風生水起・憶絵物語
澤被万象・壱
長い日照りで民は苦しんでいる。荒れ果てた村では神の救済が持たれている。
◆主人公【男性】の場合◆
(逆の場合の差分は募集中)
幾度かの春雨を経て、暖かい日差しと明るい景色で森羅万象が一新した。
空桑農場も新しい春を迎え、植え付けの時期に入ろうとしている。
僕は、カレンダーにマルをつけた。
啓蟄が過ぎ、もうすぐ旧暦の2月2日だ。
若
「2月2日と言えば、春竜節……そうだ!」
ふと、重要なことを思い出した。
外に出ようとドアを開けると、そこに見慣れた姿があった。
彼も僕を見て少し驚き、差し出しかけた手は宙を浮いていた。
若
「兪生……」
風生水起
「失敬。ドアをノックしようとしたところ、貴方が出てきました。」
『流水で万物を潤い 千灯で長安を祈り』
興雲引水 蒼生済世
力を人々を慰撫する春風に化し
甘雨が大地に振る時
彼の心の中にも波を持つ
【風生水起・澤被万象】
若
「以心伝心だね。ちょうどあなたの所に行こうと思っていたんだ!」
「もうすぐ、旧暦の2月2日だね。伝統的な「春竜節」。
人々が龍を敬い、降雨と農作を祈願する日でもある…。」
風生水起
「まさに、そのことでやって来たのです。
最近、地上の人々は祈願イベントを開いており、
龍王廟の参拝客もいつもより増えているそうです。」
「今、この地を司る者として、私はもっと民と接し、
人々の心情や意見や体感しなければなりません。」
若
「春の耕作は食糧に関わり、食糧は民の暮らしと密接に関係している。
空桑の若として、僕も尽力すべきだよね。」
風生水起
「それでは、私と一緒に世間を訪ね、民の幸福を祈りましょうか?」
若
「僕と一緒に行こうと誘いに来てくれたの……?
実は、僕があなたの所に行こうと思ったのも、一緒行きたいと思ったからなんだ。」
風生水起
「まさに、阿吽の呼吸ですね。」
若
「祈願と言っても、地方によって風俗習慣が少し違うよね。
南方と北方、内陸と沿海、様々な風習がある…。」
「やっぱり、「郷に入っては郷に従え」だよね。
その土地の習慣に習わなくては。」
風生水起
「そうですね、貴方の考えはごもっともです。
この機会に、貴方から地上の風習や礼儀を学びたいです。」
若
「それだけじゃないよ。
「春竜節」については、面白い伝説がたくさんあるんだ。」
風生水起
「では、さっそく出発するとしましょう。
ゆっくりと、貴方の話をお聞きしたい。」
若
「うん。でもどこから話せばいいのかな……」
しかし、私たちは予想外の事態に直面する――
僕は、風生水起と村に到着した。
村内に入ろうとすると、村人たちが灯篭を手に、どこかへ押し寄せていくのを見た。
この村には想像と違い、お祝いの雰囲気が少しもなかった。
村人たちの顔は陰気と悲しみにあふれ、荒廃した田畑も物寂しさを添えていた。
若
「何があったんだろう?彼らはどこに向かっているのかな?」
風生水起
「この先に龍王廟があります。
どうやら、その寺に向かっているようです。」
若
「龍王廟?」
「2月2日には、灯籠を河に流す習わしがあるけど、
この人達は灯籠を河に流すのではなく、寺に持っていこうとしてる。
ちょっと変だよね。」
風生水起
「村には河もないし……ついて行ってみましょう。」
広くない廟内には一体の龍王像が祀られ、
参拝に来た村人たちが集まっている。
龍王廟の内外は、村人たちで埋め尽くされている。
神像の前に並んで跪く彼らは不安げな表情を見せ、
口中でひたすら念仏を唱えていた。
「お天道様、どうかよく見てくだせえ!」「神様、早く雨を降らせてくだせえ!」
「オラたちを助けてくだせえ!」「今年の田畑は、どうしようもねえ!」
哀しみと怨みの入り混じった声の一つ一つが、龍王廟に響き渡る。
跪拝を終えると、村人たちはそれぞれ灯籠を龍王像の前に恭しく置き、
幾度も拝んでから立ち去った。
彫像の下には、種々さまざまな灯籠が幾重にも積み重なり、
いつの間にか50センチもの高さとなった。
若
「彼らは、物乞いをしてるのかな?」
「ここで、一体何があったんだろう……」
風生水起
「村人たちに聞かないと分からないでしょう。」
祈願の儀式の後、村人数人に尋ねて、やっと事のいきさつが分かった。
若
「この村には、もう何か月も雨が降ってないみたい。
河床は干上がり、田畑もひび割れ、村人たちは苦しい思いをしてるんだって。」
「2月2日は、まさに祈願の日だよね。
彼らは灯籠を龍王に供え、
お天道様の心が揺さぶって慈雨を降らせてくれるよう祈っていたんだ。」
人群れが散り、僕と風生水起だけが廟内に残った。
灯をともすことのできない灯籠を一つ一つ見ているうちに、
複雑な心境となった。
若
「希望と喜びであふれ返るはずのお祭りが、
こんな風になってしまうなんて。」
風生水起
「水は農業の命であり、生命の源です。民草の生き死にに関わります。
彼らは今、干ばつの苦しみに日々喘いでいるのです。」
「村民は、こんなにも龍神にすがっているのです。
彼らの期待を裏切るわけにはいかない……」
若
「何かいい解決法はあるかな?」
風生水起
「ここの早ばつを解消できる唯一の方法は、
「龍王真意」の力を借り、水を河床に導くことです。」
「しかし、御存じのように、龍王真意は両刃の剣。目の前の危機を解決しても、災いを招くことがあります……村人の生死は、児戯ではありません。
私は、力をむやみに使うことはできないのです。」
若
「力は、蒼生を救うために存在するんだ。この災害は、今や一刻の猶予もないよ。
ここはひとまず懸念を脇に置いて、心の声に従おう……僕は、あなたを信じてるから。」
風生水起
「信じてくれて……嬉しい限りです。
しかし、念のため、貴方は先に村人たちを安全なところに連れていき、
そこで待っていてください。」
話が終わらないうちに、突然後ろから異音が聞こえてきた。
廟門の外で、3,4歳の子がしわくちゃな紙を手に、
ビクビクしながら廟内を覗いている。
僕が手を振ると、その子は少しためらった後、ゆっくりとやって来た。
若
「坊や、ここへ何しに来たの?」
子供
「……」
若
「お父さんとお母さんは?君と一緒じゃないの?」
子供
「……」
若
「この子は……しゃべれないみたいだね。」
風生水起がしゃがむ。
その嬉しい眼差しに、張り詰めていた子は徐々にリラックスしてきたようだ。
風生水起
「この子は、我々の助けを必要としているようです。」
若
「何が必要か、当ててみようか?」
澤被万象・弐
天より慈雨が降り、万物がよみがえる。彼は風雨の中からやってきた。まるでこの世を照らす星のように。
◆主人公【男性】の場合◆
(逆の場合の差分は募集中)
子供の手が握り締めている赤い紙を見て、
この子が先ほどから龍王像の下の灯籠をちらちら見ていた様子を思い出した。
若
「この子の目的が分かった。」
「君も灯籠を作りたいんじゃない?どれもきれいな灯籠でしょ?気に入った?」
子供は考えることもせず、ひよこが米をつつくようにうなずいた。
若
「思った通り。この子も大人と同じように自分の手で灯籠を作って供えたいんだ。
ただ、それができないから、僕たちに助けを乞いに来たんだよ。」
「兪生は灯籠を作れる?」
風生水起
「作ったことはありませんが……
もし、この子の願いをかなえられるなら、試してみます。」
風生水起が首を振るのを見た子供は、不安げに小声を出した。
大きな瞳でじっと僕たちをみつめ、今にも泣き出しそうな様子である。
少し戸惑った風生水起は、子の頭を優しくなでながら、気持ちを落ち着かせた。
風生水起
「私はうまくできないけど、
隣の……お兄さんが、きっといい方法を考えてくれますよ。」
若
「なんで僕!?」
風生水起
「おそらく、私から見れば貴方はいつも賢くて、
できないことは何一つないように見えるからでしょう。」
若
「確かに作ったことはあるけど…。
以前、空桑で「中秋節」を過ごした時、
みんなも手作りの灯籠を河に流して祈願したよね。」
風生水起
「じゃあ、一緒にこの子の願いを叶えてあげましょう。」
若
「わかった。今日は僕たちも蓮の花の灯籠を作ろう。」
若
「灯籠を作るには、まず紙を切るんだよ。
1枚の紙をいくつかの同じ大きさの長方形に切って、花びらを作る。」
風生水起
「紙の縁は切れやすいので2人とも触らないで、私に任せてください。」
若
「ありがとう。あなたも手を切らないでね。」
「さあ、君は僕と一緒にこの髪を同じ大きさの細長い紙切れに折ろうね。」
子供は目を大きく見開き、机に顔をくっつけた。
両目には好奇心があふれている。
若
「それから、ここからは折り紙と一緒だよ。
ここはちょっと複雑なので、よく見ていてね。」
「折った紙は、紐でくくるよ。
さあ、君は僕と一緒に紐を引っ張って。」
子供は、言われたとおりに紐の端っこを引っ張った。
眉毛がくっついてしわになるくらい、力の限りを尽くした。
若
「よくやったね!
ほら見て、紙をこう広げれば、蓮の花の完成だよ。」
「葉の作り方は、花の作り方と似てるから、
最後に花を葉の上に乗せれば、灯籠の出来上がり!」
「この綺麗な灯籠は、君の力作だね。」
子供は興奮して手をたたき、うれしさのあまり小躍りした。
風生水起
「私でも手伝えます。
この子よりも、私の方が力は強いはずですから。」
若
「分かってないねぇ。子供との交流でいちばん重要なのは、
参加してることを体感させることだよ。
そうやって初めて、子に自信をつけさせることができるんだ。」
「これはみんな、空桑の子供たちから教わったことだよ。
ふふっ、見て、この子は随分明るくなったでしょう?」
風生水起
「貴方には、子供の気持ちが分かるようですね。
子とどうやって付き合うべきかも心得ているとみえます。」
「今回はご指導いただきありがとうございました。
子供との付き合い方、なんとなくわかってきました……
ついでに灯籠の作り方も学べました。」
若
「さすがだね。
一度見せただけで、もう覚えてしまうなんて。」
「蓮花灯もできたし、お祈りしよう。」
風生水起が子供を抱き上げると、
小さな手が灯籠を彫像の前にそっと置いた。
若
「さあ、願をかけよう。
何か願い事はあるかな?」
子供は、頭をかきかき考え始めた。
突然、何かを思いついたかのように、言いかけたように見えた。
若
「田畑にたくさんの穀物が育ち、
果樹園には果物がたくさん実ってほしいと祈ってるのかな……」
「そして、美味しい食べ物が、
たくさんありますようにって!」
子は照れ臭そうに顔を赤らめ、うなずいた。
若
「僕の言うとおりだっただろ。」
若
「兪生、こんな幼子でも大人と同じように豊作を望んでいるんだね。」
「ちっぽけな蓮花灯がただの心のよりどころに過ぎなくても、
人々は試してみたいと思っているんだ。
神様には人間を守る力があると信じてるから。」
風生水起
「人間を守る力……」
やせた山野、荒れ果てた田畑、敬虔な祈りを捧げる村人たちと、
その両目にあふれる信心を、彼は思い起こした……
世間は、自分をこれほど信頼してくれている。
たとえ乾坤一擲を賭しても、
彼らのためにこの一筋の望みを叶えない理由などない。
この力は、彼の体内に長い間潜んでいた。
以前、彼は心の魔に打ち勝つことができたのだ。
今回も、同じようにできると信じた。
風生水起は子供を地面に下ろし、
かがんで子に目線を合わせ、見つめた。
あたかも、大切な約束を取り交わすかのようであった。
風生水起
「心配する必要はありません。
村は干ばつに見舞われましたが、
すぐに水を取り戻すと約束します。」
「その時が来たら、君が好きな灯籠を一緒に河へ流しましょう。」
彼は、改めて眼差しを僕に向けた。
その目には、優しくも確固たる力を感じた。
風生水起
「貴方の言うとおり、私は自らの道を選ぶべきかもしれません。」
深夜、僕は外の騒がしい音で目が覚めた。
興奮した数人の村人が、走りながら叫んでいる。「水だ!水が来た!」「龍王のお力だ!河に水が戻った!」1人から10人へ、10人から100人へと、次々に伝わると、大勢の村人が大喜びで河辺へ押し寄せていった。
若
「河辺?水?まさか……」
僕の胸中には小さな憶測が浮かんだが、
考えるより先に、人の波が追いかけ河辺に向かっていた。
若
「天空が厚い黒雲に覆われるや、ゴロゴロと雷が鳴り続いた。
稲光が続けざまに走ると、どしゃ降りの雨となった。」
すっかり干上がってしまっていた河床に、
今は波涛が激しく逆巻いている。
激流が岸辺を打ち、四方に広がる用水路へとうとうと流れていった。
この光景を目の当たりにした村人たちは一斉に河辺にひれ伏し、両手を合わせて天を仰いだ。ある者は額を地に着け、ある者はうれしさにむせび泣いている。しばらくの間、鳴き声と笑い声はない交ぜとなり、人は心を震わせていた。
人群れの後ろから、風生水起が僕の方へ歩み寄ってきた。
彼の胸はかすかに波打ち、顔が少し青ざめている。
人知れぬ片隅で、民草を救う神が人の世に降臨していたのだ。
澤被万象・参
満点の星、川面の灯火。敬虔な祈りははるか、私たちがともに向かう遠方へと導く。
◆主人公【男性】の場合◆
(逆の場合の差分は募集中)
〇〇
「兪生、大丈夫?」
風生水起
「龍王真意を使い、河に水を導きました。
間もなく大雨となり、数か月にわたって村人を苦しめてきた干ばつは、
ある程度解消されるでしょう。」
「心配をおかけしました。先ほど水を導く際、いささか力を消耗したのです。
しかし、もう大丈夫。」
若
「村民に代わって、お礼を言わないとね。彼らを救ってくれてありがとう。
彼らが仰ぎのぞむ神様があなたであることを、とても喜ばしく思うよ。
あなたは、崇拝に値する人だよ。」
風生水起
「私への崇拝など、どうでもよいこと。
私の決定が本当に彼らに幸福をもたらすかどうかだけを、
私は気にかけるのです。」
「貴方は、かつて私に言ったことがあります。
私がこのような力を持っている以上、
四海の民のためにもっと多くのことを為すべきだと。」
「以前は、あれこれと心配しました。今日になって、やっと気づいたのです。
もっと早く決心していれば、村民はこんなに苦しまなくて済んだはずだと。
今は……遅すぎました。」
若
「僕の心の中では、あなたは常に優しい人だよ。
余裕を持って自在に力を制御する術を知っている。」
「今回は波乱があったけど、最後にはみんな大喜びしてくれたね。
村人の困難を解決できただけじゃなく、
あなたが自分の能力をもう一度見つめ直したことも、喜ばしいことだよ!」
「行こう。任務完了だよ。
夜が明けたら帰らなきゃ。」
風生水起
「ちょっと待ってください。」
「私から……貴方に差し上げたいものがあります。」
「これは、貴方のためにこしらえた灯籠です。
これほど精密な物づくりは初めてで……いささか粗末ではありますが。」
「よろしければ、受け取ってください。」
精巧な蓮花灯が、そっと僕の掌に置かれた。
花びらはバランスが良く、形も申し分ない。
初心者の手によって作られたようには、とても見えない。
若
「初めて作ったものが、こんなにうまくできたなんで。
謙遜しすぎだよ。」
風生水起
「過分な言葉です。
気に入っていただけるなら、それで充分。」
話が終わらないうちに、僕の掌にポタッと一滴の水が滴り落ちた。
すると、まとまった雨滴が次々に雲の中から落ちてきた。
長い干ばつの末、遅すぎた大雨がついに降ってきた。
若
「やった!村人たちが待ち望んでいた命の水だね。」
風生水起
「えぇ。この雨が、ここの生きとし生けるものすべてを回復させる活力となりますように。」
若
「しまった、僕の灯籠!この灯籠、紙で出来てるんだってこと、うっかり忘れるところだった……」
僕は、急いで灯籠を袖で懐に隠した。
紙には一定の防水効果があるものの、少しでも濡らしたくなかった。
若
「この雨がとても貴重なものだけど、この灯籠も僕にとっては宝物だからね。
しっかり守らないと。」
風生水起
「それなら、私が貴方を守りましょう。」
言い終わると、僕が反応する前に、風生水起は袖で僕の頭のてっぺんを隠し、
庇護の傘をさしてくれた。
一瞬にして、雨の音も遠ざかった。
若
「ちょっと……あなたが濡れてしまうよ!」
風生水起
「この服は、鮫からとった糸で編んだものです。
水が染み込むことはありませんので、御心配なく。」
「行きましょう。
やはり、雨宿りできる場所を探したほうが良さそうです。」
若
「そうだね……雨が止んだら、一緒に灯籠を河へ流しに行こう。」
風生水起
「わかった。」
大雨が過ぎ去ると、澄んだ夜空が広がった。
星が明月に伴い、雲中から顔がのぞかせる。
かつての安寧が、再び村に戻ってきた。
僕は風生水起と一緒に籠舟に乗り、龍王廟の灯籠をすべて持ち出した。
灯籠を満載した舟は、静かな河面にさざ波を描いた。
自らの手で灯籠に明かりを灯し、一つずつ河に流し込んだ。
灯籠が波と共に彼方へ流れていくのを見るうちに、
僕たちの心はゆったりした安心感で満たされた。
若
「灯籠は、願いを1つずつ乗せている。
今ようやく、彼らの行きたい所へと流れていったね。」
「敬虔な心が必ず天を感動させ、
神の光明が彼らの前途を明るく照らしてくれる、と人は信じているんだよ。」
風生水起
「彼らは私のことを、自分たちを導いてくれる灯明と見なし、
幸せをもたらしてくれると思っていたのです。」
「灯明といえば……私の心もある時、貴方に灯されたかのかもしれません。」
若
「僕に?そんなことないよ。
僕は、ほとんど役に立たなかったから……」
風生水起
「今日、灯籠を作りながら貴方達の笑顔を見て、
やっと心の理想とするものが分かりました――民にはこのような笑顔があり、
みんな幸せと楽しみの中で暮らすことを望んでいるのです。」
「四海の蒼生を守るというのは、決して偽りの言葉ではありません。
今回の一件を経験して、その信念はますます堅固になりました。」
若
「前に伝えたけど、天海一族も空桑も同じ責任を負っているんだ。」
「衆生を守る道のりは、長くて険しいもの。でも僕はずっとあなたのそばにいるから。
今のように、僕たちは心を一つに力を合わせ、同じ舟で風雨を乗り切るんだ。」
「だって、僕たちは、すでに同じ舟に乗ってるんだから。」
「貴方と共に歩むことは、僕の一生の幸運です。」
きらきら明滅する「灯籠の海」を見ていると、
夜風が顔をなでるような心地よさを感じる。
そよ風が吹き、心にずしりとのしかかる重荷がようやく下りた。
若
「今日は村人の願いを叶えたけど、今度はあなたが願い事をする番では?」
風生水起
「人はよく、私のことを幸運をもたらす存在だと言います。
この世界も、私の名・風生水起と同じように繁栄してほしい。」
若
「必ず、そうなるよ。
今日、僕たちはまた一つ、有意義な事を成し遂げたよね。」
僕は小舟で仰向けになった。
きらめく天の川が瞳に落ちると、
銀色の月光の下、人影も幻想的に映る。
若
「こんな得難い夜に、ひとつお願いしてもいいかな?」
風生水起
「どうしました?」
若
「ちょっと時間を作ってくれない?心の重荷をしばらく下ろして、
2時間ほど僕と一緒に満点の星を堪能しようよ。」
風生水起の返事を持たずに僕は急いで言い直し、
照れくさくなって顔をそむけた。
若
「2時間が長すぎるなら、
1時間でもいいんだ……たまにはゆったりしてもらいたいんだよ。」
しばらくして、小さな笑い声が聞こえた。それは、僕の気のせいだったかもしれない。そしてその人が、僕のそばに横たわった気配を感じる。
僕たちは寄り添い、同じ星空を眺めた。
風生水起
「うん、今宵の星は実に美しい。」
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