SP紅茶・エピソード
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SP紅茶のエピソード
紅茶の御侍は国を守れなかった事で自殺した、それを見た紅茶は半堕化の状態に陥り、そのせいで堕神として他国に終われるようになった。逃亡中、彼女は堕神を殺す事で強くなっていった、まるで血をすする悪魔のように。
Ⅰ
漆黒で索漠とした泡沫が、純白の空間の中ゆるりと立ち上る。
それは色彩を呑み込み、光を侵食し、無視出来ない怪物にまで膨れ上がり、厄運の尾を引きずっている。
荼蘼公主(幻影):……あなたを一人にしてしまうわね……紅茶、ごめんなさい……
紅茶:ボタン、姫?!……いや……いやー!!!
私は手を伸ばし、泡沫が臨界点に達する前に挽回しようとした。
……しかし指が幻影に触れる寸前、いつも銃声が鳴る。
紅茶:はぁ……はぁ……
追兵A:声がする……何者だ?!
紅茶:……!!!
私は息を潜め、警戒しながら腰の中に手を掛ける。追っ手たちは手網を締め、長い槍で周囲の草むらを刺して敵を探し回っていた。彼らが乗っている馬は不安そうにグルグルと歩いているが、私の存在を主に伝える勇気はないようだ。
動物というのは、忠誠よりも本能に従うものだ。
追兵B:声なんて聞こえないだろ……余計な事を言うな!時間の無駄だ、早く北方の町に連絡して、逃げた堕神の討伐に協力してもらないと。
追兵A:……たかが女一人だろう、こんな大勢で探す必要なんかあるのか?こんな面倒な状況になったのは、陛下があの小国に干渉しようとしたから……
追兵B:口を慎め!……お前もあの女と手合わせしたろ?外見に騙されるな、あれは女じゃない、堕神だ!……そもそも陛下について我々がとやかく言う資格はない。
追兵A:……なら陛下の思し召しのままに、北に向かおう……
荒原で咆哮する風の音と共に、騎兵たちは去って行った。私は無理やり立ち上がり、黒紗で顔を隠し、つぎはぎされたようなぎこちない身体を引きずりながら、この人気のない場所を幽霊のように歩き回った。
紅茶:……
荼蘼公主(幻影):紅茶、私は国に身を捧げた、なのにどうして……あなたは……まだ生きているの……
紅茶:姫……お願いです、もう少し時間をください!貴方を迫害した奸臣共を決して許しません……
荼蘼公主(幻影):……紅茶、大丈夫よ、もうそんな事はいいの!知っているわ、あなたは私が帰るのを待っているのでしょう?
荼蘼公主(幻影):だから私は帰って来た、早く私と行きましょう?ここには……恐怖や失望も、破滅や喪失もない……
荼蘼公主(幻影):花々は永遠に咲き誇り、樹木たちは永遠に枯れない……
荼蘼公主(幻影):紅茶、ここには……あなたの大切なものがあるわ!
紅茶:私は……
彼女は私に手を差し伸べて来た。私はその青白い手の平をただ見つめたまま、中々返事を出来ずにいる。
荼蘼公主(幻影):どうして……やっぱり、あなたさえも私を裏切ったの?!
荼蘼公主(幻影):わかった、わかったわ……あの堕神たちはあなたに惹き寄せられて、国都に侵入したのね?!
紅茶:姫、違います!出来る事なら、私は自らの命と引き換えに国を取り戻したいです……!!!
荼蘼公主(幻影):あなたよ!あなたのせいよ!あなたがいなければ、隣国はこの小さな土地に目をつけたりしないわ?!私の国都はどうしてこうなってしまったの?!あなただ!全てあなたのせいだ!
紅茶:姫!
怒り狂う彼女はこの場を立ち去ろうとしている。私は急いで追いかけたけれど、踏み外してしまったーー
紅茶:っ……いっ!!!
肘と膝が痛む。坂の下まで転がり落ちると、そばから悲鳴が聞こえてきた。
御侍:なっ、誰だ?!どこから現れたんだ!!!
堕神:いやっ、違う、今はそんな事はどうでもいい……ボーっとするな、早く逃げろ!!!
突然、大地が揺れ、石が転がり始めた。嗅ぎ慣れた堕神の腐臭が漂って来て、吐き気がした。無意識に腰の銃を取り出し、カチャッという音が鳴った後、目標に狙いを定めて打とうとした。しかし……
御侍:早くどいて!!!
振り返らなくてもわかる、この一発は外れていると。
紅茶:……手を話してください。
御侍:ダメだ!この怪物は危険だ、たった数発で仕留められる相手じゃないーー
紅茶:普通の弾丸は無理かもしれませんが……私のは問題ありません。
御侍:あら?
あの醜悪な肉隊は再び襲い掛かって来た。大きな影に覆われた私は、その脳天を打ち抜く。
御侍:……死、死んだ……?すごい……
紅茶:もう安心です、行ってください。
御侍:しかし……外は危険だ、貴方も負傷している……貴方が私の命を救ってくれた以上、私は貴方を見捨てる事は出来ない!
紅茶:この程度の傷はすぐに治ります。
御侍:傷を甘く見るな!治る早さはともかく、治っている最中に細菌に感染でもすれば、炎症が起こる……
紅茶:……
私は腕を高く上げ、相手に見るよう誘導した。白い腕に刻まれた深い傷口は、肉眼でわかる速度で塞がっていく、そしてすぐに一本の薄いかさぶたしか残らなくなった。
御侍:その治癒能力、人間のそれではない……まさか、食霊なのか?!
Ⅱ
荒原では依然として狂風が吹いている。そばにいる人は震えながらも、鼻をすすって強がっていた。
御侍:貴方は……そんなに急いで、寒くないのか?このマントを半分貸そう……
紅茶:……結構です、寒さには強いので……
御侍:寒さに強いだけで寒くない訳じゃないんだろ?一緒に随分長く歩いたし、もう遠慮しないで!ほら、羽織って!
紅茶:……
食霊は厳寒や風沙を恐れない。しかし、この簡素な布から体温が伝わってきた。この感覚は……よく知っているし、とても懐かしく感じた。
御侍:それにしても、なんか見覚えがあるような気がするんだけど……えっと、つまり、どこかで会った事があるような……
御侍:あれ、もしかして前世で?
紅茶:……口説き文句にしては古いですね。
御侍:あはは、これは私の本音だ!……そうだ、紅茶、貴方の目的地はどこだ?
紅茶:……わかりません。
御侍:あら?
紅茶:貴方はどうして付き纏ってくるのですか、一体何がしたいのですか?
御侍:私は……うぅ、だってせっかく食霊に会えたから……
紅茶:……貴方たち人間の考えは、理解出来ません。
御侍:そんな事はないだろう、人間と食霊の脳の構造は大体一緒だろう?
紅茶:……いえ、そういう事を言っている訳では……
御侍:私の説明不足だな!紅茶、私はいつか王国の役に立ちたいから、旅に出たんだ。だけどまさかこんなすぐに堕神に遭遇するとは……
御侍:でも、貴方みたいな強い食霊に会えたし、災い転じて福になったんじゃない?
紅茶:強い……ですか……
しかしながら、強い力こそが不幸の源なのかもしれない……
御侍:紅茶……どうしたんだ?何か良くない事でもあったのか?
相手が笑顔で恐る恐る聞いてくるのを見て、私はあの日の甘い幻想を壊さないために、唇を噛みしめた。
紅茶:……いいえ。外の世界は変化がない、旅をする価値なんてありませんよ、王国まで送ります。
御侍:えっ?!待って、話を逸らすなーー
紅茶:私がいないと、外の世界は危険すぎます。
御侍:でも、良い旅仲間を見つけた、そうだろう?とにかく、出て来たばっかなのにこんなすぐ帰りたくない!
紅茶:……自由の身で歩いて帰るか、私に縛られて送り返されるか、どちらがいいですか?
御侍:おいっ、選ばせる気なんてないだろう!!!
紅茶:シーッ……人間の気配がする……こちらに来てください。
御侍:イヤだ、一人で行かないでくれ!!!
一人ぼっちだった旅に、口数の多い「道連れ」が強引に加わった事で、どこか変わった気がする。
この短い旅が終わると、私たちの縁も終わると思っていた。だけどまさか……
御侍:ふぅ、標識が見えた……更に南西方面に少し歩けば、私の生まれ故郷に辿り着くみたいだ。
御侍:せっかくだし、うちでお茶でもしていかないか?まあ……良い茶は出せないが、食料はあるよ。
紅茶:……結構です、城門まで送ったら私はもう行きます。
言い終えてすぐ、私は止まない風の中から不吉な気配を感じ取った。
紅茶:……状況が変わりました。
御侍:うん?おっ、なんだ、気が変わったのか!
紅茶:いいえ。
私は速度を速め、何も気づいていない鈍感なその人を連れて走った。不思議そうにしていた顔は、開け放されている城門を見て表情を変えた。
御侍:城門に看守がいない……一体、何があったんだ……
紅茶:……中に入ってみましょう、私も一緒に行きます。
Ⅲ
城門をくぐると、目の前には不吉なものに襲われた町が広がっていた。手の平に爪が刺さる。この痛みで我に返り、急いで判断を下すよう脳を働かせた。
紅茶:この惨状は、人間には作り出せません……
紅茶:きっと……何かまずいものが入って来たのでしょう……
紅茶:……大丈夫ですか?
御侍:……大丈夫だ、きっと大丈夫……
紅茶:待ってください……どこへ行くつもりですか?!
再び一人になると、身体のまわりの重苦しい空気に息が詰まりそうになった。また何かを失ってしまうのではないかという恐怖が心の底から膨らみ、下唇を噛んで、後を追うしかなかった。
町にある血痕は乾いて黒ずんでいる。麻痺した顔をした人々は、崩れた壁の中から、残っている僅かな食料を掘り出そうとしていた。
幻のような現実を通り抜けた道連れの背中は、ほとんど焼け野原になった廃墟の前で崩れ落ちた。
御侍:……ウッ……
紅茶:……
泣いている。おそらく、ここがこの旅仲間が私を招こうとしていた「家」だろう。
御侍:……ウッ……はぁ……紅茶……
御侍:ごめん……午後の日差しが差し込む窓辺で、一緒にアフタヌーンティーを楽しめなくなった……
紅茶:……何か心当たりはありませんか?
自分の中で検討はついていたが、思わずこの言葉を投げ掛けた。
御侍:……ああ……
あの二文字が聞こえる。
御侍:……堕神だ。
荼蘼公主(幻影):何度も何度も、悲劇は繰り返される。
荼蘼公主(幻影):紅茶、あなたは何も出来ない。
荼蘼公主(幻影):でも、もういいじゃない?あなたの大切な物は、既に全て壊されてしまっているのだから。
紅茶:いいえ……違う……
優しい唇の合間から残酷な言葉が飛び出して来る。野獣の背中にあるトゲは、私の瀕死の自我をゆっくりと刺していく。
御侍:紅茶、落ち着いて……!!!
紅茶:……やめて……もう何も言わないで!!!
壊れそうな理性はこの町から出ろと命令してきた。問題ない、孤独の影はいつかまた荒野に戻る、消えゆく記憶は亡霊となって過去に残るだろう。
ぼんやりとした思考で顔を上げると、明月が空高く懸かっているのが見えた。
暴食:……ハァ……
紅茶:……ちょうど良かった。
紅茶:怪物と怪物は、闇の中で殺し合うべきです。
私はフリント銃を持ち上げた、堕神は耳元で唸り声を上げて興奮している。だけど、後ろで聞こえる叫び声を覆い隠せなかった。あの人だ……しかし、どうして……
どうしてその声は……こんなにも悲しそうなの?まるで……もう何も失いたくないような……
どうしてそんなに怖がっているのに、私を追いかけてくるの……どうして……貴方の悲しみも、貴方の恐怖も……私を……こんなにも……
いつの間にか目の前に血飛沫が広がり、堕神は歪んで破裂した。その姿は少しずつ僅かに残された私の理性を蝕んで行く。
紅茶:怖がらないでください……
脳裏で、最後の火花が散った。あの顔は、沸騰した空気の中笑顔を見せた。見覚えがないようで……よく知っている……
誰……貴方は誰……?誰であっても……私は……知っている……知っている……
引き金を引くと、幻影の中の火花は現実の燃え盛る海とリンクし、全てを呑み込んだ。はっきりと自分の声が聞こえる。知らないようで、懐かしいようなーー
紅茶:必ず貴方を守ります……
紅茶:御侍さん。
Ⅳ
紅茶:……二匹、三匹、四匹……五匹……
腕の傷はゆっくりと塞がっている。私は腕についた血を振り払い、ひっきりなしに襲ってくる敵を素早くなぎ倒していく。
暴食:ハァ……ウゥッ……
しかし私が眼中にないのか、幾度も私の攻撃をかわして私の背後へ行こうとしている。この行為は実におかしなものだった。もしや……既に私よりも遥かに美味な「食べ物」を既に食べていて、その匂いに気付いたのかもしれない。
暴食:……シッ……シシシッ……
紅茶:貴方たち……まさか……
暴食:すいた、お腹空いた……もっと、食べ物……人間……
紅茶:町を攻撃したのは貴方たちですか……?!
暴食:ヒヒヒヒッ……
全ての光景はまるで昨日のようにフラッシュバックした、まるでタイムスリップでもしているかのようだ。
かきたてられた狂性が、甲高い音を立てて私の身体を引き継ぐ。フリント銃は掌を離れ、怒りが私に攻撃を開始させた。
敵は湖のように私を取り囲んで来たけれど、好都合だった。獣のように殺し合いを楽しんでいる事実を、私は少しずつ受け入れていく。
私は堕ちている。深渊が既に目と鼻の先に見えた時……月の光を浴びた細い腕が、私をそっと地面に引き戻してくれた。
ミルク:やめてください。
私が静かな夜を抱擁する者なら、目の前の長いスカートの銀髪の少女は荒原の銀製の瑠璃、煌めく銀河のようで、全てを明るく照らしてくれる。
紅茶:貴方は……
ミルク:町民から依頼を受けて来た者です。この惨状は私が引き受けます、少し休んでください。
紅茶:……邪魔をしないでください。
ミルク:自己紹介を忘れていましたね、失礼しました。
紅茶:……サタン、カフェ?
変な名前……
ミルク:「変な名前……」
紅茶:?!?!
ミルク:顔に書いてありますよ……それに、私の角を見つめないでください、変な生き物ではありません。
ミルク:つまり、私たちは同じ存在です。
紅茶:同じ、存在……?
彼女の言葉を機械的に繰り返していると、やっと我に返った。ミルクという名の食霊は私を見つめている、その目に憐れみはなかった。
私の言葉を待っているようだ。
紅茶:もし、そう同胞だと思うのなら、一緒に……戦わせてください。
ミルク:はぁ……少し面倒ですが、自分で対応出来るみたいですし……
ミルク:では、共にこのゴミを「掃除」しましょう。
ミルク:しかし、条件があります……どうか食霊のやり方で、私と肩を並べて戦ってください。
目の前で白い光が過った。無意識に手を伸ばして掴むと、それはミルクの香りがするハンカチだった。
顔を上げると、ミルクは不満げに私の服についた血を見ていた。
ミルク:余計な仕事をしたくないので、一先ずそのハンカチをお貸しします。
ミルク:どうか、ご自分の手でそれを綺麗にして完璧な状態で私に返してください。
Ⅴ
紅茶は再びフリント銃を拾い上げた。前を見ると、月光のように柔らかな影が容赦なく戦場を掃除している。
ミルク:後ろに気を付けてください。
紅茶:……ありがとうございます。
ミルク:仕事ですから。
紅茶に迫っていた深淵は、彼女が引き金を引くたびに少しずつ離れて行った。
しかし掃除が終わろうとしていた頃、慌ただしい足音に、彼女は一瞬敵から目を逸らした。
御侍:こっ、紅茶!!!
紅茶:来ないでください!!!!!
そして、不吉な影が素早くあの人の背後から這い寄って来た。
紅茶:危ない!!!!!
脳よりも身体のほうが速く動いた。紅茶は飛びかかって攻撃を防いだが、裂かれた傷口から激痛が走り、彼女の意識は何千何万にも砕かれた。
揺れていた視線は真っ赤に染められ、人も景色も霞んでいった。紅茶はゆっくりとまばたきをすると、狼狽えている顔がぼんやりと見えた。
御侍:紅茶!……ごめんなさい……私は……
紅茶:……やめて……泣かないで……泣かないでください。
堕ちていく紅茶の体を誰かが受け止め、柔らかな抱擁の中やっとひと時の安らぎを得られたようだった。
絶えずあたたかい液体が彼女の顔に落ちてくる。それは口の中に入り込み、少しだけ塩味がした。
紅茶:……誰かが、泣いてくれていますか?
荼蘼公主(幻影):……ここまでだわ!もう十分よ!!!
荼蘼公主(幻影):許すわ……あなたを許すわ。だから……紅茶、私と共にここを離れましょう!
紅茶:……姫、申し訳ございません。ワタシには、守りたい人とものがあります……私の手のひらには……
紅茶:──私の手のひらには、まだ火種が揺れています。
御侍:紅茶……?
紅茶:ッ……もう大丈夫です……
紅茶:以前と違って、今回は……貴方を守れました。
幻が震えている。零れ落ちる涙は、暗闇を洗い流していく。
──紅茶が目を覚ました時、真っ白な天井が見えた。
ミルク:……昏睡状態から目覚めたばかりです、大きな動きをしないでください。
紅茶:貴方は……
ミルク:心配しないでください、もう安全です。そして……
ミルク:貴方はまだ完治していません、もうしばらく付き添います。なので、どうか銃を私の頭に突きつけないでください。危険です。
紅茶:……ごめんなさい、怖がらせてしまいました……か?
ミルク:いいえ、言う事を聞く良い子は嫌いではありませんよ。
紅茶:……?
ミルク:……申し訳ございません、冗談でも言って場を明るくしようとおもったのですが……逆効果だったみたいですね。
紅茶:いえっ……あっ、これ……!
紅茶は、戦闘がしやすいようもらったハンカチを袖の中に隠していた。真っ白だったそれは、赤黒い染みが広がっている。
紅茶:ごっ、ごめんなさい……
慌てて頭を下げて謝罪し始めた彼女を見たミルクは意外そうに笑った。
ミルク:このハンカチは貴方に差し上げます、先程の冗談の……お詫びという事で。
紅茶:……ありがとうございます。
紅茶はハンカチを大事そうに懐に仕舞った後、周囲を見渡した。彼女がいる部屋は広くはないが、可愛らしいぬいぐるみと装飾であたたかく飾られている。しかし、そばにはあの懐かしい姿はなかった。
紅茶:……あの人は、無事ですか?
ミルク:無事……でしょう。貴方を送るのに付き添ってくれた後、すぐにまた旅に出ました。
ミルク:もう足を引っ張りたくないそうです。努力してもっと強く、貴方を守れる程つよくなると……とても真剣な表情をしていました。
ドアの向こうから会話が聞こえてきて、ミルクは微笑んだ。まるで次の会話がわかるかのように。
???:あら、この部屋ですか?お見舞いの品少なくありませんか、こんなので新たな仲間に会いに来るのは失礼にあたるのでは……
???:もう来てしまったし、これ以上悩んでも仕方ありません、とりあえず入りましょう。
閉ざされていたドアは開かれ、亜麻色の髪の少女は優しく微笑みながら顔を出してきた、するとすぐに後ろにいたスーツを着た金髪の青年によって部屋に押し込まれた。
コーヒー:わかりました。ティラミス、先に部屋に入らせてくれませんか……
ミルク:……では、ついでに紹介させてください。彼はサタンカフェ店長のコーヒー、彼女は店員のティラミスです。彼女たちが駆け付けてくださったから、私たちは生還出来ました。
ティラミス:ついでなんて言い方、酷いですわ。
ミルク:失礼しました。全員が揃いましたし改めて言わせてください。
そよ風に吹かれてカーテンが揺れる、金色の日差しが枕元に降り注いだ。未来の仲間たちは笑顔で、心からの歓迎を言葉にした。
この眩しい光景は、何年経っても忘れる事は出来ないだろう。
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