【白猫】流星のエンブレム Story3
2017/03/31 |
story お友達
「さてと……お友達に会いにゆかなくては!
確か、もうこの島にはきてるはず。……そういえば、待ちあわせ場所ってどこだっけ?」
「こ・こ・だ・よー!」
「うわあパステルちゃん! 久しぶり~~~っ!!」
***
「それにしても、イロメロがプロデビューだなんてねー。
私的には、あなたは子どもたちに囲まれながら描いてるって印象が強かったの。
だから、なんかそういうの、あんまり想像できなかったんだよね」
「それはまあ、なりゆきで、なんというか……ね!」
「……でもさ、これから忙しくなっちゃうんじゃない?」
「えー? そんなことないと思うよ? プロになっても、あたしはあたし!」
「うふふ、そうだね。……展示中のデビュー作も、持ってきちゃってるしね……」
「あとで返すからだいじょぶだよー!」
「ねえ、そういえば覚えてる?会ったばかりのころに、『72時間耐久お絵かき』をやったの」
「やったやった! うわー、懐かしいなあ。あれは楽しかったよね!」
「うん。……あなた、最後は寝言をいいながら描いてたもんね」
「パステルちゃんだって、夜中に大笑いしながら色を作ってたじゃん! あれはすごかったなー」
「ランナースパイと似たような感じ? 何でも面白く思えてきちゃってさ」
「あはは♪ あるあるー!」
「……また、ああいう楽しいこと、やりたいなあ……」
「…………」
「じゃあまたね、パステルちゃん!」
「で、今度はどこへ行くの?
「バビュン島だよ!」
「バビュン島……?」
「もうね、いまからすでにいろんな色があたしに落ちてきて、ピャーしてシャーしてるの!
だから、いかなきゃなんだよ!」
「……うふふ、そっか。相変わらずよくわかんないけど、気をつけてね!」
「うん! またすぐにねー!」
「……すぐ……?」
story
「……では、1日に10枚の紋章を描くというスタイルは、完全に?」
「ええ。むしろ10枚でも足りないぐらいです」
「おお……!」
<『ユキムラ・サイオンジ』完全復活――
彼はその一報を受けた関係者への対応に追われていた。>
「あと1枚だけお願いしまーす!」
「……これで契約更新の手続きは完了です」
「……長い事、迷惑をかけたな」
「とんでもない。私は、信じていましたよ。先生なら絶対に乗り越える、と。
天国にいるアイザック先生も、きっとお喜びになられている事でしょう」
「……ああ、そうだな」
「…………」
「どうかしたか?」
「……いえ、思い出しちゃいましてね。先生と初めて会った時の事を」
「俺は……どんな風に見えた?」
「みなぎっていました。画家としての野心や、芸術に対する執念……
そして何よりも、自分が信じるものの為に前だけを見て突き進むという<覚悟>が。
私を見るあなたのギラギラとした目。……震えましたよ」
「ハハハ。俺もまだ駆け出しだったからな」
「……そんな目を、久しぶりに見たような気がして。――いえ、それよりももっと鋭く、しかし洗練されてもいて――
……はは、上手くいえないんですけどね」
「……乗り越えた今だからこそ言えるが、スランプもいい経験になった、という事なのだろう」
「あ……そういえば、旅に出るとうかがいました。今度は、長いのですか?」
「長いかもしれないし、短いかもしれない。……どちらにせよ、非常に楽しみだよ。
世界は限りなく広い。行く先に、どんな景色が待ってるのか。
そしてそこで俺は、どんな紋章を描けるのか――
期待して待っていろ。これからお前も忙しくなるぞ!」
…………
……
<ひと気がなく静まり返った閉館後の美術館で、ユキムラは紋章画と向き合っていた。>
「……メイユール・アミ」
<親友との共作を、彼はゆっくりと指でなぞる。>
「……実に楽しい時間だった。緊張と恐怖で震えていた俺の手は、いつしか――
真の芸術に心が触れた時の、えも言われぬ悦びで打ち震えていたんだ。
――そろそろ、行くよ。
人生は短い。俺は……描かなきゃいかんからな」
くるりときびすを返し、ユキムラは歩き出す。
迷いのない靴音を、高らかに響かせながら――
流星のエンブレム HARD -END-