SPカッサータ・エピソード
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SPカッサータのエピソード
召喚された直後、カッサータは御侍に利用され、裏切られ、死ぬつもりでいたが、運命のいたずらでピザの王国に辿り着いた。しかし、最初から期待されていなかった彼は、同様に誰も信用しなかった。デイジーを照らす陽の光が、彼の心にそっと入り込んできた時、この夢のような美しい時間を大切にしたいと思うようになった。
Ⅰ
それは、どこかの小さな王国の静かな夜に起こった物語。
夏の夜の風は時折草むらを揺らし、風に乗って舞い上がった蛍は、星の光となってゆっくりと天の川へと流れていく。
カッサータ:気をつけろ!また転ぶぞ!
ピザ:大丈夫!それに、カッサータがついてるだろ?……よいしょっと!さあ、お前さんも早く来いよ!
この場所に辿り着くと、ピザは何も言わず芝生の上に寝っ転がった。そして、子どものように駄々をこねながらそばにいるカッサータを見上げる。
カッサータは数日前からピザの護衛になったばかりだが、彼に連れられて、王国のあらゆる街角を見て回った。ここは、今日の最終目的地だったのだ。
カッサータ:(このバカは警戒心がないようだ、誰に対してもアホみたいな笑顔を見せる)
カッサータ:(でも、俺だってアイツをどうにもできない)
そんなことを思いながら、カッサータはピザの隣に座ったが、不意に、地面に倒れ込むように引きずられた。
そして彼の目の前に広がったのは、広大で果てしない星空。カッサータにとって、手を伸ばせば届きそうなほど星を身近に感じたのはこれが初めてだった。
ピザ:ここはオレが一番好きな場所だ!だって、ここからは一番キレイな星空が見えるし、悩みも全て吹き飛ぶんだ!
ピザの一言で、カッサータは今しがた考えていたことを実行するのをやめた。その時、自分の考えがいかに馬鹿げたものであったかに気がついたのだ。
カッサータ:ああ、本当にキレイだな。
カッサータ:(彼と一緒にいると、いつもこんな現実離れなことを考えてしまう)
ピザ:だろう!カッサータも気に入ってくれると思っていたよ!お前さんがここに来てから、いつも何か悩んでいるように見えたから、絶対ここに連れて来たかったんだ。
カッサータ:(やはり、この妙なバカのせいだ。いつも何も考えていないような顔しているくせに)
カッサータが横を向いて、そばで寝っ転がっているピザに目をやると、何故か自分を見ている彼の瞳に迎えられた。その時、ピザの目は笑いに満ちていて、彼にこう言ってきた。
ピザ:明日はオレの誕生日だ。国王は王宮でバースデーパーティーを開いてくれるみたい、王女殿下とチーズちゃんも来てくれるぜ。でも、最近の王女殿下は外出する体力あるのかな?
カッサータ:誕生日?食霊にも誕生日があるのか?
ピザ:御侍サマは、オレがそばに来てくれたことに感謝しているから、召喚してくれた日をオレの誕生日にしてくれたんだ。その日になると、御侍サマはいつも王宮でバースデーパーティーを開いてくれるぜ。
素直に自分の目を見つめるその瞳に、カッサータは一瞬言葉を失い、もう一度星空に目を向けた。
カッサータ:いつ召喚されたのかも……御侍のことも覚えていない。
何故か嘘を口にしたカッサータは、頭が真っ白になり、いつも笑っていて欲しいと願うその笑顔に対して、どう返したらいいかわからなくなった。
ピザ:だったら、オレと初めて会った日をお前さんの誕生日にするのはどうだ?!
カッサータの前に突然現れたピザの顔は、星空を覆い隠した。その瞬間、彼はまた現実離れした感覚を覚える。
カッサータ:そんなことはどうでもいい。俺はお前の護衛で、お前を守ることだけが俺の使命だ。
カッサータは拳を握りしめ、先ほどのモヤモヤした状態から抜け出そうとしていた。そして、両手で体を支えて立ち上がり、無自覚のバカを見つめる。
カッサータ:もうこんな時間だ。帰らないと、陛下たちが心配する。
カッサータはピザの表情を振り返ることもせず、なんとか自分で一歩踏み出すしかなかった。しかし、それでも、ピザが今感じている失望を聞き取ることができた。
カッサータ:(でも、俺にはアイツを慰めたり、アイツにそこまでさせるような資格はない)
ピザ:あっ!カッサータ、待ってくれ!もしかして、誕生日にみんながパーティーを開いてくれるのが恥ずかしいのか!?じゃあ、明日は2人の誕生日ってことにしよう!そうすれば、一緒にお祝いできるぜ。
カッサータ:お前って、本当におかしな……バカだな……
カッサータ:(すぐに立ち直るその楽観さのせいで、俺をいつまでもここにいられると錯覚させるのかもしれない……)
Ⅱ
王女殿下は幼い頃から病弱で、寝室は王宮の中の静かな場所にある。時折、ピザはイリヤという王女殿下と、王女殿下の世話係のチーズを訪ねた。
王女の体調が許せば、寝室からほど近い小さな庭でピクニックやアフタヌーンティーを楽しむことができる。そしてカッサータは、今のように木の下で遠くからそれを眺めていた。
ピザが言っていたように、今日の宮殿はいつもより少し賑やかだ。使用人たちは皆、今晩のピザのバースデーパーティーの飾り付けや食事の準備で忙しそうにしている。
ピザとチーズも、何か楽しそうにコソコソ話している。しかし、やがて、それまで笑顔でいたチーズは、次第に不機嫌そうな顔になり、ピザに文句を言い始めた。
チーズ:あっ!もしかして忘れたの!ピザのバカバカバカバカ!!!
ピザ:ちっ、違うよ……思い出したから伝えたんだ……
チーズ:今更すぎるよ!あの極上チョコレートチーズケーキは、1週間前に予約しないと食べられないんだよ!まさかわすれるなんて!!!
チーズ:フンッ!今日一日絶交してやる!
チーズはそう言うと、後ろを振り返らずに歩き出した。残されたのは慌てふためくピザと、黙ってアフタヌーンティーを飲みながら、なぜか口角を上げているイリヤ王女だけだった。
ピザ:王女サマ、一先ずお部屋に戻りましょうか。
伊莉雅:ええ、ピザも大変ね。
ピザが王女殿下を寝室にお連れした後、使用人がアフタヌーンティーを片付け終わっても、チーズは戻らなかった。
その後、ピザとカッサータは長い時間を掛けて王宮中を探したが、チーズは見つからなかった。
その日の午後
王宮のとある部屋
ピザ:なぁ、カッサータ。チーズちゃんは出て行ったのかな?本当にオレと絶交する気?どんな美味しいものを用意したら機嫌が良くなるかな?
ピザ:あっ!いや、今回彼女を怒らせたのは、欲しがっていたケーキを買い忘れてしまったからだったあああ!!!!!
カッサータ:お前はパーティーの主役だろ、この後たくさんの人が祝いに来てくれる。ほら、着替える時間だ。
ピザ:一緒に行こうよ!
カッサータ:今日はお前の誕生日だから、今日中に戻ってくるはずだ。
ピザ:お前さんが行かないなら、オレ一人で行く。
ピザ:本当に外に出ちゃうぞ……本当に、本当に出ちゃうぞ!
部屋のドアが開閉する音がして、ピザと視線を合わせたくなくて俯いていたカッサータは、すぐに顔を上げた。そして、ピザがドヤ顔でドアノブを握っているのが見えた。
ピザ:ヘヘッ、オレを見捨てないって思ってたぜ。
カッサータ:(やっぱり、アイツには勝てないな)
カッサータは何も答えず、ただピザをどうしようもできない「気まずさ」を和らげるために、再び俯いた。
ピザ:ほらほら!とにかくチーズちゃんを探しに行こう!時間通りに戻って来ればいいんだよ!
その日の午後
王宮外の街
ピザとカッサータは、王宮の外で、チーズがよく通ういくつかのレストランを探したが、結局は見つからなかった。
その後、人気のデザートショップをいくつか探したが、それでもチーズを見つけることはできなかった。
チリン──
ドアベルが鳴り、ピザとカッサータはケーキ屋のドアを押し開けた。
ピザ:店長さん、ブロンドの長い髪の女の子は見なかった?
蛋糕店老板:見たけど、その娘さん注文してからずっと窓際の席で静かに座っていたぞ。
カッサータ:どうも、また別の場所を探すか。
蛋糕店老板:でも、一気にカップケーキを何個も食べていたから、ビックリしたよ。
カッサータ:彼女は今どこにいる?
蛋糕店老板:食べ終わった後、彼女は美味しいと感想をくれて、ケーキの追加注文をしたんだ。私は奥の部屋に案内して、ケーキをゆっくり楽しんでもらった。
ピザ:あっ!じゃあ、早く探しに行こう!
カッサータは、ピザがあんなに急いでいるのは、早めに王宮に戻りたいと思っているのかと考えていたが、楽しそうな表情を見る限り、そういう訳ではないみたいだ。
店主が言う部屋に到着したピザは、ドアノブを回して押し開けたが、中は真っ暗だった。
カッサータ:ちょっと待て!
真っ暗な室内にカッサータは思わず警戒し、ピザより一足先に室内に足を踏み入れた。
パンッ──!パンッ──!
何回かクラッカーの音とともに、目の前にあった闇が散っていった。目の前に広がる光景とケーキの甘い匂いに、カッサータは驚いた。
豊富な料理、意匠を凝らしたケーキ、先ほど見た使用人が手にした飾り、この全てがカッサータに何が起こっているかを伝えていた。
ピザ:誕生日おめでとう、カッサータ!あっ、オレも、おめでとう!
こういう時、一体どんな顔をしていればいいのか。そう思ったカッサータは、自分でも気づかないうちに口角を上げていた。
カッサータ:ど、どうもありがとう。
チーズ:ほら、驚かせちゃうって言ったじゃない!
カッサータは2人の言い争いを見つめながら、心の中でこの温もりを手放したくない理由を知った。
Ⅲ
数年後のある日
ペル子爵の邸宅
過去のすべてはまだ目の前にあるように思えるが、ピザとカッサータにとっては、もう二度と戻れない時間だ。
2人はウイスキーの情報を追い続け、ペル子爵の邸宅にウェッテという紳士がやってきたことを聞き出した。
到着してからの数日間、彼らは邸宅の周りを歩き回っていた。しかし、よく外出している子爵や使用人、夜中に何回か馬車で帰ってきた老執事の姿を見たほか、ウィスキーの気配はなかった。
ピザとカッサータは夜の邸宅にも忍び込んでみたが、詳しく探ることはできなかった。子爵が多くの女の子を養女にしている以外、他に異常がないことがわかった。
しかし、予想外だったのは、何の前触れもなく火災が起きたのだ。すべてを隠すかのように、ピザたちが気づいた時には、火は抑えきれないほどに広がっていた。
使用人の多くは中から逃げ出し、皆消火に追われ、遅れて到着した救急隊員は負傷者を搬送していた。現場は大混乱で、カッサータたちの動きを怪しむ余裕もない。
チーズ:ピザ、こんなに火の手が回っているのに、どこに行くつもりなの?!
ピザ:何か手がかりがないか、探してみる!
カッサータ:チーズ、ここで待っていろ、必ずピザを連れて帰る。
炎はパチパチと音を立てながら、周囲のものを飲み込んでいく。灼熱の温度と紛れもない緋色の炎は、この2人の前進を止めることはできなかった。
ピザ:これは……ペル子爵?
ピザは書斎に到着すると、とっくに心臓を刺された子爵を見つけた。この事実は、追いかけてきたカッサータもすぐに気づいた。
ピザ:ここに通路があるようだ、どこに繋がっているんだろう?
カッサータ:この前来た時、確かこんな入口はなかった。隠されていたのか?だったら、開けたのは誰だ?
ピザは躊躇することなく、深く暗い通路を火が完全に照らしているにもかかわらず、駆け込んだ。カッサータもその後に続き、いくつかの角を曲がると、見慣れた雰囲気と奇妙な記号がたくさんある部屋に着いた。
ピザ:ここは……
カッサータ:(間違いない、ここがウイスキーの実験室に違いない。でも俺は……なんでそんなことを知っているんだろうか?)
カッサータ:いっ――
突然、腹部に激痛が走った。そこは、かつてカッサータが自分の御侍が使う特殊な短刀で傷つけられた箇所だ。
カッサータの脳裏には断片的なピースが浮かぶが、それをまとめる術はない。傷ついた左目に鋭い痛みが走り、今はそれ以上考えている暇はなかった。
目の前に立つピザは、手にした旗を握り締め、その細い肩はこの部屋に入ってからずっと強張っていた。カッサータは以前にも彼のこのような姿を見たことがある、ウィスキーが絡むといつも正気を失ってしまうのだ。
更に探ろうとするピザを止めようとした瞬間、ピザは突然ペースを速めた。ピザが走っていく方向を追っていくと、そう遠くないところに、貴族の礼服を着た金髪の「少女」が横たわっているように見えた。
??:……ゴホッ……ど、どうして……死んで……殺し、た……ゴホッ……
「少女」の声は、吸い込んだ煙のせいか、かすれていた。断片的な言葉は、「少女」の息遣いの中で更に聞き取りにくくなっていた。
カッサータ:あの服装からして子爵に子どもだろう?
??:ち……がう……
そう言った「少女」は、気絶するまで、その目に宿る嫌悪感を少しでも減らさなかった。
「少女」を抱き上げたピザは頷き、カッサータは彼を火から遠ざけるようにエスコートした。
チーズ:どういうこと?どうして1人増えたの?
ピザ:彼女は火災現場で気を失っていたから、オレとカッサータが助け出したんだ。
チーズ:どうして助けた人をそのまま連れ帰る癖を直さないの!こういう時は、プロに任せるべきてしょう!
ピザ:もしかしたら、何か知っているかもしれないと思ったんだ。
ピザ:心配するな、今すぐ治療に連れて行くから。
翌日
ペル子爵邸宅廃墟
かつての豪邸は、何の予兆もない火災に遭い、一夜にして灰に帰した。
カッサータは、自分が再びここに戻ってきたことをピザに告げなかった。彼は目の前の廃墟を眺めながら、緋色の炎に飲み込まれていない痕跡を探した。
カッサータ:ん?これは……薬瓶?
カッサータは昨日の記憶を辿り、その密室のおおよその位置を推定し、ついに廃墟の中から、炎に焼き尽くされないガラスの薬瓶を発見した。そこには、あの男のシンボルである「ケーリュケイオン」がはっきりと刻まれている。
カッサータ:今回は、間違っていないようだ。
やがてカッサータは、同じマークのついた小瓶を近くで発見した。ただ、すでに治った腹部の傷が、なぜか再び痛み出し、あの時失った左目の痛みまでが、以前よりひどくなっている。
少し目を漂わせながら地面を見て、こんなことが何度もあったのか、もう忘れていた。ただ、最初の頃と違って、痛みは毎回深くなっている。
現在では、ウィスキーがここに滞在していたことは証明できても、現在の居場所については何のメッセージも残されていない。
しばらく小瓶の山を探し回った後、カッサータは薬瓶を収納する箱の中に、まだ焼けていない招待状を見つけた。
カッサータ:ガセット……公爵?
Ⅳ
この招待状の情報を持って、カッサータが借りたホテルに戻ったのは夜だった。
ホテルに灯された明かりを見て、ピザとチーズがあの「少女」を連れて戻ってきたことがわかった。ただ――
チーズ:あぁー!!!
ピザ:落ち着け!!!
ホテルに入ってすぐのところで、部屋から叫び声が聞こえてきた。カッサータはすぐに2階に駆け上がり、ドアを開けた。
カッサータ:どうした?何があった!
カッサータ:一体どうしたんだ?なぜハサミを持ってる?
チーズ:何があつまたのかわからないが、この子が帰って来たらすぐハサミを持って髪を切り始めた。ピザもチーちゃんも止められなかったよ。
周囲の会話を無視して、「少女」は自分の髪を満足のいく長さに切って、ゆがて動きを止めた。そして「少女」は、汚れてしまった華やかな礼服を解いた。
ピザ:ちょっと!待って!!!
ピザは慌てて両手で目を覆い、背中を着けるようにカッサータを引っ張った。
チーズ:いいから!照れないで!彼は正真正銘の男の子だよー
ピザ:ええっ?!
少し騒いだ後、カッサータは子爵邸で得た情報をピザとチーズに話した。
カッサータ:つまり、煙でのどを痛めてしまって声が出ないってことか?
チーズ:お医者さんがそう言ってたよ。
カッサータ:だから今、隅っこでしゃがみこんで、独り言をつぶやいているのか?
ピザ:……しまった……何も聞き出せない……今回も失敗か……
カッサータ:気にするな、この子を助けただろう?今回、俺たちの努力は無駄じゃなかった。
ピザ:きっとそうだ。ヤツはきっと、証拠を消そうとしたんだ。
チーズ:で……あのガセット公爵は誰なの?
カッサータ:俺が入手した情報では、あの公爵はここではかなりの権力者だ、ペル子爵も最近あの公爵と定期的に連絡を取り合っているみたいだ。
カッサータ:アイツは目的もなく誰かに近づくことはない。ペル子爵はあの公爵と密接な関係にあった以上、次のターゲットは公爵である可能性が高い。
ピザ:じゃあオレたち、また何日かここに残る必要があるってこと?
カッサータ:いや、ここに近い邸宅が公爵夫人の住居と言われている、公爵はたまにここに戻ってくるが、ほとんどの時間を他の邸宅で過ごしているらしい。
チーズ:他の邸宅?あの公爵、どんだけ持っているのよ。
カッサータ:一般市民が知ってる範囲では、市内に3カ所、郊外に5、6カ所くらいあるそうだ。
チーズ:それじゃあ、どうすれば公爵に近づけるの?
カッサータ:一カ所ずつ探すしかないだろうな。
カッサータ:でも、まずはこの問題を解決することが急務だ。
カッサータの視線を追い、3人は隅っこで何も言わない少年に目をやった。
チーズ:そうだね。彼は人間だし、チーちゃんたちと一緒に行動していたら、危険な目に遭うかもしれない。
ピザ:家がどこにあるか、覚えてるか?家まで送るよ。
少年は唇をかみしめ、首を横に振った。
ピザ:帰る場所がないなら、保護するしかないな。
カッサータ:ダメだ、俺たちの旅は長い、これから何があってもおかしくはないんだ。
ピザ:じゃあ……あの……
チーズ:ああ!そうだ!古い街道の孤児院に預けたらどう?一昨日小麦パンをくれたシスターのお姉さんは、そこで子どもたちの面倒を見ていて、とても親切な人だったよ!
その言葉を聞いたカッサータは、少年に歩み寄り、しゃがみこんで優しく問いかけた。
カッサータ:まあ、うちのバカの言葉は、あまり気にしないでくれ。もう一度、真剣に聞くが、その孤児院とやらに行きたいか?
少年は、何かを決心したかのように頷いた。
カッサータ:うん、いい子だ。
カッサータは少年のサラサラとした金髪を撫でながら言った。突然、カッサータの腹部に再び激痛が走り、全身の神経が凍りつくような感覚に襲われる。
カッサータ:(しまった、目が……)
どうして、何も見えない……
誰かが……呼んでる……
Ⅴ
その底なしの深い闇には、カッサータのかつて忘れたかった、そして今、大切にしたい思い出が凍りついている。
ポタッ――――
思い出の雫が溢れ落ち、暗闇の中で波紋を広げていく……
王国を脱出してから、彼らはあちこち放浪の旅に出ていた。デイジーが満開のあと国にはもう戻れないけれど、同じ星空を一緒に眺めることはできる。
ピザ:昔、落ち込んだ時、向こうの丘で星を見に行くんだ。そうすると、また元気が出るんだ。
カッサータ:ああ、知ってる。だからあの時、俺を連れて行ったんだろう?
ピザ:そうだ!だってお前さんが来たばかりの頃、いつも浮かない顔していただろう。カッサータは、笑うともっと良い顔になるのに!
カッサータ:お前はいつもそうやって自分を元気づけているのか?
ピザ:今見える星は何年前の姿なんだろう?星を見るたびに、いつもそう思うんだ。もしかしたら、彼らにとっても、オレたちはつかの間の存在かもしれない……
ピザ:御侍サマと、王女殿下のように……それを考えると、今と向き合わなきゃって。
カッサータ:まさかお前がそんな風に思ってるとは。
カッサータ:(強がっているのがバレバレだ。だが、バラさないでおこう)
ピザ:カッサータは?落ち込んだ時、お前さんはどこに行くんだ?
カッサータ:お前のそばに……
突然、記憶の映像が徐々に黒く侵食され、渦巻く水が微笑んでいたはずの顔を歪ませた。
俺が望んでいるのは……お前のそばにいることだけ……
しかし、お前は……
誰だ……
その時、カッサータはあることに気がついた。
彼は助けを求めない。
彼は、助けを求める方法を知らない。
しかし、今となっては遅すぎる……
同じ時刻
公爵のとある邸宅
薄暗い部屋は、かつての豪華な内装が見られなくなり、壁には無造作にレポート用紙が貼られ、様々な器具が整然と並べられている。
青い炎に焼かれた瓶がゴボゴボと泡を吐いているが、その前に立っている男は今、別の場所を見つめている。
黒い双蛇の杖の呪文で縛られた壺は、半分以上透明な液体で満たされている。そして今、その上空には小さな金色の蛇が2匹、一つの血の瞳に巻きついている。
ポチャン――――
その紅い瞳から涙が滲み出て、ガラス皿の中に次々と滴り落ちていく。
ウイスキー:記憶は人間の魂を構成する一部である、それは食霊も同じですよ……
ウイスキー:幸い、あの時黒蛇で奪った目はよく保存されている……だから、魂を変換する呪文もスムーズに作動できた……
今回は、どうやって私を止めるのでしょう?
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