モンブラン・エピソード
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モンブランのエピソード
クールで無口な少年、心の中に情熱が秘められている。自分からアプローチする事はないが、自分に良くしてくれる人の事はきちんと覚えている。言葉よりも、行動で自分の態度を表現する傾向がある。一人が好きで、よく一人で魔法書を漁って独学する。
Ⅰ.神話
(※誤字 脱字かと思われる箇所も含め、本文をそのまま書き込んでいます。)
空に突き刺す程高く聳えている氷峰、うねりながら連綿と続く山脈。空からぼたん雪が降ってきた。
霊気と雪が交錯し、網のようになっていた。
雪の勢いは増していく、氷雪が肌を突き刺し、寒気が止まらない。
まるで誰かが魔法を操って吹雪で世界を覆い、身を刺すような寒さをこの地に閉じ込めようとしているかのようだった。
僕は他の山頂に立ち、遠くを眺めていた。
知っているようでよく知らない雪山の山脈は、骨を突き刺す冷たい風が吹いていた。
初めてこの高さまでたどり着いたひとはきっと、この身を切るよあな冷たい風に耐えられないだろう。
だけど、僕にとってはもう慣れっこだった。
「モンブラン、何を見ているのですか?」
「……」
「その方向は……オペラですか?」
ブリオッシュの口ぶりから、少しだけからかっている意味合いを感じ取った。
彼の問いに答えず、僕はただ静かに遠くの山脈を眺めた。
「オペラ山脈には偉大なる神霊が存在するという伝説があるそうです」
「神霊はオペラ山脈の頂上に住んでいて、そこは即ち天地の境です」
「伝説によるとその神霊は、全知全能でいかなる所にも存在すると言われていて、進行しているオペラ山脈の人々を守っているそうです」
「最も純潔で最も敬虔な心だけが、髪の訓示を受け、福をその身に降ろしせるそうです」
「神は必ず各人の行いに応じ、善には貴を与え、悪には死を以て罰す」
……
ブリオッシュが語っているのは、オペラ山脈に古くから伝わる神話だ。
この雄大な山脈の中には、僕の大事な思い出が凍っている。
単純で特別な思い出が。
Ⅱ.祈り
僕が初めてこの見知らぬ世界に来た時。
雪山の頂きに立っても、少しも寒さを感じなかった。
背後には果てしない闇が広がっているけれど、目の前は昼のように明るかった。
朦朧とした意識の中、僕はゆっくりと前に進んだ。
真昼の果てで、誰かが僕を呼んでいるような気がした。
暗闇は凄い勢いで消え去っていった、次第に空には星が広がった。
この時になってようやく、僕は星の下で寒さによって頬を赤くなっていた少女を見付けた。彼女は両手を合わせ、敬虔な様子で雪の上に跪いていた。
「……あんたが僕を呼んだの?」
この瞬間、彼女と僕の間にはある種の深い繋がりがあると感じた。
……
ここは長年雪で覆われている、オペラ山脈の麓にある小さな町。
御侍に召喚されてから、僕はこの町に住んでいる。
彼女は他の子どもとは違って、雪山の神話に夢中だった。
善行をいくつ重ねる度に、彼女はオペラ山脈の麓に駆けて行く。
「モンブラン!ついて来ないでね」
毎回僕がついて行こうとすると、彼女はいつも丁寧にこの言葉を返してくる。
いつも通り返事せず、彼女に黙ってこっそり後をついていく。
彼女が寒空の下、雪の上で跪いて敬虔に祈っている姿を見て、僕は数ページしか読み進めていない魔法書を閉じた。
人間にとってあまりにも寒い雪の上にいる彼女を見つめながら、僕のため息は冷たい空気の中で白い霧になった。
「あのバカ……もし凍傷になったらどうするんだ」
だけど、僕は彼女を止める理由はない。
だって……
僕は、彼女の家系に遺伝する不治の病を治せない……
もし本当に神様が存在するなら、彼女の敬虔な祈りと善行が、彼女に一縷の望みをもたらしてくれますように……
Ⅲ.願望
霊力というのは、面白い力だ。霊力について知りたければ、数え切れないほどの資料が必要になる。
僕はよく一人で図書室にこもって、噂の精霊時代の魔法書を研究した。
体内に流れる霊力を感じながら、霊力の秘密について探った。
ほぼ失敗に終わっているけど、僕は飽きる事なく学んだ魔法を試し続けた。
なにしろ……本の中には不思議な魔法の他に、不治の病を治せる奇跡があるかもしれない。
明らかに読み込まれている形跡のある神話の本が、魔法書の間に挟まれていた。
本にある稚拙な筆跡を見ていると、雪の上で跪いて祈る姿が頭に浮かんできた。
「僕がいなかったら、あのバカはどうやって自分の面倒を見るつもりだ……」
図書室で神霊に関する本を全部調べた。
すぐに、蜘蛛の巣にまみれ埃だらけの本で、神霊の位置に関する記載を見つけたーー
オペラ山脈の頂上、天地が交わる地こそ、神霊の住居だと。
御侍が喜んでいる姿を見ていると、僕がやっている事には価値があるんだとわかった。
十分な準備をしてから、僕たちはオペラ山脈に登った。
一日目、二日目、三日目……
僕たちは弛まず神の足跡を探した、だけど何も得られなかった。
極寒の中、人間の身体では長くもたない。
疲れ切った御侍を見て、僕は彼女を先に町に連れて帰る事にした。
ちょうどその時、林の傍から彷徨が聞こえて来た。
獰猛な顔つきの醜い怪物が僕たちに襲いかかってきた。
僕はほとんど無意識に御侍に飛びついて、彼女の代わりに怪物の攻撃を防いだ。
その強烈な邪悪な気配は僕を抑え込んだ。
この数日間、御侍の世話をしてきたため、霊力はほとんど尽きかけている、自分は長くもたない事を知っていた。
せめて……
せめて彼女だけでも逃がさなければ……
この時、見知らぬ人が助けてくれたおかげで、僕のプレッシャーが軽減された。
彼の助けのもと、僕たちは手を組んで怪物を倒した。
「本当に……助けてくれてありがとう」
「これは私一人だけの功績ではないですよ、君たちに出会えたのは、神の導きかもしれません」
「とにかく……ありがとう」
僕は心から目の前の穏やかで親切な青年に礼を述べた。
彼がいなかったら、僕と御侍はもっと酷い目に遭っていたかもしれない。
彼の名前は「ブリオッシュ」、これはとても綺麗な名前だ。
ブリオッシュの身体から、僕と同じ力が感じた。
「もし……良ければ、僕たちと一緒に町に帰らない?」
ブリオッシュの恩に感謝するため、彼を家に招待しようと思った。
「もちろんです、喜んで!」
ブリオッシュは嬉しそうにこう答えた。
Ⅳ.遺憾
見聞が豊かで知識が広いブリオッシュは、多くの神霊や精霊に関する伝説を教えてくれた。
御侍がいつもブリオッシュにお話をするようねだり、僕も神霊の話に興味があったから、ブリオッシュはこのまましばらく残ってくれた。
同じ趣味を持っているから、ブリオッシュとよく神霊について話をした。
「精霊……はどういう存在?」
「平和で、友好的で、人間と似た存在です」
「じゃあ神は……実在するのか?」
「もし神が存在しないのなら、私たちの霊力はどう解釈しますか?」
「について……ティアラ神について、もう一度教えてくれないか?」
「もちろん、喜んで!」
僕の色んな質問に対して、ブリオッシュはいつも嫌な顔せず答えてくれた。
僕はスポンジみたいに彼から多くの未知を吸収し続けた。
月日が経つのは早い、時は手で握った砂のように、音もなく流れていく。
僕は図書館の本を全部読み終えた、そしてブリオッシュと共に神に会える場所にもたくさん行ってきた。
だけど……未だに不治の病の治療法を見付ける事は出来なかった……
最終的に、御侍の若い命を時間は奪っていった。
あの日、町に戻って御侍が亡くなったという知らせを受けた時、彼女が僕のためにつけたブレスレットが切れて地面に落ちた。
挫けそうな気持ちが次第に心の底に広がっていった。
僕は深く息を吸って、冷たい空気を吸い込んだ。
気分は酷く落ち込んでいたけど、理性は僕に言った。
__立ち直るべきだと。
「ブリオッシュ、神には……本当に命を逆転させる能力はあるのか?」
「ティアラ神は何でも出来ます……私たちにも神の施しを受けられるチャンスがやってくるかもしれません……」
ブリオッシュの言葉で目が覚めた。僕はこのような状況に遭遇した時、何もできない喪失感に二度と苛まれたくない……
僕は霊力の源を探して、より強い力を求める。
そうすれば……同じような状況に遭遇した時……今のように無力ではなくなる……
「じゃあ……もう行くのか?」
「はい、私は旅を続けようと思っています。一緒に行きませんか?」
「本当に?僕も一緒に?」
「もちろん良いですよ、私は君と一緒に旅行したいです!」
……
遠くなっていく町を見て、僕はぼんやりと自分が過去の生活に別れを告げている事に気付いた。
疲れ切った僕は両目を閉じた。初めてこの世界日来た時の感覚に襲われ、また暗闇の中に沈んだ。
心の中で御侍と結んだ契約は、今この時本当の意味で切れた。
「ティアラ神……本当に強い力をもたらしてくれるのか……」
Ⅴ.モンブラン
ティアラの最北端に、ナイフラストという地域がある。
長年雪が積もっているため、土壌が長時間凍結され、木にも透き通った氷柱がいっぱい生えている。
モンブランとブリオッシュは自分たちの探し物を探しにここまでやって来た。
炎のように熱い酒場で、綿入れの厚手の服を着た男性たちが集まって、お酒を飲みながら会話を楽しんでいた。
「吟遊詩人らしいぞ、今時珍しいな」
「違うだろ?ハンサムな魔法使いだって聞いたぜ?」
「そうだ、まだ若く見える魔法使いなんだってさ」
「何を言っているんだ?全部間違っているぞ。二人だって聞いた。そうだ!二人だ!」
様々な情報が飛び交う酒場で、モンブランとブリオッシュの行方も話題の一つになっていた。
モンブランはこれらを気にしてはいなかった。彼は依然として神の意志を追い続け、思考の霊力の源を探していた。
そしてある日、彼はブリオッシュと共に神恩軍という組織に参加した。
彼は神恩軍に加入しても、何も変わらない事を知っていた。もちろん伝説のティアラ神も見つけられない事も。
これは長い旅路の、ただの始まりに過ぎない。
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