SPピザ・エピソード
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SPピザのエピソード
彼はもう二度と全てが起きないように出来ると思った。あんな記憶は自分一人だけが背負えば良いと思った。だけど彼は支離滅裂になった童話を変える事は出来なかった。ピザは願い続けた、だけど本当に昔に戻れるとは思っていなかった。しかし運命はいつも彼が最も嫌う形であの人に出会わせた。全てがなくなっても。彼の心の中にある光が消える事はない。
※誤字と思われる部分も原文のまま載せています。必要なら修正をよろしくお願いします。
Ⅰ
ホテルの部屋
朝
カッサータが意識を失ってから数日が経ち、いつもと変わらない明るい朝だったのに、オレの目にはあまりにもよそよそしい彼が映っていた。
カッサータ:お前は誰だ?
チーズ:しまった、悪化してる、アンタのことすら覚えてないなんて。
笑顔でいる事が、こんなにも難しい事だとは知らなかった。
目の前のカッサータは、まるで最初に会った時の姿に戻った、いや、それよりも恍惚としていた。
彼はふとオレの方を見て、パッと目を輝かせた。何か楽しい事でも思い出したかのように口角を上げた。
カッサータ:ああ、俺はお前を覚えている。お前は俺にとって、とても大切な人だ。
カッサータ:守らなければ……
ピザ:うん、オレを守ってくれ……だから……
ピザ:(……だから……オレの事を忘れないでくれよ……)
歯を食いしばって感情を抑え、どうにか言葉を絞り出した。
ピザ:ここまだ痛むか?
カッサータが怪我したお腹を指す。彼が理由もなく昏睡状態に陥るまでオレとチーズは彼の変化に気付けなかった。
ーー黒い紋様が扇形に徐々に反時計回りに広がっている。紋様が広がるほど、皮膚に刻まれた二匹の蛇が杖に絡まっているマークがはっきりしてくる。
カッサータ:大丈夫だ、もう痛くない。目も痛くないし。いつまでも聞くなよ。
彼はこの数日のことを覚えているようだった。目が覚める度に、オレはこう尋ねたから。
チーズ:カッサータの記憶は遠い昔から順に消えているよ。最近の出来事はともかく、どうやって王国に来たのかは覚えてないよね。チーちゃんたちが王国を出た後のこともたくさん忘れている……
カッサータ:この間子爵邸から救出した人間は……
ピザ:チーズが彼女を養護施設に送った、もう心配しなくていいよ。
チーズ:そうだよーチーちゃんは彼を連れてシスターお姉さんを探しに行って、ついでにプリンとビスケットを持って帰ってきたよ!
チーズ:カッサータの分も残してあるから、食べて早く元気出しなさい!じゃないとチーちゃんと一緒にピザをいじめるひとがいなくて寂しいよ。
以前のオレなら飛び上がって反論していただろうけど、今となってはあの頃が懐かしくて堪らない。
カッサータ:ありがとう。
ピザ:じゃあ、カッサータは休んでてくれ。オレはそろそろ出てくる、何か情報がないか探してみるよ。
どうしてこんな事になったのか。何度も自問したけど、答えは出なかった、ただウイスキーへの憎しみだけが胸に広がった。
ザクザク、ザクザク……
心の怪物がオレの憎悪を呑み込んでいる。それでもオレを落ち着かせる事は出来なかった。本能が理性より先に崩れ、ドアから飛び出たが、背後でチーズの声がして、ようやく目が覚めた。
ピザ:ウイスキーを探してくる!カッサータをこんな風にした事をわ許せない!殺してやる!
ピザ:落ち着ける訳がないだろう!カッサータがどうしてこんな事になったのかもわからない、もう、オレに一体何が出来るんだ……
チーズ:チーちゃんも同じ気持ちだよーチーちゃんも苦しい!でもこのままじゃ、ピザまで……
オレの怒りを勢いで消そうとするかのように、チーズは早口になって、声が震えている。我に返って振り返ると、彼女は涙を流していた。
チーズ:チーちゃんは……ずっと一緒にいたいよ、ずっと……ずっと一緒に……
我慢しているのは、オレだけではない。
祈るように両手を握りしめたチーズを見て、オレは腕を伸ばした。彼女はすぐにオレの意図を汲み取って、オレの胸に飛び込んだ。
チーズ:もう酷い目に遭って欲しくない……ううう……ずっと……一緒にいたいの……
ピザ:うん、心配かけて悪かった。
ピザ:そうだ、オレは馬鹿だ。でも、信じてくれ、今度こそ、オレはウイスキーを見つけて、カッサータを治す方法を聞いてくる。必ず会いに戻るから。
ピザ:約束だ!
チーズの涙はなかなか止まらなかったが、どうにか自分で涙を拭いて、オレの出した小指に自分の小指を絡めて来た。
チーズ:うん!約束だよ!
Ⅱ
時の館
裏口
今わかっているのは、ウイスキーは既にガセット公爵と手を組んでいる可能性が高いということだが、どこにいるかわからない公爵より、屋敷にいる公爵夫人の方をあたった方が良いかもしれない。
チーズ:カッサータ、いつまでも甘やかさないでね!アンタが来てから、ピザのバカさ加減が加速しているの!
カッサータ:良いだろう?ふふっ。
ピザ:カッサータ、今のオレは、少しは賢くなっているのだろうか?
時の館の近くに身を隠し、思い出に浸った。馬鹿げているように見えても、それが今のオレにとっては最良の選択だった。
少し離れたところにある立派な門を眺めながら、忍び込めるタイミングを待っていた。
公爵夫人は午後四時にアフタヌーンティーを楽しむ習慣がある、毎朝九時になると、デザートの材料として新鮮な食材や果物が屋敷に運ばれた。
ピザ:配達人の目を盗んで馬車に乗り込めば、中に入れるはずだ。
スフレ:あの……ここで……何をしているのですか?
ピザ:うわあーっ!!!
スフレ:!!!!リリア!!!
突然現れた人にびっくりして、彼が手に持っていた人形を叩き落としそうになった。彼もオレに驚いたのか、それからずっと顔を上げずに、ただ何度もある名前を呼んだ。
ピザ:なぁ、大丈夫か?オレは……オレは怪しい者ではない……
自分の説明があまりにもあやふやで、言葉に詰まった。するとそのひとは急に今までとは別人のようにオレを見上げて笑い出した。
スフレ:フフフフ……わざとらしい言い訳だな、どう見たって怪しいだろ?
弱々しくみえたかれの突然の異変に、幻覚でも見たのかと疑ってしまった。
ピザ:いや、オレは……
スフレ:俺はテメェの目的を知っている、公爵夫人を探してるんだろ?彼女はずっとテメェの事を待っていたよ……
ピザ:えっ?!
スフレ:自己紹介してなかったな、俺は侯爵夫人の執事ーースフレだ。
こんな事になると思ってもいなかった、侯爵夫人が執事をよこしてくれるなんて。これは罠なのか?もしカッサータがここにいたら、どうすればいいのか教えてくれたに違いない……
スフレ:何をボーッとしてんだ?俺と来い!
ピザ:(仕方ない、やってみるしかない、何かあったら、すぐに逃げよう……オレは食霊だから、大丈夫、大丈夫だ……)
オレは強引に心を落ち着かせ、スフレについて館内に入り「時の館」という名の館を眺め始めた。
柱時計、置き時計、時計塔……一見高価そうに見える時計が、この屋敷の隅々に置かれていた。突然、目の前の窓辺を赤い蝶が横切った。
ピザ:赤い……宝石の……蝶?
ピザ:(さっきも街で見たような気がする、ここ特有の蝶なのか?)
考えているうちに、時計だらけの壁を通り抜け、いくつかのドアをくぐって……
スフレ:ほら、ここだ。
ドキドキしながら、オレはそのドアを開けた。想像していた煌びやかな応接室ではなく、壁一杯に本が仕舞われている書斎が目に入った。
フルーツタルト:おぬしを待っていたぞ。
公爵夫人はオレの存在に気付いているが、オレの方を見ようとはしていない。雑談をしながら、手元のページをめくっていた。
ピザ:オレが来ることを、どうして公爵夫人は知っているんだ?
フルーツタルト:もし、おぬしが街で耳にした「ウェッテ先生」の手掛かりが、全てわらわが流した物だとしたら?
ピザ:え、ええ?!
ピザ:(彼女はオレたちの素性を知っているのか、つまりたとえここに来ていなくても、カッサータとチーズの行方を彼女は把握しているということ……)
フルーツタルト:そんな風に取り乱すことはない、わらわはおぬしらに何かするつもりはない。わらわとおぬしらの目的は一緒だ。
フルーツタルト:だからわらわは、おぬしらを助けようとしている。
ピザ:オレたちに何をして欲しいんだ?
フルーツタルト:フフッ、あの悪趣味な「ウェッテ先生」が何故おぬしらを選んだのか、よくわかった。
フルーツタルト:わざわざ何かをする必要はない、もちろん、助けるのも無条件ではないが。
ピザ:条件?
フルーツタルト:条件に満たしたからこそ、わらわはおぬしの前に現れたのだ。
この公爵夫人の言葉は、わかるような、わからないような。
その時、あの宝石のような赤い蝶が再びオレの前に現れた。しばらく部屋を旋回してから、ひらりと公爵夫人の指先に止まった。
フルーツタルト:さて、わらわの「蝶」に従って歩いてみてちょうだい。それは、いつも陰に隠れる事を好む黒い蛇のもとまで導いてくれるはずだ。
Ⅲ
緋色の蝶は意識を持っているかのように宙を舞っていた。時折、オレがまだ背後にいるかどうかを確かめるように、留まってくれる。
公爵夫人の蝶に導かれ、オレは郊外と荘園にやって来た。門の表札を見ると、ここもその公爵に所有物のようだった。
カッサータ:ダメだ、入るな。
ピザ:カッサータ?!どうしてここに?怪我は?体は大丈夫なのか?
カッサータ:怪我か……コホコホッ……もう大丈夫だ。お前の事が気になって、ついてきた。
ピザ:(ついてきた?まさかオレが「時の館」を出た時から?)
戸惑ったが、今のカッサータは朝よりも少し元気そうに見えた。
ピザ:そうだ、必ずお前さんを治す方法を見つけてみせる。
カッサータ:はぁ……なら、付き合ってやる。
ピザ:ありがとう!
その荘園はそれ程広くなかった、奥の部屋は複雑な造りをしている。カッサータと一緒に探してみたが、何も変わったところはない。
ピザ:彼は一体どこに隠れている?
数時間も探して、オレは少し疲れて、壁を寄り掛かって休憩を始めようとした。
ピザ:あれ?この壁、動きそう……うわぁー!
反応する間もなく、回転扉の中に入ってしまった。カッサータはオレを追って一緒に入って来た。
カッサータ:大丈夫か?
ピザ:お前さんこそ!本当に大丈夫か?
カッサータ:平気だ、そんなに心配するな。
ピザ:辛かったら、すぐにオレに言って!絶対にな!
カッサータ:はいはい。
ピザ:ここは暗いな。
秘密の通路はロウソクの灯りもなく薄暗かった、するとカッサータはマフラーを差し出してくれた。
カッサータ:怖いなら、これを掴んでおけ。
ピザ:うん。でもお前さんがいるから、怖くない。
通路をずっと進むと、少し鼻を突くような臭いがした。その匂いがオレの記憶を呼び起こし、彼がそこにいるだろうと確信した。
ウイスキー:まったく、どれだけ私のことが好きなんですか、ピザ……
あの男の穏やかで冷たい口調が、不気味な部屋の中に響き渡り、全身に鳥肌が立つ。
ピザ:貴様が何をしたかわからないのか?!
ウイスキー:フフッ、私は何をしましたか?何をしたと思いでしょうか?
ピザ:カッサータに何をしたの?!何故彼は記憶を失っているんだ?!
ウイスキー:カッサータ?ああ、そうでしたね、そう言えばそんな名前でしたね。ただ、記憶喪失は彼にとって、悪いことではないのかもしれませんよ……
ピザ:貴様!!!!!
他人事のような彼の笑顔を見ていると、オレに残された理性を飲み込んでしまいそうな怒りが込み上げてくる。
カッサータ:バカ、衝動的になるな!
その一言は、オレの胸に充満していた怒りを、一瞬にして冷たい霜に変えてしまった。信じられずにうろたえてしまい、怒る事さえ出来なくなっていた。
オレが今どんな表情をしているのか、オレにもわからない。カッサータの方を向いて、信じがたいこの言葉を投げかけたーー
ピザ:お前さんは……誰だ?
Ⅳ
ピザ:お前さんは……誰だ?
冗談を言ってくる記憶の中カッサータと同じ笑顔を見せてきたが、それが更にオレの胸に突き刺さった。
ピザ:いや、お前さんは違う……
カッサータが伸ばして来た手を振り払い、オレは一歩一歩後ずさった。
だって……俺の知ってるカッサータは……もう……
オレの事を「バカ」だなんて呼んではくれない……
ウイスキー:こんなに早く気付くとは……
ウイスキー:目の前にいる彼も君にとっての大切な友人ですよ……
ピザ:貴様の言う事は信じない!
ウイスキー:そうですか。今君の目の前にいる彼は、私がカッサータの記憶を吸収し、新たに作り上げた魂の個体です。信じてくださいませんか?
ウイスキー:私は錬金術を使って彼に一時的に実体を持たせました。しかし、所詮は失敗した「実験品」に過ぎない、半端な体は所詮真実の残像に過ぎず、時間に侵食され長く留まる事は出来ません。
ピザ:やめろ!黙れ!!!
ウイスキー:君は結局私の言葉を信じてくれている、そうでなければそれ程動揺したりはしません。
頭の中が真っ白になり、何とも言えない感情が身体の中で蠢いている。オレの暴走させる胸の痛みと理性の硬直によって、オレをその場に釘付けになって、動けないでいた。
ウイスキー:半製品だが、確かに君の友人の過去をリアルに投影していますよ……
靴が床をこする音が近づいてきたけど、オレの身体は混乱した思考に邪魔され、反応出来なかった。
ウイスキー:今回も、過去と同じようにーー彼から目を背けるのですか?
ピザ:おれは、そんなーー
反論する隙もなく、口を開いた瞬間、ウイスキーはまたあの時と同じようにオレを黒い蛇で縛った。
この時、初めてオレを狙っていた蛇が、目の前にいるカッサータの体を貫いている事に気付く。
ピザ:どうして……どうして……助けてくれるんだ?
ピザ:(彼が庇ってくれたかったら、オレは……重傷を負っていたかもしれない)
カッサータ:俺に聞かれてもな……知る訳ないだろ……
カッサータ:体が……勝手に……動いだんだ……
カッサータはゆっくり振り返って、いつもの笑顔を見せて来た。そして、割れた鏡のようにオレの前で砕け散った。
ウイスキー:半製品のクセに、力さえ本体だけの半分にも及ばない……しかしこのように破壊されたら、もう復元出来ませんね……
ウイスキー:ええ、楽しみにしていますよ、もし君に出来るのなら……
ウイスキー:では、これからは君に関する実験をしましょう。本当に不思議です、君はどうやって堕化から回復出来たのでしょうか?
ウイスキー:人間、食霊、堕神すらも耐え切れない力に、君は抵抗したのですね……それとも当時の君は、そもそも堕化すらしていなかった?
ウイスキー:フフッ……実に興味深いですね……
Ⅴ
ホテルの部屋
夕方
左目の激痛によって、カッサータは悪夢から目覚めた。
カッサータ:悪い予感がする、アイツを探しに行く。
カッサータ:いや、でもピザの居場所がわかる、彼が今危ないことも!
チーズ:えっ?どうしてわかるの?
カッサータ:俺は見たんだ……この見えないはずの目で……たった一瞬だったが……
公爵荘園
密室
巨大な血のような赤い魔法陣の中央、傷だらけのピザは金色の蛇に絡まれ強制的に立たられていた。彼の背後には、透明で幻想的な光の翼が少しずつ実体化し、広がっている。
真っ赤な血は彼の身体に沿って床に零れ、地面のキズに溶け込みわ魔法陣の一部となった。
自分の実験体が消えた時のわずかな霊力を辿り、カッサータはようやくこの密室を見つけた。目の前で、天使が受刑されているような残忍な一幕が繰り広げられていて、目も当てられない。この光景は、カッサータの苛立つ心に深く刺さっている。
カッサータは自分の槍で魔法陣を破ろうと試みたが、魔法陣は部屋の全体に溶け込んでいるようで、まったく隙がなかった。彼はやむを得ず魔法陣の中に入り、何度もピザの名を呼び、彼を呼び覚まそうとした。
しかし、魔法陣の結界は、カッサータを強く拒絶しており、彼の行為は彼自身に余計なダメージを与える以外何の役にも立たない。
ウイスキー:おや、半製品が余計な事をしたみたいですね……本当に必死に守ってくれる忠犬なんですね……
カッサータ:お前が?全部お前の仕業か?!
ウイスキー:私の事をお忘れですか?傷つきます……
ウイスキー:ウェッテ、アクア・ウェッテ。この名前に、印象はありますか?
カッサータ:お前と冗談を言う暇はない、早くこの魔法陣を止めろ、そうじゃないと……
ウイスキー:君も私を殺したいのですか?しかし、私を殺しても魔法陣は止まりません……この魔法陣の動力源は本体にあります、本体の力が尽きれば止まりますよ。
カッサータ:バカ野郎!
ウイスキー:君は怒っているようですね。お招きしていませんが、来てくださった以上おもてなしをしないといけませんね。では、少しだけ遊んで差し上げましょう。
黒い蛇はこの部屋の影に溶け込んでいたようで、すぐにカッサータを取り囲んだ。左目を失ったため、死角に隠れた蛇の攻撃をかわす暇もない、蛇が全力で自分を攻撃してきた隙に、怪我も厭わず次々とウイスキーを攻撃した。
ウイスキー:覚えているかわかりまえんが?私の蛇に噛まれる箇所は、そう簡単には元に戻らないんですよ……
戦闘から五分もしないうちに、カッサータの体のあちこちに傷跡が出来た。
奇妙なことに、カッサータから流れ出た血も次々と魔法陣に吸収されている……
ウイスキー:これで私を殺せるとでもお思いですか?
カッサータ:絶対にアイツをここから連れ出してやる。だから、何としてもお前を殺す。
ウイスキー:おや、私はそう簡単には死にませんよ、少なくともあの人が再び現れるまでは……
カッサータ:あの人?
カッサータはウイスキーの顔に一瞬の切なさを捉えたが、しかしすぐに口角を上げニヒルな笑みを浮かべた。考える間もなく、カッサータはウイスキーの視線の先を見た。ピザは魔法陣に囚われたまま、背後の翼はほぼ完全に開きそうになっている。
ウイスキー:言い忘れましたが、翼が完全に広がった時、魔法陣の目的は達成されます……
カッサータ:……
無駄だとわかっていても、カッサータは槍を突き、魔法陣を破壊しようとした。
カッサータ:目を覚ませ!早く、目を覚ませ!
カッサータ:……一人に、するなーーバカ!!!
金色の光に包まれたピザのまつげが微かに揺れ、ぼんやりと目が開いた。
束縛から解放されたかのように、絡まっていた蛇は魔法陣と共に消えた。支えを失ったピザは、床に叩きつけられそうになり、それをカッサータが受け止めた。
ピザを抱きしめた瞬間、記憶の一部が過去と重なるように見えて、涙が勝手に流れ出た。
カッサータ:さあ、帰ろう。
風のようにやって来て、煙のように消えた。その男がどこへ行ったのかは誰も知らない。ただ幕を閉じたかのような静けさの中、黄金色の蝶が宝石のように輝きながらやってきて、全てを傍観していた。
私は……どれだけ繰り返せば……君に会えるのでしょう?
神を信じていたかつての自分を笑うかのように、ため息をついた。
あの人に会うまで、彼は神を信じた事はなかった。
故に、神も彼に恵みを与えた事はない。
そして彼にこう伝えた事もなかった……
彼がしてきた事は全てーー
夢に、過ぎないと。
本当に、興味深い……
この物語は、わらわが書き記しておこう。
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