「紫月の神官」ジェフティ

ジェフティ「僕を仲間に？」

主人公「ああ、旅を手伝ってほしいんだ。とはいえ、旅の資金はそんなにないから待遇がすごくいいとは言えないんだけど……。」

ジェフティ「なるほどな……。主人公、いつから僕の過去に気づいていた？」

主人公「え？」

ジェフティ「あまり腕が立つとは言えない僕をわざわざ旅の仲間に誘う理由がわからなかったが、そういうことだったのか。」

主人公「どういうこと！？」

ジェフティ「僕が神殿に入る前までは、賭博師として生きていたことに気づいたんだな。それで旅の資金を僕に稼いでもらおうと……。」

主人公「深読みのしすぎだよ！」

主人公「というか、さらっと意外すぎる秘密を知ってしまったような……。ジェフティって賭博師として暮らしてたのか？」

ジェフティ「なぜ知っている？やはり僕を旅に誘ったのは……、」

主人公「さっき、自分で言ってたじゃん！」

ジェフティ「……そうだったな。悪い、つい深読みしてしまうクセがあって。職業柄なのかもしれない。」

主人公「職業柄って、神官の方じゃないよな。」

ジェフティ「ああ。」

ジェフティ「僕は子どもの頃からギャンブルの勝率が高くてな。神官になるまでは、賭博で稼いだ金で幼馴染と一緒に暮らしてたんだ。」

主人公「そうだったのか。その幼馴染は今……？」

ジェフティ「腕の立つやつだから、用心棒として働いている。僕と一緒にいた頃も、僕の用心棒をしてくれていたようなものだしな。」

主人公「ジェフティの？」

ジェフティ「金を賭けて、勝ち負けが存在する以上、時に荒事が起きるのは仕方がないことだ。……賭博場(あそこ)は人を熱くさせすぎる。」

主人公「そうか……。」

ジェフティ「僕はあまりそうしたことが好きじゃない。渦中にいた僕が言えることじゃないが。」

主人公「それで神官になったのか？」

ジェフティ「……違う生き方をしてみれば、違う見方ができるかもしれないと思ったんだ。」

ジェフティ「あそこには、勝つ者と負ける者しかいなかった。僕も勝つ者になるために……、生きるためにカードをめくって、出目を選んだ。」

ジェフティ「でも、もしかしたら勝ち負けから解き放たれることも、できるのかもしれないと。」

主人公「そうだったのか……。」

ジェフティ「だから、旅の資金は別の方法で稼ぐぞ。」

主人公「そういうつもりで誘ったんじゃないってば！」

ジェフティ「悪いな。先輩がよく僕をそういう目的で連れ出すものだから。」

主人公「どういう先輩なんだ……。」

ジェフティ「こっそり神殿を抜け出しては遊びに出かけたり、賭博と占いで小銭を稼いだりしてる。」

主人公「ほんとにどういう先輩！？」

ジェフティ「意外とうまくやっているようで、僕以外の者には気づかれていないようだ。」

ジェフティ「僕は神殿に来たばかりの頃に偶然気づいてしまってな。先輩とはいえ、年もあまり変わらないし、見かけるたびに止めようとしてたんだが……、」

ジェフティ「ある時、つい口車にのせられて賭け事の手助けをしてしまった。」

ジェフティ「それ以来、味をしめたのか遊びに出かける時には僕も巻き込むようになって、うまく止められずに今に至るというわけだ。」

主人公「やんちゃな先輩なんだな……。バレてないってことは、日ごとの態度はすごくいいとか？」

ジェフティ「全然だな。居眠りはするし、だるいが口癖だ。」

主人公「遊びに出かけてるのがバレてないにしろ、その時点で結構、問題なんじゃ……。」

ジェフティ「だが、要領はいいんだ。それにだるいという割に掃除はちゃんとするし、集まりにも顔を出す。」

ジェフティ「……途中からこっそりあくびをしているが。」

主人公「そ、その人なりに考えがあるのかもな。」

ジェフティ「そうなのかもしれないが……、腑に落ちないことがある。」

主人公「というと？」

ジェフティ「先輩は僕の知る神官の中でもっとも神官らしくないのに、神に選ばれたとされる、鱗痕を持つ者からは重用されているようなんだ。」

ジェフティ「僕以外は気づいていないようだが、あの方が先輩を見る目は、他の者に対するまなざしと少し違う気がする。」

主人公「そうなのか……。もしそうなら、その先輩にはなにか秘密があるのかもな。」

ジェフティ「……。」

ジェフティ「はっ！そうか、先輩が僕に見せている姿は仮の姿。本当は新たに入ってきた僕を試してるのか。」

主人公「え？」

ジェフティ「僕の心の内を見極めるために鱗痕を持つ方の命で素行不良な先輩としてあえて振る舞っていたんだな。」

主人公「そ、そうかなあ。」

主人公「(また深読みしちゃってる気がする……)」