稔歳之佑・ストーリー・サブ29~42
#include(稔歳之佑・ストーリー・サブ29~42,)
※誤植等が多いため、文脈的に正しいと思われる部分を差し替えたものを表記しています。
29.雪が降りそうな夕方・四
うん……あなたの言うとおりにする。
聖教
庭
ハイビスカスティー:小毛は最近また太った、大毛は白くなったみたいだ〜、ほら、抱っこしてやろう〜
蛇スープ:……
ハイビスカスティーは雪のように白い2匹のうさぎを抱きしめてからかうと、隅の方にただならぬ冷たい気配をかすかに感じた。
ハイビスカスティー:蛇スープ、隠れてないで、この可愛い子たちを見てみて。
蛇スープ:……もふもふして、嫌い。
ハイビスカスティー:……まだ怒っているのか?
蛇スープ:……怒ってない。
ハイビスカスティー:ふふ、昨日……青ちゃんと白ちゃんがこの子たちを食べてしまいそうになったよね。
蛇スープ:……すみません……
ハイビスカスティー:気にしないで、君に誤って欲しかったわけじゃないよ。ただ……これは聖女から送ってきたものだと知っているよね。
蛇スープ:……
ハイビスカスティー:言いたいことはわかる。彼女のために、この子たちの世話をしているわけではない。一時的なものだよ……
ハイビスカスティー:それに、この子たちをもっと丸く太らせたら、青ちゃんと白ちゃんも美味しく食べられるだろう?
蛇スープ:……うん……あなたの言うとおりにする……
ハイビスカスティー:ふふ、わかってくれたらいい。さあ、触ってみようか?
30.新年を迎える・四
現実的すぎる……
数日前
南離印館
蟹醸橙:……幽霊の谷のうさぎは虎のように強く、赤い目と鋭い歯を持っていると言われている!毎晩、真夜中になると……村民の家に忍び込み、子供たちを奪ってしまうんだと……
蟹醸橙:うさぎの妖怪は血に飢えていて、子供たちの血を吸い尽くしてしまう……わああ――?!だ、誰が殴った!?
彫花蜜煎:……真っ昼間に仕事をしないで、またどんなでたらめな話をでっち上げているのですか。
蟹醸橙:ああ……びっくりした……誰がでたらめだって?全部最近町で噂になっていることだよ。
焼き小籠包:最近厄除けのお守りがよく売れてるのも納得ですね……
彫花蜜煎:まあ……こんなにあやふやに伝えられている話は、ほとんど嘘だろうな。
焼き小籠包:でも、子供が行方不明になるは確かだし、夜に外出するときは注意が必要ですよ。
蟹醸橙:このうさぎの妖怪の正体はいったいなんなのだろう……待って……夜になると、いっそう僕ら……いたいっ、彫花蜜煎、また僕を殴ったな!
彫花蜜煎:そんな大胆なことができるのは、でたらめを言ってるときだけだよね。うさぎの妖怪を捕まえに行く?妖怪が現れないうちからビビっちゃった?
焼き小籠包:こ、これは確かに危ないですね……それに、そこは鬼谷書院の管轄下だから、本来なら私たちの管轄範囲でありません。
蟹醸橙:もう見破られた……いつか館長たちのように強くなれたらいいのに……
彫花蜜煎:うさぎ妖怪だかなんだか知らないけど、このままさぼったら、今日の仕事が終わらないよ。あなたのために松の実酒さんに嘘をつくとは思わないで。
蟹醸橙:……うう……現実的すぎる……
31.新年を迎える・五
朱雀様って?
大晦日前
景安商会
月が輝き、雲が晴れる。全身が炎に包まれた鳳凰が羽ばたき、通りすぎたいたるところには輝かしい光が燃え上がる。
しかし、鳳凰はしばらく飛んでいたが、突然力を失い、よろめきながら落ちてしまった。同時に、ふたりの姿が急いで近づいて来くる――
獅子頭:あ、また落ちた。やっぱりなにかが足りないみたい……
松鼠桂魚:だから鳳凰に余分な燃料を入れちゃいけないって。この火は翼にある機械仕掛けまで燃やしてしまうじゃない。
獅子頭:それはだめだ!火がないと、鳳凰って言えないじゃないか。大晦日までまだ数日あるし、必ず改良するから!
その時、突然美しい鳴き声が聞こえてきて、ふたりは思わず顔を上げた。夜空の下、大きな鳥が自分たちに向かって飛んで来た。
東安子鶏:――見つけた!朱雀の吉兆が現れたところ!!
獅子頭:え?朱雀?
ふたりが反応する前に、鳥の背中に乗った少年が急いで近づいてきたが、散らばっている鳥型の仕掛けを見ると、彼は思わず目を見開いた。
東安子鶏:こ、これは仕掛け?……朱雀様じゃなかったのか……
松鼠桂魚:朱雀様って?
東安子鶏:知らないのか?みんながここに朱雀様が天から降りた吉兆が現れたと言っているから、ここまで追ってきた……
松鼠桂魚:ぷっ……はははは!うちの鳳凰はいつ天から降りた吉兆になったの?
東安子鶏:え?鳳凰?
獅子頭:そう、これは僕たちが作ったら機械仕掛けの不死鳥で、まだ飛行テスト中なんだよ。
東安子鶏:なんだ……そうだったのか……
獅子頭:まあ、あなたも食霊だよね。あなたの後ろにいる大きな鳥は、もしかしたら伴生獣?
東安子鶏:うん、名前は重明の鳥っていうんだ!
獅子頭:えへへ、あの……鳳凰にはちょうど改善すべきところがあるので……翼の構造を見せてくれないか、報酬は払うから!
32.酒飲んで楽しむ・三
これは提灯より重いぞ。
大晦日
夢回谷
エンドウ豆羊かん:ロイヤルゼリー、もっ左に下げて!斜めになっている!
エンドウ豆羊かん:凍頂烏龍茶、こっちの年画は歪んでいる!掛け方がなっとらん。
ロイヤルゼリー:……めんどくさい。
凍頂烏龍茶:床を掃いても花瓶を割るくせに、人をこき使うのだけは上手になったものだ。
エンドウ豆羊かん:……と、とにかく、其方らは賭けには負けたんじゃから、今日の仕事は全部妾の言うことを聞くのじゃ!
いつもは威勢のいいふたりが反論できないのを見て、エンドウ豆羊かんは思わず口角を上げ、ゆったりと生花の皮を吐き出し、指示をつづけた。
エンドウ豆羊かん:最後に、この提灯は君山姉さんが作った故、ちゃんと掛けるのじゃ。提灯……えっ、提灯はどこに行ったのじゃ!?さっき足元に置いてあったのに。
ロイヤルゼリー:……あそこだ。
ロイヤルゼリーが指さした方向を見ると、空中に一列の赤い提灯が浮かんでいて、ふたつの見慣れた姿はその中に囲まれ、はしゃいでいた。
凍頂烏龍茶:うむ……どうやら、天雷と地火はあれをおもちゃと思ったみたいだな。
エンドウ豆羊かん:やつらを止めぬから壊れたら大変じゃ!
凍頂烏龍茶:おや?親王さまと呼んでくれれば、止めてあげるが。どうだ?
ふたりがいがみ合っている間に、提灯はすでに2匹の小竜に高く投げられ、縄の結び目が絡み合って、既に掛けられている彩色の布に結びついてしまった。
がらがら――
エンドウ豆羊かん:わあ、まずい!落ちてくる!
凍頂烏龍茶:気をつけろ!
ロイヤルゼリー:あっちに行って、俺が自分で……うっ!
絡み合った飾りは、天女が花を散らすように落ち、一瞬の後、ロイヤルゼリーは自分の下にいる人が凍頂烏龍茶であることに気づいた。
凍頂烏龍茶:……やっぱり武術の修行を怠ってないみたいだな。これは提灯より重いぞ。
ロイヤルゼリー:……てめぇ!!
ロイヤルゼリーは思わず身を起こそうとしたが、乱雑な紐で引っかかってしまった。動いて引き離そうとしているうちに、彩色の紐がますますきつくなり、ふたりは美しい繭のように絡み合った。
エンドウ豆羊かん:ぷははは―――!これでふたりとも蛇になったな!
凍頂烏龍茶:……動くな、もっと絡まってしまうぞ。
ロイヤルゼリー:……てめぇがあばれてるんだろ!手を離せ!こんな紐など切って……
凍頂烏龍茶:君山さんが作ったんだぞ?切ってはさすがにかわいそうだろう?
ロイヤルゼリー:……
凍頂烏龍茶:急がなくていい、時間をかければ必ず解けるよ。ふふ……
33.酒飲んで楽しむ・四
正式に夢回谷に客として行くわけだ。
大晦日
絶境
晴れた日差しの中、一行の霊鶴が車を乗せて雲霧を超え、空を飛んでいる。
碧螺春:貴方の霊鶴がこんなに役に立つなんて知ったら、私が島を出るときにあんなに苦労する必要はなかったのに。
松鶴延年:……一度きりです、彼らは人を運ぶためには使われるものではありません。
碧螺春:ふふ、私も適当に言っただけだ。それにしても、この車の速度は遅すぎる。
松鶴延年:……誰かが大量の酒をつんできたからでしょう。
玉麒麟:どこかの頑固者が書画の巻物を年越しの手土産として持って来たからじゃないか?そんなものよりも、うまい酒のほうが使い道はあるだろう?
松鶴延年:……お酒はあまりにも適当すぎる、器物こそが気品を表している。
玉麒麟:プレゼントはもちろん誠意が大切だ。取り繕ったものなどつまらんだろ。
松鶴延年:貴方……!
碧螺春:貴方たち、喧嘩はやめて、私の作った香料をプレゼントするほうが、よっぽど特別に決まっている。
普洱:……絶境はみんなの持って来たせいで、車は重くなったじゃない。
玉麒麟:……
松鶴延年:……
碧螺春:まあ、正式に夢回谷に客として行くわけだ、プレゼントを多く持っていくことも悪くない〜そうだ、みんなは自分のことで忙しいようだけど、今、誰が車の操縦をしている?
碧螺春が話した瞬間、車内が静まり返った。みんなが一斉に車の前にいる如意巻きを見ると、周りの景色がいつからか寂しくなっていることに気づいた。
松鶴延年:……さっき、ちょっと霊鶴を見てもらっただけだったのに、なぜ道がはずれたのか……
如意巻き:わ、わからない……先生のおっしゃるとおり北に行ったのに……
松鶴延年:……まあいい、私の不注意だった。
玉麒麟:平気平気、外出すると、思わぬ事故に遭遇するものだ。日没前に着ければいい。
34.酒飲んで楽しむ・五
これは生まれ持った呪いだよ……
大晦日
夢回谷
エンドウ豆羊かん:だから……普洱が生き物に触れたら、本当に枯れさせてしまうじゃろ?
金糸蜜棗:麒麟島主が嘘をつくわけがないから、むやみに聞くのはやめよう……
金糸蜜棗は好奇心旺盛なエンドウ豆羊かんを引っ張ったが、普洱は平然と、意外そうな様子はなかった。
普洱茶:大丈夫、あたしもたくさんの人にそう聞かれた……これは生まれ持った呪いだよ……
金糸蜜棗:まさかこんな変な呪いがあるなんて、行動するのも不自由になるよね。
普洱茶:もう慣れたよ……少なくとも絶境では、砂時計が助けてくれる。
エンドウ豆羊かん:大丈夫、絶境みたいなすごいところじゃ。きっとなんとかなる!
金糸蜜棗:そうだよ、麒麟島主もとても強いし!
普洱茶:うん……ありがとう……
エンドウ豆羊かん:でも……妾もこの技で凍頂烏龍茶を怖がらせることができたらようのう。さすれば、もう妾をいじめる勇気がなくなるだろう、ふふ〜
凍頂烏龍茶:ほう、客をもてなすよう頼んだのに、貴殿のその態度はなんだ?
エンドウ豆羊かん:わ、妾たちの話を盗み聞きするな!
凍頂烏龍茶:ただ偶然通りかかっただけだ。誰かさんがそんなことを考えていたとは思わなかった。
エンドウ豆羊かん:聞き間違いじゃ……そういえば、君山姉さんに頼まれていたな。先に失礼するぞ……!
35.雪が降りそうな夕方・五
白髪の英雄?
大晦日
夢回谷
玉麒麟:一年ぶりだな。夢回谷は今も平和か?
君山銀針:島主、お気遣い痛み入る。前回の虎蛟事件を解決して以来、谷内はとても平和であった。
君山銀針:ん……麓で堕神が出てきたことは一度あるが、みな駆けつけたときには、とある白髪の英雄が既に解決しておった。
玉麒麟:白髪の英雄?
君山銀針:うーん、近くにいた者たちが言うに、堕神をあっさりと倒したらしいんだが。彼の後ろには赤い服を着た男がおり、彼を追いかけて「玄武」と呼んだとか。
玉麒麟:玄武……?
玉麒麟:(まさかあのバカ龍の言う玄武神君か……ふふ、おもしろい……)
君山銀針:麒麟島主?いかがした?
玉麒麟:いや、なんでもない……ただ、これから面白いことが起こりそうだと思っただけだよ。じゃあ、飲もうか。
36.雪が降りそうな夕方・六
毎年こんな感じだったらいいのに……
大晦日夜
夢回谷
花火が輝かしく燃え続け、爆竹の音が梅の枝に落ちて喧騒を引き起こし、屋内では食事の香りと酒の香りが濃厚に漂う。人々は既に酔い潰れ、一面に倒れてた。
エンドウ豆羊かん:ふふふ……妾は凍頂烏龍茶よりも強い!げっぷー、知ってるか?妾は劇場でタヌキを倒したことがあるのじゃ!
如意巻き:うーん……なんの焼肉?
エンドウ豆羊かん:タヌキじゃ!
如意巻き:焼肉……美味しい……!
エンドウ豆羊かん:このバカ、食べることしか考えていないな!
松鶴延年:ふたりとも……まず手すりから降りなさい……不思議ですね、自家製の桃汁なのに、どうしてふたりはこんなに酔っぱらって……
君山銀針:麒麟島主……持ってきた酒……実にうまい……
玉麒麟:当然だ、やはり頑固者にはその良さがわからない……
ロイヤルゼリー:……臭い、酔っぱらいは部屋に帰れ、近づくな。
凍頂烏龍茶:なにを言ってる……それなら余を連れて帰ってくれるか……
ロイヤルゼリー:……あっちへ行け。
冰糖燕窩:いいですね……毎年こんな感じだったらいいのに……
37.新年を迎える・六
うさぎのぬいぐるみを使って謝るなんて。
大晦日前
ある城の中
街はにぎやかで、様々な露店が並んでいる。モクセイケーキはその賑わいの中を散歩し、祭りの雰囲気に包まれ、心も穏やかになってきた。
店主:お嬢さん、この雪玉うさぎ毛かんざし、今年の街で一番人気商品で、これが最後の一つですよ、逃したら手に入りませんよ!
モクセイケーキ:ありがとうございます……わたくしはちょっと見てるだけです……
店主:このかんざしは、お嬢さんにぴったりですよ!買って帰ったお嬢さんは、みんな自分の旦那様から褒められています!
モクセイケーキ:わ、わたくしは……本当に彼は好きになってくれるでしょうか……
モクセイケーキは頬を赤く染め、視線をそらすと、隣にいた人がいなくなっていることに気づいた。
モクセイケーキ:え?黄山はどこに行ってしまったの?
彼女が振り向くと、黄山毛峰茶は人々に囲まれ、熱心に話していた。なぜか彼女の胸には、羞恥心と怒りがこみ上げてきた。
店主:……おい、お嬢さん!どこへ行くのですか!このかんざし、もう要りませんか?
モクセイケーキが気がつくと、周りはもう賑やかな様子がなくなっていた。彼女は指を絡めながら、失望と後悔の感情が押し寄せるのを感じた。
しかし次の瞬間、前方のなにもなかったところから、手のひらサイズのうさぎのぬいぐるみが飛び出してきた。その後ろには、さっきの露店に置いてあった、あの真っ白なかんざしを抱えている。
うさぎのぬいぐるみ:美人のお姉さん、怒らないでください。このかんざしをあなたにあげるよ〜
モクセイケーキ:なに?
うさぎのぬいぐるみ:彼はあなたがこのかんざしを気に入ったと思って、謝罪の意味も込めて買ってあげたんだピョン〜
可愛らしいぬいぐるみは、気取ったような声で話しながら揺れ動き、モクセイケーキは思わず笑ってしまった。
モクセイケーキ:うさぎのぬいぐるみを使って謝るなんて。
黄山毛峰茶:あら、もう怒ってないみたいだね?
モクセイケーキ:わたくしは、ぬいぐるみを許しただけで、あなたを許したわけではありません……
黄山毛峰茶:急に起こったことで、貧道も思い及ばなかった。さきほど、鬼谷の近くに住まうと申す者が貧道に占いを頼み、やはり鬼谷で異変が起きると見えた。恐らく、災難が起こるだろう。
モクセイケーキ:え?
黄山毛峰茶:まあ、幸いにも解く方法があり、最後には凶から吉に転ずる。しかしお主に話す前に、振り返ったら、その者はいなくなってしまった。
モクセイケーキ:……もうわかりました……!
黄山毛峰茶:いたっ……なにゆえ貧道は殴られたのだ……はあ、かんざしを受け取ったのに、こんなに急いでどこへ行く?
38.新年を迎える・七
書院の先生がみんなきれいだって聞いたよ!
大晦日前
墨閣
パチンッ――
茶糕:あの鬼谷書院といえば、大したもので……
一幕が終わると、小さなふわふわした頭がふたつ、待ちかねたように台の前に寄ってきた。
餃子:茶糕姉さん!……あの鬼谷書院ってところはすごいね、オイラたちも……あそこで勉強できるの?
茶糕:鬼谷書院の学生は大半人間ですが、食霊も拒否しませんよ。でも、鬼谷書院に入るには厳しい試験を受けないと……
湯圓:試験?ええと……湯圓は高く飛べるし、文字もたくさん書ける!
餃子:オイラは重い麺棒を持ち上げられる!
茶糕:ぷははは、鬼谷書院の試験は四書五経、六芸を問うものですよ。これらに合格しなければ、正式な書院の学生にはなれません。
茶糕:先生というと、もっと厳しいですよ〜
餃子:四五六ってなに……それじゃあ希望がないじゃないか……
悔しそうに頭を下げるふたりを前に、茶糕はにっこり笑い、冷静に扇子を振った。
茶糕:実はさっきのは嘘ですよ。鬼谷書院は常にあらゆる立場の生徒を受け入れ、平等に扱っております。本当に勉強する心があるならば、心配する必要はないよ。
湯圓:ほ、本当?それならがんはらなきゃ!
茶糕:いいよ、では、朗報をお待ちしていますね〜
39.新年を迎える・八
これは「大吉大利砲」って言うんだ、見た人に幸運をもたらすんだよ〜
大晦日
墨閣
臘八麺:兄弟子――兄弟子――!
臘八麺:おかしいな……兄弟子がどこにも見当たらない……大晦日の宴会はもうすぐ始まるのに……
臘八麺は庭をうろつきながら探していたが、オレンジの姿が見あたらなかった。彼が頭を抱えている時、足元の雪の中にオレンジ色の果物が埋まっているのを見つけた。
臘八麺:あれ?誰がこんなところに果物を捨てたんだろう……わあ!
臘八麺が果物を手に取った瞬間、パチパチと爆発音がして、手にした果物が不意に火花を散らした。
柿餅:はははは〜!どうだ、俺が作った花火だ。驚いただろう〜
臘八麺:……兄弟子?こ、これは危なすぎる!他の人だったら大変ですよ。
柿餅:大丈夫、俺は試しているだけだ、あちこちに投げ捨ててるわけじゃない。
柿餅:杏仁ちゃんが言ってたけど、最近台所には盗み食いのネズミがいっぱいいるんだって。それを壁に埋めて、おどかしてやるつもりだ!
臘八麺:そういうことでしたか、じゃあ私も手伝うよ!
柿餅:へへ、いいよ〜
臘八麺はそう言って足をあげようとしたが、足元がガリッと音を立てた。彼は瞬間で跳び退き、踏んだ雪が爆発して、火花を散らした。
臘八麺:うわーっ!
柿餅:プッハハハハ!今回は本当に驚いただろう!これは「大吉大利砲」って言うんだ。見た人に幸運をもたらすんだよ〜
臘八麺:兄弟子……!
40.雪が降りそうな夕方・七
みんなで踊らないと〜
大晦日夜
ある城の中
大晦日の夜、小さな町は華やかな飾りと花火で盛り上がっている。お屠蘇、よもぎ団子、臘八粥が街を散策していると、そう遠くないところに小さな広場があり、そこでたくさんの人と音楽で賑わっているのが見えた。
よもぎ団子:前が賑やかですね、誰かが踊ってるようです。
お屠蘇:この踊り、すごく新鮮だし、面白そうだね。
通行人:へへ、お嬢さん、ご存じない?これは古の山霊祭祀舞で、鬼谷書院の雪掛先生が最近復元したものだそうだ。
臘八粥:動きが普通の踊りと違って見えると思いましたが、そういう意味があったんですね。
通行人:一緒に勉強しに来ない?踊る人が多ければ、祭りの力が強くなるって言われているよ。
臘八粥:いいよ、祭りなら得意ですもの〜
よもぎ団子:で、でも……私、踊りとかできないし……
お屠蘇:私を見るな、戦うのは得意だが、踊りは無理だ。
通行人:心配しないで、試してみて。とっても簡単だよ!
臘八粥:よもぎ団子、来て!祭祀というものは、踊りよりも、誠意のほうが大事だよ。
よもぎ団子:じゃあいいよ、うーん、ちょっと、臘八粥、そんなに急がないで……
お屠蘇:……やめろ!
臘八粥:ふふ、よもぎ団子、手をもっと高く上げて、お屠蘇、動きが硬い〜
よもぎ団子:うわっ!すみません……!
月明かりが照らす中、3人は町の人たちと一緒に踊り、かがり火は人々の喜ぶ顔をさらに明るく照らした。
41.お年越し・二
それも一種の守るということだろう。
数日前
ある城の中
カチンッ
茶糕:前回、その素敵なカップルが玉泉村で悪人を倒し、盗賊団一味を壊滅させたが、町の人からお金を受け取らずに去ったという話をいたしました。今日は、彼らがどのような妙策で怪物を捕まえたかという話でござい……
簡素で上品な茶屋の中で、語り手の生き生きとした挨拶に、客たちは心を奪われ、次第に喝采の声が聞こえ、賑やかだった。
甘酒団子:紹興酒兄さん……このふたりの英雄、本当にすごいですね。
紹興酒:ああ、最近どこへ行っても彼らの話を耳にする……ふふ、聞くことに夢中になって、またお菓子が顔についてしまったぞ。
甘酒団子が気づくと、口元に残ったカスはそっと拭かれていた。向こうの紹興酒が諦めたような笑顔を浮かべるのを見て、甘酒団子の頬が赤くなった。
甘酒団子:私も……あんなにすごい人になれたら……よかったです……
紹興酒:でも俺様から見れば、今の酒醸は十分すごいぞ。
甘酒団子:え……でと、ずっと紹興酒兄さんが私たちを守ってくれたじゃないですか?
紹興酒:甘酒団子もいつも自分なりの方法で周りの人に温かさを与えてるんだ。それも一種の守るというのとだろう。
紹興酒:人を温かい気持ちにさせるのは簡単なことじゃない。戦いや殺し合いは、俺様に任せればいい。
甘酒団子:紹興酒兄さん……わかりました!私もがんばって、皆を守ります!
42.お年越し・三
人を騙すやつ。
数日前
南離印館
生姜牛乳プリン:この絵を見せるために、わざわざあたしを?うーん……でも、君のスタイルにも似ていないようね。
ヨンジーガムロ:もちろん私のじゃない。手に入れるのに一苦労したんだけど、作者はグルイラオ王宮の宮廷画家よ。
生姜牛乳プリン:でも、どうして外国のものなのに……光耀大陸の文字が書いてるのだろう……
ヨンジーガムロ:……なんだって?
生姜牛乳プリン:ほら、この絵の隅のページの隙間に。
ヨンジーガムロ:そんなに目立たない場所でも気づくなんて、さすが時計修理師!どれどれ……特別な印鑑のようね……羊……羊六なにか魚……
生姜牛乳プリン:……羊方蔵魚だよね、あのよく荷物を背負って館内を徘徊して、人を騙すやつ。あたしも彼に騙されそうになったの。
ヨンジーガムロ:思い出した!この絵、彼から買ったのだ!
生姜牛乳プリン:……あんた、彼に騙されたんじゃない?
ヨンジーガムロ:そんな……買った時は大丈夫だったのに……
生姜牛乳プリン:とにかく、彼に責任を取らせに行かなきゃ。
しばらくすると――
片児麺:羊方蔵魚?豆沙糕の話を聞いていますが、先程彼が一枚の絵を持って、ニヤニヤしながら出てい行きました。あの人を探して、なんの用事でしょうか?
ヨンジーガムロ:私が不注意だった。ニセの絵を売られてしまった……
片児麺:……前回の古画の授業、よく聞いていなかったようですね。確かに海外の絵画は光耀大陸の絵画とは異なりますが、古代の絵画はそれでも共通の……
ヨンジーガムロ:まずい……、片児麺さんが古画の話になると止まらなくなるよ……
生姜牛乳プリン:……それじゃあ、あたしが彼を探してくるよ。まだ近くにいるかもしれないし!
ヨンジーガムロ:え?もう行ったの?
※誤植等が多いため、文脈的に正しいと思われる部分を差し替えたものを表記しています。
29.雪が降りそうな夕方・四
うん……あなたの言うとおりにする。
聖教
庭
ハイビスカスティー:小毛は最近また太った、大毛は白くなったみたいだ〜、ほら、抱っこしてやろう〜
蛇スープ:……
ハイビスカスティーは雪のように白い2匹のうさぎを抱きしめてからかうと、隅の方にただならぬ冷たい気配をかすかに感じた。
ハイビスカスティー:蛇スープ、隠れてないで、この可愛い子たちを見てみて。
蛇スープ:……もふもふして、嫌い。
ハイビスカスティー:……まだ怒っているのか?
蛇スープ:……怒ってない。
ハイビスカスティー:ふふ、昨日……青ちゃんと白ちゃんがこの子たちを食べてしまいそうになったよね。
蛇スープ:……すみません……
ハイビスカスティー:気にしないで、君に誤って欲しかったわけじゃないよ。ただ……これは聖女から送ってきたものだと知っているよね。
蛇スープ:……
ハイビスカスティー:言いたいことはわかる。彼女のために、この子たちの世話をしているわけではない。一時的なものだよ……
ハイビスカスティー:それに、この子たちをもっと丸く太らせたら、青ちゃんと白ちゃんも美味しく食べられるだろう?
蛇スープ:……うん……あなたの言うとおりにする……
ハイビスカスティー:ふふ、わかってくれたらいい。さあ、触ってみようか?
30.新年を迎える・四
現実的すぎる……
数日前
南離印館
蟹醸橙:……幽霊の谷のうさぎは虎のように強く、赤い目と鋭い歯を持っていると言われている!毎晩、真夜中になると……村民の家に忍び込み、子供たちを奪ってしまうんだと……
蟹醸橙:うさぎの妖怪は血に飢えていて、子供たちの血を吸い尽くしてしまう……わああ――?!だ、誰が殴った!?
彫花蜜煎:……真っ昼間に仕事をしないで、またどんなでたらめな話をでっち上げているのですか。
蟹醸橙:ああ……びっくりした……誰がでたらめだって?全部最近町で噂になっていることだよ。
焼き小籠包:最近厄除けのお守りがよく売れてるのも納得ですね……
彫花蜜煎:まあ……こんなにあやふやに伝えられている話は、ほとんど嘘だろうな。
焼き小籠包:でも、子供が行方不明になるは確かだし、夜に外出するときは注意が必要ですよ。
蟹醸橙:このうさぎの妖怪の正体はいったいなんなのだろう……待って……夜になると、いっそう僕ら……いたいっ、彫花蜜煎、また僕を殴ったな!
彫花蜜煎:そんな大胆なことができるのは、でたらめを言ってるときだけだよね。うさぎの妖怪を捕まえに行く?妖怪が現れないうちからビビっちゃった?
焼き小籠包:こ、これは確かに危ないですね……それに、そこは鬼谷書院の管轄下だから、本来なら私たちの管轄範囲でありません。
蟹醸橙:もう見破られた……いつか館長たちのように強くなれたらいいのに……
彫花蜜煎:うさぎ妖怪だかなんだか知らないけど、このままさぼったら、今日の仕事が終わらないよ。あなたのために松の実酒さんに嘘をつくとは思わないで。
蟹醸橙:……うう……現実的すぎる……
31.新年を迎える・五
朱雀様って?
大晦日前
景安商会
月が輝き、雲が晴れる。全身が炎に包まれた鳳凰が羽ばたき、通りすぎたいたるところには輝かしい光が燃え上がる。
しかし、鳳凰はしばらく飛んでいたが、突然力を失い、よろめきながら落ちてしまった。同時に、ふたりの姿が急いで近づいて来くる――
獅子頭:あ、また落ちた。やっぱりなにかが足りないみたい……
松鼠桂魚:だから鳳凰に余分な燃料を入れちゃいけないって。この火は翼にある機械仕掛けまで燃やしてしまうじゃない。
獅子頭:それはだめだ!火がないと、鳳凰って言えないじゃないか。大晦日までまだ数日あるし、必ず改良するから!
その時、突然美しい鳴き声が聞こえてきて、ふたりは思わず顔を上げた。夜空の下、大きな鳥が自分たちに向かって飛んで来た。
東安子鶏:――見つけた!朱雀の吉兆が現れたところ!!
獅子頭:え?朱雀?
ふたりが反応する前に、鳥の背中に乗った少年が急いで近づいてきたが、散らばっている鳥型の仕掛けを見ると、彼は思わず目を見開いた。
東安子鶏:こ、これは仕掛け?……朱雀様じゃなかったのか……
松鼠桂魚:朱雀様って?
東安子鶏:知らないのか?みんながここに朱雀様が天から降りた吉兆が現れたと言っているから、ここまで追ってきた……
松鼠桂魚:ぷっ……はははは!うちの鳳凰はいつ天から降りた吉兆になったの?
東安子鶏:え?鳳凰?
獅子頭:そう、これは僕たちが作ったら機械仕掛けの不死鳥で、まだ飛行テスト中なんだよ。
東安子鶏:なんだ……そうだったのか……
獅子頭:まあ、あなたも食霊だよね。あなたの後ろにいる大きな鳥は、もしかしたら伴生獣?
東安子鶏:うん、名前は重明の鳥っていうんだ!
獅子頭:えへへ、あの……鳳凰にはちょうど改善すべきところがあるので……翼の構造を見せてくれないか、報酬は払うから!
32.酒飲んで楽しむ・三
これは提灯より重いぞ。
大晦日
夢回谷
エンドウ豆羊かん:ロイヤルゼリー、もっ左に下げて!斜めになっている!
エンドウ豆羊かん:凍頂烏龍茶、こっちの年画は歪んでいる!掛け方がなっとらん。
ロイヤルゼリー:……めんどくさい。
凍頂烏龍茶:床を掃いても花瓶を割るくせに、人をこき使うのだけは上手になったものだ。
エンドウ豆羊かん:……と、とにかく、其方らは賭けには負けたんじゃから、今日の仕事は全部妾の言うことを聞くのじゃ!
いつもは威勢のいいふたりが反論できないのを見て、エンドウ豆羊かんは思わず口角を上げ、ゆったりと生花の皮を吐き出し、指示をつづけた。
エンドウ豆羊かん:最後に、この提灯は君山姉さんが作った故、ちゃんと掛けるのじゃ。提灯……えっ、提灯はどこに行ったのじゃ!?さっき足元に置いてあったのに。
ロイヤルゼリー:……あそこだ。
ロイヤルゼリーが指さした方向を見ると、空中に一列の赤い提灯が浮かんでいて、ふたつの見慣れた姿はその中に囲まれ、はしゃいでいた。
凍頂烏龍茶:うむ……どうやら、天雷と地火はあれをおもちゃと思ったみたいだな。
エンドウ豆羊かん:やつらを止めぬから壊れたら大変じゃ!
凍頂烏龍茶:おや?親王さまと呼んでくれれば、止めてあげるが。どうだ?
ふたりがいがみ合っている間に、提灯はすでに2匹の小竜に高く投げられ、縄の結び目が絡み合って、既に掛けられている彩色の布に結びついてしまった。
がらがら――
エンドウ豆羊かん:わあ、まずい!落ちてくる!
凍頂烏龍茶:気をつけろ!
ロイヤルゼリー:あっちに行って、俺が自分で……うっ!
絡み合った飾りは、天女が花を散らすように落ち、一瞬の後、ロイヤルゼリーは自分の下にいる人が凍頂烏龍茶であることに気づいた。
凍頂烏龍茶:……やっぱり武術の修行を怠ってないみたいだな。これは提灯より重いぞ。
ロイヤルゼリー:……てめぇ!!
ロイヤルゼリーは思わず身を起こそうとしたが、乱雑な紐で引っかかってしまった。動いて引き離そうとしているうちに、彩色の紐がますますきつくなり、ふたりは美しい繭のように絡み合った。
エンドウ豆羊かん:ぷははは―――!これでふたりとも蛇になったな!
凍頂烏龍茶:……動くな、もっと絡まってしまうぞ。
ロイヤルゼリー:……てめぇがあばれてるんだろ!手を離せ!こんな紐など切って……
凍頂烏龍茶:君山さんが作ったんだぞ?切ってはさすがにかわいそうだろう?
ロイヤルゼリー:……
凍頂烏龍茶:急がなくていい、時間をかければ必ず解けるよ。ふふ……
33.酒飲んで楽しむ・四
正式に夢回谷に客として行くわけだ。
大晦日
絶境
晴れた日差しの中、一行の霊鶴が車を乗せて雲霧を超え、空を飛んでいる。
碧螺春:貴方の霊鶴がこんなに役に立つなんて知ったら、私が島を出るときにあんなに苦労する必要はなかったのに。
松鶴延年:……一度きりです、彼らは人を運ぶためには使われるものではありません。
碧螺春:ふふ、私も適当に言っただけだ。それにしても、この車の速度は遅すぎる。
松鶴延年:……誰かが大量の酒をつんできたからでしょう。
玉麒麟:どこかの頑固者が書画の巻物を年越しの手土産として持って来たからじゃないか?そんなものよりも、うまい酒のほうが使い道はあるだろう?
松鶴延年:……お酒はあまりにも適当すぎる、器物こそが気品を表している。
玉麒麟:プレゼントはもちろん誠意が大切だ。取り繕ったものなどつまらんだろ。
松鶴延年:貴方……!
碧螺春:貴方たち、喧嘩はやめて、私の作った香料をプレゼントするほうが、よっぽど特別に決まっている。
普洱:……絶境はみんなの持って来たせいで、車は重くなったじゃない。
玉麒麟:……
松鶴延年:……
碧螺春:まあ、正式に夢回谷に客として行くわけだ、プレゼントを多く持っていくことも悪くない〜そうだ、みんなは自分のことで忙しいようだけど、今、誰が車の操縦をしている?
碧螺春が話した瞬間、車内が静まり返った。みんなが一斉に車の前にいる如意巻きを見ると、周りの景色がいつからか寂しくなっていることに気づいた。
松鶴延年:……さっき、ちょっと霊鶴を見てもらっただけだったのに、なぜ道がはずれたのか……
如意巻き:わ、わからない……先生のおっしゃるとおり北に行ったのに……
松鶴延年:……まあいい、私の不注意だった。
玉麒麟:平気平気、外出すると、思わぬ事故に遭遇するものだ。日没前に着ければいい。
34.酒飲んで楽しむ・五
これは生まれ持った呪いだよ……
大晦日
夢回谷
エンドウ豆羊かん:だから……普洱が生き物に触れたら、本当に枯れさせてしまうじゃろ?
金糸蜜棗:麒麟島主が嘘をつくわけがないから、むやみに聞くのはやめよう……
金糸蜜棗は好奇心旺盛なエンドウ豆羊かんを引っ張ったが、普洱は平然と、意外そうな様子はなかった。
普洱茶:大丈夫、あたしもたくさんの人にそう聞かれた……これは生まれ持った呪いだよ……
金糸蜜棗:まさかこんな変な呪いがあるなんて、行動するのも不自由になるよね。
普洱茶:もう慣れたよ……少なくとも絶境では、砂時計が助けてくれる。
エンドウ豆羊かん:大丈夫、絶境みたいなすごいところじゃ。きっとなんとかなる!
金糸蜜棗:そうだよ、麒麟島主もとても強いし!
普洱茶:うん……ありがとう……
エンドウ豆羊かん:でも……妾もこの技で凍頂烏龍茶を怖がらせることができたらようのう。さすれば、もう妾をいじめる勇気がなくなるだろう、ふふ〜
凍頂烏龍茶:ほう、客をもてなすよう頼んだのに、貴殿のその態度はなんだ?
エンドウ豆羊かん:わ、妾たちの話を盗み聞きするな!
凍頂烏龍茶:ただ偶然通りかかっただけだ。誰かさんがそんなことを考えていたとは思わなかった。
エンドウ豆羊かん:聞き間違いじゃ……そういえば、君山姉さんに頼まれていたな。先に失礼するぞ……!
35.雪が降りそうな夕方・五
白髪の英雄?
大晦日
夢回谷
玉麒麟:一年ぶりだな。夢回谷は今も平和か?
君山銀針:島主、お気遣い痛み入る。前回の虎蛟事件を解決して以来、谷内はとても平和であった。
君山銀針:ん……麓で堕神が出てきたことは一度あるが、みな駆けつけたときには、とある白髪の英雄が既に解決しておった。
玉麒麟:白髪の英雄?
君山銀針:うーん、近くにいた者たちが言うに、堕神をあっさりと倒したらしいんだが。彼の後ろには赤い服を着た男がおり、彼を追いかけて「玄武」と呼んだとか。
玉麒麟:玄武……?
玉麒麟:(まさかあのバカ龍の言う玄武神君か……ふふ、おもしろい……)
君山銀針:麒麟島主?いかがした?
玉麒麟:いや、なんでもない……ただ、これから面白いことが起こりそうだと思っただけだよ。じゃあ、飲もうか。
36.雪が降りそうな夕方・六
毎年こんな感じだったらいいのに……
大晦日夜
夢回谷
花火が輝かしく燃え続け、爆竹の音が梅の枝に落ちて喧騒を引き起こし、屋内では食事の香りと酒の香りが濃厚に漂う。人々は既に酔い潰れ、一面に倒れてた。
エンドウ豆羊かん:ふふふ……妾は凍頂烏龍茶よりも強い!げっぷー、知ってるか?妾は劇場でタヌキを倒したことがあるのじゃ!
如意巻き:うーん……なんの焼肉?
エンドウ豆羊かん:タヌキじゃ!
如意巻き:焼肉……美味しい……!
エンドウ豆羊かん:このバカ、食べることしか考えていないな!
松鶴延年:ふたりとも……まず手すりから降りなさい……不思議ですね、自家製の桃汁なのに、どうしてふたりはこんなに酔っぱらって……
君山銀針:麒麟島主……持ってきた酒……実にうまい……
玉麒麟:当然だ、やはり頑固者にはその良さがわからない……
ロイヤルゼリー:……臭い、酔っぱらいは部屋に帰れ、近づくな。
凍頂烏龍茶:なにを言ってる……それなら余を連れて帰ってくれるか……
ロイヤルゼリー:……あっちへ行け。
冰糖燕窩:いいですね……毎年こんな感じだったらいいのに……
37.新年を迎える・六
うさぎのぬいぐるみを使って謝るなんて。
大晦日前
ある城の中
街はにぎやかで、様々な露店が並んでいる。モクセイケーキはその賑わいの中を散歩し、祭りの雰囲気に包まれ、心も穏やかになってきた。
店主:お嬢さん、この雪玉うさぎ毛かんざし、今年の街で一番人気商品で、これが最後の一つですよ、逃したら手に入りませんよ!
モクセイケーキ:ありがとうございます……わたくしはちょっと見てるだけです……
店主:このかんざしは、お嬢さんにぴったりですよ!買って帰ったお嬢さんは、みんな自分の旦那様から褒められています!
モクセイケーキ:わ、わたくしは……本当に彼は好きになってくれるでしょうか……
モクセイケーキは頬を赤く染め、視線をそらすと、隣にいた人がいなくなっていることに気づいた。
モクセイケーキ:え?黄山はどこに行ってしまったの?
彼女が振り向くと、黄山毛峰茶は人々に囲まれ、熱心に話していた。なぜか彼女の胸には、羞恥心と怒りがこみ上げてきた。
店主:……おい、お嬢さん!どこへ行くのですか!このかんざし、もう要りませんか?
モクセイケーキが気がつくと、周りはもう賑やかな様子がなくなっていた。彼女は指を絡めながら、失望と後悔の感情が押し寄せるのを感じた。
しかし次の瞬間、前方のなにもなかったところから、手のひらサイズのうさぎのぬいぐるみが飛び出してきた。その後ろには、さっきの露店に置いてあった、あの真っ白なかんざしを抱えている。
うさぎのぬいぐるみ:美人のお姉さん、怒らないでください。このかんざしをあなたにあげるよ〜
モクセイケーキ:なに?
うさぎのぬいぐるみ:彼はあなたがこのかんざしを気に入ったと思って、謝罪の意味も込めて買ってあげたんだピョン〜
可愛らしいぬいぐるみは、気取ったような声で話しながら揺れ動き、モクセイケーキは思わず笑ってしまった。
モクセイケーキ:うさぎのぬいぐるみを使って謝るなんて。
黄山毛峰茶:あら、もう怒ってないみたいだね?
モクセイケーキ:わたくしは、ぬいぐるみを許しただけで、あなたを許したわけではありません……
黄山毛峰茶:急に起こったことで、貧道も思い及ばなかった。さきほど、鬼谷の近くに住まうと申す者が貧道に占いを頼み、やはり鬼谷で異変が起きると見えた。恐らく、災難が起こるだろう。
モクセイケーキ:え?
黄山毛峰茶:まあ、幸いにも解く方法があり、最後には凶から吉に転ずる。しかしお主に話す前に、振り返ったら、その者はいなくなってしまった。
モクセイケーキ:……もうわかりました……!
黄山毛峰茶:いたっ……なにゆえ貧道は殴られたのだ……はあ、かんざしを受け取ったのに、こんなに急いでどこへ行く?
38.新年を迎える・七
書院の先生がみんなきれいだって聞いたよ!
大晦日前
墨閣
パチンッ――
茶糕:あの鬼谷書院といえば、大したもので……
一幕が終わると、小さなふわふわした頭がふたつ、待ちかねたように台の前に寄ってきた。
餃子:茶糕姉さん!……あの鬼谷書院ってところはすごいね、オイラたちも……あそこで勉強できるの?
茶糕:鬼谷書院の学生は大半人間ですが、食霊も拒否しませんよ。でも、鬼谷書院に入るには厳しい試験を受けないと……
湯圓:試験?ええと……湯圓は高く飛べるし、文字もたくさん書ける!
餃子:オイラは重い麺棒を持ち上げられる!
茶糕:ぷははは、鬼谷書院の試験は四書五経、六芸を問うものですよ。これらに合格しなければ、正式な書院の学生にはなれません。
茶糕:先生というと、もっと厳しいですよ〜
餃子:四五六ってなに……それじゃあ希望がないじゃないか……
悔しそうに頭を下げるふたりを前に、茶糕はにっこり笑い、冷静に扇子を振った。
茶糕:実はさっきのは嘘ですよ。鬼谷書院は常にあらゆる立場の生徒を受け入れ、平等に扱っております。本当に勉強する心があるならば、心配する必要はないよ。
湯圓:ほ、本当?それならがんはらなきゃ!
茶糕:いいよ、では、朗報をお待ちしていますね〜
39.新年を迎える・八
これは「大吉大利砲」って言うんだ、見た人に幸運をもたらすんだよ〜
大晦日
墨閣
臘八麺:兄弟子――兄弟子――!
臘八麺:おかしいな……兄弟子がどこにも見当たらない……大晦日の宴会はもうすぐ始まるのに……
臘八麺は庭をうろつきながら探していたが、オレンジの姿が見あたらなかった。彼が頭を抱えている時、足元の雪の中にオレンジ色の果物が埋まっているのを見つけた。
臘八麺:あれ?誰がこんなところに果物を捨てたんだろう……わあ!
臘八麺が果物を手に取った瞬間、パチパチと爆発音がして、手にした果物が不意に火花を散らした。
柿餅:はははは〜!どうだ、俺が作った花火だ。驚いただろう〜
臘八麺:……兄弟子?こ、これは危なすぎる!他の人だったら大変ですよ。
柿餅:大丈夫、俺は試しているだけだ、あちこちに投げ捨ててるわけじゃない。
柿餅:杏仁ちゃんが言ってたけど、最近台所には盗み食いのネズミがいっぱいいるんだって。それを壁に埋めて、おどかしてやるつもりだ!
臘八麺:そういうことでしたか、じゃあ私も手伝うよ!
柿餅:へへ、いいよ〜
臘八麺はそう言って足をあげようとしたが、足元がガリッと音を立てた。彼は瞬間で跳び退き、踏んだ雪が爆発して、火花を散らした。
臘八麺:うわーっ!
柿餅:プッハハハハ!今回は本当に驚いただろう!これは「大吉大利砲」って言うんだ。見た人に幸運をもたらすんだよ〜
臘八麺:兄弟子……!
40.雪が降りそうな夕方・七
みんなで踊らないと〜
大晦日夜
ある城の中
大晦日の夜、小さな町は華やかな飾りと花火で盛り上がっている。お屠蘇、よもぎ団子、臘八粥が街を散策していると、そう遠くないところに小さな広場があり、そこでたくさんの人と音楽で賑わっているのが見えた。
よもぎ団子:前が賑やかですね、誰かが踊ってるようです。
お屠蘇:この踊り、すごく新鮮だし、面白そうだね。
通行人:へへ、お嬢さん、ご存じない?これは古の山霊祭祀舞で、鬼谷書院の雪掛先生が最近復元したものだそうだ。
臘八粥:動きが普通の踊りと違って見えると思いましたが、そういう意味があったんですね。
通行人:一緒に勉強しに来ない?踊る人が多ければ、祭りの力が強くなるって言われているよ。
臘八粥:いいよ、祭りなら得意ですもの〜
よもぎ団子:で、でも……私、踊りとかできないし……
お屠蘇:私を見るな、戦うのは得意だが、踊りは無理だ。
通行人:心配しないで、試してみて。とっても簡単だよ!
臘八粥:よもぎ団子、来て!祭祀というものは、踊りよりも、誠意のほうが大事だよ。
よもぎ団子:じゃあいいよ、うーん、ちょっと、臘八粥、そんなに急がないで……
お屠蘇:……やめろ!
臘八粥:ふふ、よもぎ団子、手をもっと高く上げて、お屠蘇、動きが硬い〜
よもぎ団子:うわっ!すみません……!
月明かりが照らす中、3人は町の人たちと一緒に踊り、かがり火は人々の喜ぶ顔をさらに明るく照らした。
41.お年越し・二
それも一種の守るということだろう。
数日前
ある城の中
カチンッ
茶糕:前回、その素敵なカップルが玉泉村で悪人を倒し、盗賊団一味を壊滅させたが、町の人からお金を受け取らずに去ったという話をいたしました。今日は、彼らがどのような妙策で怪物を捕まえたかという話でござい……
簡素で上品な茶屋の中で、語り手の生き生きとした挨拶に、客たちは心を奪われ、次第に喝采の声が聞こえ、賑やかだった。
甘酒団子:紹興酒兄さん……このふたりの英雄、本当にすごいですね。
紹興酒:ああ、最近どこへ行っても彼らの話を耳にする……ふふ、聞くことに夢中になって、またお菓子が顔についてしまったぞ。
甘酒団子が気づくと、口元に残ったカスはそっと拭かれていた。向こうの紹興酒が諦めたような笑顔を浮かべるのを見て、甘酒団子の頬が赤くなった。
甘酒団子:私も……あんなにすごい人になれたら……よかったです……
紹興酒:でも俺様から見れば、今の酒醸は十分すごいぞ。
甘酒団子:え……でと、ずっと紹興酒兄さんが私たちを守ってくれたじゃないですか?
紹興酒:甘酒団子もいつも自分なりの方法で周りの人に温かさを与えてるんだ。それも一種の守るというのとだろう。
紹興酒:人を温かい気持ちにさせるのは簡単なことじゃない。戦いや殺し合いは、俺様に任せればいい。
甘酒団子:紹興酒兄さん……わかりました!私もがんばって、皆を守ります!
42.お年越し・三
人を騙すやつ。
数日前
南離印館
生姜牛乳プリン:この絵を見せるために、わざわざあたしを?うーん……でも、君のスタイルにも似ていないようね。
ヨンジーガムロ:もちろん私のじゃない。手に入れるのに一苦労したんだけど、作者はグルイラオ王宮の宮廷画家よ。
生姜牛乳プリン:でも、どうして外国のものなのに……光耀大陸の文字が書いてるのだろう……
ヨンジーガムロ:……なんだって?
生姜牛乳プリン:ほら、この絵の隅のページの隙間に。
ヨンジーガムロ:そんなに目立たない場所でも気づくなんて、さすが時計修理師!どれどれ……特別な印鑑のようね……羊……羊六なにか魚……
生姜牛乳プリン:……羊方蔵魚だよね、あのよく荷物を背負って館内を徘徊して、人を騙すやつ。あたしも彼に騙されそうになったの。
ヨンジーガムロ:思い出した!この絵、彼から買ったのだ!
生姜牛乳プリン:……あんた、彼に騙されたんじゃない?
ヨンジーガムロ:そんな……買った時は大丈夫だったのに……
生姜牛乳プリン:とにかく、彼に責任を取らせに行かなきゃ。
しばらくすると――
片児麺:羊方蔵魚?豆沙糕の話を聞いていますが、先程彼が一枚の絵を持って、ニヤニヤしながら出てい行きました。あの人を探して、なんの用事でしょうか?
ヨンジーガムロ:私が不注意だった。ニセの絵を売られてしまった……
片児麺:……前回の古画の授業、よく聞いていなかったようですね。確かに海外の絵画は光耀大陸の絵画とは異なりますが、古代の絵画はそれでも共通の……
ヨンジーガムロ:まずい……、片児麺さんが古画の話になると止まらなくなるよ……
生姜牛乳プリン:……それじゃあ、あたしが彼を探してくるよ。まだ近くにいるかもしれないし!
ヨンジーガムロ:え?もう行ったの?
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