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花と寂雷・ストーリー

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花と寂雷

プロローグ

桜の島

紅葉の館


 ドンドンドン。

 背の高い本箱の半分を背負う少年が扉を叩く。

 小雨が降っている。彼の傘は大きさが足りないので、本箱にかかる雨を遮ってはくれるけど、彼の頭を遮ってはくれない。

 雨を浴びて紅葉の館の軒下に来た。

 早春の風が彼をぶるぶると肌寒くさせる。幸い彼は外に長時間立っていなかった。

 扉を開けた。


納豆:おおはははははよよようすすすききやきききさんん、ここんかかかいのお茶ああかいいいののきききろくくをおおおいいててててききききたた――ブルブル!


 話が終わらないうちに、納豆すき焼きに引っ張られて部屋に入った。


すき焼き:ぷっ……どうしたんだ?話もちゃんとできないほど震えている……あらあら、やっぱり雨を浴びて来たんだ。荷物は俺に任せて、タオルで水を拭いなよ、ちびちゃん……

納豆:はい、わかりました……タオルありがとうございます……

すき焼き:今度はちゃんと傘をさしな、礼は結構だ。

納豆:でも、この記録は……全世界のことが記載されている大切なものです、濡れてはいけません。

すき焼き:はいはい、わかったよ。

すき焼き:茶会はうまく行ったか?

納豆:うーん――えっと、まあ、びっくりしました。

すき焼き:へぇ、珍しいね、お前がそんなに言うとは。何が起きたんだ?

納豆:あ、お茶会自体はあまり大きな問題はありませんでした。でも……最近は、世界のあちこちで、沢山悪いことが起きました……これを喋ったら、みんなの気分も落ち込んでしまいました……お茶会が終わったと、一人で記録を書いた時、自分も、辛くなりました。


 すき焼き納豆のじとじとな頭をもふもふしてあげる。それで彼の視線と納豆の視線が合った。


納豆:でもお仕舞いの時は、雰囲気は結構良かったから、心配しなくて大丈夫です……記録者の僕らは少なからず経験したことがある事です……

すき焼き:……


 しばらくの間、すき焼きは伸ばした手を引っ込めるべきか引っ込めないべきかがわからなかった。そして納豆の頭を再びもふもふしてあげた。


納豆:「春とは百花繚乱であり、雷を伴う五月雨もある。……万事はいつでも絶妙なバランスを守っているものだ」

納豆:……ああ、それは、タピオカミルクティーの纏め言葉ですね。とてもとても……素晴らしいと考えます!

すき焼き:ぷっ……フフッ……うん、確かにね。

納豆:でしょ!でしょ!!本当にこの言葉を本箱に貼り付けて飾りたいくらいですよ――


 納豆の顔を見るすき焼きも笑いをこらえきれない。一方、納豆の話は彼にあることを注意させた。


すき焼き:っていうか、ちびちゃん

納豆:ん……なに?

すき焼き:そのうち、俺たちは鳥居私塾の連中と一緒に花見する予定がある。

納豆:花見……あの、館の後ろの桜でですか?

すき焼き:そう、今は満開の場所だ。一緒に見ない?

納豆:わあ……いいですよ、花見の記録を書いたことはまだ経験したことなかった……!


 ドンドン――

 突然扉が叩かれる。


???:すみません、誰かいらっしゃいますか――


ストーリー1-2

数日後

紅葉の館


 空が晴れ、春の雰囲気が濃い。今日、紅葉の館は鳥居私塾と約束した花見の日。

 さんまの塩焼きたちは館に来た、うどんは応接室で彼らを迎える。


うどん:いらっしゃいいらっしゃい!!わあ、そんなに沢山持ってきたんだ?

さんまの塩焼き:ゴホ……これは塾の皆さんと一緒に作ったお菓子。


 うどんの期待する顔を見ると、さんまの塩焼きの顔は赤くなった。彼は平気なふりをしているが、後ろの桜餅は思わず笑ってしまった。


桜餅:へへ~そうだよ。この花見だんごを見て。先生はこれを作るために、一晩中台所で練習してたよ。

うどん:ウワ……お疲れ様でした!このうどん、必ず感激して食べてあげます!

さんまの塩焼き:ゴホゴホ。うどんちゃん……他の人はどこ?

うどん:奥にいるよ、今すぐ呼びに行くね~。

すき焼き(桜信風):もう来たのか?早いな!

さんまの塩焼き:君が遅刻したんだ。

すき焼き:え……あ、本当だ。着替えのせいで、ごめん~。

さんまの塩焼き:どうして急に着替えなんかしたんだ?

すき焼き:花見だよ、花に相応しい服に着替えなければならない。

さんまの塩焼き:なるほど、確かに君らしいな。

うどん:突き詰めて言えば、すき焼きは自惚れ屋さんだから──

すき焼き:はいはいはい……ん?うどんは人を呼びに行くんじゃないのか?

うどん:お二人の雑談が面白すぎたからつい。気にしないで、今すぐ行く~。

うどん:フンフンフン~~。

さんまの塩焼き:嬉しそうだな。

すき焼き:なんと言っても納豆が店に住んでいたから。でもお前も彼女の気性は知ってるだろ――


 話が終わったばかり、遠くないところから大きな「うわぁ痛い痛い痛い痛い」という声が聞こえた。


すき焼き:ほら~。

すき焼きうどん──大丈夫か──?

うどん:ウワワ……エエッと……大丈夫大丈夫──

すき焼き:あら……面倒くさい。


 周知のようにうどんはうっかり屋さん。親友の納豆が来ると、興奮して面倒事を起こしやすくなるので、店の沢山のものを修理しなければならなくなる。

 すき焼きは頭が少し痛くなったため、額を揉む。そして引き出しから油薬を取り出してうどんに渡した。次の一秒、彼はさんまの塩焼きの視線に気づいた。


さんまの塩焼き:でも君もこの「面倒くさいこと」が嫌いじゃないんでしょ。


───

……

・<選択肢・上>うん?ただ慣れたものだ。

・<選択肢・中>そうか?

・<選択肢・下>面倒くさいことが嫌わない人が存在しないでしょ~

───


 相手の微笑ましい話を聞いたすき焼きは、ちょっと顔を背けた。


ストーリー1-4


うどん:ジャンジャン──みんなを連れて来たよ。これで全員、集合完了!


 すき焼きさんまの塩焼きが話している間に、うどんは素早く館内の人を集めていた。

 みんなのテンションは高く、酒や食べ物を持っている。うどんは一缶の油薬を持って、不機嫌な顔をして塗っている……全員が自分のことをしている際に、一人の姿が相変わらずそばに立っている。

 彼は納豆が館に来た日にチェックインした客。そして何も知らないうちに応接室に引きずり込まれた。今は疑惑的な目でみんなを見ている。


客人:あの……みんなはどこに行きますか……?

うどん:お花見に行きますよ!……あら、まだお客様に説明してませんでしたか?さっきは急いでいましたから、申し訳ございません!

客人:いいえ……大丈夫です……っそういえば、今日は館主たちは外に遊びに行く日ですか?

すき焼き:はい、そうです~。

客人:……


 すき焼きはこの客を一緒に花見に行くよう誘いたいが、相手の不自然な沈黙に気づいた。すき焼きは目の前の客をじろじろ見る、見れば見るほどおかしいと思う。相手もこの視線に気づいたみたいで、無意識に後ろに後退した。


すき焼き:…………。

客人:で、では楽しんでください。私はお先に部屋に戻ります──


 彼に残られてはいけない、具体的な理由は特にないが、すき焼きはそう思った。客が振り向いて、行きたい方向を見ると、すき焼きは前に進んで、彼の進路に立ちふさがった。


すき焼き:桜の森はここから遠くない、お客様も一緒に行きましょう!

客人:!

客人:いいえ、結構です!あの……外来者ですから、館主さんたちの集会に参加するのはちょっと……

うどん:そんなことないよ!お客様も友達だよね、すき焼き!!

客人:んん……やはりちょっと──

すき焼き:では一緒に行きましょう!……オヤ、もしかして、お客様にとってこの集会はお気に召さないでしょうか……?

客人:いいえいいえいいえ!!そんなことは決してありません──

うどん:じゃ一緒に行くよ!いいわね?

客人:でも……。

うどん:満開の桜がとてもきれいだよ、一緒に行くよ!お客様が行かないと、すき焼きはきっと私達の誰かを残させる──

すき焼き:……(これはこれは。)


 他の場面なら、すき焼きは心からうどんを褒めたい。うどんは本心から単純に全員と一緒に出かけたいだけだったが、彼女の話はちょうどこの客を死角に押し込んだ。

 そして、すき焼きは微笑んで話を続ける。


───

そうですね。

・<選択肢・上>お客さんの世話になる人がいなくちゃ~

・<選択肢・中>宿屋にお客様だけなんでみっともない~

・<選択肢・下>誰を居残りしようかな……

───


 うどんすき焼きに文句を言いながら、乞うような目で客を見る。

 客はこの目に耐えかねて視線を移した。そしてここの全員──特に食器を持ち上げる子供たちは、自分に期待の視線を向けている。


うどん:お願い!お願いしますから!

客人:…………………………


ストーリー1-6


 桜の森、酒を三回ついで回って、いつの間にかみんながほろ酔いした。それで群がって大騒ぎをする。

 すき焼きさんまの塩焼きと静かな隅に座って話をす。

 後ろの桜に寄り掛かる。視界は春の日差しでいっぱいで、ほぼ透明になった花びらばかりだ。そよ風が吹いている上、酔いの混じる花の香りが人をだらだら、ぽかぽかさせる。


すき焼きさんまの塩焼き。だんご、まだ残ってるか?

さんまの塩焼き:……

すき焼きさんまの塩焼き

さんまの塩焼き:!……取ってあげるよ。

さんまの塩焼き:どうぞ。

すき焼き:顔色があまりよくなさそうだ~大丈夫か?

さんまの塩焼き:大丈夫だよ。


───

えっと……

・<選択肢・上>寝不足かと思った~

・<選択肢・中>お菓子の配分が完了してしまった。ご機嫌はいかがでしょう、先~生~?

・<選択肢・下>酔っ払ったのではない?

───


 甘いだんごが口の中で溶けると、すき焼きは微笑みながらさんまの塩焼きを見る。


さんまの塩焼き:応接室の……全部聞いたかい?

すき焼き:ああ~あの話を聞いて本当によかった、さもないとこの小さなだんごがさんまの塩焼きの一晩中の成果だと知らなかった。

さんまの塩焼き:……じゃあ、おいしいか?

すき焼き:まあまあだな~。

さんまの塩焼き:ふふ……それならいいよ。


 肯定的な答えを聞いたさんまの塩焼きが満足そうに笑って、杯の酒を飲み干した。


すき焼き:ああ……。

さんまの塩焼き:なんだい?

すき焼き:何でもない。ただお前は今回のお花見をずいぶん重んじているね。

さんまの塩焼き:うん、お互い様だね。

すき焼き:ハハ、そうか?

さんまの塩焼き:そうだよ。

すき焼き:それは間違いないか?

さんまの塩焼き:絶対だ。

すき焼き:よく言うな~。


 二人は互いに向いて少し沈黙すると、気が合って乾杯する。


さんまの塩焼き:こんな日が、永遠に続けば良いな。

すき焼き:どうして急にそんなことを言うんだ?

さんまの塩焼き:僕と君には誰にも言いたくない過去がある。しかし今は一緒にお花見をするなんて……どう考えても不思議だな。


 遠くないところで、天ぷら味噌汁が客を掴んで酒を飲ませている。梅茶漬けは酔っぱらった寿司の面倒を見ている。

 どら焼きはまた刺身と口喧嘩をしている。隣の桜餅たい焼きいちご大福はこの状況を見慣れているから、無視して遊んでいる。納豆うどんは大きな岩に座って楽しく話をしている。

 そんな光景を見て、さんまの塩焼きは再び自分に酒を注ぐ。


さんまの塩焼き:君たちと出会って、本当に良かった。

すき焼き:ぷっ……ハハハハ!

さんまの塩焼き:……何笑ってるの?

すき焼き:ハハ、面白いと思っただけだ。まさかさんまの塩焼き先生がこんなことを言うとは思わなかった~。酔いが覚めたらこのことを思い出して、またどんな表情をするんだろうな?

さんまの塩焼き:!くっ……。

すき焼き:あらあら、でもご安心ください。こんな日々は終わらないから……俺はこの日々を終わらせないから。

すき焼き:来年再来年何十年何百年でも、花が咲きさえすれば、またお付き合いするよ。


ストーリー2-2


 一方、あの大きな岩のところ。

 うどんは岩の上に座って、期待する顔で傍の納豆を見ている。


うどん納豆納豆!物語を話そう!早く最近の物語を話してよ!

納豆:いちばん…最近?えと──

うどん:ほらぐずぐずしないでよ!時間が短いから早く始めよう!

納豆:わかったよ……そうしよう……でもその前に、これを持って。

うどん:んん?なになに?

うどん:──ハンカチ?


 十分後。


うどん:ウウ──ワ──。


 泣き叫んでいるうどんを見ると、納豆は少し彼女の背中をたたいた。


うどん:これは……可哀想すぎだよ……。

うどん:どうして彼らは……幸せに……ならないの……ウウウウ……。

うどん:どうして……彼らを助けてあげないの……助けてあげてよ……ウウ……!

納豆:僕ができることは少ない……助けることができない時もある。

うどん:できない訳ないでしょ、悪い人たちを追い払うのはできるでしょ!

納豆:僕は、永遠に彼らを守ることはできない……。もし僕が他のところに行ってから……彼らがまたいじめられたら……意味がない……。

うどん:でも……でもあたしのココロが痛いよ……あたしたちが外で楽しく遊んでいる時に、彼らはそんな酷いことを我慢しなければならない……

納豆うどんちゃん………………。


 納豆は長い間考え込んだ後、やっと話をする。


納豆:だから……この目の前の景色を大切にしなければならない。

うどん:……うん?どういうこと?わからない……。

納豆:この森でも、堕神がいる。でも今日の朝にすき焼きさんは彼らを追い払ってしまった……。

うどん:ええ?!そ、そうなの?!

納豆:うん、帰った時には、服が破れて、体も怪我してた。

うどん:怪我したの?!やばい──しまったしまった、朝、アイツが着替えた理由は自惚れ屋さんだからとか言っちゃった。

納豆:僕は彼に薬を塗ってあげた……えっと、ただのかすり傷だから、大丈夫、なはずだよ。

うどん:かすり傷でも怪我だよ!あたしたちのためすき焼きが怪我したのに、あたしまたあんなこと言っちゃった……。

納豆:じゃ……あとで謝りに行こう。僕も行くから、心配しないで。

うどん:うん!うん!


 物語は物語、女の子を泣かせてはいけない。再びうどんの笑顔を見れて、納豆のココロも暖かくなった。


納豆:だけど……みんな……みんながずっと今日のように幸せになったら、すき焼きさんはきっと後悔しないと思うよ。

うどん:ハ?すき焼き??ぷっハハハハゴホゴホ、無理無理、アイツはそんな自己犠牲する人じゃないよ!

納豆:……そうかな?

うどん:え?

納豆:いえ、ただうどんちゃんはまだ気づいていないんだと思うよ……。

うどん:???

納豆:何というか……紅葉の館は、家族みたいだよ。すき焼きさんは、外敵から君たちを守っている。そして君たちも……彼のココロを守っている……。


───

僕は──

・<選択肢・上>こんな暖かい家族に……とても憧れている。

・<選択肢・中>君たちの物語を書きたい。

・<選択肢・下>少し羨ましいな。

───


うどん:あの──やっぱり無理だ、お断りします!あんな意地悪な奴全然守りたくないわ!


 うどんは首を横に振りながら嫌な声を出したが、自分の微笑みに気づかなかったようだ。


うどん:でも確かに家族らしいなハハハハ、それに納豆ももうあたしたちの家族のメンバーになった──


 納豆の顔が赤くなった。まだ何も言わないうちに、背中はうどんに強い勢いで叩かれていた。言いたい言葉は肺の空気と共に叩かれて尽きた。

 彼は振り向いてうどんを見る。相手は眉をひそめ、遠くないところを指す。


うどん:えええええ納豆、あそこで横になってるの、味噌汁天ぷらじゃない?


ストーリー2-4


 すき焼きの話が終わったばかりなのに、隣のさんまの塩焼きはもう反応がない。


すき焼きさんまの塩焼き

さんまの塩焼き:zzzz……zzz……。

 すき焼きは隣のさんまの塩焼きをさすったが、相手は疲れて寝返りを打って再び寝てしまった。この姿まるで猫みたい。


すき焼き:はいはい……寝な寝な。夜更かしした、酒に弱いさんまの塩焼き先生、お疲れ様でした……。


 すき焼きは仕方なくため息をついて、彼の熟睡している親友をよそに、みんなの動向を観察し続けた。

 しかし、彼は顔を上げるなり、奇妙なことに気づいた。

 ――あの客がいない。

 そしてさっきあの客に飲ませていた天ぷら味噌汁の姿も見えない。

 不吉な予感がして、すき焼きは思わず焦った。

 彼が探しに行こうとすると、納豆が息を切らして走って来た。


納豆すき焼きさん……!あの……天ぷらさんと味噌汁さんは──

すき焼き:!あいつらはどこに?

納豆:あそこにいます。そして寝ているみたいです……

すき焼き:寝ている?

納豆:はい、でもいくら呼んでも起きません……え、もしかして、さんまの塩焼き先生も?

すき焼き:……コイツはたぶん違う。


 すき焼きは少し沈黙した。納豆も彼とともに不安になった。


納豆すき焼きさん?何か……不安そう……。

すき焼き:朝の客はどこに?

納豆:いいえ、知りません……。

すき焼き:彼はさっきまでずっと味噌汁天ぷらと一緒だったのに。

納豆:でもあそこは、二人以外誰もいません……


───

……

・<選択肢・上>……困ったな。

・<選択肢・中>結局、油断したな……

・<選択肢・下>やはりこの野郎か……

───


 すき焼きの顔に普段の微笑みが見えない。こんな姿、納豆でも初めて見たから、話し掛けることができない。

 具体的な理由はまだ知らない。でも……彼が本当に焦っていることには気づいた。


納豆:何か、起きましたか……?

すき焼き:……少し確認し行く。

納豆:あの……何を手伝いましょうか?

すき焼き:俺は一旦館に戻る。納豆はこの辺であのお客様を探してくれ。

すき焼き:そして……チビちゃん。

納豆:はい?

すき焼き:アイツら二人の事もお願いするよ。

納豆:!

納豆:わ、わかりました……僕に任せてください!


ストーリー2-6

紅葉の館

すき焼きの部屋


 すき焼きの部屋は鍵がかかっているから。客は窓から滑り込んだ。

 部屋の隅には沢山の本が積み重ねられている。客は興奮してすぐにページをめくって読んだ。


客人:(桜の島メンズファッション……ファッション雑誌?いや違う……これではない。)


 しかし、この隅の雑誌以外、この部屋は特に目立つ物がない。


客人:(机の上にはない……床もない……これは!押し入れ?!)


 カタカタ。


客人:(まさか鍵がかかっている……!どうしよう!)


 カタカタ。


客人:(早く開いてくれ!森にいないことに気づかれるのは時間の問題だ。その前にあれを見つけてここを脱出しなければならない!!)


 カタカタカタ。どうやって引いても、押し入れは固定されているようで動かせない。

 客は汗をいっぱい流しながら、色々な手段で押し入れを開けようと試している──

 その時、一つの「ガチャン」という音が出た。


客人:(開いた?!)

客人:(いや、まだ開いていない……っていうかさっきの音は……)


───

あら……

・<選択肢・上>お客様、こちらは何を探していますかと聞きたいですね

・<選択肢・中>勝手に他人の部屋に侵入するのは犯罪ですよ~

・<選択肢・下>鍵はここよ、開けてあげますか?

───


客人:クソ!

すき焼き:何か俺の部屋に忘れ物がありますか?フンフン。


 客がこわばって振り返ると、すき焼きの姿が見えた。

 すき焼きは微笑んでいるが、客はこの笑いに対して歯が震えるほどの冷たさしか感じない。


すき焼き:でもさ、お客様は俺の部屋に入った事がないはずだ。

客人:いいえ!!あの……その……。


 許可なく自分の部屋に侵入されたせいかもしれない、或いはこの目の前の人間が自分の友だちに手を下したからかもしれない。

 とにかく、この人間を見た時、すき焼きはもう怒りを抑えられなかった。


すき焼き:……


すき焼き√宝箱


 ドォーンドォーン────

 雷の轟きが、地震のように部屋を揺さぶる。雨がもうすぐ降りそうだ。

 雷の光がすき焼きの無表情の顔を映す。霊力の光が彼の手元にどんどん集まる。食霊の力の前では、普通の人類等ただ何も言えず体を震わせるだけの存在だ。


すき焼き:……


 この時、一つの騒々しさがこの緊張の雰囲気を打ち破った。


うどん:よいしょ──!重すぎ、この酒飲み野郎!!雷鳴がそこまで鳴り響いても起きない、一体どれだけ飲んだのよ?──

納豆:ウウ……天ぷら、重すぎますよ…………よいしょ……。すき焼きさん──雨にあうので──みんな一緒に戻りました──

すき焼き:ああ……。


 すき焼きがため息をつくと、手元の霊力の光も消した。

 さっきの強い敵意も一緒に消えたみたい、彼の表情も和らいだ。


すき焼き:お客様は──飲みすぎたせいでちょっと頭痛になった。それで俺は先にお客様を連れて帰った──

うどんすき焼き──おバカ──先に帰ってきても一言も言わない!!あたしたちずっと探してたんだよ!


 うどんがひとしきりぶつくさ文句を言った後、雨をしのぐため紅葉の館に帰った食霊たちも安心して自分の部屋に戻った。そしてすき焼きの部屋は再び静かになった。


すき焼き:アイツらに何を使った?睡眠薬?

客人:…………そ、そうだ…………………………。

すき焼き:副作用は?

客人:………………いいえ………………………………ない…………はず…………………………。


 すき焼きは何かを考えているようで、客としばらく目を合わせた。そして、妥協した。

 深呼吸した後、すき焼きは客に向いて歩み寄る。

 彼は手元の傘を客に渡す、そして相手の乱れた襟を直してあげる。

 この時の彼は、体中に桜の匂いを纏っている。前の威圧感はまるで幻だったかのようだ。

 でもあれは幻覚ではないでしょう。

 客は後退したいが、スペースがない。


客人:(しまったしまった……本当に万策尽きた!神子様申し訳ございません……お先に──)


 しかし客が想像していたことが起きない、ただすき焼きに引いて立ち上がった。


すき焼き:お客様、雨が強いから、どうぞこの傘を使ってください。

客人:……………………ええ!?

すき焼き:ん?理解できませんか。

すき焼き:何を盗もうとしているのかはわかりませんが、でも……まだ何も持っていってないようです。もっと酷いこともしませんでした──今回は俺は何も見なかった事にしましょう。

すき焼き:俺はね、アイツらを面倒なことに巻き込む奴が嫌い、だからまだ俺の気が変わっていないうちに、お客様は早くここから離れた方がいいと思います。

客人:……ああ……なに?!あなたは、私を……見逃す?!

すき焼き:ハハハ、お客様は何を言っていますか!うちはブラック企業ではないから、そんなの当たり前だ~。

すき焼き:ただ、お客様には二度とここに来ないで欲しいですね~。

すき焼き:では、玄関までお送りしましょう。



数日後

無光の森


客人:ああ、神子様……!大変申し訳ございません、私のせいで……あの記録を持ち帰る事ができませんでした……本来、あれを神子様に差し上げる予定だったのですが……

???:気にしないで……あなたはずいぶん頑張りました。貴重な情報を持って帰りました。そして……

???:無事に帰れたのが何より。

客人:ああ!!優しい神子様よ──!!!やはり……私たちを救えるのは、あなた様しかいない……。

???:(記録者の茶会……こんな組織が存在しているなんて思わなかった……)

???:(全てのことを記録するか……あれを手に入れたら──)

???:(私が望む世界……彼の誕生する日は……きっともっと早く来るでしょう……)


納豆√宝箱


 この時、一つの騒々しさがこの緊張の雰囲気を打ち破った。

 納豆が入り口から首を出す。


納豆すき焼きさん、いらっしゃいますか?あの……天ぷら味噌汁はもう起きました。お客様はまだ見つけられていませんから……だから…… あああ、お客様、ここにいらっしゃったんですか?!


 すき焼き納豆を見ると、すき焼きの顔から敵意が急に抜けた。


すき焼き:ちびちゃん、いいタイミングだ。このお客様がこそこそ俺の部屋に入っていたから、今尋ねている所だ~。

納豆:こそこそ、部屋に入った?

すき焼き:酷いよなあ?だから時間を掛けて説教しなければならないよなあ……。

客人:何を言うか??説教?!私はもう衝突したくない……あなたたち……いい加減にしなさい!!

客人:私に説教する?食霊のあなたたちに何がわかるか?強い力を身につけているから、絶望と残酷を全く知らない!

すき焼き:……お前、何て言った?

客人:そしてあなた!あなたは苦しんでいる人が沢山いる事を知っているでしょ、どうして何もしなかったのか……!茶会を行うなんてふざけんな!

納豆:あの?!……僕たちは、ただ全てを記録するだけです……。

客人:偶然あなたたちが茶会を開いていることを聞かなかったら、こんなことがあるとは知らなかった!!あの記録は世界の全てのことを記録しているのに、あなたたちはなぜ何もしない?私は長い間、あなたを尾行してここに来た……あなたたちは記録をここに置くだけ??

客人:もったいない……あれをもらったら、どこにまだ浄化されていない悲しみが存在するのかわかる……救済ができるよ!!私たちはあれを神子様に差し上げる……!!


 「神子様」について言及すると、客の表情はますます狂ってきた。まるで冷静な判断力を失った狂信者の様だ。


客人:あああ、優しい神子様は全ての悲しみを浄化することができます!!あの方が私たちを救済して下さりました……!あの方は私たちの「絶望」の源を切り崩しました!!そしてあの方なら世界中の苦しんでいる人々を救えます──

納豆:神子?待って……落ち着いて下さい……何を言ってるんですか?……「絶望」の源を切り崩した?

客人:人類を救うため現れた神子様……神聖な黒い雨で、穢れた人々を浄化して!私たちのために仇を討ってくれました!

客人:ああ、そうです。罪人たちを消してこそ、世界はより美しくなるのです。

納豆:僕の記録は、決して何かを消除する為のものではありません。世界は……世界の全ては、それ自体に存在意義を持つものですから……。

客人:あのくずどもを生かしていてなんの意味がある?!あなたは私よりもっと知っているはずだ!彼らの存在は他の人々を苦しめるだけだ、消除されるべきものだ!!

納豆:!


 この言葉は納豆の急所を突いたみたいだ。

 普段表情が少ない彼は珍しく息が荒くなって、顔が赤くなった。話のスピードも普段より速かった。


納豆:しかしあなたたちは……殺す事と滅ぼす事しかしません!!こんなのは……こんなのは……。

客人:これは「浄化」だ!


 客の狂った視線に焼かれている納豆は眉をひそめてしばらく黙っていた。

 何を言ったら、もっときっちり自分の考え方を表現できるか?

 いや……あくまで、相手は自分の話を聞きたくないのだ。

 この人は滅ぼす事で幸せになれると信じている。でも納豆にとって、存在する者は存在するだけで意味があるのだ。

 最初から、二人の信じるものは逆の方向だ。


客人:チッ……だから私はあなたのような桃源郷で生活している卑怯者が嫌い……。

客人:私と私の仲間たちが絶望に陥っていた時、あなたたちは何をしていた?酒を飲む、花見をする……のんびりしていますね!!楽しそうですね!!

客人:もったいない、本当にもったいなさすぎる……良いものをあなたたちの手元に置いていても腐ってしまうだけだ!!


 話が終わると、客が突然すき焼きに飛びかかった。

 彼はすき焼きの手元の押し入れの鍵を奪いたいが、食霊にとって、人間の襲撃等、骨折り損のくたびれ儲けな行いだ。

 すき焼きは気楽に客の襲撃を避けて、逆に彼の腕を抑え込んだ。


すき焼き:……なあ、ちびちゃん。こいつ、どうやって処理すればいいか?


 しばらくの間。


すき焼き:こいつまだ悔しそうだ……これで見逃して、本当に後悔しないか?

納豆:はい……すみません……すき焼きさんたちを巻き込んでしまいました。

すき焼き:別にちびちゃん、お前のせいじゃないから、謝るな。

納豆:できるだけ早くこのことを処理したい……ああ、そうだ、押し入れの記録──

すき焼き:持ち帰るのか?でも他に保管できる場所がないだろ。

納豆:でも……。


 ドォーンドォーン────

 突然の雷は納豆の話の腰を折った。再び雷が落ちた。雷に照らされた空は一瞬で闇に戻った。また雨が降りそうだ。


すき焼き:あれ、また降りそうだよ。アイツらは傘を持ってない、俺たち先に帰れて本当に良かったな。


 と言いながら、すき焼きは傘を持って出て行く。


すき焼き:ちびちゃん、玄関には傘がある。あれを持ってアイツらを迎えにいくよ。

納豆:……あの、すき焼きさん……やっぱり──

すき焼き:お前はお前の信じられることを信じていればいい。

すき焼き:今狙われているは、紅葉の館よりも、お前の方だ。もしお前の身に何かあったら、あるいは突然これから来ないと言ったら、うどんは悲しむよ。

納豆:……!

納豆:すみません……えと……ありがとうございます……。

すき焼き:ほら、早く出な。アイツらをどれだけ雨に濡れさせておくつもりだ?

納豆:はい、すぐ行きます!



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コメント (花と寂雷・ストーリー)
  • 総コメント数2
  • 最終投稿日時 2020年04月10日 14:00
    • ななしの投稿者
    2
    2020年04月10日 14:00 ID:iot1g6np

    >>1

    宝箱の其々の好感度選択肢(誤字)

    • ななしの投稿者
    1
    2020年04月10日 13:54 ID:iot1g6np

    選択肢もし宜しければ教えていただけないでしょうか?

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