ミルク・エピソード
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ミルクのエピソード
綺麗な白髪と真っ白な瞳が特徴。
普段は物静かでそっと友人のそばにいるが、友がピンチの時はすぐに助けに行く。
じつはかなり気が短く、同じことを何度もさせてしまうととんでもないことが起こるらしい。
Ⅰ すべての始まり
深く考えず、いつも気まぐれで行動しようとする食霊だと最初から分かっていたけど、まさか本当に御侍さまの遺言に従ってカフェを開くとは思わなかった。彼はカフェの名前を「サタン」とした。
御侍さまは生きている間に、コーヒーという飲料を世界中に広めることに力を注ぎ、そしてコーヒーを「悪魔の飲料」と見なす過激派と戦っていた。
私と彼はこのような御侍さまに召喚され、御侍さまの短い人生が終わるまでお供した。
御侍さまが亡くなった後、大半の人がコーヒーという新しい飲料を受け入れ始め、コーヒーはものすごいスピードで世界中に広がった。こんなに順調に普及できたのは、彼のやってきたことのおかげだと私は思っている。
「サタンカフェ」は食霊向けの通常業務の他に、人間にしか開放しない業務も営んでいる。
任務委託だ。
人間の中にはきっと私たち食霊のやり方に反対する者がいるだろう。だけど注目を避けるため、コーヒーは「サタン」を茂る森林に隠し、人間の生活と完全に切り離した。同時にグルイラオの各地に黒い郵便受けを設置し、様々な委託を受けている。
「事件や問題を書き、十分なお金を残せば、すべて解決する」噂は私たちの想像を超えたスピードで広まった。
任務は次々と届き、カフェの商売はますます盛んになっている。「すべて解決する」という噂だけど、実際はすべての任務を受けるわけではない。
時々「私を世界一のお金持ちにしてくれ」「鳥のように飛べるようにしてくれ」など、笑えない委託が来る。こういう場合は、お金と委託状と一緒に返すことにしている。
中には悪意に満ちた書状もあるが、コーヒーは一切見せてくれない。
部屋を掃除していた時、私は偶然このような委託状を見たことがある。その時私は分かった。コーヒーは彼なりの方法で人類との平和共存を求めている。私たちの人間に対するイメージが悪くならないように。
彼は賢い食霊だが、友達付き合いは器用な方ではない。
Ⅱ 一途の心
コーヒーやティラミスとは違い、私には特にやりたいこともない。それほど価値ある貴重な経験も、人間の一喜一憂も体験したことがなかった。
だから私にとって、すべてはどうでもいいこと。ただ友達と一緒に「サタン」で毎日を過ごせればそれで満足。
現在の「サタン」はオープンした頃と違って、たくさんの食霊が日々出入りしている。私、コーヒー、ティラミスが光耀大陸へ遊びに行ったとき「堕神」とも言える食霊を拾った。
我々の努力の結果、あの食霊はようやく話し始めた。
彼女はコーヒーとだいぶ違う。食霊はみんな私達と似ており、御侍の生死を平然と受け入れられる存在だと思っていたけど、彼女はずっと過去に囚われ、藁のような脆い記憶から手放そうとしない。もしよかったら、力を借りて記憶を封じてあげてもいいよと我々は彼女に勧めた。
しかし彼女はこう答えた。
「私は彼女を忘れたくない。今の状態なら、彼女はまだ私の記憶で生きていける。」
本当に変わった食霊。私の御侍様が亡くなった時、私が感じたもやもやした気持ちは、彼女の感じたのと同じものかしら?
どうやら違うみたい。彼女が感じたのは、もっと強い感情のはずだ。このような食霊に会ったことがないから、毎日彼女を見ていくようにしている。そして時間が経つとともに、私は彼女といい友達関係を築いた。
日々元気になっている彼女を見て、私もすごくうれしく思う。これはどんな感情なんだろう。私にはよくわからない。でも、この気持ちは決して嫌いじゃない。
Ⅲ 傷ついた食霊
「サタン」の手伝いに来てもらえないかって、コーヒーから誘われたとき、わたしはちょっと迷っていた。
同じことや同じ言葉を繰り返すのが嫌いな私に、できるかどうか。
しかし彼は特に気にしている様子はなく、ただ「好きなようにやればいい」と私に言った。
そういうわけで、「サタン」の常連さんたちには暗黙のルールがある。同じ日に同じオーダーを二回以上しない。同じ質問はしない。
みんなそっと、私を気遣ってくれている。こういう雰囲気だから、居心地は悪くない。
外に設置されている黒い郵便受けからの任務委託状回収は、みんな交代でやっている。人類に発見されないために、いつも深夜にやっている。意外なことは偶にある。
例えば今日、いつも通り委託状を回収に行くと、郵便受けのそばで痩せている人を発見した。
私は別に人類に見られてもかまわないと思うが、コーヒーに気を付けるよう言われているから、しばらく身を隠して様子を見ることにした。
ちっとも動かないな。どうやら眠っているようだ。
近づいてみると、人類ではなく、食霊だということにようやく気付いた。
子供姿の食霊は初めて見た。今までずっと食霊はみんな大人の姿だと思っていた。何と言っても、食霊にとって成長という概念がないからだ。
小さい食霊は軽傷を負ったらしく、メールボックスのそばでぐっすりと寝ている。
「あの、大丈夫ですか」
しばらく考えて、とりあえず連れて帰ることにした。傷を負った仲間をここに一晩放っていくわけにはいかないからだ。委託状を回収した後、私は小さい食霊を抱き、「サタン」に帰った。
Ⅳ 平凡な日常
こうなると知っていたら、絶対に連れて帰らなかった。
せっかくきれいに掃除した店の中で暴れているあの食霊を見ると、外に放り出してしまいたくなる。
「あんたたちは何者なの!」
態度はかなり傲慢で、子供の姿をしているくせに、偉そうな口調で喋っている。
「なぜこのわたくしを誘拐したの!」
隣のコーヒーは「お前が拾った食霊なんだからなんとかしろよ」という表情でこっちを見るし、紅茶もティラミスものんびりと午後のお茶を楽しんでいる。視線を合わそうともしない。
「まあ落ち着いて」
暴力の衝動をかろうじて抑えて私は言った。
「メイドのくせにわたくしに指図する気?」
バキッ!
結局、自分を抑えられなかった。
落ち着いて話す気になるまで、しばらく寝かせておこう。
「彼女はまだ傷を負っている。今後はもうちょっと手柔らかに」
コーヒーは笑いながら言った。彼にとって非常に面白い展開だったみたいだ。
「私を笑う暇があったら、ちょっとは手伝ってください。この子を部屋に運びますよ」
私は冷たい口調で言った。
「はいよ」
コーヒーは笑いながら小さい食霊を部屋に移した。
「もう食霊なんて拾わない」
のんびりとお茶を飲んでいた紅茶は私の話を聞くと、突然喉を詰まらせ、困った顔を上げて私にこう言った。
「怖がってるだけじゃないの。しばらく経てば落ち着くと思うわ」
ティラミスは禍々しいオーラを放出している私を見て、こっそりと笑っている。「サタン」の食霊の中で、ティラミスだけに勝てない。なぜなら、彼女は何を言われても動揺しない。怒りもしないし、悲しみもしない。ある意味では本当に怖い存在だ。
私はため息をつきながら厨房に戻った。気絶させたが、拾ったのは私だから、やっぱり栄養補充用の料理を用意してあげよう。
厨房のストーブの上に置かれている鍋から水蒸気が舞い上がり、鍋がジュージューと音を上げている。紅茶とティラミスの話し声や店長がコーヒーを入れる音が外から聞こえる。
今日もまた平凡な一日だ。
Ⅴ ミルク
ティアラワールドで早くに発見され、世界中に普及したミルクは、王暦265年にある飲み物への研究に力を注いだ料理御侍によってこの世界に召喚された。
同年、新型の飲み物「コーヒー」が発見され、その食霊も召喚された。ミルクと違い、コーヒーは発見されてもすぐ広がらなかった。人々は未知の物を恐れて試す勇気がなかったからだ。
そしてミルクとコーヒーはその料理御侍を手伝い、「コーヒー」を「ミルク」のような世界的な人気がある飲み物にすべく努力を始めた。
王暦300年、その料理御侍は70歳で世を去った。二人の食霊は彼の最期までお供した。
「カフェを開きたい」という生前の願いは食霊コーヒーに継がれ、その年「サタンカフェ」がグルイラオのある茂っている森の中で開業した。
その年、亡くなった料理御侍の夢を叶えるかのように、世界中の人々はコーヒーを受け入れ始め、今はコーヒーが好きな人もどんどん増えている。「悪魔の飲み物」という呼び名も、コーヒーへの愛称と変わった。
全過程を見ていた食霊としてのミルクは、友達のコーヒーを手伝い、一緒に「サタンカフェ」を経営することにした。
王暦310年、ティラミスとチョコレートが「サタンカフェ」の一員になった。
王暦320年、偶然に堕神化した紅茶を救った後、紅茶も「サタンカフェ」に加入した。
同年、傷を負ったクレープを拾い、クレープも「サタンカフェ」に加入した。
王暦340年、眠り病を治したいエスカルゴが「サタンカフェ」に加入した。
同年、料理の修行に専念したいパステル・デ・ナタも「サタンカフェ」の一員となった。
王暦400年、クレープに会いたいマカロンが「サタンカフェ」に加入した。
これからも友だちと一緒に、サタンカフェを続けていきたい。
これこそが、ミルクが「サタンカフェ」で見つけた目標なのだ。
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