稔歳之佑・ストーリー・謎めき幽地
#include(稔歳之佑・ストーリー・謎めき幽地,)
※誤植等が多いため、文脈的に正しいと思われる部分を差し替えたものを表記しています。
謎めき幽地・二
下には……なにかあるのか?
数日後
鬼谷書院
夕暮れが近づくと、鳥たちも森に帰っていった。最後の生徒たちがそれぞれ家に帰り、雪掛トマトは学舎の門を押し開けると、庭で「一触即発」のふたりが庭で向き合っているのが見えた。
蛇腹きゅうり:あんたが素手で俺の鞭だと、俺があんたをいじめたと言われるだろ!
老虎菜:俺のナックルダスターをなめるなよ!
蛇腹きゅうり:それじゃ手加減はしないぞ。くらえ!
雪掛トマト:また始まった……老虎菜、彼と修行する時間があるなら、わたしと踊ってくれないかな?
蛇腹きゅうり:何度も言ったろ、光耀大陸には「対戦中は口出し無用」という言葉がある。つまり、他人が手合わせしている時は口を挟んではいけない!
雪掛トマト:もう、調子に乗って……
ふたりは手合わせを続けるが、しばらく勝敗はつかないようだ。雪掛トマトはいつも通り、踊りの練習で疲れた足を軽くたたきながら、階段の前に座っていた。
ドカンーー鈍い音が、書院の外から聞こえてきた。3人は動きを止め、お互いを見た。
老虎菜:今のは、なんの音だ……
蛇腹きゅうり:俺にも聞こえた。裏山のほうからの音がしたような……
雪掛トマト:裏山……もしかして野獣?
蛇腹きゅうり:野獣?
雪掛トマト:冬の山では狩猟は難しいから、野獣は山から降りて、人を襲うことが多いわ。わたしも旅の途中で出会ったことがあるの。
蛇腹きゅうり:もしそうなら、書院にはまだたくさんの子供がいる……まずい、老虎菜、一緒に見に行くぞ!
雪掛トマト:待って、わたしも行く!
森の中にある小道は曲がりくねって、淡い月明かりを隠し、その間には乱れた足跡が辛うじて見える。3人はなにか得体の知れないものの跡を追うが、奥に進めば進むほどおかしい感じがした。
蛇腹きゅうり:おかしい、見ると……野獣が一匹だけではなく、大きいのと小さい足跡がある……まさか、3匹の家族だったのか?
雪掛トマト:なにを言っているの、これはわたしたちの足跡でしょう、私たちは戻ってきたの。
蛇腹きゅうり:……暗くて、よく見えなかっただけだ。
雪掛トマト:いいよいいよ。あなたが真面目な顔してお馬鹿なことを言うのも慣れてるから。
蛇腹きゅうり:……
老虎菜:おい、前に金色の光が見える……あれはなんだろう?
蛇腹きゅうり:とりあえず声を出さずに、道を回って確認しよう。
寒い夜、少し離れたところに、古いカシの木の下で微かな光が現れ、青々とした葉の間に、幽霊のような人影がぼんやりと見える。
???:面倒だな!早く開けてくれ…もう間に合わん。
雪掛トマト:そこの怪しい奴は誰?
???:はあ?わっ!
ドカン――塵が大きな音を立てて舞い上がり、休んでいる夜烏を驚かせた。
短い叫び声は夜の闇に消え去り、もう一度見ると、謎の人影はすでに消えていた。
雪掛トマト:ええと……これはいったいどういう……えっ、な、なによ!手を放して!
蛇腹きゅうり:き、急に……ぶつかってきたから、受け止めようと思っただけだ!……老虎菜、あんたも見ただろう!
老虎菜:え、見てないよ……
雪掛トマトは不機嫌そうに衣服を直し、蛇腹きゅうりを不満げにちらりと見て、古木の方へ小走りで向かった。
古木はいつの間にか棘のある蔓に覆われ、巨大な根元が折れた部分には、ちょうど一人が通れるくらいの隙間があった。
蛇腹きゅうり:この亀裂はなんだ?下には……なにかあるのか?
老虎菜:これを見てくれ……
老虎菜が破れた紙片を差し出した。紙の端はまだ微かな光が放たれ、水墨画の山がぼんやり見える。
雪掛トマト:絵……?
老虎菜:おかしいな、これはさっき突然現れた蔓にぶら下がっていた……
ピシッ――ブーツが枯れ枝を踏むかすかな音は、静寂のなかでは特に耳障りだ。蛇腹きゅうりと老虎菜は警戒して背筋を伸ばし、雪掛トマトを背後にかばった。
フクロウが悲しげに鳴き、月明かりが木々の間を漏れ、木々のあいだに一つの黒い影がぼんやりと見える。
雪掛トマト:あの怪しいやつ!今度は絶対に捕まえるわ!
謎めき幽地・三
雪掛トマト:あの怪しいやつ!今度は絶対に捕まえるわ!
言い終わらないうちに、蛇腹きゅうりが握っている硬い鞭が風を切って飛び出したが、それは長剣に阻まれた。剣を持って現れたのは狩猟服を着た若者だった。
状元紅 :誤解があるようです。私は道に迷ってここにたどり着いただけで、悪意はありません。
雪掛トマト:えっと……蛇腹きゅうり、人を間違えたみたいね。この人はさっきのやつより、かなり背が高いわ。
蛇腹きゅうり:そうか……すまない。
状元紅:かまいません。先程この辺りで物音がしたから、野獣が出たのかと思って調べに来たんです。
雪掛トマト:野獣……?こんな時間に山に登って、狩りをするつもり?
状元紅:いいえ……麓の村民に頼まれて来ました。冬になってから、村の中で年越し料理が盗まれるようになり、最近では子供も行方不明になっている……
状元紅:野獣が冬の山で餌を探す場所を失っているのかもしれない……それとも、堕神かもしれない。
ゴゴゴ――
その時、地下から鈍い音が響き渡り、木の裂け目から、わずかな金色の光が漏れ出し、木の葉が飛び散り、濃い雲が月を遮った。
状元紅:これは……
雪掛トマト:やはり、この地下になにかへんなのがありそうね……下に行ってみようか?
蛇腹きゅうり:下には危険があるかもしれないから、俺が先に調べてくる。安全だと確認できたら、後から降りてきてくれ。
蛇腹きゅうりは笠を背中に掛け、軽快に裂け目に飛び込んだ。しばらくすると、地下から彼の声が聞こえてきた。
蛇腹きゅうり:確かにここは怪しいが、今のところ危険はないはずだ……降りてきていいぞ!
埃が収まると、深く曲がりくねったトンネルのあいだを金色の光が流れ、石壁に暗い影が不気味に浮かび上がっている。
状元紅:まさかここにこんな地下道があるなんて……石壁の図案を見る限り、相当な労力が掛かっているようです。
蛇腹きゅうり:おかしい、この場所は書院からそんなに遠くないのに、この地下道に関する噂は一度も聞いたことがない。
雪掛トマト:光耀大陸の偉い人は自分のために、生前密かに陵墓を建てることを好むと聞いたことがあるけど、まさかこの場所も……
蛇腹きゅうり:そういえば、さっき俺たちが見たあの怪しい人は……墓荒らしかもしれないな?
雪掛トマト:えっ、わたし、なにかに踏んだかも……
雪掛トマト:なつめ?なんでこんなところに?
老虎菜:食べ物!?どこだ!!!?
蛇腹きゅうり:待て、老虎菜、落ちているものは食べてはいけない……ま、まだこんなにたくさんあるのか……ピーナッツピーナツ
老虎菜:良い匂い……
雪掛トマト:あいつ、食べ物を見るとなにも考えられなくなるのね……
暗い壁の間に突き出た石の台があり、香ばしい匂いが漂い、老虎菜を誘い込んだ。蛇腹きゅうりも彼の後を追い、松明を近づけると、石台の上に脂ぎった子豚がおいてるのが見えた。
蛇腹きゅうり:なぜここに子豚の丸焼きがあるんだ……?
老虎菜:これは……食べられるだろう。
雪掛トマト:だめにきまってるでしょ!あまりにも怪しすぎる……罠かもしれない……
子豚の丸焼きの芳醇な香りが一行の鼻をつき、しばらくの沈黙の後、全員が黙って唾を飲み込んだ。
老虎菜は思わず手を伸ばし、石台に触れた途端、左右の石垣が突然揺れ始めた。
状元紅:気をつけて!!罠です!!
揺れが止まり、ぐらぐら揺れていた一行は壁にてをついてなんとか立ち上がったが、目の前にはすでに老虎菜の姿はなかった。
状元紅:落ち着いてください、この場所の地形は複雑で、恐らく他の罠もあります……
突然、状元紅の表情が真剣になった。深い地下道の向こうから鋭い足音が聞こえ、残った薄暗い金色の光が蛇のように曲がりくねった長い黒い影をいくつか映していた。
みんなは黙りこみ、壁に背をつけ、お互いに目配せをしたが、赤い人影が軽やかに飛びかかってきた。
謎めき幽地・四
……そんなに多くの道具を持っているなんて、やはり墓荒らし?
女児紅:もちろん心配……もちろん毎日最近こっそり山に入って、何をしているかも教えてくれないからです!
状元紅:いい加減にしなさい、危ないって言ったのに……
女児紅:危ないってちゃんとわかっているんですか!これを見つけた時、あなたがなにかあったのかと思って……
女児紅は懐中の赤い剣穂を取り出し、怒ったような顔をしていたが、声が詰まっていた。
状元紅:これは……
八宝飯:おい、あんたもずいぶん無茶するよな。森の中で迷子になっていたところだったろ。オイラたちに出会ってよかったぜ。
マオシュエワン:そうだ、でも彼女もなかなか目がいいな。あんたが木の根元に落とした剣穂を一目で見つけたんだ。そのおかげで、俺たちがこの地下道を発見したってわけさ。
状元紅:おふたりは……?
八宝飯:オイラたち……ええと、ちょっとした用事でそこに来たんだ!
雪掛トマト:用事?まさかあなたたちが墓荒らし……
マオシュエワン:はは……墓荒らしって言い方は新鮮だよね。八宝飯、あんたには似合うんじゃねぇか?
八宝飯:似合わねぇよーあんた、いったい誰の味方だ!
蛇腹きゅうり:ごめん、この子は異国から来たもので、光耀大陸の礼儀をよく知らなくて、悪気はないんだ。気にしないでくれ。
状元紅:それに、今は喧嘩する場合ではない……
雪掛トマト:忘れるところだった!急いで老虎菜を見つけないと――
状元紅:まずは焦らないでください……老虎菜はそのまま消えるわけがない。その仕掛けが地下道の他の空間に繋がっているかもしれません。
八宝飯:仕掛け……?オイラたちが来た時、仕掛けなんてなかったぞ……
八宝飯:しかし、この地下道は確かに奇妙だ、さっきオイラの羅針盤も使えなくなった……待て!羅針盤が回っている!
マオシュエワン:やっ使えるようになったのか?毎回毎回調子がおかしくなっちゃって。辣子鶏に直してもらわないか?
八宝飯:オイラのコンパスに問題があるわけじゃない!ここは風水的に良くないって言っただろう?
八宝飯:あれ、羅針盤が指している場所は、私たちの足の下?
マオシュエワン:下?地下に来たのに、まさかこの地宮の下にもう一つの地宮があるってことか?
蛇腹きゅうり:そうだ!前に道がなくなったけど、この仕掛けが下の地宮に繋がっているかもしれない!
女児紅:でも、どうやって下に行くんですか?入り口らしいものは見当たらないけど。
八宝飯:オイラたちに任せて!
八宝飯はシャベル、つるはし、スコップなどの大道具を取り出し、石壁を慎重に叩き、最終的に1箇所の位置を決定し、マオシュエワンを軽くうなずいた。
雪掛トマト:……そんなに多くの道具を持っているなんて、やはり墓荒らし?
八宝飯:ど、道具が揃っているからといって、墓荒らしとは限らないだろう!?
八宝飯:さあ、後ろに下がって、怪我したら責任は取れないよ――マオシュエワン、火雷弾だ!
ドカン――石壁と地面の接合部に穴が開き、かすかな光の柱が差し込まれ、細かい土煙が上がっている。その中には、異様な雰囲気が漂っているようだった。
状元紅:この地下道はやはり単純でないようですね。
八宝飯:!!!なんでこんなときに堕神が!
謎めき幽地・五
これらの動きをつなげると……踊りよ!
夜
地宮の奥
堕神を処理した後、みんなは地下路に沿って地宮の奥深くにたどり着いた。松明が暗い石壁を照らし、長い影と短い影を映す。
雪掛トマト:待って、前から水の音が聞こえるわ!
八宝飯:水の音?オイラは聞こえないけど……
蛇腹きゅうり:雪掛トマトは水源の音に対する判断力が一般人よりも鋭いから、彼女について行こう。
雪掛トマト:そう、わたしはパラータに長く滞在したことがあるの。砂漠で水源は死活問題だからね!
マオシュエワン:なるほど!じゃあ早く案内してもらおう!
曲がりくねった狭い道を抜けるとわ前方の石壁の上からニョキニョキと鍾乳石がぶら下がり、近くに流れている暗い川の中まで伸びている。
女児紅:本当に川がある……でも、前に進む道はまた塞がっています、あっ――
状元紅:なにかありましたか?
女児紅:さっき……川に青い影が浮かんでいた気が……
雪掛トマト:まさか、また堕神!?
女児紅:いいえ……人みたい。鎧も着ていました……
状元紅:鎧を着た人……?そんなはずは、暗いから間違ったのではる
八宝飯とマオシュエワンは無言で視線を交わし、先程まで女児紅が立っていた場所を探った。砕けた石の間に、数枚の朽ちた石碑が埋まっているのを見つけた。
八宝飯:道理でこの地下道は変だと思った、石碑はこの下にある……まさかこんな近いところにあるなんて。
マオシュエワン:こんなところに隠されていたのか……さぁ、石碑は見つかった。さっそく仕事だ!
八宝飯:はあ、そもそもこれは辣子鶏の仕事だったのに……まあいいや、マオシュエワン、刻刀を持ってくれ、そっちのやつら任せた!
女児紅:あの……なんの話ですか?
ふたりは女児紅の質問には答えず、代わりに石碑に符文を刻み始めた。青い光が曲がりくねった文字から溢れ出し、蛍火のように散った。
状元紅:これは……?
八宝飯:気にする必要はない、ボスに頼まれた仕事だ、すぐに終わる。
話している最中に、最後の石碑も刻み終わり、かすかな光が暗い川に流れ込み、ゆっくりと渦を巻いていく。
激しい水流は中心の渦に吸い込まれ、しばらくして大きな平らな石道が現れ、先程通った地下道とはほぼ同じだった。
蛇腹きゅうり:道がまた現れたけど、これもなにかの仕掛けか?
雪掛トマト:あなたたちはどうやってその石碑に仕掛けが隠されているのを知ったの?
八宝飯:ええと……運がよかっただけ。
雪掛トマト:ん?ちょっと怪しいな……
八宝飯:な、なにも怪しくない!さあ、早く行こう。
一行はそのまま道を進み、蛇腹きゅうりは後ろを振り向き、雪掛トマトを促そうとしたが、彼女は怪訝な表情で、なにかを考え込んでいた。
蛇腹きゅうり:なにを考えている?あんた、さっきから怖がる様子が全くないけど。
雪掛トマト:ここは私にとって怖い場所ではないわ。昔、砂漠に数日間迷い込んだこともあったのよ。その時、話し相手すらいなかった。
蛇腹きゅうり:そんなこともあったのか!一度も教えてくれなかった……女の子だったら、きっとたいへ――
雪掛トマト:ちょっと待って、松明を貸してくれる?
蛇腹きゅうり:なんだ……?
雪掛トマトは松明を天井の石壁に近づけ、その光が彼女の瞳に反射されて、輝きを放つ。蛇腹きゅうりは思わず見とれていたが、我に返り覗き込んだ。
ざらざらした石壁には、奇妙な人型の模様がびっしりと刻まれており、そのひとつひとつが異なる姿をしている。
蛇腹きゅうり:なんだこれ、ちょっと変わってるような……
雪掛トマト:これらの動きをつなげると……踊りよ!
蛇腹きゅうり:踊りだったのか……さあ、早く行こう。でないと……雪掛?
雪掛トマトは頭上の石壁をじっと見つめ、その模様に触れようと手を伸ばしていた。
蛇腹きゅうりが、彼女を止めるように声をかけようとしたが、みんなが驚きの声を出す暇もなく、地下路は突然回り始めた。
謎めき幽地・六
村民たちのものが……なぜここに?
祭壇
地宮の奥
カチッ――重たい石壁が閉じられ、一行は冷たい青石の地面に座り込んだ。
八宝飯:あいたたた!マオシュエワンのクソ野郎の、オイラから降りろ!
マオシュエワン:あ、道理でこんなに硬かった……え、ここはまたどこだ?
八宝飯:まさか、また仕掛けか?この地宮の構造は複雑すぎるだろう……
雪掛トマト:わたしがさっき、石壁に触れたからか……?
蛇腹きゅうり:……ここは仕掛けがいっぱいで、油断できない。むやみにこの場所の物には触れない方が良さそうだ。
雪掛トマト:ちょっと待って……あそこ、なにか動いているの?
松明が照らされない暗闇の中で、かすかな光と、動物が息を吹き出しているような音が聞こえる。
八宝飯:ひっ――、あの緑の光がするのは……まさか、堕神!?
マオシュエワン:おい!雪丸、勝手に動くな――
フェレットはマオシュエワンの腕から素早く飛び出て、暗闇の中に潜り込んだ。光と影の境界線に、いくつかの毛玉がついに現れ、ひゅんひゅんと鳴いて、みんなの近くに寄ってきた。
女児紅:これは……虎の子?かわいい……
雪掛トマト:これは老虎菜の虎の子だ!なんでこんなところにいるの?老虎菜は……
女児紅:あれ、なにか様子がおかしい、よちよち歩いてます……お酒の匂いもする!
雪掛トマト:……本当だ、どれだけ飲んでいたの……
マオシュエワン:雪丸、ようやく捕まえた!おっと、ここの地面に人が倒れている!
雪掛トマト:!!
火の光が暗闇の隅を差すと、ほっぺたが赤く染った老虎菜が酒壺を抱えて深く眠っていた。彼の側にある石台には、贅沢な料理が散らばっていた。
雪掛トマト:よくもみんなを心配させて、自分はこんなところで食い散らかしているとは……ねえ、老虎菜、早く起きて!
蛇腹きゅうり:……力を入れすぎだぞ。
ぼんやりと目覚めた老虎菜は、顔に少し赤い跡がついていた。彼はしばらくぼんやりして、やっと目が覚めた様子で、思わず驚きながら喜んだ。
老虎菜:夢じゃなかった……本当にお前らだ!よかった!
雪掛トマト:……あなたね、自分で飲むのはいいけど、トラたちにこんなに飲ませるのはどういうこと?
老虎菜:ええっ、ト、トラ、お前ら、俺の隙を見て酒を飲んだな!
蛇腹きゅうり:トラのことはともかく、食べることばかり考えて、なんで俺たちを探さなかったんだ。どれだけ心配したか分かっているのか?
老虎菜:ごめん……俺が食べ物に弱いのお前も知ってるだろ……
状元紅:失礼ですが、食べものの中に、焼きダックや豚肘、牛肉の煮込みが含まれていましたか?
老虎菜:な、なんで知ってるんだ?
さっきから状元紅が老虎菜の周りにある食べ物を確認していて、真剣な表情になっている。
状元紅:これらの食べ物……それに先の子豚の丸焼きも含めて、村民たちが盗まれた年越し料理と合致しています。
蛇腹きゅうり:村民たちのものが……なぜここに?
老虎菜:これは…他人の家の食べ物だったのか?知らなかった……たくさん食べてしまった……
みんなは興味深く残りの食べ物を調べ始めた。老虎菜は申し訳なさそうに頭を垂れ、雪掛トマトが静かに立ち止まり、優しく彼の肩を叩いた。
雪掛トマト:悪気はなかったんだもん……問題が解決して、私たち書院に帰ったら弁償すればいいでしょう。
老虎菜:……うん!必ず調べてみせる!
八宝飯:みんな、こっちを見てくれ、この石台の後ろに、祭壇画あるみたいだ!
謎めき幽地・七
もしかして……この絵、祭壇と関係あるのか?
八宝飯:みんな、こっちを見てくれ、この石台の後ろに、祭壇があるみたいだ!
それを聞いたみんなは松明を持って、石台の後ろに行くと、テーブルのような四角い小さな祭壇を見つけた。
マオシュエワン:あんた、目がいいな……
八宝飯:ふふ、もっと小さいものでも見えるぞ。例えば、誰かさんが出かける前に寝ぼけて、ボタンを間違えてしまったとか……
マオシュエワン:あ――なんで早く言ってくれなかったんだ……!
八宝飯:わざとやってるのかと思ったから。なかなか個性的で、似合っているぞ。
マオシュエワン:もういい……黙れ!!
状元紅:……この祭壇は埃で覆われている。しばらく使われていないようですね。
女児紅:あれ、状元紅兄さん、これを見てください。そこに……奇妙な模様があります?
蛇腹きゅうり:気をつけろ!むやみに触ってはいけない、また仕掛けがあるかもしれない。
女児紅:す、すみません……ちょっと忘れてました、え……祭壇が光ってる?
祭壇に刻まれた模様から薄い金色の光が溢れ出し、ぼんやりとしたリボンになって、人々の周りに絡まり、ついに老虎菜の腕に止まった。
老虎菜:これは……どういうことだ?
老虎菜:ないよ……肉まんや鶏の太ももは全部戻したのに……
老虎菜:あっ、そうだ!さっき拾ったあの古い絵……
老虎菜は懐から敗れた紙片を取り出した。絵の墨が金箔で覆われているように輝き、祭壇から漏れる金色の光よりも眩しくなっている。
女児紅:あれ、この絵にも祭壇と同じ模様が描いてあります!
雪掛トマト:おかしいね、拾った時にはこんなものはなくて、ただ普通の山水画の欠片だったのに……
老虎菜:もしかして……この絵、祭壇と関係あるのか?
女児紅:……この祭壇を開けられるかもしれません。祭壇に置いてみたらどうです?
蛇腹きゅうり:でも……
マオシュエワン:女児紅さんの言うとおり、もうずいぶんとこの地宮を彷徨っている。試してみよう!最悪でも、仕掛けが俺たちを下の階まで連れて行くだけだろう!
八宝飯:うん……オイラの経験では、こいいう祭壇はほとんど地宮の要所だ、本当に開けることができれば……一度試してみる価値がある!
蛇腹きゅうり:それなら、老虎菜、絵を俺に渡してくれ……みんなは足元に注意するんだ。もし仕掛けが動いたら、回避してくれよ!
蛇腹きゅうりは祭壇の前にやってきて、みんなに退くように合図し、金色に光る紙片をそっと台に張り付けた。
一瞬の静寂の後、地宮は金色の光に包まれ、暗く陰鬱なこの場所をまるで昼間のように照らし、耳をつんざく轟音が鳴り響いた。
石壁の隠し扉がゆっくりと開き、埃が舞い上がり、水のような涼しい月光がまっすぐに射し込んで、野草や枯れ葉の新鮮で湿った匂いを運んできた。
雪掛トマト:あそこが出口みたい!
みんなは待ちきれずに、急いで秘密の扉をくぐり、狭い石道を抜けると、最初に見た古いクスの木が目の前に現れた。
月明かりが薄く、カササギが鳴く。一行が振り返って見ると、石の扉と地下道は蔓のように生えた木々に覆われ、痕跡がなくなっていた。
再び立てる波風・一
偶然知り合った旧友だよ。
深夜
森
マオシュエワン:よかった!やっとあの変なところから抜け出せた。
八宝飯:はあ……とにかく、なんとか任務は終わったようだ。早速ボスに報告に行こう。
蛇腹きゅうり:ちょっと待って。あんたら、この森から出る道を知ってるのか?
八宝飯:もちろん……えっ、あんたたちも道に迷ったのか?
蛇腹きゅうり:ああ……そうだ、さっきまでこの森をさまよって、もう東西南北の区別もつかない……
八宝飯:羅針盤がある。オイラたちに聞いて正解だったな。帰る場所が山ほどの方向にあることか覚えているか?
蛇腹きゅうり:さっき書院から来たんだけど……山の南西側にあるはずだ!
八宝飯:えっ?こんな田舎に書院があるのか……南西側、つまりあの方角だ!
蛇腹きゅうり:感謝する!
女児紅:書院?まさか鬼谷書院の人ですか?書院の先生たちはみんな博学だって、村のおじいちゃんがよく話してました。あなたたちはもしかして?
雪掛トマト:そうよー、あれ、女児紅ちやまんいい体型してるわね。今度書院に来たら、私が踊りを教えてあげるよ!
女児紅:踊り?鬼谷書院は踊りも教えているのですか?
蛇腹きゅうり:おいおい、またそれかよ……女児紅さん、時間があるならいつでも書院にいらっしゃい!
状元紅:うん、でも今日は村に戻らないと……調べなければならないこともたくさんあります。
八宝飯:山に登るときにちょうどその村を通りすぎたし、一緒に行こう!
状元紅:お願いします。
皆と別れた後、30分ほどで蛇腹きゅうりたちは書院に戻った。風で庭で吹き、竹林が揺れ、一人で石のテーブルをの前に座っていた金駿眉は物音を聞いて、薄笑いを浮かべながら、埃っぽい一行を眺めていた。
金駿眉:あなたたち……夜中に遊びに出かけたのか?
蛇腹きゅうり:えっと、詳しく説明すると長くなるが、ちょっとしたトラブルがあった……でも無事だった。
金駿眉:最近書院付近も穏やかじゃないみたいだね……
金駿眉:そういえば、あなたたちが外出していたとき、絵巻を持っている見知らぬ食霊に会ったかい?
蛇腹きゅうり:見知らぬ食霊は何人か会ったけど……
雪掛トマト:絵巻は……もしかして、あの絵の切れ端?蛇腹きゅうり、まだ持っているよね?
蛇腹きゅうり:ああ、これだ、ほら……
金駿眉:……?
皆は蛇腹きゅうりが持っていた紙切れを見た。しかし羽のように薄い紙片に、わずかな泥がついているだけで、なにも残っていなかった。
雪掛トマト:そんな!そこに描かれていた風景や符文……全部消えてしまった。
金駿眉:……この絵はどこで手に入れたの?
雪掛トマト:裏山の森で、そうだった……そこにコソコソした人影を見えたけど、あっという間に消えてしまった。
金駿眉:そうか……裏山か……
蛇腹きゅうり:もしかして、その人物を知っているのか?
金駿眉:残念ながら、わたしもしらない……わたしは人に頼まれて、あの人物を探そうとした。
蛇腹きゅうり:誰に頼まれたんだ?
雪掛トマト:えっ、南離印館の人たちと知り合いなの?
金駿眉:ふふ、偶然知り合った旧友だよ。
蛇腹きゅうり:……金駿眉、この件を俺に調査させてくれないか?
雪掛トマト:えっ、またなにするつもり?
蛇腹きゅうり:もちろん、自ら南離印館に行って情報を聞きに行く。明け方に出発する!
再び立てる波風・二
この茶屋は、いつから武館になったんだ?
翌日
茶館
真冬の厳しい寒さの中、窓外は厚い雲と風雪に覆われている。小さな茶屋の中、真鍮の燭台には生灰が厚く降り積もり、揺れるろうそくの光が室内を暖めている。
雪掛トマト:外に出たときは晴天だったのに、あっという間に雪が降り出した……どうやらしばらくは止まなさそうね。
老虎菜:ちょうどいい……うーん……お腹を満たしてから出発しよう。お兄さん、お菓子をもう10人前ください!
雪掛トマト:……もう、あずき餅20皿、なつめ菓子15皿、砂糖蒸しチーズを10箱食べたでしょう……
蛇腹きゅうり:さらに牛乳糕10皿。
老虎菜:なるほど、道理で半分しかお腹が満たされていないんだ……お兄さん、後10人前追加!
老虎菜:ん?雪掛、お菓子全然食べてないけど、お腹すいてないのか?
雪掛トマト:もういいよ、わたしは……お菓子の名前を聞くだけでお腹がいっぱいになっている。
蛇腹きゅうり:そうか、でもさっきから、ずっと唾を飲み込んでいるみたいだけど。
雪掛トマト:ちょっと、なにでたらめ言ってるの!?
蛇腹きゅうり:少しお菓子を食べるぐらいじゃ、踊らないぐらい体重が重くならないのにって思っただけで……おい!なにをするんだ――
雪掛トマト:ちゃんと食べなさい――こんなに食べ物があっても、口を塞げないの?
老虎菜:ねえ、雪掛、この栗粉糕はあんまり甘くないから、一口食べてみてをこれからも長い旅が続くから、空腹でいるわけにはいかないだろう!
雪掛トマト:それは……一理あるね、ちょっとだけ食べる。
蛇腹きゅうり:……同じ言葉なのに、他の人には丁寧に話しているが、俺に対しては攻撃的になるんだな。
雪掛トマト:ふん、わたしに礼儀正しく接すれば、当然わたしも丁寧に接するわ。でも、誰かさんの態度がなってないから。
蛇腹きゅうり:あんた……もういい、なにも聞こえなかったことにする。
店小二:お客様方、本当に申し訳ありませんが、当店は半時間後に閉店します。お菓子が揃ったら、お早めにお会計をお願いします。
蛇腹きゅうり:閉店?でも、まだ日は暮れていないぞ。
店小二:お客様はこの辺りの人ではないですよね。実は……ここの店は夕暮れなると、すべて閉まってしまいます。
店小二:お客様、日が暮れる前に宿泊先を探したほうがいいですよ。遅くなると大変ですから……
蛇腹きゅうり:どういうことだ?
店小二:まあ、最近村中で事件が起こっているからです……
店小二:みんなが山の中に年獣がいるだと言っています。暗くなると、食べ物や子供たちを攫うために山から降りてきますよ、そいつに遭遇すると、大変なことになります。
雪掛トマト:年獣?なにそれ?
老虎菜:伝説によると、大晦日が近くになると、人々を傷つける怪物らしい……道中に爆竹の破片が落ちているのも理解できた。
店小二:そうですね、村の家々は年獣を追い払うまめに、爆竹を燃やしているんですが、あまり効果はなくて……とにかく、お客様たちは気をつけた方がいいですよ。
そんな話をしているうち、隣で皿が割れる音が聞こえてきた。不気味な黒い服を着た何人かの男たちが、一人の客を問い詰めていて、足元にある腰掛けをいくつか蹴り倒した。
店小二:え―、お客様たち、みんな仲良くしましょうよ。そんなに怒らなくてもいいですよ!
黒装束の男:あっちへ行け!邪魔をするな!
店小二:うわ!
黒い服の人が店員を蹴り飛ばし、店員は避けきれずに後ろに倒れた。そこへ、蛇腹きゅうりが素早く飛び込んで彼を受け止めた。
蛇腹きゅうり:あんたたち、もうほどほどにしとけよ。
黒装束の男:また何処から来た空気の読めないヤツだ。腹いっぱい食べて、余計な世話を焼きたいのか?
老虎菜:どうして知っているんだ?実は本当に腹いっぱい食べたぞ――体を動かすのにちょうどいい!
乱闘になるが、店の物を壊さないように気を配った蛇腹きゅうりたちは、自由に動けず、しばらくは勝負がつかなかった。
ガチャン――剣が扉に突き刺さり、冷たい風が雪とともに吹き込まれた。剣を持って入ってきたのは、白髪の見知らぬ食霊だった。
白酒:この茶屋は、いつから武館になったんだ?
黒装束の男:!!
※誤植等が多いため、文脈的に正しいと思われる部分を差し替えたものを表記しています。
謎めき幽地・二
下には……なにかあるのか?
数日後
鬼谷書院
夕暮れが近づくと、鳥たちも森に帰っていった。最後の生徒たちがそれぞれ家に帰り、雪掛トマトは学舎の門を押し開けると、庭で「一触即発」のふたりが庭で向き合っているのが見えた。
蛇腹きゅうり:あんたが素手で俺の鞭だと、俺があんたをいじめたと言われるだろ!
老虎菜:俺のナックルダスターをなめるなよ!
蛇腹きゅうり:それじゃ手加減はしないぞ。くらえ!
雪掛トマト:また始まった……老虎菜、彼と修行する時間があるなら、わたしと踊ってくれないかな?
蛇腹きゅうり:何度も言ったろ、光耀大陸には「対戦中は口出し無用」という言葉がある。つまり、他人が手合わせしている時は口を挟んではいけない!
雪掛トマト:もう、調子に乗って……
ふたりは手合わせを続けるが、しばらく勝敗はつかないようだ。雪掛トマトはいつも通り、踊りの練習で疲れた足を軽くたたきながら、階段の前に座っていた。
ドカンーー鈍い音が、書院の外から聞こえてきた。3人は動きを止め、お互いを見た。
老虎菜:今のは、なんの音だ……
蛇腹きゅうり:俺にも聞こえた。裏山のほうからの音がしたような……
雪掛トマト:裏山……もしかして野獣?
蛇腹きゅうり:野獣?
雪掛トマト:冬の山では狩猟は難しいから、野獣は山から降りて、人を襲うことが多いわ。わたしも旅の途中で出会ったことがあるの。
蛇腹きゅうり:もしそうなら、書院にはまだたくさんの子供がいる……まずい、老虎菜、一緒に見に行くぞ!
雪掛トマト:待って、わたしも行く!
森の中にある小道は曲がりくねって、淡い月明かりを隠し、その間には乱れた足跡が辛うじて見える。3人はなにか得体の知れないものの跡を追うが、奥に進めば進むほどおかしい感じがした。
蛇腹きゅうり:おかしい、見ると……野獣が一匹だけではなく、大きいのと小さい足跡がある……まさか、3匹の家族だったのか?
雪掛トマト:なにを言っているの、これはわたしたちの足跡でしょう、私たちは戻ってきたの。
蛇腹きゅうり:……暗くて、よく見えなかっただけだ。
雪掛トマト:いいよいいよ。あなたが真面目な顔してお馬鹿なことを言うのも慣れてるから。
蛇腹きゅうり:……
老虎菜:おい、前に金色の光が見える……あれはなんだろう?
蛇腹きゅうり:とりあえず声を出さずに、道を回って確認しよう。
寒い夜、少し離れたところに、古いカシの木の下で微かな光が現れ、青々とした葉の間に、幽霊のような人影がぼんやりと見える。
???:面倒だな!早く開けてくれ…もう間に合わん。
雪掛トマト:そこの怪しい奴は誰?
???:はあ?わっ!
ドカン――塵が大きな音を立てて舞い上がり、休んでいる夜烏を驚かせた。
短い叫び声は夜の闇に消え去り、もう一度見ると、謎の人影はすでに消えていた。
雪掛トマト:ええと……これはいったいどういう……えっ、な、なによ!手を放して!
蛇腹きゅうり:き、急に……ぶつかってきたから、受け止めようと思っただけだ!……老虎菜、あんたも見ただろう!
老虎菜:え、見てないよ……
雪掛トマトは不機嫌そうに衣服を直し、蛇腹きゅうりを不満げにちらりと見て、古木の方へ小走りで向かった。
古木はいつの間にか棘のある蔓に覆われ、巨大な根元が折れた部分には、ちょうど一人が通れるくらいの隙間があった。
蛇腹きゅうり:この亀裂はなんだ?下には……なにかあるのか?
老虎菜:これを見てくれ……
老虎菜が破れた紙片を差し出した。紙の端はまだ微かな光が放たれ、水墨画の山がぼんやり見える。
雪掛トマト:絵……?
老虎菜:おかしいな、これはさっき突然現れた蔓にぶら下がっていた……
ピシッ――ブーツが枯れ枝を踏むかすかな音は、静寂のなかでは特に耳障りだ。蛇腹きゅうりと老虎菜は警戒して背筋を伸ばし、雪掛トマトを背後にかばった。
フクロウが悲しげに鳴き、月明かりが木々の間を漏れ、木々のあいだに一つの黒い影がぼんやりと見える。
雪掛トマト:あの怪しいやつ!今度は絶対に捕まえるわ!
謎めき幽地・三
雪掛トマト:あの怪しいやつ!今度は絶対に捕まえるわ!
言い終わらないうちに、蛇腹きゅうりが握っている硬い鞭が風を切って飛び出したが、それは長剣に阻まれた。剣を持って現れたのは狩猟服を着た若者だった。
状元紅 :誤解があるようです。私は道に迷ってここにたどり着いただけで、悪意はありません。
雪掛トマト:えっと……蛇腹きゅうり、人を間違えたみたいね。この人はさっきのやつより、かなり背が高いわ。
蛇腹きゅうり:そうか……すまない。
状元紅:かまいません。先程この辺りで物音がしたから、野獣が出たのかと思って調べに来たんです。
雪掛トマト:野獣……?こんな時間に山に登って、狩りをするつもり?
状元紅:いいえ……麓の村民に頼まれて来ました。冬になってから、村の中で年越し料理が盗まれるようになり、最近では子供も行方不明になっている……
状元紅:野獣が冬の山で餌を探す場所を失っているのかもしれない……それとも、堕神かもしれない。
ゴゴゴ――
その時、地下から鈍い音が響き渡り、木の裂け目から、わずかな金色の光が漏れ出し、木の葉が飛び散り、濃い雲が月を遮った。
状元紅:これは……
雪掛トマト:やはり、この地下になにかへんなのがありそうね……下に行ってみようか?
蛇腹きゅうり:下には危険があるかもしれないから、俺が先に調べてくる。安全だと確認できたら、後から降りてきてくれ。
蛇腹きゅうりは笠を背中に掛け、軽快に裂け目に飛び込んだ。しばらくすると、地下から彼の声が聞こえてきた。
蛇腹きゅうり:確かにここは怪しいが、今のところ危険はないはずだ……降りてきていいぞ!
埃が収まると、深く曲がりくねったトンネルのあいだを金色の光が流れ、石壁に暗い影が不気味に浮かび上がっている。
状元紅:まさかここにこんな地下道があるなんて……石壁の図案を見る限り、相当な労力が掛かっているようです。
蛇腹きゅうり:おかしい、この場所は書院からそんなに遠くないのに、この地下道に関する噂は一度も聞いたことがない。
雪掛トマト:光耀大陸の偉い人は自分のために、生前密かに陵墓を建てることを好むと聞いたことがあるけど、まさかこの場所も……
蛇腹きゅうり:そういえば、さっき俺たちが見たあの怪しい人は……墓荒らしかもしれないな?
雪掛トマト:えっ、わたし、なにかに踏んだかも……
雪掛トマト:なつめ?なんでこんなところに?
老虎菜:食べ物!?どこだ!!!?
蛇腹きゅうり:待て、老虎菜、落ちているものは食べてはいけない……ま、まだこんなにたくさんあるのか……ピーナッツピーナツ
老虎菜:良い匂い……
雪掛トマト:あいつ、食べ物を見るとなにも考えられなくなるのね……
暗い壁の間に突き出た石の台があり、香ばしい匂いが漂い、老虎菜を誘い込んだ。蛇腹きゅうりも彼の後を追い、松明を近づけると、石台の上に脂ぎった子豚がおいてるのが見えた。
蛇腹きゅうり:なぜここに子豚の丸焼きがあるんだ……?
老虎菜:これは……食べられるだろう。
雪掛トマト:だめにきまってるでしょ!あまりにも怪しすぎる……罠かもしれない……
子豚の丸焼きの芳醇な香りが一行の鼻をつき、しばらくの沈黙の後、全員が黙って唾を飲み込んだ。
老虎菜は思わず手を伸ばし、石台に触れた途端、左右の石垣が突然揺れ始めた。
状元紅:気をつけて!!罠です!!
揺れが止まり、ぐらぐら揺れていた一行は壁にてをついてなんとか立ち上がったが、目の前にはすでに老虎菜の姿はなかった。
状元紅:落ち着いてください、この場所の地形は複雑で、恐らく他の罠もあります……
突然、状元紅の表情が真剣になった。深い地下道の向こうから鋭い足音が聞こえ、残った薄暗い金色の光が蛇のように曲がりくねった長い黒い影をいくつか映していた。
みんなは黙りこみ、壁に背をつけ、お互いに目配せをしたが、赤い人影が軽やかに飛びかかってきた。
謎めき幽地・四
……そんなに多くの道具を持っているなんて、やはり墓荒らし?
女児紅:もちろん心配……もちろん毎日最近こっそり山に入って、何をしているかも教えてくれないからです!
状元紅:いい加減にしなさい、危ないって言ったのに……
女児紅:危ないってちゃんとわかっているんですか!これを見つけた時、あなたがなにかあったのかと思って……
女児紅は懐中の赤い剣穂を取り出し、怒ったような顔をしていたが、声が詰まっていた。
状元紅:これは……
八宝飯:おい、あんたもずいぶん無茶するよな。森の中で迷子になっていたところだったろ。オイラたちに出会ってよかったぜ。
マオシュエワン:そうだ、でも彼女もなかなか目がいいな。あんたが木の根元に落とした剣穂を一目で見つけたんだ。そのおかげで、俺たちがこの地下道を発見したってわけさ。
状元紅:おふたりは……?
八宝飯:オイラたち……ええと、ちょっとした用事でそこに来たんだ!
雪掛トマト:用事?まさかあなたたちが墓荒らし……
マオシュエワン:はは……墓荒らしって言い方は新鮮だよね。八宝飯、あんたには似合うんじゃねぇか?
八宝飯:似合わねぇよーあんた、いったい誰の味方だ!
蛇腹きゅうり:ごめん、この子は異国から来たもので、光耀大陸の礼儀をよく知らなくて、悪気はないんだ。気にしないでくれ。
状元紅:それに、今は喧嘩する場合ではない……
雪掛トマト:忘れるところだった!急いで老虎菜を見つけないと――
状元紅:まずは焦らないでください……老虎菜はそのまま消えるわけがない。その仕掛けが地下道の他の空間に繋がっているかもしれません。
八宝飯:仕掛け……?オイラたちが来た時、仕掛けなんてなかったぞ……
八宝飯:しかし、この地下道は確かに奇妙だ、さっきオイラの羅針盤も使えなくなった……待て!羅針盤が回っている!
マオシュエワン:やっ使えるようになったのか?毎回毎回調子がおかしくなっちゃって。辣子鶏に直してもらわないか?
八宝飯:オイラのコンパスに問題があるわけじゃない!ここは風水的に良くないって言っただろう?
八宝飯:あれ、羅針盤が指している場所は、私たちの足の下?
マオシュエワン:下?地下に来たのに、まさかこの地宮の下にもう一つの地宮があるってことか?
蛇腹きゅうり:そうだ!前に道がなくなったけど、この仕掛けが下の地宮に繋がっているかもしれない!
女児紅:でも、どうやって下に行くんですか?入り口らしいものは見当たらないけど。
八宝飯:オイラたちに任せて!
八宝飯はシャベル、つるはし、スコップなどの大道具を取り出し、石壁を慎重に叩き、最終的に1箇所の位置を決定し、マオシュエワンを軽くうなずいた。
雪掛トマト:……そんなに多くの道具を持っているなんて、やはり墓荒らし?
八宝飯:ど、道具が揃っているからといって、墓荒らしとは限らないだろう!?
八宝飯:さあ、後ろに下がって、怪我したら責任は取れないよ――マオシュエワン、火雷弾だ!
ドカン――石壁と地面の接合部に穴が開き、かすかな光の柱が差し込まれ、細かい土煙が上がっている。その中には、異様な雰囲気が漂っているようだった。
状元紅:この地下道はやはり単純でないようですね。
八宝飯:!!!なんでこんなときに堕神が!
謎めき幽地・五
これらの動きをつなげると……踊りよ!
夜
地宮の奥
堕神を処理した後、みんなは地下路に沿って地宮の奥深くにたどり着いた。松明が暗い石壁を照らし、長い影と短い影を映す。
雪掛トマト:待って、前から水の音が聞こえるわ!
八宝飯:水の音?オイラは聞こえないけど……
蛇腹きゅうり:雪掛トマトは水源の音に対する判断力が一般人よりも鋭いから、彼女について行こう。
雪掛トマト:そう、わたしはパラータに長く滞在したことがあるの。砂漠で水源は死活問題だからね!
マオシュエワン:なるほど!じゃあ早く案内してもらおう!
曲がりくねった狭い道を抜けるとわ前方の石壁の上からニョキニョキと鍾乳石がぶら下がり、近くに流れている暗い川の中まで伸びている。
女児紅:本当に川がある……でも、前に進む道はまた塞がっています、あっ――
状元紅:なにかありましたか?
女児紅:さっき……川に青い影が浮かんでいた気が……
雪掛トマト:まさか、また堕神!?
女児紅:いいえ……人みたい。鎧も着ていました……
状元紅:鎧を着た人……?そんなはずは、暗いから間違ったのではる
八宝飯とマオシュエワンは無言で視線を交わし、先程まで女児紅が立っていた場所を探った。砕けた石の間に、数枚の朽ちた石碑が埋まっているのを見つけた。
八宝飯:道理でこの地下道は変だと思った、石碑はこの下にある……まさかこんな近いところにあるなんて。
マオシュエワン:こんなところに隠されていたのか……さぁ、石碑は見つかった。さっそく仕事だ!
八宝飯:はあ、そもそもこれは辣子鶏の仕事だったのに……まあいいや、マオシュエワン、刻刀を持ってくれ、そっちのやつら任せた!
女児紅:あの……なんの話ですか?
ふたりは女児紅の質問には答えず、代わりに石碑に符文を刻み始めた。青い光が曲がりくねった文字から溢れ出し、蛍火のように散った。
状元紅:これは……?
八宝飯:気にする必要はない、ボスに頼まれた仕事だ、すぐに終わる。
話している最中に、最後の石碑も刻み終わり、かすかな光が暗い川に流れ込み、ゆっくりと渦を巻いていく。
激しい水流は中心の渦に吸い込まれ、しばらくして大きな平らな石道が現れ、先程通った地下道とはほぼ同じだった。
蛇腹きゅうり:道がまた現れたけど、これもなにかの仕掛けか?
雪掛トマト:あなたたちはどうやってその石碑に仕掛けが隠されているのを知ったの?
八宝飯:ええと……運がよかっただけ。
雪掛トマト:ん?ちょっと怪しいな……
八宝飯:な、なにも怪しくない!さあ、早く行こう。
一行はそのまま道を進み、蛇腹きゅうりは後ろを振り向き、雪掛トマトを促そうとしたが、彼女は怪訝な表情で、なにかを考え込んでいた。
蛇腹きゅうり:なにを考えている?あんた、さっきから怖がる様子が全くないけど。
雪掛トマト:ここは私にとって怖い場所ではないわ。昔、砂漠に数日間迷い込んだこともあったのよ。その時、話し相手すらいなかった。
蛇腹きゅうり:そんなこともあったのか!一度も教えてくれなかった……女の子だったら、きっとたいへ――
雪掛トマト:ちょっと待って、松明を貸してくれる?
蛇腹きゅうり:なんだ……?
雪掛トマトは松明を天井の石壁に近づけ、その光が彼女の瞳に反射されて、輝きを放つ。蛇腹きゅうりは思わず見とれていたが、我に返り覗き込んだ。
ざらざらした石壁には、奇妙な人型の模様がびっしりと刻まれており、そのひとつひとつが異なる姿をしている。
蛇腹きゅうり:なんだこれ、ちょっと変わってるような……
雪掛トマト:これらの動きをつなげると……踊りよ!
蛇腹きゅうり:踊りだったのか……さあ、早く行こう。でないと……雪掛?
雪掛トマトは頭上の石壁をじっと見つめ、その模様に触れようと手を伸ばしていた。
蛇腹きゅうりが、彼女を止めるように声をかけようとしたが、みんなが驚きの声を出す暇もなく、地下路は突然回り始めた。
謎めき幽地・六
村民たちのものが……なぜここに?
祭壇
地宮の奥
カチッ――重たい石壁が閉じられ、一行は冷たい青石の地面に座り込んだ。
八宝飯:あいたたた!マオシュエワンのクソ野郎の、オイラから降りろ!
マオシュエワン:あ、道理でこんなに硬かった……え、ここはまたどこだ?
八宝飯:まさか、また仕掛けか?この地宮の構造は複雑すぎるだろう……
雪掛トマト:わたしがさっき、石壁に触れたからか……?
蛇腹きゅうり:……ここは仕掛けがいっぱいで、油断できない。むやみにこの場所の物には触れない方が良さそうだ。
雪掛トマト:ちょっと待って……あそこ、なにか動いているの?
松明が照らされない暗闇の中で、かすかな光と、動物が息を吹き出しているような音が聞こえる。
八宝飯:ひっ――、あの緑の光がするのは……まさか、堕神!?
マオシュエワン:おい!雪丸、勝手に動くな――
フェレットはマオシュエワンの腕から素早く飛び出て、暗闇の中に潜り込んだ。光と影の境界線に、いくつかの毛玉がついに現れ、ひゅんひゅんと鳴いて、みんなの近くに寄ってきた。
女児紅:これは……虎の子?かわいい……
雪掛トマト:これは老虎菜の虎の子だ!なんでこんなところにいるの?老虎菜は……
女児紅:あれ、なにか様子がおかしい、よちよち歩いてます……お酒の匂いもする!
雪掛トマト:……本当だ、どれだけ飲んでいたの……
マオシュエワン:雪丸、ようやく捕まえた!おっと、ここの地面に人が倒れている!
雪掛トマト:!!
火の光が暗闇の隅を差すと、ほっぺたが赤く染った老虎菜が酒壺を抱えて深く眠っていた。彼の側にある石台には、贅沢な料理が散らばっていた。
雪掛トマト:よくもみんなを心配させて、自分はこんなところで食い散らかしているとは……ねえ、老虎菜、早く起きて!
蛇腹きゅうり:……力を入れすぎだぞ。
ぼんやりと目覚めた老虎菜は、顔に少し赤い跡がついていた。彼はしばらくぼんやりして、やっと目が覚めた様子で、思わず驚きながら喜んだ。
老虎菜:夢じゃなかった……本当にお前らだ!よかった!
雪掛トマト:……あなたね、自分で飲むのはいいけど、トラたちにこんなに飲ませるのはどういうこと?
老虎菜:ええっ、ト、トラ、お前ら、俺の隙を見て酒を飲んだな!
蛇腹きゅうり:トラのことはともかく、食べることばかり考えて、なんで俺たちを探さなかったんだ。どれだけ心配したか分かっているのか?
老虎菜:ごめん……俺が食べ物に弱いのお前も知ってるだろ……
状元紅:失礼ですが、食べものの中に、焼きダックや豚肘、牛肉の煮込みが含まれていましたか?
老虎菜:な、なんで知ってるんだ?
さっきから状元紅が老虎菜の周りにある食べ物を確認していて、真剣な表情になっている。
状元紅:これらの食べ物……それに先の子豚の丸焼きも含めて、村民たちが盗まれた年越し料理と合致しています。
蛇腹きゅうり:村民たちのものが……なぜここに?
老虎菜:これは…他人の家の食べ物だったのか?知らなかった……たくさん食べてしまった……
みんなは興味深く残りの食べ物を調べ始めた。老虎菜は申し訳なさそうに頭を垂れ、雪掛トマトが静かに立ち止まり、優しく彼の肩を叩いた。
雪掛トマト:悪気はなかったんだもん……問題が解決して、私たち書院に帰ったら弁償すればいいでしょう。
老虎菜:……うん!必ず調べてみせる!
八宝飯:みんな、こっちを見てくれ、この石台の後ろに、祭壇画あるみたいだ!
謎めき幽地・七
もしかして……この絵、祭壇と関係あるのか?
八宝飯:みんな、こっちを見てくれ、この石台の後ろに、祭壇があるみたいだ!
それを聞いたみんなは松明を持って、石台の後ろに行くと、テーブルのような四角い小さな祭壇を見つけた。
マオシュエワン:あんた、目がいいな……
八宝飯:ふふ、もっと小さいものでも見えるぞ。例えば、誰かさんが出かける前に寝ぼけて、ボタンを間違えてしまったとか……
マオシュエワン:あ――なんで早く言ってくれなかったんだ……!
八宝飯:わざとやってるのかと思ったから。なかなか個性的で、似合っているぞ。
マオシュエワン:もういい……黙れ!!
状元紅:……この祭壇は埃で覆われている。しばらく使われていないようですね。
女児紅:あれ、状元紅兄さん、これを見てください。そこに……奇妙な模様があります?
蛇腹きゅうり:気をつけろ!むやみに触ってはいけない、また仕掛けがあるかもしれない。
女児紅:す、すみません……ちょっと忘れてました、え……祭壇が光ってる?
祭壇に刻まれた模様から薄い金色の光が溢れ出し、ぼんやりとしたリボンになって、人々の周りに絡まり、ついに老虎菜の腕に止まった。
老虎菜:これは……どういうことだ?
老虎菜:ないよ……肉まんや鶏の太ももは全部戻したのに……
老虎菜:あっ、そうだ!さっき拾ったあの古い絵……
老虎菜は懐から敗れた紙片を取り出した。絵の墨が金箔で覆われているように輝き、祭壇から漏れる金色の光よりも眩しくなっている。
女児紅:あれ、この絵にも祭壇と同じ模様が描いてあります!
雪掛トマト:おかしいね、拾った時にはこんなものはなくて、ただ普通の山水画の欠片だったのに……
老虎菜:もしかして……この絵、祭壇と関係あるのか?
女児紅:……この祭壇を開けられるかもしれません。祭壇に置いてみたらどうです?
蛇腹きゅうり:でも……
マオシュエワン:女児紅さんの言うとおり、もうずいぶんとこの地宮を彷徨っている。試してみよう!最悪でも、仕掛けが俺たちを下の階まで連れて行くだけだろう!
八宝飯:うん……オイラの経験では、こいいう祭壇はほとんど地宮の要所だ、本当に開けることができれば……一度試してみる価値がある!
蛇腹きゅうり:それなら、老虎菜、絵を俺に渡してくれ……みんなは足元に注意するんだ。もし仕掛けが動いたら、回避してくれよ!
蛇腹きゅうりは祭壇の前にやってきて、みんなに退くように合図し、金色に光る紙片をそっと台に張り付けた。
一瞬の静寂の後、地宮は金色の光に包まれ、暗く陰鬱なこの場所をまるで昼間のように照らし、耳をつんざく轟音が鳴り響いた。
石壁の隠し扉がゆっくりと開き、埃が舞い上がり、水のような涼しい月光がまっすぐに射し込んで、野草や枯れ葉の新鮮で湿った匂いを運んできた。
雪掛トマト:あそこが出口みたい!
みんなは待ちきれずに、急いで秘密の扉をくぐり、狭い石道を抜けると、最初に見た古いクスの木が目の前に現れた。
月明かりが薄く、カササギが鳴く。一行が振り返って見ると、石の扉と地下道は蔓のように生えた木々に覆われ、痕跡がなくなっていた。
再び立てる波風・一
偶然知り合った旧友だよ。
深夜
森
マオシュエワン:よかった!やっとあの変なところから抜け出せた。
八宝飯:はあ……とにかく、なんとか任務は終わったようだ。早速ボスに報告に行こう。
蛇腹きゅうり:ちょっと待って。あんたら、この森から出る道を知ってるのか?
八宝飯:もちろん……えっ、あんたたちも道に迷ったのか?
蛇腹きゅうり:ああ……そうだ、さっきまでこの森をさまよって、もう東西南北の区別もつかない……
八宝飯:羅針盤がある。オイラたちに聞いて正解だったな。帰る場所が山ほどの方向にあることか覚えているか?
蛇腹きゅうり:さっき書院から来たんだけど……山の南西側にあるはずだ!
八宝飯:えっ?こんな田舎に書院があるのか……南西側、つまりあの方角だ!
蛇腹きゅうり:感謝する!
女児紅:書院?まさか鬼谷書院の人ですか?書院の先生たちはみんな博学だって、村のおじいちゃんがよく話してました。あなたたちはもしかして?
雪掛トマト:そうよー、あれ、女児紅ちやまんいい体型してるわね。今度書院に来たら、私が踊りを教えてあげるよ!
女児紅:踊り?鬼谷書院は踊りも教えているのですか?
蛇腹きゅうり:おいおい、またそれかよ……女児紅さん、時間があるならいつでも書院にいらっしゃい!
状元紅:うん、でも今日は村に戻らないと……調べなければならないこともたくさんあります。
八宝飯:山に登るときにちょうどその村を通りすぎたし、一緒に行こう!
状元紅:お願いします。
皆と別れた後、30分ほどで蛇腹きゅうりたちは書院に戻った。風で庭で吹き、竹林が揺れ、一人で石のテーブルをの前に座っていた金駿眉は物音を聞いて、薄笑いを浮かべながら、埃っぽい一行を眺めていた。
金駿眉:あなたたち……夜中に遊びに出かけたのか?
蛇腹きゅうり:えっと、詳しく説明すると長くなるが、ちょっとしたトラブルがあった……でも無事だった。
金駿眉:最近書院付近も穏やかじゃないみたいだね……
金駿眉:そういえば、あなたたちが外出していたとき、絵巻を持っている見知らぬ食霊に会ったかい?
蛇腹きゅうり:見知らぬ食霊は何人か会ったけど……
雪掛トマト:絵巻は……もしかして、あの絵の切れ端?蛇腹きゅうり、まだ持っているよね?
蛇腹きゅうり:ああ、これだ、ほら……
金駿眉:……?
皆は蛇腹きゅうりが持っていた紙切れを見た。しかし羽のように薄い紙片に、わずかな泥がついているだけで、なにも残っていなかった。
雪掛トマト:そんな!そこに描かれていた風景や符文……全部消えてしまった。
金駿眉:……この絵はどこで手に入れたの?
雪掛トマト:裏山の森で、そうだった……そこにコソコソした人影を見えたけど、あっという間に消えてしまった。
金駿眉:そうか……裏山か……
蛇腹きゅうり:もしかして、その人物を知っているのか?
金駿眉:残念ながら、わたしもしらない……わたしは人に頼まれて、あの人物を探そうとした。
蛇腹きゅうり:誰に頼まれたんだ?
雪掛トマト:えっ、南離印館の人たちと知り合いなの?
金駿眉:ふふ、偶然知り合った旧友だよ。
蛇腹きゅうり:……金駿眉、この件を俺に調査させてくれないか?
雪掛トマト:えっ、またなにするつもり?
蛇腹きゅうり:もちろん、自ら南離印館に行って情報を聞きに行く。明け方に出発する!
再び立てる波風・二
この茶屋は、いつから武館になったんだ?
翌日
茶館
真冬の厳しい寒さの中、窓外は厚い雲と風雪に覆われている。小さな茶屋の中、真鍮の燭台には生灰が厚く降り積もり、揺れるろうそくの光が室内を暖めている。
雪掛トマト:外に出たときは晴天だったのに、あっという間に雪が降り出した……どうやらしばらくは止まなさそうね。
老虎菜:ちょうどいい……うーん……お腹を満たしてから出発しよう。お兄さん、お菓子をもう10人前ください!
雪掛トマト:……もう、あずき餅20皿、なつめ菓子15皿、砂糖蒸しチーズを10箱食べたでしょう……
蛇腹きゅうり:さらに牛乳糕10皿。
老虎菜:なるほど、道理で半分しかお腹が満たされていないんだ……お兄さん、後10人前追加!
老虎菜:ん?雪掛、お菓子全然食べてないけど、お腹すいてないのか?
雪掛トマト:もういいよ、わたしは……お菓子の名前を聞くだけでお腹がいっぱいになっている。
蛇腹きゅうり:そうか、でもさっきから、ずっと唾を飲み込んでいるみたいだけど。
雪掛トマト:ちょっと、なにでたらめ言ってるの!?
蛇腹きゅうり:少しお菓子を食べるぐらいじゃ、踊らないぐらい体重が重くならないのにって思っただけで……おい!なにをするんだ――
雪掛トマト:ちゃんと食べなさい――こんなに食べ物があっても、口を塞げないの?
老虎菜:ねえ、雪掛、この栗粉糕はあんまり甘くないから、一口食べてみてをこれからも長い旅が続くから、空腹でいるわけにはいかないだろう!
雪掛トマト:それは……一理あるね、ちょっとだけ食べる。
蛇腹きゅうり:……同じ言葉なのに、他の人には丁寧に話しているが、俺に対しては攻撃的になるんだな。
雪掛トマト:ふん、わたしに礼儀正しく接すれば、当然わたしも丁寧に接するわ。でも、誰かさんの態度がなってないから。
蛇腹きゅうり:あんた……もういい、なにも聞こえなかったことにする。
店小二:お客様方、本当に申し訳ありませんが、当店は半時間後に閉店します。お菓子が揃ったら、お早めにお会計をお願いします。
蛇腹きゅうり:閉店?でも、まだ日は暮れていないぞ。
店小二:お客様はこの辺りの人ではないですよね。実は……ここの店は夕暮れなると、すべて閉まってしまいます。
店小二:お客様、日が暮れる前に宿泊先を探したほうがいいですよ。遅くなると大変ですから……
蛇腹きゅうり:どういうことだ?
店小二:まあ、最近村中で事件が起こっているからです……
店小二:みんなが山の中に年獣がいるだと言っています。暗くなると、食べ物や子供たちを攫うために山から降りてきますよ、そいつに遭遇すると、大変なことになります。
雪掛トマト:年獣?なにそれ?
老虎菜:伝説によると、大晦日が近くになると、人々を傷つける怪物らしい……道中に爆竹の破片が落ちているのも理解できた。
店小二:そうですね、村の家々は年獣を追い払うまめに、爆竹を燃やしているんですが、あまり効果はなくて……とにかく、お客様たちは気をつけた方がいいですよ。
そんな話をしているうち、隣で皿が割れる音が聞こえてきた。不気味な黒い服を着た何人かの男たちが、一人の客を問い詰めていて、足元にある腰掛けをいくつか蹴り倒した。
店小二:え―、お客様たち、みんな仲良くしましょうよ。そんなに怒らなくてもいいですよ!
黒装束の男:あっちへ行け!邪魔をするな!
店小二:うわ!
黒い服の人が店員を蹴り飛ばし、店員は避けきれずに後ろに倒れた。そこへ、蛇腹きゅうりが素早く飛び込んで彼を受け止めた。
蛇腹きゅうり:あんたたち、もうほどほどにしとけよ。
黒装束の男:また何処から来た空気の読めないヤツだ。腹いっぱい食べて、余計な世話を焼きたいのか?
老虎菜:どうして知っているんだ?実は本当に腹いっぱい食べたぞ――体を動かすのにちょうどいい!
乱闘になるが、店の物を壊さないように気を配った蛇腹きゅうりたちは、自由に動けず、しばらくは勝負がつかなかった。
ガチャン――剣が扉に突き刺さり、冷たい風が雪とともに吹き込まれた。剣を持って入ってきたのは、白髪の見知らぬ食霊だった。
白酒:この茶屋は、いつから武館になったんだ?
黒装束の男:!!
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