ザッハトルテ・エピソード
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ザッハトルテのエピソード
自分に厳しく、他人に優しい貴族の少年。清廉で腐敗を嫌い、古いしきたりには従わない。貴族の身分でありながら、控えめな行動を取る。権力と食霊の力を利用して、横暴に振舞わない。自分の身分と能力を活用して、ミドガーと周囲の地区の人たちを守り、社会の安定を維持するため、食霊の執行機関「ホルスの眼」に加入した。
Ⅰ 学校
僕はザッハトルテ、ビクター帝国にある暗部機関の学生食霊だ。
暗部機関は帝国のために特殊な食霊を育成、訓練する場所。そこを基地と呼んだり、トレーニングキャンプと呼ぶ人もいる。僕はそこを「学校」と呼んでいる。
「学校」には先生が何人もいて、順番に違う講義をしてくれる。鹿教官は最近僕に、「人」との付き合い方を教えてくれた。
この世界は十人十色、どの人も仮面をいくつも持っていると教官は言った。
笑顔で泣き顔を隠す人もいれば、泣き顔で笑顔を隠したい人もいる。仮面の感情を解き明かす事が出来れば、その人の内心が慈悲深いものなのか、それとも冷血無比なのか、より上手く判断する事ができる。
全能の調査者になるには、この技術をマスターしなければならない。
僕は食霊として特殊な力を持つため、この過程は僕にとって比較的簡単だった。僕からしたら、感情にはパターンがあり、一旦暴けば分析するのは容易い。
しかし、鹿教官は僕に課程修了を言い渡してくれない。
僕のような者は、ここで立ち止まるのではなく、もっと深い状況を把握出来るようにするべきだと、彼は言った。
「何を把握すればいいのですか?」と聞いても、教官は僕に教えてはくれなかった。人や物事には、教わってもわからない事もあると、自分で掴むしかないと言われた。
僕は彼に訴えた、せめてどこで探すべきかは教えてくれと。
だったら「傷口」へ行くと良い、そこは十人十色な場所で、運が良ければ何か掴めるかもしれないと、彼は助言してくれた。
どの国にも、闇市と呼ばれるグレーゾーンがある。ビクター帝国では、「傷口」がその場所である。
名前の由来は、空が年がら年中赤みがかかった灰色の霧に包まれているからだそう。
降る雨も赤色。そこの建築物は、長年このような雨に侵食されたせいで、外壁は赤く染まっていて、血が掛かっているように見える。
一体何故こうなったのか、誰もはっきり説明できない。
そこは神様の体にある傷口の一つ、直らない場所だと、誰かが言った。
またある人は、そこに住んでいるのは皆妖怪、化け物、悪魔などの類だと言った。その者たちは神を信じない、専ら神と対抗している連中で。そいつらが集まって空を突き刺して傷口を作り、滴る神の血で自分らを祭っているんだという。そいつらはそれを「血を浴びて生まれ変わる」事だと言っているそう。
教官からそこに行くようにと言われたが、そこで何を解決して、何を理解したら良いかははっきりとは教えてはくれなかった。
僕は途方に暮れて、違う人と交流しながら、その未知の難題が現れるのを待ち、それを探すしかなかった。
ここに来てから、彼は三日空けず人を派遣して追加の任務を送ってきた。闇市の情報を探るか、ここに逃げ込んだ犯人を処理するかのどちらかである。これらは僕の暇つぶしのためだと彼は言った。
しかし僕はわかっていた。彼は僕をここに一歩一歩誘導する時、既に徴収すべき学費明細を準備していた事を。これこそが彼の目的だったのだ。
それを僕はよくわかっている。でも彼は教官、僕は学生、仕方のない事だ。
ただ──
僕は傘を差して「傷口」の街を歩く。懐には秘密裏に送られてきたばかりの「学校」からの密書があった。上に書いてあるのは鹿教官からの指示、今回処理して欲しい相手のリスト。
リストには、堕神、人間、そして食霊も。
彼らが何の罪を犯して、「傷口」のような無法の地に逃げて庇護を求める始末になったのかはわからない。ただ僕の任務は「傷口」のルールに違反しない前提で、彼らを静かに処罰する事。
教官の正義を信じたくない訳ではないが、詳細を知らずに法を執行する事に対して、僕は終始不安を覚えた。
前からやってくる人々を見て、少し疲れを感じた。
「この任務が終わった後、課程修了の手掛かりとなる人が見つからなくても、他の場所への異動を申請しよう。別の形で働こう」
僕はそう決意をして、街角を曲がる。
その時、赤い雨が降りしきる中、僕は「傷口」の街で、一人の傷だらけの白髪の少年を見た。
Ⅱ
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Ⅲ
編集中
Ⅳ
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Ⅴ
編集中
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