塩辛い豆花・エピソード
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塩辛い豆花のエピソード
豆花双子の弟、考えがコロコロ変わるため、彼の会話についていけない。
傲慢で不遜。ロックを愛し、よく徹夜しているためクマがひどい。
兄との関係は微妙。
Ⅰ 違い
俺には一人兄が居る。
俺たちは別々に召喚された。
俺たちは顔も趣味も似ている。
俺たちは双子だ、でも、なぜみんな兄のことしか見えないのだ。
彼の優しい笑顔も、柔らかい気性も、全部作り物だ。
見てわからないのか、このアホども。
レストランで客達に料理を運んでいる甘い豆花の笑顔は嘘臭くてムカつく。あいつは作り顔が上手いだけじゃねぇか?
ジジイが郊外で堕神に遭遇したとき、それを倒して彼を助けたのは俺なんだぞ。なぜ彼はいつも称賛の目を、いくつかの自作の薬を作っただけの甘い豆花に向けてるんだ。
ジジイはもともとあの猫かぶりのほうが気に入っていた。あの時、あいつが薬を使って堕神を倒したあと、彼らの目の中の俺の存在感は更に減った。
一緒に店の新しい料理を考えてる二人を見て、俺は突然自分が余計な存在だと感じた。いや、俺は余計ではない、余計であるはずがない、それくらいのこと俺もできる。
無礼な客は俺が入ったことのない個室に招き入れられた。甘い豆花はロビーで、あの、あいつを見る度に顔を赤くするアホ女をもてなしている。
俺はこの隙に厨房からジジイが用意した料理を持ってきた。だがまだドアを跨っていないうちに、ジジイは見たことがない怒りを露わにして罵ってきた。
「誰が触っていいって言った!出て行け!!!さっさと出て行け!!!!」
ジジイのこんな歪んだ表情など見たことがない。俺は手に持っているこぼしてもいないしひっくり返してもいない皿を見下ろす。間違いなんてしていないはずなのに。
ジジイは怒って俺の手を引っ張って部屋から追い出した。
甘い豆花は慌てて俺から皿を受け取って個室に入った。
個室の前で、あいつはいつもの笑顔を俺に見せた。
きっと俺を嘲笑っているだろう。
Ⅱ 葬
もし、俺が甘い豆花より役立つ日が来れば、ジジイの心での立ち位置を取って代われると、以前の俺は単純にもそう思ってた。
まさかそんな日は永遠に来ないとは思ってもいなかった
あの数日間、ジジイは常にイライラしていた。なぜかはわからない、でも以前の彼ならたまにイライラしても何日か経てば治るはず。それに、俺はちょうどいつも甘い豆花と話してるあのアホ女から、近くのとある町で新しい調味料が発見されたと聞いた。これはチャンスだと思った。だから俺は誰にも教えず、独りでその見つかるはずのない街に向かった。
ウキウキして出発した俺は、最近村に現れた見知らぬ人たちに気付かなかった。同時にあの甘い豆花という名の、兄と自称している悪魔の言いかけた言葉に脅威が潜んでいたことにも、俺は気付かなかった。
辺境小町の道端の風景は王城と明らかに異なっていたけど、その独自な特色もあった。凹凸な道はよく俺の靴を汚したけど、清らかな空気は王城の比ではなかった。
俺は遠くまで歩いた。朝から陽の暑い昼、空が赤く染まった夕方まで、街どころか周りの環境がますます寂れてきたような気がする。
ついに空に最初の星が出てきたとき、ハメられたことに気付いた俺は、慌てて家に戻った。
いつからかはわからないが、俺はいつの間にかそのみずぼらしいレストランを家だと思ってた。が、あの堅固ではない木の扉を開けた時、自分の前で起きたことはもう二度と思い出したくない。レストランにはたくさんの人が詰まっていた、甲冑を着て、刀を持っている見知らぬ人たちだ。
ジジイは、静かに地べたで倒れていた。
彼はなぜ客をもてなしていないんだ?なぜ起きないんだ?
濃厚な鉄錆の匂いがいつも料理の香りが漂ってるレストランに充満していた。
あの優しくて年老いた料理人の怒りに満ちた両目は既に焦点をなくし、開いてた口はまるでまだ叫んでいるようだった。
「何があった?」
俺は相変わらずあそこに座って笑ってる兄に問うた。
そしてあいつは言った。
「こんなに早く戻ってくるとは思わなかった。帰ってくる前にこのジジイの死体を片付けられると思ったのに」
あいつはそんなことを言って、満面の笑みで料理人の死体から短刀を抜いた。
「一刺しで殺したぞ、さすがオレだな」
それを聞いた俺は他の奴らなど気にせず、ただ目の前のこの笑顔を引き裂いてやりたいと思った。
Ⅲ 仲違い
俺の攻撃は止まない。でも目の前のこの俺より弱い奴は相変わらずムカつく表情をして、全然殴り返さない。血痕がみるみる増えていくのに、あいつはやり返すどころか弁解の一つすらない。でもあいつのその笑顔をみて、俺の怒りは更に燃え上がった。
あいつは俺と同じだと、俺は思ってた。
あの料理にゾッコンのジジイは、対して俺たちを大切にしていたわけではないが、居場所をくれた。
それに、彼はできる範囲で、俺たちに好きな楽器も買ってくれたし、彼にとって耳障りでしかないロックも一緒に聞いてくれた。
親のいない食霊にとって、彼は俺たちの父親と言えるだろう。
でもなぜ、あいつはこうも簡単に手を下した。
目の前で跪いて血を吐いているあいつは、相変わらずムカつく笑顔で、弁解するつもりが全くない。
突然、俺はあいつの少し得意げな目つきにやばさを感じた。そしてすぐ、体が強ばり始めて、瞼もだんだん沈んできた。最後に見たのは、互いに一足だけ換えて履いてる白黒のブーツだけだった。
目が覚めた時、俺はなぜか百里以外の病院にいた。王国の指名手配書にも一人の凶悪犯が加わった。
うわさの連続殺人犯は、薬で全員を眠らせたあと、痕跡を一切残さず逃げた。
誰もあいつを捕まえてはならない、あいつを捕まえるのは俺でなくてはならない。
あいつは俺の玩具だ、主人をも傷つけるような危険な玩具だ。でもたとえあいつが間違ったことをしても、俺の玩具を罰していいのは俺だけだ。
来る日も来る日も俺は探し続けた。ある日俺は、かつて俺たちのレストランに飯にきて、あの個室にも入って、最後下痢して命拾いした奴を見つけた。奴がブルブル震えてる姿はかなり滑稽だった、でも、口から出た話は疑わしかった。
「甘、甘い豆花!見逃してくれ!もう二度とあんたらのボスの前に現れないから!」
「甘い豆花だと?」
「あ……あんた甘い豆花じゃないのか?」
「どういうことだ!言え!」
このたった一人かもしれない生存者の口から、俺は噂と違ったストーリーを聞いた。あれらの人間を殺したのは、兄ではなく、あのジジイだと……
でもあいつはなぜ罪を被った、なぜジジイを殺した……
Ⅳ 祭
今年もあの日がやってきた。
あいつはあれらの人間を殺していなかったことを知ったのはもうかなり前だ。でもなぜジジイを殺したのかは未だわからない。でも認めたくないけど、双子の片割れである俺は感じられる。
あいつは、俺にそのことを知って欲しくない。人間どもを殺したのはあいつではないことすら、俺に知って欲しくない。
あ〜そう言えばそうだった。あいつでもジジイでも、誰も俺のことなんざ気にしていなかったな。
でも構わない。あいつはいずれわかるだろう。
あいつを一番理解しているのは俺だ。俺を一番理解しているのもあいつだ。たとえ真相が分かったとしても、俺はあいつに会うたびに殴りかかることは変わらない。
原因はわからないが、俺は感じられる。
あいつは俺の反応を嬉しく思っている。恐らく他の兄弟のように仲良くするより、殴り合ったほうが俺たち兄弟に合ってるだろう。いずれ必ず、俺はあいつがジジイを殺した理由を暴いてやる。俺たちは普通の兄弟より会っていないが、このことが俺たちを血塗れの鎖で深く縛り付けている。
俺たちは二人とも知っている。
いつの日か、俺はあいつを殺す。
変わらない対話で変わらない付き合い方。あいつが真相を話さないなら、俺ももう真相を知っていることは教えない。だからいつかきっと、あいつは俺の玩具になるだろう。
俺だけを見ている玩具になる。
Ⅴ 塩辛い豆花
塩辛い豆花は決して認めないけど、兄弟二人の感情は、表面上極めて悪いが、実は普通の双子よりずっと深い絆で結ばれていることは、誰でも一目見ればわかる。
彼らを仲直りさせられる人はいないのと同じように、彼らの眼中に他人を入れられる人もいない。
比較的に自分を抑えている甘い豆花より、塩辛い豆花のほうがわかりやすい奴だ。
明らかに麻辣ザリガニが、甘い豆花の仲のいい知り合いだとわかってるのに、知らないフリをして彼らの縄張り付近でうろちょろする。最初はいがみ合っていたが、今は喧嘩したあとで一緒に酒を飲めるような友人になった。
二人とも傷だらけだけど酒を持って川辺に座っている。麻辣ザリガニは余計な言葉を発しない奴だけど、それは他人に対してだけ。
ここ最近麻辣ザリガニと痛快に喧嘩してきた塩辛い豆花はもう麻辣ザリガニの兄弟も当然だ。
だから、自分をこの双子の兄貴と思っている麻辣ザリガニは弟分たちの誤解を解いてやるべきと思って、どう言えばいいのか考えてる時、酒を飲んでいる塩辛い豆花がイラついて彼を蹴った。
「言いたいことがあるならさっさと言え。ぐずぐすすんな」
せっかくの行為にその態度はなんだとイラついた麻辣ザリガニは、危うく目の前の野郎に酒を投げつけるところだった。でも麻辣ザリガニは思考を巡らせたあと、ニヤニヤと笑って、振り返って川の向こう側に座っている辣条に叫んだ。
「辣条!甘い豆花を読んで来い!弟は預かった。返して欲しくば幻晶石を持って来いと言ってやれ!」
石に寄りかかって座ってる辣条は、すぐさま逃げ出した塩辛い豆花を見て、思わず頭を振った。
「幼稚な男ども」
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