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ガム・エピソード

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ガムのエピソード

ガムは戦火の中で召喚されたが、軍令に従うだけの兵士になりたくなかった。

彼は自由を追い求めていて、誰かの付属品にはなりたくなかったのだ。

そして彼は逃げた。

しかし御侍が付けた手錠や足錠を外す事が出来ず、錠は手足に食い込み、永遠に痛みが続くようになっていた。

だけど彼は恐れる事はなかった。

彼は賢く一風変わっているが、友達を作るのは嫌いではなかった。

ただ、彼を繋ぎ止められるような人にはまだ出会えていない。


Ⅰ.勝者

満天の黄砂、飛び散る黒い血、そして橙色の炎。

彼は絢爛な色彩の中で狼狽した様子で後退していたが、屈する事なく立ち上がって、反撃して、揺らぐ事はなかった。


その人が俺の御侍だ。


広がった彼の両腕に守られている俺は、のんびり周囲を観察した。暴れ狂う戦士たち以外は、天と地のぼんやりとした境界線しか見えなかった。

ここに果てはない、思うままに何でも出来るようだった。


悪くない。


俺は首を回して、落ち葉のように地面に落ちている人の手から剣を取った。

この時、ようやく誰かが俺に気付いた。彼らは俺が御侍に迫る危険を取り除いていくのを見て、どうしてか――歓喜していた。


俺が勝者の象徴であると言わんばかりに。


「これはお前への褒美だ」

俺は海岸に泊まっているデカブツを見て、喜びを抑えきれなかった。

しかしすぐに御侍の前で子どもみたいにはしゃいではいけないと気付いて、笑顔を引っ込めた。


「気に入ったか?」

「まあまあ」


御侍は俺の言葉を聞いても怒る事はなかった。

長年戦場にいたからこそ身に付いた大きな声で笑い始めて、俺は耳を塞いだ。


「タダでやったんじゃねえぞ。 あれに乗って戦いに行ってくれねえと」


その二文字を聴いて、俺の口角は下がった。

戦場には砂ぼこりしかない。剣を振るって、走って、叫んでその繰り返しだけ、とっくに飽きた。

戦争は人間が全員死なないと終わらないらしい。だけどその日が本当に来たとして、何の意味があるんだろう?

だけど御侍が俺船まで連れて行き、どうやって帆を上げ、舵を取るか教えてくれた。

その時、俺は彼を拒絶する事は出来ないと知った。


「俺たちが戦争に行くのは、 自分の身を守るためじゃない」

「民のため、民の安全のためだ。 彼らが怯える事なく自由に生活出来るように、俺たちは毎日危険を冒しているんだ」

「俺を助けてくれるか?」

御侍の目に浮かぶ紺碧を見て、俺は領いた。


幸い、海は陸より面白い。

御侍は約束してくれた。今回海賊を倒せば、もう戦場に出る事なく、この船に乗って冒険に行けると。


切られた人が海に落ちていった。水しぶきが俺の顔まで飛び散り、冷たく爽やかで、俺は御侍の目を思い出した。

御侍は水が得意じゃないから、俺に来させたんだろう。

もし海で嵐に遭ったら、いつもどっしりと構えている彼は子どもみたいに怖がるんだろうか?

俺は剣を収めて、彼の真似をして大声で笑った。


俺は依然として勝者だ。


Ⅱ.戦争

海賊を退けた後、 御侍は軍で祝宴を上げてくれた。


海賊船から押収した金銀財宝のおかげで、全員久しぶりに肉で腹を満たす事が出来た。

兵士だけじゃない、 御侍の顔にも笑顔は絶えなかった。


俺はお酒を飲みながら焚火の近くにいた。

炎越しに肩を組んで笑い合っている兵士たちを見て、どうしてか、彼らは燃やされているからはしゃいでいるように見えた。


御侍は傍の兵士と次の戦場の話をしていて、その内容は微かにしか聴こえなかった。

どこの国と争うのかはわからなかったが、 御侍と一緒に海に出る計画はまたおじゃんになった事だけはわかった。


不快感が拭えなくて、俺は酒瓶を持ってふらふらと静かな場所を探した。


「助けてください!子どもに食事を与えてやってください」

「海賊に閉じ込められてた時はまだ食事を貰えてたのに、この強盗たちの手に落ちてからは、食事すらなくなった」

「この不運はいつまで続くんだ ……」


国を守る軍隊が、どうして強盗って呼ばれてんだ?


俺は声のする方へと向かった。

ここに住んでいた村人たちが捨てた地下室の中で彼らを見付けた。

そこにいたのは、俺が撃退した海賊船の中に捕らわれていた人たちだった。


老若男女、全部で数十人もいた。

全員顔つきは全く違うが、一斉に俺の方に憎しみがこもった視線を送ってきた。

俺は彼らを救ったんだと思った。


俺は逃げるように地下室を離れ、その時一人の兵士にぶつかった。

俺は思いっきり彼を捕まえて、アルコールで呂律が回らなくなって、いつ噛んでしまったのか血の味がする口で、その兵士に地下室にいる人たちの事を問い正した。


「捕虜ですよ」

捕虜?だけど彼らは敵じゃなくて、海賊たちに捕らわれただけの一般人だ。


「良かったですよ。今のご時世こんなに安くて使える奴隷を見付けるのは大変ですからね」

俺は力が抜けて彼を放した。

彼の悪魔のような声を聞いて、逃げたい気持ちでいっぱいになった。


「全部貴方のおかげです」


俺はその声を最後まで聞かずに、ふらつきながら焚火の方へと走って行った。

御侍は変わらずそこに座っていた。杯を掲げて、兵士たちと楽しそうに。


俺は彼の前に行き、 火で熱くなっている鎧を掴んだ。


「どうしてあの人たちを閉じ込めた?」

「これは戦争だ。より多くの人の幸せのために、必要な犠牲だ」

「犠牲?」

「そう、犠牲だ。彼らをパラータに売れば金に換えられる。金があれば、我が国はこの難関を乗り越えられる」


俺は彼の手にある金色に輝く塊を見て、心は一瞬にして凍えた。

あの人たちの幸せすら保証できないのに、より多くの人の幸せなんて保証できるのか?

「船をくれ。俺はもう戦いたくない」


御侍が俺を見る目は、まるでおもちゃが欲しくて駄々をこねている子どもを見るような目だった。

「何言ってんだ、海賊はまだ皆殺しに出来てない、お前が戦いたくないと言うだけで止められる訳ないだろ」


彼の紺碧な目には血色の光が揺らめいていた。


「俺の代わりにあいつらを皆殺しにしてくれないと」


Ⅲ.懲罰

俺は貨物室を開いて、中でぶるぶると震えている人たちを見た。彼らの絶望した目には少しだけ希望が浮かんでいた。

俺は彼らを船外に連れ出し、彼らを縛っている縄を一人ずつ切った。


俺を止めようとしている兵士がいたが、金の入った袋をあいつの顔に叩きつけた。

残りの金は全部平民に渡した。


行きは多くの資財を積んでいた船が、戻った時には空っぽになっていた。

俺がこんなバカげた事をしていると知ったら、御侍はきっと怒るだろう。

だけど俺はバレる事を恐れはしなかった、彼には俺の裏切りに気付いて欲しかった。彼も俺が反抗している事を知っているだろうし。


ただ思いもしなかったのは、彼は俺に不満なあるかどうかではなく、財宝を自分の物にしているかどうかしか気にしていなかった。

俺は地面に押さえつけられ、顔を上げて彼の傍にいる兵士を見た、その目には地下室にいる人たちと同じ憎しみが浮かんでいた。


「はい」

「どうしてだ?俺はお前に良くしてるだろう……」

「自由のためだ」


御侍は俺を見て、沈黙した後突然笑い出した。

いつものような耳を塞ぎたくなるような大声とは違って、その笑い声は小さすぎて錯覚かと思うくらいだった。


彼は火鉢を持ってくるよう命令した。中には真っ赤な炭が入っていて、火鉢を持っていただけの人たちが熱さに耐え切れず叫ぶ程だった。

彼は火鉢に枷を二つ投げ込んだ。地下室の人たちに使っていたのと同じ物だ。それらが熱で変色してから、俺の肌がむき出しになっている腕に投げつけた。


少しずつ立ち上っていく煙の中には焦げた匂いが混じっていた。高温の枷によって、色素の薄い皮膚が濃くなっていった。そして灼熱の金属が血肉に食い込み、俺は血が滲むほど唇を噛む事で、叫び声を喉元に抑え込んだ。

御侍は俺の目を見て、まるで俺の疑問に気付いたかのように口を開いた。


「これは懲罰だ」


彼は俺を見下ろしながら、新しい兵士を呼び込んだ。ほして俺を憎んだ目で見ていた人を俺の傍に座らせた。

一瞬だった、さっきまで俺を憎んでいた男はこの世から消えた。


「俺の軍隊で、裏切りは許さない」

彼の目に浮かぶ紺碧は、突然氷のように冷たくなった。

「自由にするのは構わない。俺の手の内にいるなら、どんな自由も与えられる」


「俺の手の内にいるなら」


俺は彼に抗う事は出来ない。彼は俺の御侍だけじゃなく、有言実行するリーダーでもあったから。


俺の腕に付いた傷は時間が経つにつれて、徐々に薄くなり痕すら残らなくなった。

俺の手首や足首に付けられた枷は、時々高温を発し、神経を通して俺の全身を痛めつけた。

この痛みに囚われながら、御侍の指令を聞くしかなかった。彼が俺をまた信用して、海に出してくれるまで。


この時、戦いのための船は既に商船と化していた。


「信用していいのか?」

「船に乗りたい申し出たのは、贖罪するためだ」


御侍は笑った。彼は手を上げ、大きな掌を俺の肩を叩いた。

まるで飼い慣らされた猛獣をなだめているように。


俺は船に乗ってパラータまでやってきた。買い手たちの視線の元、貨物室を開けた。

中には数日前まで田んぼで田植えして、布を織って、川辺で遊んでいたのに、この時そのすべてを失っている奴隷たちがいた。


買い手は貨物室から気に入った奴隷を連れ出し、広い所で観察した。

人の欠陥は明るい場所で全て暴かれた。年老いた者、やせ細った者、身体が欠損している者は買い手によって、声が出なくなるまで殴られた。


若い母親は生まれたばかりの我が子の元から引き離され、幼い赤ん坊は悲痛な泣き声を上げた。まるで自分の短い未来に気付いて、必死でそれに抗おうとしているみたいに。


俺はこの茶番を見て、こっそりと腰の剣を抜き出した。

俺は早くこれを終わらせたかったんだ。


再び戦場に戻る感触は気持ち悪かった。

剣を買い手たちに振った瞬間、奴隷たちも巻き込まれた。

だけど俺は止まらなかった、真っ赤なその色を見た時、脳内には冷たい声が鳴り響いた。


皆殺しにしなければならない。


Ⅳ.自由

俺は金を、主を失った奴隷たちに渡し、ほして残りを付近の村民に渡した。

人々は怖がりつつも金を受け取って、すぐ扉を閉めた。

俺の手にある手枷のせいか、はたまた全身の返り血のせいか。


ただ彼らは俺を恐れていても、命の危険を冒して金を得る機会を逃さなかった。

人間は臆病なのか?それとも勇敢なのか?


天地をも揺るがす笑い声を出す男はもう二度と俺の問いには答えてくれない。

俺は彼を信じる事をやめたから。


これは最後の金だ、そして最後の扉。

叩いても誰も出てこなかった。

少しだけ待った後、離れようとした時、突然背中に痛みを感じた。


遠くない所に男の子が石をたくさん抱えて、憎しみが満ちた目で俺を見ていた。

「殺人犯!」


俺はボーっとして彼を見ていた、彼の怒号は止まる事はなかった。

「俺の父ちゃんを殺した!仇を討ってやる!」


彼の石は尖っていたが、力が弱すぎるため、ほんの僅かな痛みしか感じられなかった。

枷がもたらす痛みによってかき消され、痛みはすぐに消えてなくなった。

俺は彼の怒りを見て、贖罪しようとしていたのに、新たな罪を犯しただけだと絶望した。

戦争と殺戮は、幸せをもたらす事は出来ない。


俺は金が入った袋を入口に投げ、男の子を避けて村を出た。

男の子の叫び声と御侍の命令が混ざって、俺を捕らえて離さない。

俺はそこから逃げ出そうと必死だった。


俺の物になる筈の船はまだ港に泊まっていた。

俺と一緒に来た兵士たちは急いで船に乗って帰ろうとしていたが、俺を見た瞬間慌てて逃げた。

俺は彼らの視線の元、掌に青い炎を作り船の方へと投げつけた。


叫びながら船から海に飛び込む人がいた。

船は火の海の中で悲鳴を上げていた。

大きなマスト、広がった帆が、炎の中で塵となっていった。

俺はかつてない程に気が楽になった。


戦争のためでも、俺のためでもない。

お前はやっと自由になれたな。


Ⅴ.ガム

ガムは戦場で生まれた。それは偶然であり、生への欲望からでもあった。

当時、あれの御侍が率いた軍隊は国境を侵犯してきた敵軍を阻止すると共に、漁夫の利を狙っている海賊たちへの対応もしなければいけなかった。

戦場にいる人たちの心には絶望が満ちていた、ただ彼の御侍だけは希望を持って、砲火が残る中ガムを召喚した。


ガムが目を開けた瞬間、そこには戦場が広がっていた。思うままに駆け回って敵を殺せる彼にとって全ては自由だった。彼は満足していた、商社の象徴として呼ばれる事にも。たった数日で、ガムは戦況をひっくり返した。軍事の天賦と何も恐れない少年気質のおかげで、ほぼ全戦全勝だった。

彼の御侍も彼に全幅の信頼を寄せていて、すぐに彼を船長に任命し、海賊討伐に向かわせた。


その時の彼は既に戦う事に飽きていたが、任務が終われば御侍と共に海に出て冒険できる、もっと広い自由な世界が見られると思い、彼は引き受けた。


ただ全ては彼の想像とは大きく異なっていた。

彼は海賊の討伐は略奪された人々を保護するための物だと思っていたが、まさかその人たちを貨物室から地下室に移し替えただけに過ぎなかった。

ガムが知っている御侍がやるような事ではなかった。


彼の御侍は四面楚歌な状況になっても、両腕を開いて背後にいる自分を守る鉄血な豪傑だ。

どうして無実な人間を売って、金を得ようとする暴徒となったのか?


このような疑問を持ったガムは、彼の御侍に探りを入れた。

彼は金に換える事が出来る人々を逃がし、その人たちに金を与えた。

彼の反抗によって、彼の御侍に国を、民を守ろうとしていた初心と今の行いがかけ離れている事に気付いて欲しかったのだ。


しかし彼は間違っていた。

彼は御侍によって手枷、足枷を付けられた。彼は御侍にとって飼いならそうとしているただの猛獣に過ぎず、彼は籠の中でしか小さな自由を得る事が出来なかったのだ。

実際の所、彼はずっと束縛され捕らわれていた、同時に彼の存在によってより多くの人が囚われる事になっていた。


ここの全ては自由ではなかった。

そして、自由こそ彼の全てだった。


ガムは御侍の支配を受けたまま、次に出航するタイミングを伺っていた。

彼は逃亡を画策した。

彼は奴隷たちを逃がし、彼らを買おうとしていた買い手たちを皆殺しにした。彼はこれで自分の罪を償えたと思ったが、幼稚な復讐によって、また他の無実の人を傷つける事となった。


どうしようもない事だ、彼は神ではない、全ての人を救うことは到底不可能だった。

(それなら、自分だけの自由を得よう。)


自分の物になる筈だった船を燃やし、ガムは海賊船に乗り込んだ。

彼は海賊の間では有名になっていたから、海賊たちは彼を見て驚いた。周囲の怯えた視線に囲まれているのも不快だったのか、船が岸に付いた時船を降りて行った。


その島で、彼は偶然教会を見つけた。

彼は興味を持って、懺悔、祈祷、布教している人々をボーっと見ていた。

これが戦場以外の場所なのか。


「こんにちは、参加しませんか?」

ガムはその金髪碧眼の青年を見て、彼の爽やかな笑顔を前にして久しぶりに笑った。

「いや、神様の仕事を増やさない方が良い」

それは彼自身の悩みだったため、神様に押し付けるべきではない。


ガムは教会を離れて、紆余曲折を経て、かの有名な食霊の王を探し当てた。


「どんな危険な仕事もこなしてやる。ただ短期だけだ、長期の契約はできない」

「良いだろう、何が欲しい?」

「金だ」


シャンパンは訝し気に眉間に皺を寄せた。

「自由……なんて言うのかと思っていた」

「まず船を買う金がないと、理にかなっているだろう」

(そうしないとあいつらと何が違うんだ?)


ガムは十分のお金を貰って、自分だけの船を手に入れた。

彼は争いや略奪、商売などもせず、ただ波に乗って行ける所へ行った。


たまに、彼は教会にいる友人たちに自分の見聞を話す事もある。手足についている枷は時折彼に焼かれる痛みを与える。

それは、一度決めた事は絶対に覆さない御侍が近くに来ていて、彼を連れ戻そうとしている合図であると知っていた。

その時、彼は笑って仲間に別れを告げ、三か月は彼の写真が張り出され指名手配されるであろう小島を離れる。

彼は何も恐れない、御侍に追い詰められても、全ての土地で指名手配されたとしても。


海は無条件に彼を受け入れ、どこまでも連れて行ってくれるから。


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タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2018年10月11日
    • Android
    • リリース日:2018年10月11日
カテゴリ
  • カテゴリー
  • RPG(ロールプレイング)
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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