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ホットドッグ・エピソード

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ホットドッグのエピソード

色んな意味で奇抜な青年。

世の中の美しいものすべてを愛している。

絵の才能に関しては天才的で、絵筆を常に持ち歩いている。

そのサラサラな金髪のせいでよく女性と間違われるが、本人はまんざらでもない様子。

彼にとって、女性とはまさに美の象徴であるからだろう。


Ⅰ 美しい世界

「ごめんね。あたしは美しいものしか描かないの」


あたしは目の前の顔を見つめ笑いながら、相手の肖像画を描いてほしいという要求を断った。

その少しも美しくない顔は直ぐに歪み、顔の持ち主はあたしに格別にうるさいと感じさせる騒音を発した。


「無礼者!私が誰だか分かっているのか!」

「知ってるわよ~」


あたしは柔らかな絵筆で彼女の眉間を押し、彼女が次の瞬間降り出してくるだろう平手を阻止した。


「でも国王の妹だとしても……」

あたしは手の中の絵筆を動かし、彼女の顔に彼女にぴったりだと思うマークを残した。

「例外はないのよ~」


最後の一筆を終え、あたしは自分の傑作に満足して、身を翻し立ち去った。


背後から傲慢な王女の金切り声が聞こえてきた。

「この下賤な食霊め!よくも私の顔に×を描いたわね!」



あたしを召喚した御侍が亡くなってから、もうどれくらい経ったのかな~


あれ、あまりに心地よく過ごしていたから、日付まで忘れちゃった。


本当に素晴らしい世界だわ~

絶妙な景色に、美味しい食事、それにたくさん美しい皮を被った人類もいる。


描きたいものは、数え切れない。


でも、たまに不愉快なこともある。


あたしが絵を描き上げる度に他人に絵を送っているせいで、人類社会にあたしの存在を知る人が増え始めていて、たくさんの人がわざわざあたしの居場所を探している。あたしの絵を手に入れるだけのために。

でも、あたしだってなんでもかんでもあたしの画集に入れたくはないのよね。


Ⅱ 気持ち次第

なら、どんな人があたしに描かれる資格を持つんだろう?


うーん……実はあたしにもよくわからない。強いて言うならその時のあたしの気分次第かな?


気分が良ければ、道端の小石だってあたしの瞳の中では宝石のように輝いて見える。


気持ちが沈んでいる時には、絶世の美女が目の前に立って、思わせぶりな視線と美しく耳に心地よい声でお願いしてきても、あたしは躊躇せずに拒絶する。


結局、あたしが絵筆を握った時に心に愛がなければ、描いた絵にも感情は生まれないのだ。


そして愛は、気分がいい時に生まれやすい。



でも、ホントに頭が痛いんだけど、たまにコントロールを超える状況が起きることもある。


例えば今回、はっきりあの皇室貴族を拒絶したのに、何度も何度も人を派遣してきてあたしの日常生活を邪魔している。


「ホント、面倒~」

兵士たちが再び目の前に現れた時、あたしは仕方なくため息混じりに言った。

「ならもう一度あの王女殿下に会いに行くわ」


人類社会の階級分けは本当にくだらない設定だ。あたしは周囲の荘厳華麗な装飾を眺めながら、画家である数人の友達たちが住む小さな小屋を思い出した。


才能があるのに、毎日の衣食すらままならない。なのに、この国家の大量の財はこういった表面だけの人々を養うために使われる。


あ、ごめんごめん。表面すらないかも~


数日前に会ったばかりの王女は、今日は一段と派手な化粧をしていた。心の中で何度もため息を吐いた。


「先日私の顔に×を描いた件については、不問とする」


その「大物」は傲慢な態度で、高い位置に座ってあたしを見下ろし言った。


「だが最近、私はある報告を受けた。城下の一部の家が危険だそうだ。長年修理されておらず、周囲の隣人もいつか倒されて自分の家にまで人寄せが来るのではないかと、心配しているようだ」


ここまで言うと彼女はさりげなくあたしの反応を観察した。相手が何をするつもりでいるのかは当然分かっていた。だから何も言わず、彼女が話し終えるのを待った。


「勿論、お前たち食霊はただの霊体、家や食糧も必要ない。だが、人類にとっては欠かせないものだ」

「あぁそれで、あたしがそういった家を取り壊すのか、それとも家主のために家を修理してやるか選べって?」


Ⅲ 囚われる時間

あたしには分かっていた。もしもう一度相手の要求を拒絶すれば、あたしの貧しい画家の友人たちは、家を失うことになる。

「美しい王女殿下~」

何度も考えてから、あたしは心に決めて、口を開いた。


「あなた様の肖像画を描くことができて、光栄です~」

「ははは、よし、覚えておくがいい。絵画の才能が世界一でなければ、お前は先日の所業で、すべてを失っていたのだ。嬉しいぞ、今回は賢い選択をしたな」



その後、あたしは宮廷に移り住み、昼も夜もあの「高貴」な王女殿下を描いた。彼女が眠っている様子、食事をしている姿、公務を行う風格、いずれもあたしの筆で緻密に描かれ画集に加えられた。


王女殿下はあたしの絵を大変気に入り、新しい作品ができる度に狂ったように大喜びし、絵を額装して自分の寝室に飾った。


時間が少しずつ流れていき、嘗て若かった王女も晩年に差し掛かった。あたしは彼女の皴だらけの顔を見つめ、相変わらず彼女の希望通りに絵を描いている。


Ⅳ 悲しい人生

間もなく王女は亡くなり黄土と化し、大地に埋もれていった。あたしは宮廷を抜け出し、自由を取り戻すと、すぐ画家の友人たちに会いに行った。


残念ながら、彼らの最期には間に合わなかった。

人類の生命は余りに短い。あたしは彼らの墓前に立ち、惜しまずにはいられなかった。


当時彼らが住んでいたぼろぼろの家は、王女の命令によって修理され、彼らの次の代が一生安心して暮らせるようになっていった。


あたしは墓参りを済ませると、留まることはせず、新たに美しいものを探す旅へと踏み出した。



何年も経ってから、あたしは再び意気投合できる画家友達に巡り合うことができた。雑談している時にこの話をすると、彼らはみんな私に代わって哀悼し、あたしがそれほど長い間、自分の誇りである絵画の才能で描きたくもない女性の機嫌を取らねばならなかったことを惜しんだ。


「機嫌を取る?」

あたしは笑った。


「うん、そういえば、彼女は確かに喜んでたわね~」

あたしは自分の髪を弄びながら、うわの空で言った。


「でも死ぬまであたしが描いた絵がすべて偽りだとわからなかったのは、ホント哀れよね~」


あの時、王女の絵を描くことを承諾したのは、画家の友人のことを考えてのこともあったけれど、それより大きな理由は自分の利己心のためだったのよね~


なんと言っても、あの王女は本当にしつこかった。また断ったとしても、次もまたやってきてあたしに纏わりついただろう。


だから彼女の願いを叶えるしかなかったんだ~


もちろん、彼女にも相応の代価は払ってもらった。



人類はあたしがどんな時に描いた絵に一番惹かれると思う?


花も恥じらうような美女?残念~


仙境のような風景?それも違う~


答えは……


「想像の絵」


人類は自分が信じたいものしか信じようとしない。この心理さえ掴むことができれば、相手にとって世界で最も美しい絵を描くことも、難しいことではないんだ~


そんな絵はあたしには一文の価値もない。でも人類は絵に酔いしれ、無駄に一生過ごすことになるんだ。


汚い手であたしに絵を描くことを強要した王女のようにね~


自分があたしの絵のように美しいと信じ込み、自身の醜さには見て見ぬふりをし、最後には彼女の行動範囲内に鏡が存在することさえ拒絶した。その一生はあたしが描いた「偽りの絵」で終わった。


なんて哀れなのかしら。


Ⅴ ホットドッグ

王歴296年、ホットドッグを召喚した料理御侍の天寿が尽きると、仕方なく人類に服従する生活をしていたホットドッグは、自分の意志で、自由に生きていくと決めた。


目的地のない旅を続ける中、ホットドッグは自分が美しいものを放っておけないことに気付いた。だが、世の中には美しいものが多すぎる。それらをすべて傍に置いておきたくてもそんなことはできない、ホットドッグが苦悩していた時、人類のある芸術に触れた。


「絵画」だった。



新しい大陸を発見したように、ホットドッグは絵筆を手にした。自分の見たもの、聞いたもの、正確に、完璧に描けるよう、毎日毎晩絵を描く練習続けた。


寝食を忘れた日々を過ごした後、元々並みの人類より高い芸術の才能を持っていた彼は、誰にも負けない画家になった。


その後、ホットドッグは愛用の絵筆を携え、一人の途中に彼が描きたいと思うものをたくさん描いた。しかし、この時の彼は当初のように、すべての美しいものを自分の傍に置きたいという気持ちはなくなっていた。


それより彼は彼の心を動かしたものが、元の姿のままでいることを望んだ。


だから、新しい絵が出来上がると、彼はその絵を元の場所に残すのだ。


そうこうしているうちに、より多くの人が彼の作品に気付くようになり、彼は絶大な名声を得るようになった。


しかし名声と共に訪れる面倒も次々とやってきた。


だがこの世界のどんなものでも彼を縛り付けることはできない。なぜなら、ホットドッグにとって、絵画以外、一番大切なものは


「自由」


誰かが彼の自由を邪魔したら、


きっと、悲惨な代価を支払うことになるだろう。


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