エッグノッグ・エピソード
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エッグノッグのエピソード
ジェントルマンで優しいが腹黒い。
実はバリバリの肉食系で、ロマンチスト。誰にでも優しく接するが、人をからかうこともある。
Ⅰ 女の子の気持ち
厳密に言うと、僕は女の子の機嫌取りが上手くはありません。
でも僕の御侍と比べれば、彼より僕の方がよっぽど気配りができて優しいのでしょう。
少なくとも僕は、女の子から気持ちがたっぷり込められたプレゼントを贈られたとき、「賄賂は受けない」と言って断ったりはしません。
女の子達はかわいくて繊細な存在で、か弱い花のように守ってあげるべき存在です。
彼女たちの笑顔が、僕にとっての最も素晴らしい報酬です。
御侍は人付き合いが得意な人でもありません。
御侍は、自分の使命はこの王都を守る事だけだと常に思っています。
しかし、政界の中に身を置いているからには社交は必要不可欠です。
幸いなことに彼は国王の兄のたった1人の子供です。さもなくばとっくに普段の遠慮のない言動のせいで命を落としていたでしょう。
そして僕は、彼がこれ以上バカをやって死に急ぐ事を防ぐために、神によって彼のそばに送られてきたのでしょう。
僕が一度、彼の代わりに礼儀正しく官吏達の招待を断ってから、彼は肩の重荷を下ろしたかのように社交のことを全部僕に押し付けてきたのです。
僕はつまらない机仕事が好きではありません。
相手が女性であれば、間違いを犯してもかばってしまうから彼のように公正にもなれません。
僕達の性格はまったく違う、でもちょうど補い合っています。だから僕たちは仲のいい友人になり、戦友にもなりました。
しかし僕たちはいつも意見が合っているわけではありません。
むしろ仕事以外、生活に関することになれば僕たちはいつも衝突しています。
彼は僕が女の子達と頻繁に仲良くするのが気に食わないらしいです。
僕も彼の几帳面な生活習慣が気に入りません。
僕たちの最大の対立といえば、1人の女の子に関することです。
それは平凡で普通な少女、御侍の家の近くで平凡な花屋を営んでいます。
彼女は傾城な美人ではないけど、陽の光のように暖かい笑顔を持っています。
唯一の欠点といえば、ちょっと鈍いところでしょう。
御侍も血気盛んな男です。このような女の子に惚れてもおかしいことではありません。
彼が花屋の前でジョウロを持ってる少女をぼうっと見つめてるところを見るたびに、僕はいつもからかいたくなってしまいます。
その女の子はとても話し上手で、僕は何度も花を買うのを口実に彼女の店を訪ね彼女と友達になりました。時々、恥ずかしくて店に入れないやつを強引に店にひっ連れて行ったりもします。
僕たちは女の子と徐々に仲良くなり、御侍は勇気を振り絞って花を買って彼女に贈ったのです。
告白しようとした時、女の子は机の中からチョコレートを2つ取り出して
「ちょうど良かった~。バレンタインにチョコを渡せなかったから今渡すね!これは貴方に、そしてこっちはエッグノッグに」
僕に渡されたハート形のチョコと、御侍に渡された普通の動物チョコとを見比べて仰天し、しばらく会っていなかった友人のことを思い出しました。
これからしばらく、家にはいられませんね。
Ⅱ 小さな国王
面倒事を避けるために、僕はしばらく王宮で住むことにしました。
王宮の若主人は御侍が非常に可愛がっている従兄弟で、彼のそばにも1人の食霊がいます。
その2人は僕や御侍と違って、とても似ています。
もちろん外見のことではありません。
2人の性格はほとんど同じです。
頑固で傲慢。
物事に対する態度や意見もまったく同じ。
僕と御侍と違い、2人は寄り添って成長しています。
でもローストターキーは彼の御侍より少し活発で面白いのです。
初めてローストターキーに会ったのは、僕がまだ召喚されたばかりの頃で、御侍が僕を連れてまだ健康だった国王陛下に謁見した時でした。
国王陛下が御侍に私的な話があると言い、僕は1人庭で茶菓子を送ってきたメイドさん達と楽しく話していると、白い子犬が僕の足を登って懐に潜り込んできました。
そしてすぐ、2人のチビが茂みから飛び出してきました。
「早く捕まえろ!」
頭に草が付いているローストターキーを見て僕は思わず笑い出しました。
「だ、誰だ貴様!何を笑ってる!笑うな!」
それが僕とローストターキーの出会いでした。とても面白かった。
ローストターキーと皇太子の赤くなった顔を見て、僕は我慢できず大笑いしました。
「き、貴様無礼な!もう笑うな!笑うな!」
ローストターキーはまるで痛いところを突かれたように怒ってた、皇太子は恥ずかしそうに咳払いして大人びようとした。――頭に葉っぱが載ってましたけどね。
僕は何とか笑いをこらえて彼の髪を撫でると、思った通りに柔らかい髪でした。
「はい、失礼しました。小さな殿下」
ローストターキーは腰に手を当てて顎を上げた。
その真っ赤で負けず嫌いな顔を見て、つまらないと思っていた王宮も案外悪くないかもしれないな、と僕は思いました。
Ⅲ 疎遠
王宮に住んでる間、僕は時々新しい国王代理をからかって2人の気張った神経をほぐしに行ったりしました。
それ以外の時間は、ほとんど綺麗なメイドさん達とのおしゃべりに使いました。時々家に御侍の怒りが収まったか見に帰ったりもしました。
その日、僕は御侍から家に戻ってこいとの命令を受け、ローストターキーたちに別れを告げに行く途中、見知らぬ食霊がローストターキーに迫ってるところを目撃しました。
彼の体からは気持ち悪い気配を感じる。発する雰囲気が巨大な圧迫感を帯びていました。
転びそうなローストターキーを、僕は後ろから受け止めました。
こいつを弄っていいのは僕だけです。
僕を見て、ローストターキーはようやくその食霊の圧力から目を覚まし、顔色も良くなりました。
その食霊は面白がるような視線を僕に向けてきましたが、その気持ち悪さのせいで僕は笑顔をこれ以上保てなくなってしまいそうでした。
この小さな出来事が、これから起こる事のすべての始まりになったのです。
その日から、僕と御侍は二人の国王代理に会うことができなくなっただけではなく、御侍の手にある守備軍の勢力も少しずつ伯爵夫人の手に渡ったのです。
伯爵夫人こそが、その日王宮で会ったあの食霊の御侍です。
その食霊の名前はブラッディマリーだと、後で僕は知りました。
勢力が削られてから、御侍を仰いでいた奴らはすぐに本性を現しました。
絶えなかった客足もめっきりなくなりました。
僕と御侍は、何度も皇太子とローストターキーに会いたいと申し出たが全て断られました。
以前は好きに出入り出来たはずの宮殿から衛兵に追い出され、今はとても冷たく見える壁を見上げ、僕は初めて怒りを感じました。
僕達は友達ではなかったのですか?
疑念があるなら、なぜ直接僕たちに聞かないのですか?
それとも貴方たちは、僕たちがきっと貴方たちに真実を話さないと思っているのですか?
僕と御侍は二人に会うのを諦め、ふてくされたように煩わしいことを放っておくことにしました。
御侍は貴族として莫大な資産を持っているので、何もしなくても贅沢に暮らしていけます。
毎日可愛い女の子達と一緒にいれば、その煩わしい王宮のことも忘れると、僕は思っていました。
しかし周りの女の子が1人また1人と消えたことで、僕はようやく自分がただ見て見ぬふりをしていただけだと気づいたのです。
昨日は太陽よりも眩しい笑顔を見せてくれた女の子が、今日には姿を消していました。
消えた女の子がだんだん増えたことで、本来相次ぎと開いていたダンスパーティーの回数も減っていきました。
御侍の守備軍なら、こんな時に何も行動しないはずがありません。
僕たちは事の真相を知りたいけど、今はもう数人の騎士しか残っていない。平穏な日常を守るだけでも精一杯でした。
ある日、御侍の騎士が偶然他の手段で事件を大雑把に調べられました。結果は少々予想外でしたが、意外ではありませんでした。
なぜ今の今まで皇城の守備軍は動かなかったのですか?
伯爵夫人は今の皇城守備軍を預かる者として、もしも事件について何も知らなかったのではなかったら、残る可能性はたった一つ。――彼女こそが事件の元凶でしょう。
では、既に王城勢力の大部分を掌握した伯爵夫人は……彼らを脅かしたりするのでしょうか?……
一晩中御侍と話し合った後、僕たちは簡単で直接的な計画を立てました。この計画は、僕たちの皇太子とローストターキーに対する完全な信頼により成り立っています。
Ⅳ 計画
僕たちは2人がきっとしばらく迷うだろうと思っていました。まさか2人がすぐに僕たちを信じてくれるとは思ってもみませんでした。
計画はすぐ実行に移りました。
僕が書斎に飛び込んで「暗殺を謀った」ことは、すぐ王城全体に伝わりました。そのあとすぐ、伯爵夫人が御侍の「謀反」の証拠を皇太子に提出しました。
こうして、御侍と僕は表舞台からは降りました。
天敵を失った動物がすぐどうやって自分を偽ろうかを忘れてしまうように、全ての敵を排除した伯爵夫人は牙を出しました。
日に日に女の子は次々とダンスパーティーから消えました。
計画通り、御侍の騎士がすぐに彼女の悪事の証拠を掴みました。
この通い慣れたはずの古城を見て、僕は突然の寒さを感じました。
美しい花園の下からよく知ってる姿が掘り出されました。それは最後に会った時の服を着ていました。血の色を失った顔が恐怖に満ちていました。
僕は花園の入り口に立ち、散った美しい花のために哀悼を捧げました。
兵士たちと、愛する人や娘を失った人々が古城を囲みました。
城に帰ると、抑えるようにしたすすり泣く声が部屋から伝わってきました。
皇太子は、すぐに僕たちを信じ計画を実行しましたが、伯爵夫人を母のように慕う彼は、まさかこの優しい女性が元凶だとは思わなかったのでしょう。
僕は部屋に入らないようにしました。これから彼は自責の念に陥るでしょう。
しかし、彼らにはもっと重要な仕事がある。伯爵夫人が死んだ後、彼らは各勢力の紛争を何とかしなければならないでしょう。
彼らの信頼に報いるため、僕が代わりにこれらの事を解決しましょう。
僕は解決にあたり、ある人を訪ねました。
とても傲慢なやつではありますが、その傲慢さに見合う実力も持っています。
僕ではあの2人に国を治める方法を教えられません。
しかしこの生まれながらに他人の上に立つ王者であれば、きっとできると思います。
僕は苦労してようやく彼の今の住居を訪れました。
「あいつを立ち直らせて、俺に何の利益があるというのだ?」
シャンパンは意味深な目で僕を見ました。ようやく僕の話に興味を持ってくれたようです。
「両国が盟友になることで、僕たちの国は貴方の国を外敵から守る最高の防壁になるでしょう。盟友と防壁、この二つだけでも十分だと思いますが、これ以上何かをお求めになるとしても、もう価値のあるものは何も出てきませんよ。」
僕は彼に真実を告げる事にしました。彼と相対し、冷静の下に僕自身にしかわからない緊張感が隠されています。ブラッディマリーから感じたのが暗さと冷たさだと言うのなら、彼から感じたのは王者の威圧です。
「ハハハハ、気に入った!確かに悪くない。この2つがあればガキ2人に会ってやってもいい。しかしこの2つだけであいつらの人生相談に乗るのにはまだ少し足りないような感じがする。こうしよう、お前に貸し1つってのはどうだ?」
「……まだ……は?何?それだけ……ですか?」
「どうだ?」
「いいでしょう!」
王者としてのシャンパンがわからないはずがないでしょう。彼が2人に会うだけで他の王の座を狙ってる輩にとっての牽制になる事を。そして僕の狙いは若い2人に教えて欲しいことだけではない事も。
貸し1つでは安いくらいです。
「そんなに深く考えなくていい。別に極悪非道な事をさせるつもりはない。ただお前のことが気に入っただけだ。」
Ⅴ エッグノッグ
自分はただ少し気配りができるだけだとエッグノッグはよく言ってるが、それでも彼が王城1の人気のある男という事実は変わらない。
思いやりがあって、優しくて、人の心がよくわかって、顔まで人畜無害のイケメンだから、エッグノッグに女性の視線が集まるのは当たり前のことだ。
時に女性の好きは簡単で何の理由もいらない場合がある。
でも彼の御侍は彼と全く違う。顔はイケメンだけど、子供を泣かしてしまうような厳しい顔でいつも女の子たちを怯えさせてしまう。
時々彼に助けられた女の子が彼を好きになる事もあるが、プレゼントを賄賂と思ってしまう彼はいつも彼女たちの好意を厳しく断ってきた。
だから彼に惚れた女の子たちは、その気持ちを心の中に隠すしかなかった。
御侍の惚れた女の子から本命チョコをもらって家から追い出されたことを除けば、御侍から社交の仕事を任されているエッグノッグは王都で気持ちよく暮らしている。
女の子たちとじゃれ合う以外にエッグノッグが大好きなことは、王宮に行ってローストターキーを弄ることだ。
ローストターキーは優秀ではないけど、頑張り屋で自尊心が極めて強い。
だから彼の顔が真っ赤になるまで弄ったら、エッグノッグは異様な満足感を得られる。
王宮に入れない間、エッグノッグがローストターキーと彼の御侍のことを怒ってたことは否めない。
しかし女の子達が次々と行方不明になったこと、そして王城の近況を知ったあと、彼と彼の御侍はやはり皇太子とローストターキーのことが一番心配になった。
すぐに、彼らは極めて大胆な計画を立てた。
自分たちの安全を全て、皇太子とローストターキーに預けたこの計画は最終的に円満と言える結末を迎えた。
伯爵夫人のことで意気消沈気味な2人は、すぐにシャンパンの助けで立ち直った。陰謀を企てていた貴族達もシャンパンの介入でおとなしくなった。
エッグノッグは2人のためにやったことを2人には教えなかった。
皇太子とローストターキーは彼の期待を裏切らなかった。挫折から立ち直った2人は成長してみせた。
事の終わりとしてエッグノッグが最も喜んだことは、花屋の女の子はこの事件でようやく本当の愛に気づいたこと。
御侍が愛する女の子を地下室から助け出したときに、雰囲気を壊すようなことを言わなかったことでエッグノッグは思わずホッとした。
彼女は伯爵夫人を邪魔してきた御侍に巻き込まれ、御侍が「投獄」された後、伯爵夫人が報復のために花を送り届けてもらおうと彼女を城に誘い込み「保存食」として地下室に閉じ込められた。
本当に女の子の心を動かせたのは助けた瞬間の動悸ではなく、傷を癒す間、彼が不器用でも真心を込めて彼女のそばに付き添っていたことだ。
彼が作ったお粥の味はいいとは言えないが、見事に彼女の心を射止めた。
指導役としてのエッグノッグは、何度もキッチンの爆発を目撃した。
御侍の結婚式で彼は感動のあまり涙が出そうになった。
御侍が本当の愛を掴むのを手伝うことと、ローストターキーたちが国を治めるのを手伝うこと、どっちがより難しいのかと彼に聞けば、彼はきっと前者を選ぶだろう。
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