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Abyss Code 03 Story【黒猫のウィズ】

最終更新日時 :

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2015/11/29



カインがその世界に降り立ったとき、泥の雨が降っていた。


一面、砂と石だけの世界。

所々に塩の彫像が転がっており、酸の沼が砂の漠とした広がりの中に、不気味な彩りを添えていた。

その光景を見て、カインはうっすらと笑った。転がり落ちていく自分を笑った。

このまま、どこまでも「卵」と共に、自分は転がり落ちて行くのだろう。下へ下へと。


「ここにいるのか、お前は。どうにも困った奴だな。

これではもう、あの方々に申し開きのしようもないではないか。」


カインと『卵』の因縁は、別の異界から続く話である。

カインと『卵』。どちらもその世界を救う英雄となるはずだった。


崩壌へと向かっていた世界を救うため、その世界の神々は、眠り続ける神を生み出そうとした。

世界そのものを、眠り続ける神の夢の中に移植するという歪な方法で、世界を救おうとしたのだ。

新たな神は『卵』と呼ばれ、その誕生を見守る役目に選ばれたのが、カインだった。


ところが、喜ばしき「卵」の誕生の瞬間、カインの運命は下へ下へと転がり落ち始めた。

あろうことか、『卵』は別の異界に生まれ落ちたのだ。


「お前はもう、ここで生まれてしまったのだな。

ここは、お前の世界ではないのだ。ここでは、お前の声はあらゆるものを砂に変える。

その双眸は、生き物を塩に変え、―歩踏むごとに地を酸の沼に変える。

その涙すらも、この世界ではただの毒だ。その光景を見て、お前は何を思う。


生まれ落ちる世界を間違えた『卵』は、その世界の毒となった。

世界は体内に取り込んだ異物を吐き出すように、嘔吐を繰り返した。

あらゆるものは、砂と石と化し、毒と酸を生む地を拡大していく。


「案外、平然としているのかもしれんな。……ここしか世界を知らんのだから。」

同情を滲ませた言葉だった。ともに英雄の座から堕ちてきた同志への。

「運のない奴だな、お前は……。」


「卵」同様、カインにも帰るべき場所などなかった。英雄の座は二度とは巡って来ない。

それにもう、彼の世界は終わりを迎えているかもしれない。

どちらにしろ、カインに言えるのはひとつだけだった。


知ったことか。その一言だけだ。




「俺もお前もここで終わりだ。」

カインが踏みしめた酸の沼は、彼の稲妻の鎖に打ち据えられ、一瞬のうちに涸れ果てた。


「せいぜい楽しもうじゃないか。心配するな。お前には俺がいる。

ここまで一緒に来た仲だ……。」

そして、カインの手は『卵』へと伸びていく。


「俺が、お前を終わらせてやる。」




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