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たこ焼き・エピソード

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たこ焼きのエピソード

活発で明るい性格の少女。せっかちだけど商売上手な京海城下の浜辺の軽食屋で働く看板娘。己に正直で他人から褒められるのが大好き。可愛らしい外見だけでなく、笑顔の接客はお客さんからの好感を得て愛されている。


Ⅰ.真夏の日常

夏の太陽はいつも眩しい。


煩わしい蝉の鳴き声は止む事を知らない。


ウチはカウンターの上で頬杖をつきながら掌で剣玉をゆらゆらと揺らし、つまらんなぁと思いつつ目の前の街を眺めていた。


退屈な夏……


今日は早めに店を閉めようかと考えていたその時、


街の奥のほうに一人の人影が現れた。


蒸し暑い空気のせいで、目の前に映し出された景色も歪んでしまっていたが、人影を捉えることはできた。


かと思えばその人影はまっすぐ店の方へと歩いてきた。


お客さんや。


結論が出た。


ウチは猛然と立ち上がり、はつらつとした笑顔を見せた。


「いらっしゃいませ、ご注文は…」


そう言うや否や、人影の正体をはっきりと確認できた。


ウチは全身の力を抜かれたかのように、へたり込んでしまった。


「なーんや、あんさんかい。」

「え、俺、何か気にくわないことでもした?」

店に入った流しそうめんは、怪訝な顔でそう言った。


「なんで俺を見た途端にそんな顔するんだよ。」

「体力気力の無駄遣いやから。」

ウチはさも当然のように答えた。


「あんさんやと知っとったら、最初から元気よく挨拶もせんかったわ。あー疲れた。」


「……」

流しそうめんは明らかにウチの回答に呆れていた。しばらくしてから厳しい口調でこう言った。

「そんなんじゃダメだろ、お客さん一人一人にちゃんと挨拶しないと。」


「あんさんは客やないし」と、ウチは肩をすぼめる。

「その気やないのに、やる気があるように演じるなんて嘘つきやろ?」


思わず眉間に皺を寄せる流しそうめんを見つめた。


「あんさん、嘘つきは嫌いやなかった?」

「ぐっ……」

流しそうめんは言葉を失う。


「んで、何が食べたいん?」

相手の反応を見たウチは思わず口角が上がった。


そして何事もなかったかのように話題を変えた。


「えっ、あ、じゃあ!ソースたこ焼きを一つ。」

「またぁ?っていうか、もう何回も食べたんやから自分で作れへんの?」

「自分で作れるならここに来ないだろ。」


あーあ、まただ。コイツはいつもこうやって、人に期待を与える言葉を並べてくる。


「フン、あんさんが来なかったらのんびりできたのに」

「気を悪くしたか?」

「悪くしたように見えるん?まあええ、話はここまでや。アホはいつまで経ってもアホや」

「お前なあ……」


手元の動きを一刻も休めることなく調理に没頭していたウチの視界の端に、流しそうめんのどうしようもなさそうな表情が映った。すると心の中のモヤモヤが何となく消えた気がした。


やっぱり、機嫌が悪いときはアホを眺めるのが一番や。

Ⅱ.揺らぐ想い

「どう?かわええやろ?これが前に言った星空色やで」

お好み焼きはウチの目の前で手を広げ、新しく塗ったネイルを嬉しそうに見せてくれた。


「かわええやん!どこで買ったん?」

ウチは羨望の声を上げながら彼女の手を触った。


「へへ、櫻城らへんや!」

「櫻城かー、結構遠いな?」


流しそうめんと同じく、お好み焼きもウチの店の常連だ。でも他の客と違って、うちらはとっても仲の良い友だちでもある。


なんでも思ったことを言えて、多少の毒舌も気にしない、ウチも猫を被る必要がない、一番自分らしくいられる。


彼女と一緒にいると楽しいけど、残念なことに彼女はもうすぐ旅立ってしまう。


「こえ気に入ったんにゃら、こんろもってくる……」

お好み焼きミルクティーを口に含みながら話しかけてきたけど、何を言っているのかさっぱりだ。


「それやと、結構先の話になるなあ……」

ウチはちょっと悲しい気分になり、思わず唇を尖らせてしまった。


しばらくマニキュアが手に入らないことについてか、それとも友だちが去ってしまうことが悲しいのか、よくわからない。


ウチはつまようじをたこ焼きにプスッと刺し、お好み焼きの口の中に放り込んだ。


「う~ん、そうやなぁ」

お好み焼きは食べながら考えている。ぼんやりと、どこか遠くを見つめて。


「そないに長くはならんよ、三ヶ月くらいとちゃう?」

「明日には出発するん?」

ウチとお好み焼きは手を隣り合わせにしてネイルを見比べていた。


「うん、そうやね」

そう言って、お好み焼きたこ焼きをプスッと刺し、今度はウチの口の中に放り込んだ。


「ううっ……」ウチはますます落ち込み、「お好み焼きが行ってしもうたら、つまらんなぁ」とこぼした。


「そんなことないやろ、りんご飴ラムネもおるし」と、お好み焼きは指で数えながら、付け足して言った。


そして、急に何かを思い出したかのように、意味深な目配せをして「あと流しそうめんもな」と言った。


「なんでやねん」と、ウチは笑いながらお好み焼きの頭を軽くはたく。


「あのアホは関係ないやろ」

「ふふふ~そやな~関係ないもんな~」お好み焼きはおちょくるように言って来た。


たこ焼きちゃんは~アホは嫌いやもんね~」

お好み焼き!」

「ひぃっ!」



お好み焼きが去っていく後姿を見送りながら、ウチは長いため息をついた。

彼女の言葉がどこか引っかかっているような気がしてならなかった。


「ほんまの気持ちはずっと隠せるもんとちゃうで。親友のアタシはちゃーんとわかってるんやからね」

「なんの話や……」

カウンターを片付けながら、ウチはぶつくさと呟いた。


「ほんまの気持ちねぇ……」


その時、一枚のチラシが手元にひらひらと落ちてきた。

ボーっと何の気なしに見ると、チラシには美しい満開の花火のイラストが印刷されてあった。


Ⅲ.言えない言葉

「なぁ、花火大会のことは聞いた?」


料理の準備をしながら、ウチはカウンターに座っている二人のチビに話しかけた。


「もちろん!」

ラムネは小さな足を揺らして、大きな水色の目を見開いた。


りんご飴と一緒に行くって約束したんだ!」

そう言って、彼女は嬉しそうに隣にいるりんご飴をぎゅっと抱きしめた。


「そう、約束したんやね」


「そうだ!たこ焼きお姉ちゃんも一緒に来る?三人で一緒に遊ぼうよ!」

「あ……いや……えっと……」

お好み焼きお姉ちゃんはどこか行っちゃったでしょ?私たちと一緒に遊ぼうよ~」

「い、いや、その……ウチはええわ」

「そう……?じゃあ、お姉ちゃんは行かないの?」

「え?ウ、ウチも行くつもりやけど」

「一人で行くのはつまらなくない?」

「そ、そうやなくて……ウチはええねん、一人ちゃうし」

「じゃあ、しょうがないね!お姉ちゃんも楽しんでね!」


話し終えると、ラムネりんご飴はまたじゃれはじめた。


ウチはちらっと店の隅っこに貼ってあるチラシに視線を移し、何故かわからないけれど、頭の中で流しそうめんの顔を思い浮かべていた。



「ウ、ウチと花火大会に付き合っていただけませんか?」

「ちゃう、そうやない……」


顔をペチペチと叩きながら、ウチは店の中でブツブツと独り言を言い続けていた。

どう誘えば自然に見えるかな、とあれこれ考えを巡らせる。


「うん、せや、ただラムネに一人で行くんやないって言っただけやし」

「別に……特別な意味なんてないし」

「……って、なんでウチがこんなに悩まなあかんねん!もう行かへん!絶対に行かへん……」


なんでこんなに悩んでるのか自分でもわからずモヤモヤしていたその時、後ろから聞きなれた声がした。


たこ焼き?」


気が付くと流しそうめんが店の前に立っていて、心配そうな顔でウチを見つめていた。


「大丈夫か?」

「な、な、な、なんや!な、なん、なんもないよ」


ウチはなんとかドキドキを抑えて、いつもどおりを装った。


「ふーん……?」

流しそうめんは不思議そうにウチを見ながら、「たこ焼き、ソースで二つ」と注文をした。


「あ、う、うん。」

「大丈夫か?」

「大丈夫やって。」

「なんか……今日は妙に優しいな?」

「な、なんや?喧嘩売ってんのか?」

「んー……まぁ、なんでもないなら、別にいいけどさ」


込み上げてくる恥ずかしさを必死に抑えながら、あれこれと考えた末に、とうとうウチは不本意ながらも口を開いた。


「あ…あの、流しそうめん、明後日の花火大会やけど……」

「うん?」

流しそうめんがウチの顔を見上げる。


「花火大会がどうかした?」

「……は、花火大会で出店してるから、たこ焼きを買うときは場所を間違えたらあかんで!」

「おう!了解!」


本当は誘うつもりだったのに……なんでやろ?言葉を発した途端、中身がかわってしまった……


Ⅳ.花火大会

静かに夜風が吹いている。

辺りは観光客で混雑していて、浴衣に身を包んだ若い男女たちが、ぞろぞろと古風で飾り気のない石畳の道を歩いていた。


そしてウチは、建てたばかりの簡素な屋台の後ろに立って、何とも言えない顔で料理を作っていた。

ソースを詰め込んだボトルはウチの両手によってぐしゃりと潰れて、すっかり変形している。パックの中のたこ焼きタコスープになるのも時間の問題だ。


「ウチは、ほんまにアホなんか?」

「ふつうに誘うだけのことやろ……」

「あーわかった、流しそうめんのアホアホ菌が移ったんや!そうに違いない」

「あー怖い怖い、アホアホ菌ってほんま怖いわ……」


心ここにあらずで料理をしながら、気付けばよくわからない菌まで発明してしまった。


「なんで意地張ったんやろ……ラムネたちと一緒に来ればよかったわ……」


目の前で楽しそうにお喋りしながら通りすぎていく人たちを見て、ウチは落ち込んでため息をついた。


「そういえば、あの子たちはどこにおるんやろか……?」


そうやってあれこれ考えていると、突然誰かの足音が聞こえてきた。

音がする方へ顔を向けると、服が乱れ、真っ赤な顔をした三人組がこちらへと歩いてくるのが見えた。


(酔っ払い?マジか……最悪や……)


げんなりしつつも、いつも通りの元気ハツラツな笑顔を浮かべて接客した。


「まいど!ご注文は?」


この小さな町では、下手な噂は一瞬で広がってしまう。せやから、ウチは今までずっと大人しい女の子のフリをしてきた。

……でも、そうは問屋がおろさんというやつや。


「よぉ、お嬢ちゃん、一人で店番か?」

ターゲットを定めたのか、三人組のリーダーらしき青年は顔つきを変え、両目をぎらつかせながら話しかけてきた。


「そうですよ、ご注文はなんでしょうか」


三人のゴロツキをぶっ飛ばしたくなる気持ちを必死に抑えて、ウチは笑顔を保とうと努めた。


「おい、注文だってさ」

男はそう言いながら下品に笑い、両脇にいる仲間に目配せすると、いやらしい笑顔で話しかけてきた。


「お嬢ちゃん、こんなところで一人ぼっちなんて寂しくねぇか?俺たちと一緒に遊ぼうぜ?」


その言葉を引き金に、ウチの中で煮えたぎっていた怒りが一気に爆発した。


……たこ焼きをパックごと目の前のゴロツキどもの顔面めがけてブン投げる。


変形したたこ焼きはゴロツキたちの顔にべったりと張り付き、ソースはそのまま顔からゆっくりと垂れ落ちた。


「あんさんらみたいなむさくるしい連中と、ウチが……遊ぶ?」

「鏡見てから、出直してこんかい!」


三人のゴロツキは啖呵を切ったウチに唖然としていた。

だがそれもつかの間、リーダーらしき男が腕をまくってウチに向かって襲いかかってきた。


「コノヤロー!」


ウチは拳を強く握り締め、不思議と怖くなんてなかった。

怖いから、面倒ごとを避けてきた訳じゃない。


するとその瞬間、突如男の動きが止まった。……止まったというよりも、何かに引っ張られて動けなくなっていたみたいだ。


よく見ると、流しそうめんがゴロツキたちの後ろに立って、男の腕を掴んでいた。


いつもの爽やかな笑顔は消え、代わりに冷たい表情を浮かべたその顔に、息苦しいほどの怒りが遠くからでも見てとれる。


「お前ら、死にたいのか?」

勝てないことを悟ったゴロツキ三人組は、恐怖のあまり一目散に逃げていった。


すると、流しそうめんはウチの方へと歩いてきた。


「大丈夫か?」

「うん……大丈夫や」

「なら良かった」


彼の心配そうな眼差しを見た途端、頭が急にボーっとし始めた。

いつもならここでツッコミを入れているはずなのに、今は何も言葉が浮かばない。


「あ、ありがとう……」

「礼なんかいいよ。それよりソースたこ焼き一つちょうだい。今、すっごく食いたい気分」

「あ、うん……ん?今すっごく食いたい気分ってなんや?もしかしてウチのこと、専属のコックかなんかやと思うてる?自分、ええ度胸してんなぁ!」

「え、ええ…?!そんなつもりじゃないんだけど……」


Ⅴ.たこ焼き

京海城は、桜の島の辺鄙な位置に浮かぶ小さな島。

素朴な土地柄で、のどかで静かな場所だ。


京海城は小さく、往来しやすい場所ではないけれど、国外にまで知れ渡る有名な地でもある。それは、グルイラオなどの遠い地も例外ではない。


というのも、京海城では年に一度桜の島で最も盛大な花火大会が開かれる。そのおかげで、この島は一躍有名になった。


今年も例にもれず、京海城は年に一度の花火大会の日を迎えた。一輪、また一輪と咲く幻想的な花火が、夜空のキャンパスを明るく華麗に染めていく。


また、その下では美しい柄の雅な着物を纏った人々の往来が、花火に負けじと地上を彩っていた。みんな笑顔を浮かべ、空を見上げながら最高の日を楽しんでいる。


夏の風物詩である花火大会には、若いカップルの姿もたくさんあった。


「なんか、去年より人が増えてないか?やっぱりお店でだらだらしてるべきだったな」


流しそうめんはちっとも動かない人波を見ながら、思わずため息をつく。


「誘ってきたんはあんさんの方やで、もうちょい楽しそうにできひんのか?」

「あ、いや……楽しんではいるぞ?あんまり考えすぎるなって」

「ウチがだる絡みしてるんて言いたいんか?」

「そういう意味じゃ……」


流しそうめんは苦笑いしつつも、人込みからたこ焼きを庇いながら見事にエスコートしていた。

その姿を目にした途端、不機嫌極まりなかったたこ焼きの顔に、小さな笑みがこぼれた。


ちょうどその時、轟くような音が数回にわたり鳴り響いた。突然の爆音に、一同は音のする方へと目を向けた。そして次の瞬間、櫻模様の花火が夜空を桜色に染めた。光の花弁は満開に咲いた後、ひらひらと散っていく。それを見た人々から感嘆の声が漏れた。


「綺麗やなぁ……!」


たこ焼きは興奮した様子で花火を見上げながら、思わず隣にいる流しそうめんの腕を引っ張った。

しかし、流しそうめんはただぼんやりと、散っていく光の花弁に気を取られたままだ。


「どうしたん?」たこ焼きは不思議に思い、声をかける。

「……」


流しそうめんは足を止めた後、すぐに現実へと意識を戻し、少し寂しそうな表情を浮かべた。


「なんでもない、ただ昔の事を思い出していただけだ。それと……」

「それと?」

「昔の友だちの事を」

「何や急に。昔のって、今は友だちとちゃうん?」

「あいつは……俺と似ているんだ。あまりにも似ているから、それでかな?」

「あんさんに似てる?この世にあんさんみたいなアホなやつがもう一人存在するはずないやろ」

「……あははは」

「何へらへら笑っとるん?」

「いや、別に……たこ焼きと話すのはやっぱり楽しいなって」

「……なんやねん。もっ、もう少し頭使って喋れ!」

「え?!俺、なんかまた怒られてる?変な事言ったかな……」


流しそうめんは、どことなく妙な雰囲気が漂っていることに気が付いた。彼はたこ焼きの顔をじっと覗き込みながら、不思議そうな顔をしている。


「顔真っ赤だけど……どうかしたか?」

「……」


空気の読めない流しそうめんの発言に、たこ焼きは慌ててぷいっと顔を逸らす。そして、手で顔を隠しながら大きな声で言った。


「はっ……花火や花火!」

「花火を見にきたんや!そないにウチの顔を見んといて!」



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ゲーム情報
タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2018年10月11日
    • Android
    • リリース日:2018年10月11日
カテゴリ
  • カテゴリー
  • RPG(ロールプレイング)
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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