【白猫】ユキムラ(茶熊)・思い出
ユキムラ・サイオンジ CV:杉山紀彰 笑術部に入った紋章画家。 みんなに紋章画を教えている。 |
思い出1
…………
やはり飛行島はいいな。着想が次々と浮かんでくる。
ユキムラは、イーゼルの紋章紙に筆を走らせている。
大胆不敵……清く正しい白き猫は……
ぎにゃー!!
ぎにゃーと叫び……
ウフ。
ウフと啼く。
……出来たぞ。キャトラの紋章画だ。
ワーイ! ユキムラ、ありがと~♪
……キャトラがいきなりわがままを言って、すみません……
どうってことはない。君達にはいつも世話になっているからな。
……にしても、アンタが茶熊学園の生徒になるとはね~、
俺が一番驚いているよ。だが、入ってみると、これが意外と面白い。
何か新しい事をイチから学べるってのはありがたい事だし、刺激になるよ。
楽しんでいるみたいで、何よりです♪
部活は美術部だったわよね。マ、そんな気はしてたけど。
部員というより顧問の立場に近いけどな。
他の生徒のみなさんに、絵を教えているんですよね。
ああ。学園には、そのために入ったようなものたしな。
実際に教えてみて、どうですか?
いやあ、日々色々な事に気づかされてるよ。……客観性というやつだ。
無論、自分で描く時も気をつけてはいるんだが、人に教えるとなると、より多くのものが見えてきてな。
描く絵のどこを注視し、どう構成していけばいいのかが、多角的に分析できるんだ。
たかくてき、ねえ……
要は、教えるのも勉強になる、という事だ。
ひとに教えるには、その三倍理解してなくちゃいけないというけども……
十倍ぐらい理解してるユキムラでも、まだまだ学ぶことがあるのね。
もちろんだ、キャトラ。芸術家は一生勉強だからな。
俺は今、とてもいい経験をさせてもらってるよ。
思い出2
ミレイユ | エシリア |
ユッキー、きたよ~!
遅くなってすみません!
おはよう。今日は晴れてよかったな。
エシリアにミレイユじゃない。
俺の教え子だ。
二人は部員というわけじゃないんだが、紋章画に興味を持ってくれてな。
エシリアは……面白そうだったから?
あったり~!
最初はパーティーのミレイユちゃんは、どうして?
最初はパーティーのデザインのことでアドバイスをもらいに行っただけたったんですけど……
ユキムラ先生の紋章を見て、とってもキレイだなあって思って。自分でも描いてみたくなって……
うれしい言葉だ。
今日はさしずめ、課外授業ってとこかしら?
うむ。飛行島はぴったりの場所だからな。
実は近々、学生向けの美術展に作品を出展するつもりでいるんだ。
へえ、けっこう本格的に活動しているんですね。
目標があった方がモチベーションも上がるだろ?
うう、緊張します……まだ始めたぱっかりなのに……
ね~ユッキー、その美術展? ってなあに~?
自分の絵を飾ることができる、とても面白いところだ。
え~! なにそれ、面白そう~!
いい絵であればあるほど、飾った時に楽しくなる。どうだ? やってみるか?
やるやる~!
***
ユッキー、できた~!
どれどれ。……おっ、いいじゃないか。色彩のバランスが実にいい。
……この内側の水玉に、もう少し線を重ねてみろ。
重ねると、どうなるの~?
君の活き活きとした色彩が、さらに輝く。
……わあ! ほんとだ~!!
いい教師っぷりね、ユキムラ。
ミレイユちゃんは、どんな感じ?
うーん……いまいちです……
どれ、見せてみろ。……いや、中々よく描けてると思うぞ?
ヴィダゴイズムのような紋章を描いてみたいって思ってるんです。
<マルゴ・モーパッサン>の作品がすごくキレイで、感動しまして。
でも実際に描いてみると、色合いに奥行きが出なくて……
それなら、抽象烙印主義の基層的色彩感覚についても知っておいた方がいいかもな。
いやあ、それにしてもミレイユ!君もずいぶん詳しくなったな!先生はうれしいよ!
まず、基層的色彩感覚を語るには、抽象焙印主義を提唱した<ロラン・ギャロワ>の<手紙を見る娘>について語らねばならんだろう。
えっと、確か……エンジ色の奇跡と呼ばれた紋章でしょうか?
そう。何故、奇跡なのか。そこには彼の紋章芸術に対する答えが集約されており――
ミユミユもユッキーもなにいってるの~?いみわかんな~い。
エシリア、あっちでアタシと遊びましょ。とうぶん終わんないわ、コレ。
でも、二人とも楽しそうよ。
……なるほど!だから、あえて色の濃淡をハッキリと表現するようになったんですね!
その通り! ゆえにロランは、これまでとは違った作風を志向するようになったわけだが――
思い出3
今日の活動はここまで。二人とも、気をつけて帰るんだぞ。
はい! 先生、ありがとうございました!
またね~、ユッキー!
……さて。
ユキムラはまっさらな紋章紙と向かい合う。
描くか。
…………
ふと、ユキムラは窓の向こうに広がる風景を眺めた。
夕日に照らされた校舎に、グラウンド。遠くから聞こえてくる、生徒の声。
在りし日の自分の姿を、ユキムラはありありと思い出した。
懐かしいな……
?ユキムラさん。
うわっ!
sあ、ごめんなさい! びっくりさせてしまいましたね。
何度か話しかけたんですが、返事がなかったもので……
ああいや、こちらこそすまない。ええと君は、確かミレイユの……
sはい、兄のヨシュアです。
俺に何か用だろうか?
s妹を見ませんでしたか? 演劇部のことで、伝えなきゃいけないことかあって。
ミレイユなら、もう帰ったと思うが……
sそうですよね……急ぎじゃないし、明日伝えることにします。
……あの。妹がいつもお世話になっています。ご迷惑など、おかけしていないでしょうか?
迷惑なことなど何もないさ。
そういえばミレイユは、演劇部でも活動しているんだったな。
sええ。衣装係として手伝ってくれています。
美術部での活動が、そっちに支障をきたしていないといいのだが……
sそれは大丈夫です。公演はまだ先ですから。
そうか。安心したよ。
……実は俺も、舞台に立ったことがあってな。
sえっ!? それは本当ですか!? ユキムラさん、役者だったんですか!?
いや、役者というか……同じ紋章画家の女の子とコンビを組んで、漫才をやった事があったんだ。
s漫才……? 芸術家のユキムラさんが……?
まあ、芸の肥やしってやつだよ。……はは、何だか懐かしいな。
sなんというか……意外です。
あ、そういえば、さっきもなんだか懐かしんでましたね。
昔を思い出していたんだ。学校が終わると、日が暮れるまで教室で絵を描くか、美術館で絵を眺めて過ごしていた……
外で活発に遊ぶような子どもではなかったが、俺にとっては輝かしい青春だ。
……あれから、ずいぶんと遠くへ来たものだと思ってな。
s…………
ヨシュア君。君はいま、楽しいか?
sヨシュアでいいですよ。ええ、とても。毎日が充実しています。
それは良かった。……日々は矢のように過ぎていく。大人になるのは、あっという間だ。
今、この時間を大事に。後悔のないように、な。
s……はい!
……すまん。偉そうな事を言ってしまったな。
sいえ、とんでもない! ありがとうございます、ユキムラさん!
思い出4
sでは、僕はそろそろ帰ります。
ああ。またな、ヨシュア。
……俺も帰るか。
?失礼いたします。
ゲオルグ | イサミ |
おお、今日はまだ残っておられましたか。
邪魔をしてしまい、すまない。
イサミさんにゲオルグさん……?
おやめください。さん、などと。
実は、ユキムラ殿が入学してからというもの、一度じっくり話をしてみたいと思っていてな……
私もゲオルクも、貴殿の事は以前からよく存じておりまして。
紋章画家ユキムラ。君の作品は、竜の国でも有名だ。
……身に余る光栄だ。ありがとう。
作品などについてのお話を、よければお聞かせ願えないかと思いまして。
もちろんだ。いやあ、嬉しいな。芸術家冥利につきるよ……!
それに俺の方こそ、お二人の話を伺いたいと思っていたんだ。
鬼退治一族の末裔に、竜の国の騎士団長……
知りあえる機会はまず無いからな。
お耳汚しにならぬのであれば、いくらでも。
そういうことならどうだろう? 一献傾けながら、というのは。
それはいいな。イサミさんはどうだ?
喜んでお付き合いいたします。
***
いらっしゃいませ~。
だ~っひゃっひゃっひゃっ!おいユキムラァ、今日は俺のおごりだぁ~!
イサミさん!?
すまんユキムラ殿。彼はある呪いのせいで、稀にこのようになってしまう。
ゴキゲン、ゴキゲン! わひゃひゃひゃひゃひゃ!
早く霊酒を飲め、イサミ。
ツキミ殿。熱爛を頼めるだろうか。
は~い!
見苦しい姿をお見せしてしまいました。申し訳ありません……
呪い、か……イサミも大変なんだな。
修羅の道にございますが……いつかは必ずや、極めてみせます。
ゲオルクは、何か目標とかあったりするのか?
竜の国の平和を守り、繁栄を支えたい。それと……
国を治める姫様の立派なお姿を拝見するのが、自分の夢だ。
そういえば、王女様もこの学園にいるんだったな。
ユキムラはどうなんだ? 夢はあるか?
そうだな……夢というか……
俺は、いくつになっても、変わらずに絵を描いていたいと思うよ。
……愚問だったな。
***
ゆえに思う! 自分はまだ、骨の髄まで青春を謳歌していないのだと!
本当は皆のように色々と……! 色々とぉ……!
飲みすぎだ、ゲオルグ。今日はもうその辺にしておけ。
何言ってんだイサミィ! まだ宵の口だろ!
俺達の戦いはこれからだ!
……ツキミ殿。お勘定を。
違うだろイサミィ!
何か違うのだ……
我々は学生だ! つまりアレだ。好きな子とかいないのか! ……そういう事だろゲオルグゥ!
そうだそうだ!
そう言われてもな……
ごまかすんじゃない!
よしユキムラ! 今日はトコトン飲むぞ!
もちろんだ! イサミイの話をぉ、今日はトコトン聞いてやるんだ……
ごめんね~、今日はもう店じまいだよ~。
助かった……
じゃあ寮で飲むか。
何!?
思い出5
美術展へ作品を提出する締切の日まで、あともう少し。
できた~! ユッキー、みてみて~!
……うむ。いい仕上がりだ。俺はこれでいいと思うぞ。
わ~い! じゃあエシリアは行くね! ばんちょ~と遊ぶ約束してるんだ~!
忙しいやつだ。
さて、ミレイユはどんな調子――
――
(……声はかけないでおくか)
***
ダメだ。全然キレイじゃない。
線の太さと色のグラデーションのバランスがおかしいのかな……
……全体の構成から見直した方がいいのかも……
…………
違うなあ。なんでこうなっちゃうんだろ……
えっと、外側は不透明感を出したいから、三重線はもっと細くして、そのぶん色合いを密に……
(……とらわれているな。
技術や理論にばかり走るせいで、描けば描くほど、ミレイユらしさが無くなっていってしまっている。
俺は……彼女が勉強熱心だからと喜んで、色々と教え過ぎたのかもしれない……)
……くそ。
おっ。やってるやってる。
失礼します。
君達か……
しめきりまであと少しって聞いたから、差し入れ持ってきたわよ。
よければみなさんで食べてください。
わざわざすまんな。ありがとう。
……ユキムラ? なんだか元気がないわね。
……ちょっといいか。
***
なるほど、ミレイユちゃんが……
こういう時、俺は彼女に何と言えばいいのか……
あら? カンタンなことじゃない。
主人公、教えてあげて。
思い出6 (友情覚醒)
そうか……そうだったな。俺としたことが。
ありがとう、みんな。ちょっと行ってくるよ。
***
はあ……もうわかんなくなってきちゃった……
ミレイユ。
先生。あたし……
わかってる。……よし、とりあえず立とうか。
え?
ユキムラはまっさらな紋章紙をセットする。
今まで学んだことは、とりあえず忘れていい。
そうだな、ミレイユの場合は……ファ~~~~ッって感じか?
ユ、ユキムラ先生……?
もっと、思うがままに描いてみろ。そりゃ、技術や理論も大事だが……それが一番じゃない。
――楽しく描こう、ミレイユ。
…………
大丈夫。俺を信じろ。
……はい! わかりました!
さあいけ! ファ~~~~~~~~ッ!
ファ~~~~~~~~ッ!
いいぞ、実に大胆かつ流麗な一番線だ。次はどう出る?
そうですね……では、ここをフワッと。反対側は……ギザギザッと!
ははは、いい裏切りだ! キミドリ君も喜んでるぞ!
先生……なんだかあたし、のってきました……!
***
それから数日後――
先生っ!
お、来たな。……そんなに慌ててどうした?
たったいま、美術展からお手紙が届きまして。……もしかして、これ……
ああ、結果が出たんだろう。どれ、読んでやる。
……ど、どうでしたか……?
……はは、やったぞ……!
二人とも見事に入選だ!
や……やったあ~~~~~!
よく頑張ったな、おめでとう! いやあ、自分の事のようにうれしいよ!
ユッキー、入選ってなあに~? なんで二人ともそんなにうれしそうなの~?
おまえの描いた紋章が、みんなからたくさん褒められたんだよ!
そうなんだ、やった~! えへへ、よかったね、ミユミユ!
うん! 先生、本当にありがとうございました!
……教えてくれたのがユキムラ先生じゃなかったら、きっと選ばれてなかったと思います。
ユッキーとお絵かきすると、すっごく面白いもんね~!
いいや、すべては二人の実力あってこそさ。それに……
俺が教えたことは、俺のライバルとそいつのバカ兄貴に教えてもらったことでもある。
さて、じゃあ今日も――
楽しくお絵かきするぞ!
流星の紋章教室
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