優雅な一日・ストーリー
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優雅な一日
プロローグ
町
玉子焼きの家
朝の日差しは小道に淡く降り注いでいる。玉子焼きは綺麗な紙袋を持って自宅に戻ってきた。
この日珍しく非番だった彼女は、仕事を忘れて一人きりの時間を過ごしていた。
まるで大切な宝物を扱うように、彼女は質素だけれど上品な箱を棚に収めた。
玉子焼き:(うん……もう一目見ておこう……)
玉子焼きは一つ瞬きしてから、そっと箱を開けた。しかし、次の瞬間眉をひそめた。
玉子焼き:(おばあちゃんのワンピースじゃない)
箱の中、綺麗に畳まれたワンピースが静かに横たわっていた。柔らかなベージュ色に繊細なレースがあしらわれているそれは、彼女が心待ちにしていた物ではなかった。
玉子焼き:(どうして?もしかして……)
玉子焼きは真剣な表情を浮かべた、何かを思いついたようだ。
通り
洋服屋
玉子焼きが素早い足取りで店内に入ると、ドアの外で餌をついばんでいたスズメたちは驚いて飛び立ってしまった。
玉子焼き:お邪魔します。こちらで手入れを依頼していたワンピースですが、少し問題が起きまして……
店員:どうされましたか?すぐに確認いたします。
数分後――
玉子焼き:……つまり、取り違えてしまったということでしょうか?
店員:誠に申し訳ございません!こちらのミスで、もう一人のお客様の品物と取り違えてしまいました。なるべく早くそのお客様を見つけて、弁償いたします!
店員は申し訳なさそうな顔で何度も頭を下げている、その様子を見た玉子焼きは思わずため息をついた。
玉子焼き:いいえ、私にも責任はあります。弁償してもらう必要はないので、相手の連絡先を教えてもらえませんか?
店員:記録によると……そのお客様は連絡先を残しておらず、「T」という名前だけしかわかりません。
玉子焼き:……何か他に特徴はありませんか?
店員:確か、あのお客様は……マントを羽織っていて、女性だったと思います。かなり慌てていて、こそこそしている様子でした……少し怪しかったです……
店員:黒いマントを羽織っていたため、よく覚えています。本当に申し訳ありません。玉子焼きさん、もしお客様から連絡がありましたら、真っ先にお知らせしますね。
玉子焼き:……はい、お願いします。
玉子焼きは「T」という名前について考えてみたが、何も心当たりはなかった。がっかりした様子で洋服屋のドアを開ける。
しかし次の瞬間、ふと何かを思いついて再び足を速めた。
ストーリー1-2
町
通り
玉子焼き:(その人は私より少し前に出て行ったらしいから、近くに何か手がかりがあるかもしれない)
玉子焼き:(黒いマントは目立つし、目撃者もいるかもしれないから少し聞き込みをしてみよう!)
玉子焼きはそう考えながら、行動を開始した。
***
しばらくして、反対側の通り――
カツ丼:早くこの紙袋を持ってくれ、落ちちゃう!
カツ丼は慎重に足を動かしていた。彼の上半身を覆い隠す程の大量の荷物を抱えていたからだ。
りんご飴:私のことは、名探偵と呼びなさい!!!あれ……玉子焼き?
カツ丼:え?なに?
カツ丼が必死に顔を横にずらすと、荷物の隙間から少し離れた所に急ぎ足の玉子焼きを見つけた。
りんご飴:彼女、なんだか焦っているみたいね。
りんご飴:私の直感が言っているわ!きっと何かあったに違いない!
カツ丼:そ、そんなに早く歩くな!!!待ってくれー!!!
玉子焼きが一心不乱に通りと町角を見渡していると、突然見覚えのある赤い姿が目の前に現れた。彼女はぶつかる寸前、急いで足を止めた。
りんご飴:玉子焼き、そんなに急いでどうしたの?何か事件でもあった?手伝うわ!
玉子焼き:えっと……あなたたちですか……大丈夫ですよ、今日は非番なんです。
カツ丼:本当に?でもさっきから何回も声を掛けたのに、全然気付いてくれなかったぞ!
玉子焼き:ごめんなさい、考え事をしていました。
カツ丼:君らしくないな……
りんご飴:そうよ!私たちに何か隠しているわね!
玉子焼き:そんなことありませんよ。
りんご飴:人は嘘をつくと、つい視線を逸らしてしまうらしいよ。
玉子焼き:……
りんご飴:ほら、何かあったんでしょう?手を貸してあげるから!
玉子焼きは意思を固めた二人を見て、これ以上誤魔化せないと観念して、洋服屋での思いがけない出来事を話した。
カツ丼:待って!どうしてそんなふわふわしたワンピースを持ってるんだ?りんご飴のバカでもない――うあっ!!!踏むなよ!!!
りんご飴:お黙り!それって、おばあさんが残してくれた大切なワンピースだったよね……安心して、必ず見つけ出してあげるわ!
玉子焼き:大丈夫です、これは私の問題なので自分で解決します。
カツ丼:いててて……まったく、君は相変わらずだな。自分だけで背負わないで、友だちをもっと頼れ!
―――
「三人寄れば文殊の知恵」って言うしね、それに……
・玉子焼きはそのワンピースがとても大事なんでしょう?
・私たちはプロの探偵よ!
・一人で町中を探すなんて大変だわ。
―――
りんご飴:あっ!そうだ!洋服屋の近くで、その黒マントを見かけた人はきっといるはず、急いで聞き込みに行かないと!
玉子焼き:ええ……確かに、あなたたちの言う通りですね。
カツ丼:だろ!早く行こう!
ドサドサッ――
カツ丼は持っていた大量の荷物を忘れたのか、声を上げながら大股で歩き出した。すると、荷物は全部地面に散乱してしまった。
ストーリー1-4
カツ丼:いっっった……りんご飴のやつ、一発が重すぎるって……
カツ丼は痛む頭をさすりながら、ぶつぶつ文句を言いつつも落とした荷物を黙って片づけた。その横で玉子焼きとりんご飴が対策の話し合いを始めていた。
りんご飴:では手分けをして行動を始めよう。私は玉子焼きと一緒に警視庁に行って資料を調べる、何か手がかりが見つかるかもしれない。カツ丼は足が速いし体力もあるから、外で目撃者を探すのに最適!
カツ丼:また俺を使い走りにして!
りんご飴:君は私が最も信頼する「ワトソン」だから頼んでいるのよー
カツ丼:こういう時にしかそう呼んでくれないじゃん、名探偵!
玉子焼き:(あなたたちも相変わらずですよ)
町
警視庁
玉子焼き:りんご飴、私一人でも調べられますよ。あなたが手を出すと、規則違反になります。
制服に着替え、警視庁の廊下に立っているりんご飴を玉子焼きは心配そうに見ていた。
りんご飴:コホンッ、さっき話し合ったじゃない、今から私は君の臨時の助手だよ。
りんご飴:資料を探すためのね。大人しくしていれば、警視庁の通常業務に影響はないはずよ。
玉子焼き:わかりました……事件が無事解決したら、警視庁にきちんと事情を話しますよ。
りんご飴:きっとどうにでもなるわよ!シーッ!誰か来た、早く行きましょう!
近づいてくる足音に気づいたりんご飴は、さっきまで闊歩していたが、今度は玉子焼きを掴んでこそこそと廊下を進んだ。
***
記録保管室のドアの後ろに隠れ、りんご飴はやっとほっと息をついた。
りんご飴:ふぅ、気付かれなくて良かったわ。面倒事はごめんよ。
玉子焼き:どうして記録保管室の場所を知っているんですか?
りんご飴:えっ……あー……直感!そう、直感よ!そんなことどうでも良いじゃない!早く調査を始めよう!
りんご飴:(朝に忍び込んで、バレそうになったなんて、恥ずかしくて言えないわ……)
整然と並んだ棚の前には書類が山積みになっていた、パラパラとページがめくられていく。情報を見逃すまいと、二人はじっと目を走らせた。
数時間後、りんご飴は疲れて目をこするが、玉子焼きはまだ真面目に探していた。
―――
こんなに探しても見つからないなんて……
・隣町の人なのかな?
・他の場所を探しましょう?
・これは困ったわ……
―――
りんご飴の言葉を聞いて、玉子焼きは首を横に振った。そして、後ろを向いて資料を一つ一つ元の場所に戻していく。
玉子焼き:どうやら、あの人物は本当の名前を残していないようですね。このまま探しても埒が明かない。
玉子焼き:折角付き合ってもらったのに、無駄足になってしまって、ごめんなさい。
りんご飴:ううん!全然疲れてないよ!うーん……落ち込まないで、きっと他にも手がかりがあるはずだわ!
りんご飴:信じて!私の探偵力があれば、きっと本当の「容疑者」を見つけ出してみせるわ!
玉子焼き:(……信じて……か……)
ストーリー1-6
町
日暮探偵社
玉子焼きとりんご飴が探偵社に戻った途端、カツ丼は何か重要な発見でもしたかのように勢いよく走ってきた。
カツ丼:近所をしばらく歩き回ったけど何も収穫なくて、危うく道端の野良猫にまで聞き込みしそうになってた。だけど、俺のたゆまぬ努力によって――ついにただ一人の目撃者を見つけ出したぜ!
りんご飴:流石私の「ワトソン」!続けて続けて!
カツ丼:洋服屋から東の方に歩いて行った所を見かけたって!言われた通りの方角に向かって捜してみると……
りんご飴:じゃあどうしてここにいるのよ?!
カツ丼:うあっ!いった!なんでまた殴ったの?!
玉子焼き:彼の言い分を聞いてあげてください。ほら、町の地図を見ると、探偵社がある地区はちょうど洋服屋の東にあるようです。
りんご飴:そうみたいね……どうやら、あの黒マントはこの町のことを良く知っているみたいね。
りんご飴:マントを羽織って、顔を見せずにこそこそ行動して、更に偽名を使っているなんて……きっと何か人には言えない秘密があるんだわ。
りんご飴:でも二つのワンピースには、特別な所なんてないみたいだし……まさかっ……!洋服屋を隠れ蓑に、何か怪しい取引でもしているのかしら?!
カツ丼:でも、そんな格好をしていたら余計に怪しまれるんじゃないか?
りんご飴:ただの推測よ、あらゆる可能性を検討しないと!
カツ丼:なら、隣近所に落とし物のビラを配っておこうか!そうすれば、あの人がここを見つけてくれるかもしれない!
りんご飴:そのアイデア悪くないわ!じゃあ……
りんご飴の話はまだ途中だったが、向こう側でじっと座っていた草加煎餅は、早くもペンを取り出して落とし物のビラの作成に取り掛かった。
りんご飴:煎餅先生、本当にありがとうございます!
この時、探偵社の社長である抹茶がゆっくりと手に持っていた湯呑みを下ろし、ため息をついた。
抹茶:一度考え方を変えてみて、店に戻ってみませんか?もしかしたら、相手も洋服を取り違えたことに気が付いて、返しに行っているかもしれませんよ。
りんご飴:それもそうね。今から確認しに行こう!アドバイスありがとう、社長!
かき氷:これからラムネたちと一緒にビラを配りに行くから、何か掴んだらすぐに知らせるよ。
地図を握りしめていた玉子焼きは、怒涛の展開に驚いて少し呆気に取られていた。あたたかい何かによって心が包まれ、思わず微かな笑みをこぼした。
カツ丼:ほら行くぞ!ボーっとするな、時間は待ってくれないよ!
―――
ええ……その通りですね。
・皆さん、ありがとうございます。
・ではお願いいたします。
・皆さんの気持ち、受け取りました。
―――
ストーリー2-2
町
居酒屋
夜が更けていくにつれ、町ではポツポツと明かりが点っていった。約束の時間が近づいても、誰も収穫はなかった。
疲れ切ってテーブルに倒れ込んでいる面々を見渡し、おでんは皆のために優しくお茶を注いだ。
おでん:今日は何かあったのかい?賑やかだねぇ。
カツ丼:そりゃもう……今日はずっと玉子焼きの御侍が残した形見を探してたんだ……
りんご飴:それから、煎餅先生が書いてくれたビラを配ったんだけど……
おでん:うん、そいで?
カツ丼:そのビラのおかげで、自分たちの落とし物を探して欲しいっていう依頼が殺到したんだ。
りんご飴:何年も前に失くしたブローチの依頼まで来てたわ!!!夫から貰った宝物だとかで……私は名探偵よ!!!誰にも解けない難事件が調査したいのに!!!
玉子焼き:ごめんなさい、こんなに迷惑を掛けることになるとは思いませんでした……
りんご飴:違うの、そんな風に思わないで……責めるなら……
カツ丼:うおっ!よっしゃ!今度は踏まれなかったぞ!また手を出すと思ってたぜ!
カツ丼は、自分の思い通りにならなくて怒っているりんご飴を見て、ドヤ顔を浮かべつついそいそと反対側のテーブルの端に移動した。
その時、足に何か柔らかい感触がした――
カツ丼:あれ、なにこれ……
テーブルの下に手を突っ込んで、引っ張ってみると、なんと黒いマントを見つけた。
カツ丼:マント?!
りんご飴:マント?!
カツ丼とりんご飴は口を揃えて叫んだ。その興奮した声に玉子焼きも思わず驚いてしまった。
カツ丼:まさか、一日探し回って、灯台下暗しだとは!
―――
良かった!
・やっと手がかりを見つけたわね!
・あの人はやっぱりこの近くにいたんだ!
・あとはマントの持ち主さえわかれば、真相はすぐそこよ!
―――
突然ドアが開く音が響き、りんご飴の言葉を遮った。音がした方を見ると、そこにはたこ焼きが立っていた。彼女の視線は、りんご飴が持っているマントに止まり、そして戸惑いと混乱が入り混じった表情を浮かべていた。
たこ焼き:な、なんでウチのマントを持ってるんや?
ストーリー2-4
たこ焼き:な、なんでウチのマントを持ってるんや?
しばらくの間、居酒屋の中は静まり返った。りんご飴は石化したかのように凍りつき、マントは音もなく彼女の手から滑り落ちた。
カツ丼:は???
りんご飴:今なんて……???
玉子焼き:……
りんご飴:これは、君のマントなの?
たこ焼き:そ、そうやで!
りんご飴:もしかして、今日洋服屋に行った?
たこ焼き:えっ……な、なんで知っとんねん?!ちゃんと変装までしたのに……
望み通り「容疑者」を見つけたが、りんご飴たちにドーっと疲れが襲った。
たこ焼き:あんさんら……一体なんやねん?
まだ辛うじて冷静さを保てている玉子焼きは立ち上がって、首を傾げるたこ焼きに状況を説明した。
たこ焼き:今日、洋服屋から帰ってからずっと忙しくて、取り違えていたことに気付けんかったわ。まさかこないなことになっとったなんて……ごめんな、みんなに迷惑をかけてしもうた。
玉子焼き:単なる誤解です。祖母のワンピースとたこ焼きが予約していた品物は確かに似ていますから……
カツ丼:平気平気、俺たちがラムネを連れてビラ配りに行っちゃったから、忙しくなったんだろ?それで服の確認も出来なかったと。まあこれでおあいこだ!
りんご飴:それにしても、一つだけわからないわ。どうして君は黒いマントを羽織って洋服屋に行ったの?
そう聞かれると、たこ焼きは顔を真っ赤にしながら、もじもじと事情を語りはじめた……
りんご飴:つまり、お客さんに言われて、自分の雰囲気をもっと大人っぽくしようと思ったのね?だけど私から見れば、たこ焼きはもう十分可愛いよ、彼らが言うほど子どもっぽくもないわ!
りんご飴:それに、大人っぽくって言っても、服を変えただけでそうなれるものじゃないわ。可愛くて何が悪いのよ。外見だけで人を決めつけるほうが子どもっぽいと思う!
カツ丼:えっとでも、どうしてそんな格好で行ったんだ?
たこ焼き:それは……人に見られたないし……特にお好み焼きになんか見られたら笑われるやんか!
玉子焼き:だから偽名にしたんですね。
りんご飴:「T」……「たこ焼き」……なるほど!こんな手がかりを見落としていたなんて!
―――
じゃあ、この奇妙な事件が解決したんなら……
・やっと一息つけるな。
・もうこの話はおしまいだな。
・皆で一杯やるか?
―――
カツ丼:やっと飯にありつける!!!やった!!!もうお腹ペコペコだよ!!!
りんご飴:食べ物のことばっかり!!!
ストーリー2-6
居酒屋の中はあたたかく、無事事件が解決できた一同は、ようやくホッとして夕食を楽しんだ。
玉子焼きが「失くした」洋服を手にする。質素な箱の中にはシンプルで上品なワンピースがあった。それはこの賑やかな居酒屋に幾分の優しさを加えた。
りんご飴:わぁ……これがおばあさんが若い頃に着ていたワンピースね!素敵!
玉子焼き:ええ……綺麗ですね。
かつての楽しい思い出を思い出しているのか、玉子焼きの口元は緩み、笑みを浮かべていた。
たこ焼きは思わず自分の考えを口にしたが、玉子焼きは一瞬凍りついて、耳をポッと赤く染めた。
りんご飴:そうそう、玉子焼きはきっと何を着ても似合うよ!そう言えば、玉子焼きが制服以外の服を着ている所をあまり見かけないわ。
カツ丼:はぁ?君たち本気か?!この女子力ゼロのーーううぅーーうっ!!
カツ丼の開いた口は、突如食べ物によって塞がれた。
りんご飴:な、何も言ってないわ、あははは……ほら玉子焼き、折角の機会だし、綺麗な服に着替えてみよう?!
玉子焼き:……
既に何杯かお酒を飲んだりんご飴は、ほろ酔いで嬉しそうに玉子焼きの手を掴んで騒いでいた。
玉子焼き:私には似合わないし、それにワンピースが破けてしまいます……
りんご飴:そんなことないよ!おばあさんがこのワンピースを玉子焼きにプレゼントしたのは、きっとこれを着ている君が見たいからだよ!
たこ焼き:りんご飴の言う通りやで、服は着ないと意味がないで。
玉子焼き:しかし私は……
りんご飴:玉子焼きは余計な心配しなくていいよ。もし気になるなら、おでんとカツ丼を追い出してあげるわ!
おでん:はは……ここはあたしの店だっての。
おでん:まあ、玉子焼きもこのプレゼントを嫌ってる訳じゃねぇんだろ。そうでもなけりゃ、お前さんは皆を巻き込んでまであんなに必死で探しゃしねぇよ。
りんご飴:そうそう!それにさっきこのワンピースを見ていた時、嬉しそうな顔をしていたじゃない!この私の目は誤魔化せないわ!
―――
だから……
・早く新しい服に着替えて来て!
・玉子焼きはちゃんとこのプレゼントを受け取って!
・玉子焼きは安心して着替えて来て!
―――
玉子焼きはゆっくりとした足取りで戻ってきた。ひどく不自然にワンピースの裾を掴み、赤い顔を隠すように俯いている。
流れるような長い髪に、小さなリボンがあしらわれたヘアピンが飾られている。優雅な黒いワンピースは、彼女の上品さを引き立たせ、まるで名家のお嬢様のよう。
その場に居合わせた全員が、彼女の姿を見た瞬間固まってしまい、思わず息を吞んだ。
玉子焼き:コホンッ……
玉子焼きは真っ赤になって何も言えなくなっていた。出来るだけ落ち着いた表情を保とうとしているが、ワンピースの裾をしっかり掴んで離さない手が彼女の内心の緊張を物語っていた。
りんご飴は彼女の緊張を解そうとよろよろと立ち上がったが、体勢を崩してしまい彼女に飛び掛かってしまった。
酔っぱらったりんご飴がとろんとした笑みを浮かべているのを見て、玉子焼きは思わずため息をついた。その時彼女はふとこの賑やかさの中、自分の張り詰めていた気持ちが少し和らいだことに気づいた。
しなやかなワンピースに身を包んでいると、まるで優しい翼に包まれているかのように彼女は感じた。それは今までに感じたことのない感覚だった。
これこそがこの素晴らしいプレゼントがもたらした、本当の意味なのかもしれない。
玉子焼き√宝箱
談笑する声が響く中、玉子焼きだけが不自然に体を硬直させていた。彼女は時々ワンピースの裾を握りしめては、完全に拒絶している訳ではないにしても、畏まっていて、緊張していた。
カツ丼:ヒック……相棒、君は今俺がマンガで読んだあの異邦人たちにそっくりだ!
カツ丼:うーん……もし金髪だったらもっと似てるんだけどな!へへっ!
玉子焼き:……
りんご飴はいつの間にか寄り掛かってきたカツ丼を、パンと平手で叩いた。
カツ丼:いったぁ!また殴った!
りんご飴:私たちの玉子焼きは生まれながらの美人よ、あの異邦人たちよりもずっと美しいわ!玉子焼き、カツ丼の話なんか真に受けなくていいのよ!ヒック……
カツ丼:ちゃんと相棒のこと褒めてんのに……
りんご飴:とにかく、玉子焼きは何を着ても似合うんだからね……ふふっ……
玉子焼き:……
おでん:あたしも全くもって同感さ、今日の玉子焼きは実に素晴らしい。
玉子焼き:ありがとうございます……
おでん:あまり自分にプレッシャーをかけなさんな。皆が好いてる、見ていたいのは、ただ一人のお前さんしかいねぇんだ。
おでん:ちょいとした変化に挑戦するのも、自分にとっても良い事さ。今夜はお前さんにとって忘れられねぇ夜になる、存分に楽しむが良いさ。
カツ丼:ぶはははっ!!!君が持っているのは醤油さしだ、バカ!!!
目の前が再び騒がしくなっていくのを見て、その熱気の中で玉子焼きも少しずつ笑顔になっていった。
恍惚の中、彼女は自分も酔っているような気がした。胸の鼓動だけが、とてもあたたかい。
りんご飴√宝箱
談笑する声が響く中、たこ焼きはいつの間にか隅に座り込んで、ぼんやりしていた。突然、真っ赤な姿が彼女を捉える。
りんご飴:(未翻訳)
たこ焼き:……
りんご飴:まだスタイルのことで悩んでるんでしょう。
たこ焼き:……ちゃう!
りんご飴:人の目を気にし過ぎよ、だからこんなことになるの。でも、スタイルを簡単に他人に決められてしまったら、たこ焼きはもうたこ焼きではなくなっちゃうわ!
りんご飴:私たちの心の中にいるたこ焼きこそ、本当のたこ焼きよ。
りんご飴の顔は真っ赤だが、真剣な表情をしており、他の面々の注目も集まって来た。
カツ丼:俺からしたら、服なんて全然重要じゃないし、たこ焼きが着たい服を着たら良いと思うよ。
おでん:まさか、たこ焼きがこんな悩みを抱えていたなんてな。そうだな……自分の心に従えばいいってもんさ。他人の言葉なんか気にしちゃいけねぇよ。
おでん:皆それぞれがちげぇ個性を持ってる、何を着てもたこ焼きは可愛いたこ焼きのまんまってこった。
たこ焼き:みんな……
たこ焼きは優しい言葉で慰められ、塞いでいた気持ちは次第に晴れていった。最後は少し恥ずかしくなって顔を赤らめた。
彼女は軽く咳払いをして、気を取り直したのか、立ち上がった。
たこ焼き:よしゃ……わかった……やっぱ自分の考えに従うのが一番やな。だからウチが買った新しいワンピースは玉子焼きにプレゼントするで!
たこ焼き:このワンピースも、あんさんに縁があるようやし!
玉子焼き:…………
りんご飴:良いわね!これで新しいワンピースが二着も!いつもと違う玉子焼きがいっぱい見られるわ!
玉子焼き:…………
突然歓声に包まれた玉子焼きは、思いもよらない展開に頭を横に振った、だけど口元には淡い笑みを浮かべたままだった。
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