【非人類学園】レムのデータ

雷電少女、華麗に登場！

そう、あたしこそがあのレムよ！はっきり言って、レムはお兄と同じくらい大人気だよ！

例えば...そう！あたしと同じ名前の人がた～～っくさん！

某異世界のメイドだとか、某女死神だとか、某ゲームの精霊だとか～あたしレムと同名の有名人がいっぱいいるんだよ～へへ～

あと、レムって物理の単位らしいよ！すごいでしょ！

え？そんなのみんなただの偶然に決まってるって？あたしとなんの関係もないって？

そんなことないよ！あたしは天に選ばれし者雷震子の実の妹なんだよ！雷の力を持ってるんだよ！あ、でも怖がらなくてもいいよ、正義の天に選ばれし者の妹だから、みんなの幸せを守るのがあたしの務めなの～

お兄と一緒に、雷電の名の下、みんなを導いて行くんだから！

皆が寝静まった夜、アパートの２階、一番東側の部屋で、青白い光が走る。テレビの前で、目にも留まらぬ速さでゲームのコントローラーを操作する手がちらと見えた。

「クリア！おめでとうございます！新記録です！前回の最高記録を２８秒更新しました！」

さて、スクショとって、ネットにうｐ、っと。ゆっくり起き上がって水を飲んで、部屋へと戻り、そのままベッドにどっと倒れ込んだ。

ふー、これでやっと安心して眠れるぞ～レムは毛布を被り、夢の国へと旅立った。

翌日、レムのスクショで掲示板は大いに荒れていた。

「うわー！またこのIDのヤツに記録を塗り替えられた！」

「一体何者なの？人間なの！？」

「前の記録自体、倫理上有り得ない数字だったのに！」

「コラじゃないよね？」

「この前発売日に会場でゲームやってるのを見たよ。あの手さばき、バケモノ級だった...」

「涙目敗走や...」

雷電の力を身にまとっているだけでなく、ゲームの能力すら一級品なのだ。

コミケ会場にて、雷震子とレムは無我夢中でコスプレに励んでいた。

雷震子、雷式・ラピッドジャイロ！その場で三回転半！止まって両手を上げ「ビリビリ！」

レム、雷式・エキサイティング！「ビ、ビ、ビリ～チュウ～」

コミケに来た人たちは、彼らの電流エフェクトのコスプレに釘付けになっている。

「なんてでかいビリチュウなんだ！」

「本当に放電してるぞ！」

雷震子：「ビリ！」

レム：「チュウ～」

そう言いながら、二人のコスプレスキンのシッポから強力な電流が放出されて一つとなり、カゴの方に向かう。

「ズズズ...」

カゴの仲にあったサツマイモが電気によって焼け、ヤキイモとなり、香ばしい匂いがコミケの隅々にまで広がる。

多くの人たちがそのいい匂いに釣られてやって来て、ヤキイモを食べながら、ついでにビリチュウのコスプレをした究極ヤキイモ・ショーを見ている。

レム、雷式・ブラコンアイズ！「お兄は精霊のコスプレしてもすぐにみんなの注目を浴びるね！」

雷震子雷式・日常中二・キザなポーズ！「何と言っても我は生まれつき主人公だからな！」

その光景を見ていた人たちは満足した顔でお腹をなでながら言った。

「いいショーだったよ～それにお腹いっぱい～」

レムには最近、悩みごとがあった。

「そういえば、レムも絵を描くんだよね？」

「え...うん、そうだよ～」

「レムは何をやってもすごいね！お絵かきもきっとすごいんだろうね～早くレムの絵を見てみたいな～」

「こ、今度時間があったらネットにアップしとくよ、アハハ...」

うぅぅ...確かにノートとかの隅っこに落書きとかなら結構したけど...なんであんなこと言っちゃったんだろう？レムは思わず手で顔を覆った。

数日後、一緒にゲームをしていた友達がまたレムを急かした。

レム、この前言った絵はどうしたの？

「せかさないでよ、お絵かきぐらい自信あるんだから。ゲームに負けないくらいにね...」

やばい、魔が差してまたホラを吹いてしまった。

ああ！もう言っちゃったことだし、雷電少女ともあろうものがここで諦められない。とにかく行動に移さないと...今の時代はイラストもデジタルなツールで描けるんだよね！デジタルなら、雷電少女の得意とする分野だ。レムは自分を励ました。

ということで、お絵かきには...パソコンが必要っと。これはもうあるから、次はペンタブレットとソフトが必要...うわ何これ、高っ！でもこの前貯めたお小遣いで足りるかも！

よし、買ったよ。これで後戻りはできないや。次のステップは、頑張って絵を描くこと！

「ほう、我の妹、稲妻の魔法使いよ！君には絵を描くという趣味があったのか？なかなかではないか！」

雷震子がパソコンのスクリーンに近づいてきて言った。

「む。これは...深海の邪悪タコ博士ではないか？これはなかなかの完成度だ！」

「これは猫だよ、猫！もう、お兄ったら！！！！」

レムは怒り出した。

「なんだと、猫だと！」

「猫だよ！！！」

ドカン！レムの部屋に稲妻が落ちた。

興奮したレムが電気を放出してしまった。目の前には真っ黒こげになってしまったペンタブレットが。それが物語る「壊れてしまった」という現実...

お絵かきマスターの道は程遠いように思えた...レムはがっかりした表情で壊れたペンタブレットを見つめた。アホ毛まで垂れ下がってしまっていた。