬼城麻辣鶏

「まあいい……もうしばらく待ったら、俺様が貴様の魂を取りに行く!」



臘八粥

「うわあ――そっ、それはつまり、最後は村の人がぜんっ、全員を……」


鬼城麻辣鶏

「フハハッ! そうだ! なんとか逃げ切ったやつは運良く命拾いしたが、間に合わなかったやつは……ハハッ、自業自得だ!」

【選択肢】

・人の心は化け物よりも怖いからね……

・選択肢2

選択肢

人の心は化け物よりも怖いからね……

魚香肉絲

「ふむ。私にはよくわかる」

「怪談話の正体は――人間が鬼神伝説などを借り、他人を騙しているにすぎないと」


太極芋泥

「しかし、私はあの貧乏な秀才を気に入りましたよ。一人の復讐計画で、まさか村全体を滅ぼすなんて」


鬼城麻辣鶏

「おい! 貴様ら、俺様こそがこの怪談話の主人公なんだぞ! 村をひっくり返したのは誰でもなく、この俺様だ!」

物語はまだ終わってない気がする……

年糕

「うううう……秀才とあのおねえちゃんの話に感動しちゃったよ。どうして円満な結末にしてあげないの?」


臘八粥

「怪談話の結末は大抵……ああ、年糕、泣かないでくれ。鬼城の話を聞こう!」


鬼城麻辣鶏

「ない! 朝ドラじゃあるまいし」


年糕

「うわーん!」

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――ピピッ!

臘八粥の元にメッセージが届いた。


臘八粥

「最新情報最新情報! 夜回り隊が近づいているそうだから、拙者たちはこれにて解散するぞ!」


鬼城麻辣鶏

「ちょうどいい、俺様もこれから……『用』があるからな!」

「なんだよ、○○。どこに行くって?」

「ふん。俺様が幽冥司に散策に行くって言ったら、貴様もついてくるのか?」

「貴様ってやつは……幽冥司を自由に出入りできる朱印を貰ってから、俺様よりも自由気ままになってないか?」

「まぁいい。来たければついてこい!」


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三 鬼途の奇情・参

◆主人公【男性】の場合◆

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鎌鬼使いが一人の男性幽霊を連れて、忘川河岸を漂っていた。

鬼使いの表情はハッキリと見えないが、男性の幽霊は茫然な顔をしている。


男性の幽霊

「恐れ入りますが、これは奈何橋へ続く道でしょうか?」


鬼城麻辣鶏

「黙れ!」


男性の幽霊

「……」


鬼城が鎌で彼岸花の群れを軽く搔き分けると、中から一つの石塊が現れた。すると、石に刻まれた三文字――赤色の『三生石』がはっきりと見えた。

石塊の隣には華奢な体型と綺麗な顔をした女性の幽霊が待っていた。男性の幽霊を見つめるその女の瞳には愛が溢れている。男性の幽霊は、その姿に見とれて立ち尽くすも、鬼使いに蹴られて、やっと我に返った。


男性の幽霊

「鬼使い様、このお嬢さんは……」


鬼城麻辣鶏

「数百年間ずっとこの調子だよ。何回聞いたら気が済むんだよ、お前は!」


鬼城はうんざりした様子で呪文を唄った。彼の声に伴って、三生石から光が溢れだし、それらが集結して文字となる。男性の幽霊は激しい頭痛に襲われ、数世の記憶が全て彼の頭に入ってきた……


男性の幽霊

「惠娘……惠娘……」


鬼女

「あなたは、私のことを思い出しましたか?」


男性の幽霊

「き、君は話せるようになったのか? こんな、綺麗な声をしていたなんて! ようやく君の声を聞くことができた!」


鬼女

「ええ、ようやく二人とも人間道に生まれ変わることができましたね。死んだときの姿と違っているけれど、また『人間』の姿で会うことができた」


男性の幽霊

「すまない。今度は十年も君を待たせてしまった」


鬼女

「この数百年間、互いに互いを待つ――その繰り返し。あなたと死ねなければ、せめて一緒に生まれ、死んだ後に黄泉で再会して、一緒に奈何橋へ行くことができるだけで、私は十分満足です」


鬼城麻辣鶏

「おい。記憶も取り戻したし、顔も見たし、さっさと生まれ変わってこい!」

「ぐずぐずしてるうちに人間道の列に並べなくなったら……コホン、いや、俺様の仕事の邪魔だ!」


男性の幽霊

「鬼城……いや、鬼使い様。私は転生しないことにしたんです」


鬼城麻辣鶏

「はあ? 転生しないってんなら、幽冥司に残って化け物にでもなるつもりか?」


男性の幽霊

「はい! 人間を諦めて、ずっと幽霊で居たい! 惠娘、私たちは幽冥司に残り、幽霊鴛鴦になろう! これでもう六道輪廻に分けられることや、人間界の規則に縛られることを心配しなくてもいい!」


鬼女

「わかっているでしょ、あなたと一緒に居られるなら、私はなんだってするって」


鬼城麻辣鶏

「……」

「自ら幽霊になろうとする奴なんて山ほどいるからな、貴様ら二人を入れたところで不都合はない。ただし、一つだけ言っておく。幽冥司は人間界より生き辛いところだ、覚悟しておけ!」


男性の幽霊

「鬼使い様。この数百年間、大変お世話になりました。この御恩をどう返せば……」


鬼女

「そういえば、このあたりを彷徨っているとき『鬼界堡』のことを聞きました。そこで麻辣鶏の店を開き、商売で得たお金で鬼使い様にお礼させてください。如何でしょう?」


鬼城麻辣鶏

「おお、良いぞ! それは願ったりかなったりだ!」

「俺様が鬼使いをやっていた頃はな、貴様ら一世のめちゃくちゃな縁を載せる為、三生石の『広告枠』の一つに百年間の給料を掛けたんだぞ!」

「今は何世目だっけか? ハッ、後で閻魔大王に借金の届けを出してやる! 今日からこの大金を元利ともども返さなければ、転生はさせないぞ!」

「血も涙もないなんて言うんじゃないぞ。貴様らが俺様の生み親だってことに免じて……」

「俺様はもう幽冥司で働いてないが、名は残してある。貴様らが鬼界堡で暮らしている間、貸し主が俺様だと言えば、貴様らを虐める奴はいないだろう」


男性の幽霊

「ありがとうございます、本当にありがとうございます! 鬼使い様!」


鬼女

「この御恩は、一生忘れません……」


鬼城に理由を説明した後、二人の幽霊は三生石の傍で寄り添い合う。そして、泣いたり喋ったり、別れを惜しむ気持ちを語り合い始めた。

幽冥司に残ろうとしている幽霊にだって、人間界に忘れられない存在がいる。周囲の幽霊もこの場面に感動し、だんだん集まってしくしくと泣き始めた……

だが、鬼城だけは違う。彼は笑いながら周りの彼岸花を、綺麗な八等分に引き裂いていた。とても楽しく遊んでいる様子から見ると、二人の幽霊から全く影響を受けていないようだ。

【選択肢】

・一人で二人の記憶を背負うのは、苦しかったんじゃない?

・君は彼らの影響を受けてないみたいだね

選択肢

一人で二人の記憶を背負うのは、苦しかったんじゃない?

鬼城麻辣鶏

「お前……何を言っている?!」

「苦しい?! ハハハハッ! ――俺様を笑わそうとしてるのか?」

「この数百年間、あいつら二人して畜生道に転生したことがあってな。俺様は猫一匹と犬一匹を連れて、三生石の前に来たんだ。猫と犬の姿で記憶が戻って、涙を流しながら抱きしめ合う様子は……」

「……本当に笑えたぜぇ! 面白いったらありゃしねぇ! ハハッ!」

君は彼らの影響を受けてないみたいだね

鬼城麻辣鶏

「もう何百年も過ぎたんだ。会っては別れ、様々な場面を何度も繰り返した。いつもワンパターンだからな、俺様はとっくに飽きてたんだよ」

「こんなのドラマみたいなもんだろ。秀才とか未亡人とか、鶏のお化けとか? その上に怪奇な要素を加えただけだ!」

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鬼城麻辣鶏

「お前は他人の感情にベソかいてんじゃねぇ! 軽蔑されたいのか!」


鬼城は手を伸ばしたが、相手が綺麗好きであることを思い出した……

しぶしぶハンカチを一枚取り出し、雑に相手の顔を摘まむ。邪魔な涙の粒は拭い取られた。


鬼城麻辣鶏

「行くぞ! この『深夜ドラマ』のことは忘れて、俺様と一緒に鬼界堡を楽しく観光するぞ!」



鬼差A

「あ、あのお方は――」


鬼差B

「鬼城様が俺らを見に来ただけだろう? 取り乱すんじゃな……」

「うわわわわ――あの、あの空桑の若様が戻ってきたぞ!!!」


鬼差A

「き、鬼城様があのお方と……親密に喋っていらっしゃる?! 流石鬼城様! やっぱり鬼城様ですな!」


鬼城麻辣鶏と空桑の若が一緒に戻ってきた噂は、油の鍋に焼けた石を投げたかのように、瞬く間に鬼界堡中を沸かせた。


鬼城麻辣鶏

「俺様のやることに指図するのか? お前ら、肝が据わったな?!」


鬼城が鎌を置いたと同時に、店の中が静かになった。


鬼城麻辣鶏

「○○、見たか! 俺様は幽冥司にいなくても、幽冥司では俺様の噂が絶えない! フハハ――」

「何?あいつらが恐れているのは俺様じゃない、お前だと? ……なんだ、お前の目は節穴か?」

【選択肢】

・幽冥司と空桑、どっちがいい?

・君は幽冥司にいた方が気ままにできそうだよね。

選択肢

幽冥司と空桑、どっちがいい?

鬼城麻辣鶏

「……」

「どうしたんだ急に? 雲泥の差だろう、比べるものにもならない!」

君は幽冥司にいた方が気ままにできそうだよね。

鬼城麻辣鶏

「誰がそんなこと言った?」

「お前、その目でなにを見てるんだ?」

「正しくはこうだ。俺様はな、どこに行こうが、道は必ず開かれる!」

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鬼城麻辣鶏

「つべこべ言わずに、さっさと一杯付き合え!」

「この前は無情の阿呆と一緒に来てたから、つまんなかったろ? 後でいっぱい案内してやる。幽冥司での不愉快な思い出を、全部入れ替えてやるからな……」

「おいおい、何やってんだ! お前はオレンジジュースで、俺様が酒だ! 俺様が恋しいのはわかったから、とぼけて俺様のコップを入れ替えるんじゃない――」


酒が数杯喉を通ると、鬼城もだんだん酔いが回ってきたようで、普段なら絶対言わないような事を喋り出した……

しかし、最後は決まって大きな笑い声で無理やり誤魔化してくる。



幽冥司には景色の綺麗な祈願池がある。

幽霊らはよくあそこに集まって祈願するらしい。

そして次第に、そこは雰囲気のいいデートスポットとなった。

蓮花灯を河に流す体験をさせてやると言った鬼城は、相手が真剣に願いを書き込んでいるのを見て、思わず蓮花灯を奪った――


鬼城麻辣鶏

「何を願ったんだ? 俺様にも見せてくれよ」

「……」

「フハハハハハハッ! ○○、そんなに俺様が好きなのか?」

「なんだよ。神様やら仏様やらに願うより、俺様に直接言った方が実現しやすいだろ!」

「そう言えば、お前と初めて出会ったのも、この忘川河岸だったな」

【選択肢】

・覚えてるよ、君は私を連れ戻して処刑しようとしてたこと……

・あまり良くない出会いだったけど、良い結末に繋がって良かった

選択肢

覚えてるよ、君は私を連れ戻して処刑しようとしてたこと……

鬼城麻辣鶏

「……」

「俺様があそこまで後悔したのはあのときだけだ!」

あまり良くない出会いだったけど、良い結末に繋がって良かった

鬼城麻辣鶏

「良い結末か? ハハッ、俺様はまだ何か足りない気がするけどな!」

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鬼城麻辣鶏

「なんのことだ、と? お前、よく聞けるな?」

「勿論、俺様が二回も忘川河岸でお前を逃がしたことだ!」

「終いには無情のやつに、いいところを全部持ってかれちまった!」

「フハハハハハッ! せっかく戻ってきたんだ、三度もお前を逃がす俺様じゃないぞ!」

「足が速いな! 小僧の足が速いほど、俺様は――興奮するぞ!!ハハハハハ――」


二人の走る音とじゃれ合う声は、炎が如く彼岸花の群れにこだまし、また風と共に散り去った……


鬼城麻辣鶏

「ハァ、ハァ――」

「死ぬほど疲れた!」

「よし、お前には骨がある! 見直したぞ!」

「まだ力はあるか? 流石にないよな…… ハハッ、大人しく俺様の背中に乗ってろ!」


この訳がわからない追いかけっこは、鬼城の勝利で終わった。青紅の漢は白い服の青年を背中に乗せて、空桑への帰路を辿った――


鬼城麻辣鶏

「何? 俺様が幽冥司に戻ったら、もう空桑に帰らなくなると思った? 俺様と別れるのが辛くて、俺様についてきたって?」

「ハハッ! 今の俺様にとっちゃあ、空桑こそが縄張りだ! 俺様がどこに行こうが、誰の傍にいようが、お前のような小僧が口出すようなことじゃない!」


それに、空桑は人間界で唯一『悪鬼』をも受け入れる桃源郷だ。空桑には、心の底から優しくしてくれる馬鹿が一人だけ、いるからな――

……さすがの鬼城も、それは口にせず、黙ったのだった。


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