麻辣ザリガニ・エピソード

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麻辣ザリガニのエピソード

横暴で喧嘩っ早く、誰かが自分の前に立つことを嫌う。この世に並ぶ者なしとうぬぼれは強いが、多くの人が彼を慕う。火のように熱い力のみ彼を笑顔にすることができる。体質的に暑さが苦手で、暑くなると服を脱いでしまう。

Ⅰ 誕生

俺様はやっと敵を倒した。

「は……は……堕神を倒した。やった……！」

「……」

おっと、もう実験室から逃げたんだった。忘れるところだった……

生まれた日から、俺様は自分が誰なのかを知らない。俺様が人類を救う使命を背負っていると教えられた時、それが食霊である私の存在意味だと信じ込んだ。しかし、より多くの兄弟姉妹を誕生させるため、俺様はテストを受け、人類との完璧な共存を目指すのだ。

辛い経験だったが、俺様は数々のテストを乗り越えた。兄弟姉妹も徐々に実験室に現れた。

そして最終テストの日、俺様たちは閉鎖された大きい部屋に連れていかれた。テスト内容は……互いに殺し合うのだ。

「え、な、なぜだ？俺様達の敵は堕神じゃないのか……？」

生まれて初めて人類の命令を拒絶した。この命令は絶対受け入れられない。強い疑問を抱く俺様は、部屋のドアに突進した。すると外から人間の叫び声が聞こえて来た。

「緊急対策を発動！彼らの霊力を抽出しろ！早く！」

「……実験体が反抗し始めた。予測通りだ、彼らは感情を持つようになった」

異常な音が響き、俺様は突然力を失い、そのまま倒れた。テストは中止され、俺様は自分の部屋に戻された。戻した人間の目から、俺様は濃い失望感を読み取った。

俺様が兄弟姉妹を殺さないと、人類は失望するのか……どうしてだ？

……ここにずっといても答えを得られないだろう。それ以降どの人類もここへは来なくなったからだ。そしてここは静かだが、不気味な無人地域となった。

Ⅱ 逃げ出す

俺様は実験室から逃げ出した。その後、人気が無いジャングルは俺様の避難所に、湿気の濃厚な洞窟は俺様の新たな家となった。堕神に遭ったら倒す。これこそ俺様が生まれた意味だと、まだ覚えているからだ。最初は逃げ出した日からどれぐらい経ったかを計算していたが、計算すること自体も段々面倒になった。

俺様は森で外の世界から来た人類の青年と出会い、彼の友達となったことだけを覚えている。その後どれぐらい経ったか分からない。彼の子孫がここへ来たとき、俺様はようやく、二百年余り前に既に彼が亡くなっていたことを知った。

時間がずっと経っていく、俺様に残るのはただの迷いだ。

彼の子孫は現在の時間と外の世界についての情報を教えてくれた。現在、俺様と兄弟たちは人類に「食霊」と呼ばれるようになった。更に、ある拘束技術のおかげで、人類に対する食霊の脅威は最低限に減り、完全服従させるまでになった。食霊を召喚して堕神に対抗する人類は日々増えており、専門の組織も設立され、人類は絶滅を免れるようになったようだ。

つまり、あのテストは結局完成していたのだ。

「あなたが祖先と出会ってから、もう二百年以上経ったんだよね。ここから出ようと考えたことがないの？」

「俺様は……」

どう答えていいかわからない。この世界は俺様にも、食霊にも属さない。だからどこへ行っても同じだ。このまま森にいて、いつか消えるのも悪くない結果だ。

「そんなこと言わないで、少なくともあなたはうちの家族の友達だよ〜！」

友達か、どういう意味なのか知らないが、ちょっと嬉しくなった。もしかして、存在の意味はたくさんあってもいいのか？俺様には理解できない。

Ⅲ 友情

あれから彼はよく森に人を派遣し、俺様に様々な本を送ってくれる。おかげでいろんなことを知るようになった。俺様達は隠し事がない良い友人となった。彼はグルイラオという国の名門の出身なのだが、今危機に陥っている。

「暴虐の限りを尽くす国王を諌めようとしたが、冤罪を着せられた。おそらく……まもなく死ぬだろう」

「反抗しないのか？」

「これが私の運命だ。もしいつか国王が悟ったら、私の死にも価値があったのだろうと思う」

それはいけない。俺様の友達が傷つくなんて許さない。彼を守ることを誓った。俺様は彼を自分の家にしばらく住まわせることにした。彼にとっては、これは単なる時間稼ぎに過ぎないが。

しばらくすると、国王がここを発見し、追手を送ってきた。全て覚悟はしていたが、やはり辛く感じた――敵は俺様の兄弟姉妹なのだ。

「何をしているんだ？どうして命令に従って人を殺さなければならないんだ？」

俺様は彼らと交流しようとしたが、まともな答えを得られなかった。彼らはただ機械的な声でこう言った。

「契約により、彼には死んでもらう」

契約？友達が言っていた食霊を拘束する技術なのか？

「それがどんなものなのかはさておき、まず自分の頭でどちらが正しく、どちらが間違ってるかぐらい考えられないのか？」

どんな言葉を聞いても、俺様が兄弟だと思っていた食霊たちは襲ってきた。

俺様は、彼らを殺した。

こんなことを避けるために実験室から逃げ出し、誰も知られないまま消え、この世界に永遠に別れを誓ったのに、残酷な運命は俺様に最も恐ろしい現実を提示した。俺様は俺様と友達を攻撃する敵を殲滅した。食霊、人類、関係なく全部殺した……全部。

「………」

「麻辣ザリガニ……私のためにそこまでしなくても……」

「黙れ……せめて、せめてこうする価値があったと言ってくれ」

「争いに対する人類の執着はあなたの想像を超えている。今回あなたは私を守ったが、次回、彼らはより多い兵力を送ってくる」

「まさか意味がなかったとでも言いたいのか！？」

「私の誕生が自分の運命を貫くためだったように――グルイラオに長い太平の世をもたらす、それが私の一生の目標だ」

「……もし一生の目標を探したいのなら、それはきっと私ではない。ただ、あなたが本当にそれを決めたのなら、子孫に手伝わせて必ず実現させよう」

彼は俺様の保護に感謝したが、結局グルイラオの王城に戻ることにした。彼は、すべてを終わらせるために、自分の命を差し出すべきと考えている。彼のために何かしてやりたかったが、彼の息子は彼が死んだことを伝えに来た。俺様の心も冷たくなった。

「私の家族は命を投げ打って奉公したのに、残酷無道な国王のせいで不幸な運命となった。もう父のように理不尽な扱いや欲求に従うことなどしない。どうか助けてくれ！」

翌年、彼の息子は情報を送ってきた。彼の家族は政変を起こし、俺様の友達を殺したあの国王を玉座から追い出した。俺様も約束を守り、あの国王の息子が森まで狩りに来たとき、彼らを殲滅した。邪悪は無声のままこの世界から消えた。

彼の家族は新しい王を助け、グルイラオ王国の権力を完全に掌握したことを知ったとき、俺様はようやく自分の使命に気づいた。

Ⅳ 運命

再び友達の子孫に会ったのは、およそ三百年後のことだった。

「あなたは麻辣ザリガニ？百聞は一見に如かずですね。家族が受けたご恩、私たちはずっと覚えています」

「あいつの子孫なのか？時間が経ち過ぎて忘れるところだった」

「いいえ、私はあの先祖の子孫の従兄です。でも同じ家族の一員……今回訪ねたのは他でもなく、ある計画の手伝いをお願いしたいのです」

「そうか？ちょうどいい。俺様も手伝ってほしいことがある」

「それはよかったです。先祖は遺言で、もしあなたが自分の目標を見つけたら、家族総出で、全力を懸けてお手伝いしろと言いました」

そうだ、これは俺様と友達との約束だ。

数百年間、人類は自分の利益のためだけに紛争し続けた。彼らにとって俺様の兄弟はただの道具と生贄だ。だから、俺様はこの現実を変えなければならない。これこそが俺様がこの世界にいる真の意味だ。

「目標を聞いてもいいですか？」

「ははは、別に難しいことでもない。ただ少し時間が必要だ……」

Ⅴ 麻辣ザリガニ

王室24年、対堕神兵器「麻辣ザリガニ」は実験室から逃げ出し、行方不明となった。

王歴31年、「契約」技術の開発は完成し、実験段階に入った。今回はより穏やかな性格を持つ食べ物を二号実験体にし、「契約」の埋め込みに成功し、計画におけるすべての項目を達成した。

王歴44年、二号実験体は長期的に実験を受けたせいで、霊体が崩れた。すべての項目が達成された以上、二号実験体の抹殺が申請された。

王歴56年、対堕神兵器の正式名を「食霊」と決め、管理組織が設立された。

……

……

王歴233年、グルイラオで政変が起こり、国王カール七世は王座から追い出され、その子孫は風なき密林で殺された。生存者は現場で赤い食霊を目撃した。

……

……

彼は人類の希望によって生まれたが、無尽の苦痛を味わった。その年、彼は親友のおかげで迷うことがなくなった。森の湿気が重い洞窟に隠れているのは、もはや彼が甘んじているべき現実ではない。彼の運命や一生の目標がようやく明らかになった。

もし人類が食霊に美しい世界を与えないのならば、自分の手で作り出すしかない。

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