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ボルシチ・エピソード

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ボルシチのエピソード

食霊パスタの組織のメンバーとして自分の酒場を持ち、看板マスターとして慕われている。

実際はどこかから逃亡してきたらしい。

情熱的で優しげな振る舞いをするが、本当に心を開くことはなく、特に食霊ウォッカを憎んでいる。

Ⅰ 酒場

ナイフラストのとある小さな町に、こんな酒場がある。

古びた木製の看板には、酒樽が大きく描かれている。

優雅な音楽は流れていない。その代わり顔を真っ赤にした酔っ払いたちの喧嘩や、彼らが慌ただしく出入りする音が途絶えることはない。


酒場のドアを開ければ、濃厚な酒のにおいが纏わりついてくる。このにおいだけで、酔っぱらえてしまうような空気だ。

礼儀やマナーなどどこかに捨ててきたような客たちがグラスを高く掲げ取るに足らない小さなことに一喜一憂している。知らない者同士でもグラスをぶつけ合えばここでは友達。もちろん、拳をぶつけ合うことも日常茶飯事だけど。


ときどき剣や杖を身に着け、砂ぼこりにまみれたマントをかぶった旅人たちが、旅の途中で寄って行くこともある。

ここにいる客たちは、彼らが何者かなど気にしない。新たな仲間の到来を祝して、決して高くはないが普段よりはちょっといい酒を、共に飲み干すのだ。


幾度の客同士の喧嘩に耐えてきた丈夫な木のテーブルには、酒と肉以外は置かれない。肉をむしゃぶり、酒を浴びる。この場所にルールがあるとしたら、それくらいでしょう。

こんな愉快な酒場には、決まって美しき看板娘がいるもの。

そしてこの私、ボルシチこそ、この酒場の看板マスターなのです。

私はカウンターに寄りかかり、耳まで顔を真っ赤にして脱み合う二人の男を見ている。

そう、この二人はまさに、どっちがより金髪かということで言い争いを始めたところ。そして今、男同士の決闘一飲みくらべで決着を着けようという。

ほんと、子どもなんだから……私は見かねて首を振った。


「マスター!!もう二杯ね!一番でっかいグラスで頼む!」

「はいは〜い」


私は特大のグラスに、酒樽から直接ビールを注いだ。なみなみ注がれたグラスを二人のところへ持って行く。やじ馬たちがやんやと騒ぎながら勝負を見守っている。

「おおぉっ!! 一発で飲み干しやがったぜ!!」


酒飲み同士の友情は、ころころ変わる酒飲みの気分くらい分かりにくいものだと思う。

袖をたくし上げ、睨みあっていたはずの二人も、勝負を終えると互いの肩を叩き合った。

濃厚な酒のにおいが交じったゲップをし、笑いあっている。

「ちょっと!!お店の中で吐いちゃだめよ!吐くなら外で吐きなさいね!」

飲み過ぎて頭が空っぽになっているであろうこの二人の鼻をつまみ、お椀に盛った温かいスープを出してやった。


「へへっ、分かってらい」

「おいっマスター、俺にもスープ出してくれよ!」

「てめえらだけズルいぞ!俺にもスープー杯!」

「はいはい早いもん勝ちだからね。ちゃんとお金払いなさいよ!」

すると後ろで入りロのベルが鳴り、扉が開いた。酔っぱらうとドアを蹴りたがる男たちのせいで、ドアはもう替え時だ。今度蹴った奴に弁償してもらおうかしら。

そんなことを考えながら私は顔も振り向かずに声をかけた。

「ごめんなさいね、もう閉店の時間なの」

ボルシチ、私だ」


Ⅱ ドレス

客人は私が言い終わる前に靴音を響かせ、カウンターに腰を下ろした。


その声は、聞きなれた酒飲みの粗暴な声ではなかった。この小さな酒場には相応しくないような、貴族のように落ち着いた声――私は口元にたたえていた笑みが消えていくのを感じた。長いため息をつくと、持っていた雑巾をテーブルに置き、酒棚へと向かった。




「これが最近来た依頼人のリスト、こっちが依頼内容よ」


私は酒棚の裏に置いた金庫の、もっと奥に隠してあった小さな紙袋を取り出すと、客人に手渡した。


客人の一挙手一投足から、貴族の気配が漂っている。私はカウンターに寄りかかって、内容に目を通しているこの男を眺めた。


「ねぇ、まだ決まらないのかしら、親愛なるパスタさま? もう閉店のお時間よ」

「待っていたまえ。依頼人は慎重に選ぶものだ」

「はいはい、ボスの言うことは絶対ね」


言い忘れていたけど、私はここのマスターをやりながら、他の仕事もしている。

そして目の前の、顔に『貴族』と書いてあるこの男が私のボス。私の仕事は、彼のために情報を集めること。

願いを叶えようとしている人の資料、または彼が必要としている情報。すべてはここから手に入れることができる。


私は彼のうしろの席に座り、彼が身にまとっている豪奢な衣服に優しく触れながら、昔のことを思い出していた。





いつのことだったか、私の御侍もかつてはこんな服を着ていた。それから一歩一歩、滅亡へと向かっていった。


私の御侍様は、最高レベルの権力を握っていた貴族一家の一人娘だった。

食べるもの、着るものも、すべて平民には手の届かないものだった。食器のひとつひとつすら、超一流のもので揃えられていた。


私は彼女の食霊だったが、まるで彼女の妹のようでもあった。ほかの食霊のように、危険な冒険に出かける必要はなかった。

むしろほかの貴族と同じように、邸宅から一歩も出る必要のない彼女に付き添ってあげるだけでよかった。


出された紅茶の温度がほんの少しでも違えば、この宮廷暮らしで磨かれた私の舌はすかさず感じ取ることができたし、スイーツの砂糖の量がほんの一杓でも多いと感じたら、彼女が口にする前に突き返した。


一流の貴族というのは、午前と午後で同じドレスは着ないものよ、と御侍様は教えてくれた。

だから私たちは、舞踏会のたびに新しいドレスを作らせた。もちろん、最新で一流のアクセサリーとセットで。手にする扇は、宝石が嵌められた希少な鳥類の毛で作られたもの。それでこそ、私たちが手にする価値があった。


これだけ煌びやかな私たちが、あらゆる舞踏会で視線を集めるのは当然といえた。


数え切れぬほど多くの貴族の男たちが、私たちに群がり、あらゆる手段で私たちの機嫌をとろうとした。

誰が私たちのダンスの相手をするかで、舞踏会のたびに争いが繰り広げられた。





…思い返せば。

誰かに求められ、追いかけられるあの感じ…

その感覚に浸り、自分や、現実を見失っていた。


あの頃の私は、少しも分かっていなかった。


男たちが求めていたのは、まるでショーケースのように飾られた私たちではない。そのドレスの、幾重にもなったレースの下に見え隠れする、権力そのものだったということに。


Ⅲ 目醒め

私たちは日がな舞踏会から舞踏会へと流れては、ワルツに合わせてドレスを揺らしていた。

平民では想像もつかないような優雅な暮らしを堪能し、人々の憧れや、嫉妬の視線を受けて酔いしれていた。


夢の中にいるような生活だった。


永遠に醒めることはないようで、いつでも醒めてしまえる夢。

でも私たちは、夢がこんな残忍な方法で醒めてしまうとは思ってもいなかった。


あの日、継ぎ接ぎだらけの質素な服を着た人たちが、舞踏会に乗り込んできた。

叫び声、何かが割れる音。まるで私たちを夢から起こそうとしているような音。



お前らの夢の時間は、終りだ。



私と御侍様はひたすらに走った。

地面を引きずるように長く大きいドレスを、初めてうっとうしいと思った。私たちはハイヒールを捨てて裸足で走るしかなかった。


御侍さまの柔らかな足の裏が、ピカピカに磨かれた大理石を走っていく。

邸宅から一歩踏み出した途端、石ころが足の裏に刺さったのを感じた。


走りながら、御侍さまの目は涙でいっぱいになっていた。

追ってくる人たちが、私たちを立ち止まらせてはくれない。

ドレスは道中のいろいろな物に引っかかれて裂けていた。セットした髪はとっくに見る影もなく、宝石の嵌った髪飾りはどこに落としたかも分からない。

恐怖と痛みから逃げるように、私たちは走り続けた。


御侍様の父が放った護衛隊も、逃げ遅れた貴族たちも、みんな無力のまま、怒り狂った人々に捕らえられていた。


御侍様はドレスの裾に躓いて転んでしまい、膝から血がにじみ出した。

私はドレスの一部を噛み切って傷口を縛り、御侍様を背負うようにして走った。

気が付くとそこは、まだ雪の残る森林の中だった。


火のついた松明を掲げ、怒り叫ぶ人々の声が遠くなっていく。

美しかった夢が醒めていく。


この目醒めは、早すぎたし、遅すぎた。


私たちは呼吸を整え、地面の夢を踏みしめて歩いた。

彼らの声が聞こえなくなった頃、私たちは一本の木の幹に、倒れるようにもたれかかった。


ふと上を見上げるとこちらを見つめる冷たい視線があった。

雪のように白い、鷹――








ボルシチ?」


私はハッと気を取り戻した。背中に冷たい汗が流れている。

怪訝そうにこちらを見つめるパスタを前にして、私はむりやり笑顔を見せた。


あの鷹の眼は、いつになっても忘れることはない。


パスタは手に持った依頼人リストを差し出し、私の肩を軽く叩いた。


「彼女の依頼を受けることにした。彼女に会えるよう、用意してくれたまえ」


私は放心したまま頷いた。悪夢にいつも出てくるあの眼が、私の鼓動を速くしていた。


「どうした?」

「…まあいい。時間が決まったら、いつもの方法で私に伝えてくれ。私は先に行くが…顔色がよくないな。体には気を付けたまえ、私たちの仕事に影響が出ぬようにな」

「うん。大丈夫よ」


まだ震えたままの拳を強く握りしめ、私は深く息を吸った。

店に残った酒のにおいが、私を安心させた。



大丈夫、もう過ぎたことだから。


今の私はもう、あの頃みたいに、飾りだけの存在じゃないから。


Ⅳ 愛とは


食霊として生まれた私も、愛とは一体どんなものか、よく分かっていない。

愛はどうやら魔力を持っていて、臆病な人に勇気を与えたり、同時に誰かを騙したりもできる。


パスタの選んだ依頼人は、可愛らしい少女だった。


くるりとカールしたブロンドの長髪を、可愛いリボンで結び、私が昔好きだったような、華麗なドレスを着ている。

この酒場通りでは、めったに見かけることのないタイプだ。



彼女はおどおどしながら店の前に立っていた。

賑わいを見せ始めた店内を、そっと覗き込んだ彼女は、好奇心でいっぱいな顔だった。


彼女に気づくと、 店内は一気に静まり返った。

この村の酒飲みどもでは一生お目にかかれないような美貌を目の前にして、男たちは息を呑んでいる。

男の一人が、絞り出したように優しく少女に声をかけた。


「こんにちは?こちらにはどんな御用で?」

「あ……あの……」


昼間から酒のにおいを漂わせている男たちに囲まれ、泣き出しそうになっている少女を見て、私は昔の自分を見ているような気持ちになった。

昔の私と御侍様も、こんなふうだったのかな。


「こらこら、どきなさい!お客様をびっくりさせないの!今日はもう店仕舞いにするよ!」

「なにい!!!それはねぇだろう、まだ酒も飲み終わっちゃいねぇってのに!」

「今日はタダ酒でいいよ!ほら、行った行った!」

「おおっ!次来た時に払えなんて言うなよマスター!」


私は少女の手を取ると胸に抱き寄せ、驚かせてしまって申し訳なさげにしている酒飲みたちを追っ払った。


ようやくほっと胸を撫で下ろした少女が、グラスで水を飲んでいるのを見て、私は少し我慢できずに声をかけた。


「ごめんなさいね。うちには酒のグラスしかないのよ。ところで、一体どんな依頼なのか詳しく聞かせてくれない?」


少女は少し感激したような目でこちらを見ると、グラスを置いて無邪気に笑った。


「私の恋人と、お父さまのために来たの」


少女はわずかに顔を赤らめ、申し訳なさそうにうつむいた。

それからゆっくりと、語り始めた。


彼女の家柄は御侍様ほどではなかったが、上流の名家だ。


彼女が恋したのは、その家に身を置く執事だった。そして執事も、彼女を深く愛していたという。


それを知った彼女の父は激怒し、執事を家から追い出した。

さらに彼女を徹底的に諦めさせるため、財と勢力のある家柄の男を探し出し、彼女の夫となるよう手配し始めた。


絶望の淵に立たされていたとき、 私たちの噂を耳にした。愛のために、このチャンスに賭けてみようと、 勇気を振り絞ってやって来た。


「私、やっぱりお父さまが大好き。厳しいけど、私のためを思っているのは知ってるわ。でも、執事のことも忘れられないの。お父さまと同じくらい――いえ、もっともっと愛しているから」


話しながら、彼女は淡い微笑みを浮かべた。


「だからみんなで仲良く暮らせたらいいのになって思うの。彼とのこと、お父さまに認めてもらえたらいいのにって」



うっとりとした笑みを浮かべる彼女を見て、私は我慢できずロを開こうとした。

しかし言葉が口から出る前に、ドアが開かれ、パスタが足音を鳴らして入って来た。


「君が依頼人かな。おいで、向こうに行って話そうか」


パスタはその本性を隠せば、世間知らずのお嬢様のお悩みを吐き出させることくらい簡単に出来るだろう。

パスタは厳しい目を向けながら、私のそばを通り過ぎて行った。


その意味を私は理解していた。私は唇を噛んで、テーブルにうなだれた。


彼女に教えてあげなきゃいけないと思った。


愛情なんて、きっとそんなに純粋なものじゃないと。


私の御侍様はその背後にある権力だけじゃなく、かなりの美貌を持って生まれた。

かなりの男が彼女に夢中になるのは、当然のことのように思えた。


でも私たちがあの寒冷な場所に辿り着いたときには、世界は崩れ始めていた。


むしろ……もとから空っぽな事実だったのかもしれない。

見つかってしまった私たちは車に押し込められ、もとは楽園だったわたしたちの邸宅へと薄れ戻された。


邸宅には、彼女を我が物にしようとしていた男たちもいた。


彼らのほとんどは、この事件が起きてから真っ先に自分の権力や財産の大部分を差し出し、なんとか貴族という地位と安全を保っていた。



御侍様は、そのうち一番彼女に優しくしていた男の手を掴むと、助けを求めた。


その男にはかつての優しさはなく、無情にもその手を振り払うと淀んだ目で言い放った。


「君の父上に認められれば、この家の全財産と権力は君の夫のものだろうな。だがこうなってしまった今、 君のように手のかかる女を誰が相手にするもんか」


寒い雪の地で冷え切っていた私たちの体は、彼の言葉によって、徹底的に凍り付いてしまった。



その言葉は、その後のすべての悪夢の始まりだった。


愛、それは騙す者のためにある言葉に過ぎない。


Ⅴ ボルシチ

かつて、こんな国があった。そこは貴族によって統治され、貴族が国のほとんどの資源と特権を享受できる国だった。


統治者のその残酷さは、反発と革命の温床となった。





統治者が武器を捨てて両手を挙げ、特権がひっくり返るのに一晩もかからなかった。


その特権の頂点には、ある貴族一家の存在があった。

一家の一人娘は、料理御侍ではあったものの、危険な戦闘に向かうことはなかった。


彼女の食霊は、まるで彼女の妹かのように受け入れられ、共に誰もが見張るほど豪華な邸宅で暮らしていた。


その贅沢ぶりは、革命の時期においては人々の怒りの中心となった。



――俺たちが暑さ寒さに耐えて耕した食物を、奴らは平気で捨てやがる

――我々が寒さと飢えに耐えている間、あんたらはドレスを作っては捨てるだけ

――わたしらの娘が病気で死んじまったとき、お前たちは舞踏会で男に追われて楽しんでたなんて


彼女の父は力を尽くし、護衛隊を放ち、この鳥かごのような邸宅で大事に育ててきた娘を守ろうとした。だがそのすべては無力に終わった。

どんなに質の良い鎧や鋭利な武器も、無数の労働者たちが振り上げた農具を防ぐことはできなかった。




このわずかな間で、彼女らの世界は崩壊した。

どんな風雨も経験したことがない貴族の少女にとって、これは耐え切れない苦しみだった。


少女は狂ったように泣き、笑い、かつての誇り高い振る舞いを取り戻すと、自らの歯で自分の腕の血管を躊躇なく噛み切った。




仮に過ちを犯してきたのが彼女たちだとしても、貴族としての尊厳、プライドは守り抜く。平民たちが決して侵すことのできない誇りがあるのだ。





ボルシチはとめどなく涙を流しながら、彼女の御侍の腕の、骨が見えるほど深い傷を抑えようとした。

苦難は人を成長させるとは言うが、ボルシチにとって、この成長の代価はあまりにも大きすぎた。

少女はこの革命の中、一瞬で成長を遂げた。

彼女はボルシチの頬に触れ、まもなく彼女を失うこととなるボルシチに思いを告げた。


ボルシチ、泣いちゃだめよ。言ったでしょ。貴族は、貴族らしく……貴族の誇りを持って、生きて……私の、かわりに……」



ボルシチは大声で泣きたいのをこらえて、歯を食いしばった。





ボルシチは、雪の地で見た鷹の眼を永遠に忘れることはない。

それは鷹を肩に載せた女だった。女の眼も、鷹のそれと同じように冷たく、感情を感じさせなかった。

まるで、その視界に入る価値すらないかのような冷たさだった。


鷹と女の冷たく鋭い視線は、濃厚な死の恐怖を感じさせた。彼女は私を見逃さないだろう、とボルシチは覚悟を決めた。しかし、次の瞬間、女はくるりと後ろを振り向くと去って行った。


助かった、と思ったのも束の間、背後から農具を片手に掲げた追手が走って来るのが見え、微かに灯った希望の火は消えた。




ボルシチは、なぜ私を見逃したのだろう、と疑問に思っていた。

でもそれは……猫が鼠を捕まえるゲームを、楽しんでいただけなのね……


私を見逃したこと、いつかきっと、後悔するわよ。





ボルシチは深い憎しみを抱えたまま、しかしそれが力となって、辛い日々を乗り越えて大きく成長した。

あの地獄に帰り、女に復讐してやりたいと思うこともあるが、女は悪夢に出てくるだけでその場所にはとっくにいないのだった。


その後新たに作られた国家すら、すでに壊滅していた。




目的を失ったボルシチは、放心したまま、パスタの差し出した手を握り返した。


「何をしたらいいか分からないのなら、私の命令に従ってみてはどうだ。私が、君を導こう」


高慢で勝ち誇ったようなその笑みが、なぜだかかつての御侍の優しい笑顔と重なった。


「いいわ……」





今日もナイフラストにあるその小さな酒場の商売は上々だ。

入り口のドアが開かれ、ベルが鳴る。颯爽と入って来た白い鷹を肩にのせた女が、その場の客の視線をくぎ付けにした。


透き通るような、冷たい声が響く。


ウォッカ、ロックでちょうだい」


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タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
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  • RPG(ロールプレイング)
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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