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エビチリ・物語

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最終更新者: 皮蛋納豆丼

一 至高の味と情・壱

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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???

「早く見せてよ、この話にぼくは出てくるの!?」


???

「そんな焦って奪わなくても、千里兄さんのところに、まだたくさん本はあるから。単行本、豪華上製本、文庫本と、記念版、周年版、オリジナル化粧箱入り版があるから!」


前方から騒がしい声が聞こえてきた、とても気になって見に行くことにした!


エビチリ

「焦らなくていいよ、こっちにまだあるから~。」

【選択肢】

・千里の漫画を見てるの?

・1冊を頂戴。

選択肢

千里の漫画を見てるの?

四川火鍋

「ああ。麻婆豆腐がすすめてくれたんだ」


麻婆豆腐

「わしは勧めてないぞ? あんたら、自分が読みたいだけやな!」

1冊を頂戴。

驢打滾

「おっ! 待たせたか? 注文した『中華料理王』豪華改訂版だぞ!」

「第23話を開いてみ。「豆麺ハンター」がどうやってみんなの心を射抜いたのかを読んでみな!」

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餃子

「この漫画は確かに面白かった。主人公もすごいよねぇ」


金玉満堂

「きみは作者だからな、彼よりもすごいかも? 見てみたいぞ!」


蜜汁叉焼

「千里お兄ちゃん、あなたも料理をするとき、あの主人公みたいにするの? 蓋を開けた瞬間に鍋の隙間から金色の光が溢れてたり、その後ろでは小人が歌ったり、踊ったりするような感じで!」


エビチリ

「え……?」

「もし僕が料理を盛り付ける瞬間に、誰かが後ろで演奏でもしてくれれば、できるんじゃないかな!」

「まあ、金色の光や小人はいなくても、僕の料理は本当にすごいから!」


四川火鍋

「だったらさ、グルメ漫画家としての実力を見せてくれないか?」


皆が頷いた。すると千里も自信満々に頷く。そして、そんな彼と一緒にみんなで厨房へと入った。




エビチリ

「『厨房の百腕巨人』と言われる、この千里の腕前をとくとご覧あれ!」


千里は素早く野菜を洗い、目にもとまらぬ素早い包丁さばきで、野菜を美しく切り揃えた。


四川火鍋

「わぁ! まさに漫画の主人公のごとき包丁さばきだぞ! 「この作者にして、この主人公あり」を体現したようだ!」


蜜汁叉焼

「さすがに、食材が扇状に飛んで、橋の形になる漫画とは同じじゃないけど、千里お兄ちゃんの所作は、主人公と同じでカッコいいね!」

【選択肢】

・千里、カッコいいね

・千里、もしかして、またアレを入れようとしてるんじゃ……

選択肢

千里、カッコいいね

エビチリ

「ほら、キミに返事をする余裕もあるよ!」

「僕と同じようにカッコいい○○に褒められるなんて、うれしいな!」

千里、もしかして、またアレを入れようとしてるんじゃ……

千里は大きな缶詰に入った真っ赤なソースを手に取った。貝貨も不要といった様子で、懸命に五つの鍋に缶の中身を注いでいく。


エビチリ

「よし、出来た。最後は、盛り付けだよ!」

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瞬く間に、千里は五品の料理を作り上げた。千里はBGMを口ずさみながら、寸分の狂いもなく、お皿に料理を盛り付ける。


エビチリ

「さあ、味見して! 昔、四川の人気餐庁でアルバイトしていたときも、僕の料理に対して、お客さんから高評価をもらったよ!」


四川火鍋

「ん? なんで見た目は全部赤いんだ? もしかして……全部辛い料理なのか!? さすが麻婆豆腐の親友ってところか!」


エビチリ

「ち、違うよ!」

「コホンコホン……では、僕の創作料理をみなさんに紹介するよ!」


千里は咳払いをし、大きな声で紹介し始める――


エビチリ

「トマトソースの鍋包肉、トマトソースの土豆絲、トマトソースの茄子蒸し煮、トマトソースのトマト煮込み、そしてエビチリだ!」


四川火鍋

「???」


エビチリ

「遠慮はいらないよ。召し上がれ!」


羊肉泡饃

「変な料理名だけど、味はすごく美味いぞ!」


四川火鍋

「そ……そうか? じゃあ、おれも食べてみようかな」


千里はみんなを椅子に座らせる。そして、食器を運びながら、こっそりとあくびをした。

【選択肢】

・千里、なんかすごく疲れてるみたいだね?

・千里、ちょっと休憩したらどう?

選択肢

千里、なんかすごく疲れてるみたいだね?

エビチリ

「そんな風に見えた? 多分、締め切りのせいだ。ここ数日、徹夜したから! でも、みんなが僕の漫画を気に入ってくれたでしょ、それで疲れも吹き飛んだ。だから、安心してよ」

千里、ちょっと休憩したらどう?

エビチリ

「えっ、どうして? 締め切りのせいで、ここ数日徹夜したから、疲れているように見えるのかな? でも大丈夫、今すごく元気なんだよ、みんなが僕の漫画を気に入ってくれたから、彼らを興ざめさせるようなことはできないよ!」

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エビチリ

「そうだ、○○。明日、キミに用があるんだ。原稿を完成させたら、キミに話そうと思ってたんだけど、時間ある?」


彼の生き生きとした様子を見て、拒絶するのに忍びない、誰にしてもこの様子を見て、断ることができないだろう。





朝早い時間に、千里が寝室のドアをノックしてきた。不思議な面持ちで、行きたい場所があると言った。


エビチリ

「○○、僕の手を取って、一緒に来てくれないかな。万象陣を使って、行きたい場所があるんだ!」


彼は陽気だが興奮した様子で、大切にしまっていた秘密のキャンディーを仲間に分けるかのように告げた。


エビチリ

「万象陣が動き出すよ!」





エビチリ

「ここが、キミを連れて来たかった場所だよ!」

「ここはね、横浜中華街にある四川の餐庁だよ。たくさんお客さんが来て、大人気店みたいだね」

「この店は、僕がいつも言ってた四川の餐庁だよ! 僕が化霊したばかりのとき、オーナーがアルバイトさせてくれたんだ。とても親切な人だったな~」


餐庁では人々が語らい、裏の厨房からは食べ物の匂いが漂っている。そして、金色に光る絹のような温かな日差しがロビーに降り注ぎ、半分開いた木の窓から、蕾をつけた枝が入り込んでいる。

【選択肢】

・ここは賑やかだね。

・ここはあったかいね。

選択肢

ここは賑やかだね。

エビチリ

「そうだね。たくさんお客さんがいるよね。相変わらずすごい人気だな~」

「最近忙しすぎて来れなかったんだけど、ここはあの頃と少しも変わってない……内装、賑やかな声、味、窓の外に立つあの大きな木、みんなが僕を迎えてくれているよ!」

「うん。街の住人たちの生活から感じる、あたたかな雰囲気が漂ってるよね!」

「小さな餐庁だけど、まだ化霊したばかりの僕に、居場所を作ってくれた店なんだ。あの頃と、全然変わってない……」

ここはあったかいね。

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エビチリ

「ここでアルバイトをしてたとき、美味しい料理を食べたときのお客さんが、すっごく幸せそうな顔してたんだよ! 一品一品の料理が、料理人とお客さんの心を繋いで、その幸せが多くの人に伝わった……!」

「キミをここに連れてきたのは、この美しい場所を見せたかったからだよ。あと……ここで起きた素敵な物語も教えたかったからかな」


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二 至高の味と情・弐

◆主人公男女共通◆

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エビチリ

「お待たせしました、ご注文のエビチリです」

「キミは目が利きますね。いつも僕の一番得意なエビチリを注文しますから」


漫画家

「へぇ、君が作ったんだ。こんなに口に合うエビチリは他で食べたことがない。お兄さん、ありがとう!」


エビチリ

「キミはいつもここに座って、同じ料理を頼みますから、覚えてしまったんです。僕の料理をこんなに楽しんでくれるお客さまと出会えて、こちらこそ感謝です!」


漫画家

「俺はこの餐庁が大好きなんだ。料理が美味しいだけじゃなく、ここにいるお客さんはみんな幸せそうだ。彼らはリアルな生活の雰囲気をまとっていて、俺にたくさんのインスピレーションをあたえてくれる」


エビチリ

「インスピレーション? キミは……」


漫画家

「ハハッ。俺、漫画家なんだ。常にインスピレーションをメモにとる習慣があってね。ここにいると、いつもより多くのインスピレーションを得られるんだ」


オーナー

「千里、ちょっと来て――」


入口から餐庁のオーナーが声をあげた。いつも笑顔のオーナーだが、この声からはとても焦っていることがわかった。


エビチリ

「はい――」

「すみません、失礼します。ごゆっくりどうぞ!」


扉の近くに、杖を持った身なりの良いお爺さんの姿が目に入る。その人は、オーナーに支えられながら小部屋へと入っていくところだった。


エビチリ

「僕、代わります!」


千里はお爺さんを支えながら小部屋に入った。そして椅子に座るのを手伝う。その後、お爺さんにお茶を出した。


おじいさん

「ありがとう……貴方はとてもいい子だね」


オーナー

「お爺さん、私に御用でしょうか?」


おじいさん

「すまないね。私は東京に住んでいて、今日は昔の記憶を辿ってここまで来た……だが、ここは大分変ったな。かつてここで店の経営をしていた主人も既に引っ越した後のようだ。店の横に立つ大きな木も、あの頃とは違うように見える……」


オーナー

「お爺さん……」


おじいさん

「すまない、面倒をかけたね。ただの気まぐれだったんだ、前もって調べずに、突然思い立ってここまで来てしまった。幼少時代の思い出を探そうとして……」


この言葉を聞いて、オーナーと千里は顔を見合わせた。どうやらふたりとも、アイデアが浮かんだようだ。


エビチリ

「今、ちょうど仕事が終わったところです。もしよかったら、子どもの頃にお食べになった料理を再現してみましょうか? 僕はこの店の優秀な料理人ですから」

「オーナー、いま厨房で使ってない料理道具を借してもらえませんか?」


オーナー

「いいよ。千里、やるならしっかりやらないとだよ!」

「お爺さん、千里はこの店一番の腕前を持つ優秀な料理人です。お客様からいつも褒められています。だから、彼にやらせてもらえますか?」


おじいさん

「ほ……本当に申し訳ない。ありがとう、お願いするよ……」


エビチリ

「う~ん……お爺さんの説明によると、だいたいの手順は恐らくこうだよね。でも、調味料の割合は手探りでやるしかないかな……」

「あ……あとひとつ、絶対に忘れちゃいけないことがあった。いつもみたいにトマトソースを入れすぎないように気を付けないと!」


千里は一生懸命、お爺さんの思い出の味を再現しようと努めている。その間、オーナーは一人座っていたお爺さんを支えて、周りのお客様に迷惑をかけないよう配慮しながら、小部屋からロビーに連れていった。


お昼のピーク時だったため、ロビーが満席だった。なので、お爺さんはなかなか空いている席が見つけられない。


漫画家

「席をお探しですか? 良ければこちらにどうぞ。俺は食事が終わったので、すぐ出ます」


おじいさん

「ありがとう、お兄さん。今日はたくさん、親切な人に会ったんだ。思い出のあの味を見つけられなくても、決して無駄足ではなかった……」


漫画家

「遠くからいらしたのですか? どちらからいらしたか、お伺いしても?」


おじいさん

「恥ずかしい話だ。私は東京に住んでいて、今日は幼少の頃に食べた料理を探すためにここに来た。けれど、あれから何年も経っている。だから、店の主人はとっくの昔に引っ越していておかしくない。なぜそれが予想できなかったのか……」


漫画家

「そうですか……その方の特徴と料理について、教えていただけないでしょうか? 見つかった場合は、ご連絡いたします」


おじいさん

「お兄さん、お心遣いありがとう」


そのとき、よく通る千里の大きな声が、裏の厨房からこちらへ向かって近づいてきた。


エビチリ

「お待たせしました。この料理を食べてみてください!」


千里は料理が盛られたお皿をお爺さんの前に置き、期待の眼差しを向けた。

お爺さんは皿の料理を口に入れ、しばらく噛んでから、複雑な表情を浮かべた。


おじいさん

「とてもおいしい……お兄さん、ありがとう」

【選択肢】

・もしかして、味が違いましたか……?

・おいしくなかったですか……

選択肢

もしかして、味が違いましたか……?

千里はうなだれて、とても落ち込んだ表情を浮かべた。


エビチリ

「満足のいく物を食べたとき、現れる表情は人それぞれだが、そのどれもが幸福感と満足感に溢れていますから」

おいしくなかったですか……

千里はとてもがっかりした様子で、お爺さんの顔色を窺う。


エビチリ

「僕は自分の料理の腕には自信があります……でも、満足するものを食べたときに見られる表情とは違いました……」

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おじいさん

「私は役立たずの年寄りで、味覚もほとんど退化してしまってね。今もまた不機嫌な顔をして、人を困らせてしまっている。ただ、かつての思い出だった、あの、どこにでもある味を味わいたかっただけなのだがね」

「お兄さん、すまないね。確かに美味しいんだが、私の探していたあの味ではないようだ……」


お爺さんは千里を慰めるため、彼の頭を軽く撫でた。そして、一口ずつゆっくりと完食する。そしてお爺さんは、丁寧にみんなにお礼を言って、会計を済ませる。その後、杖をついて店から出ていった。

お爺さんの縮こまった後ろ姿を見た千里は、無念さと悔しさをその顔に溢れさせる。


エビチリ

「お爺さん……」


オーナー

「千里、そんなにがっかりしなくていい。お爺さんは連絡先を教えてくれただろ? いつかあの味が見つかれば、お爺さんの願いを叶えられるさ」


エビチリ

「はい……でも、僕はお爺さんを、料理の腕前で満足させられなかったことに傷ついているわけじゃないんです。お爺さんに今日、思い出の味と再会させられなかったことを残念に思っているんです……」

「長い歳月が過ぎたから、お爺さんが素晴らしい記憶が、だんだんと消えてしまったんだね」


一ヶ月後


賑やかな餐庁には、今日も人がいっぱいで、千里も相変わらず、無限に回り続けるコマのように厨房とフロアを行ったり来たりしている。


オーナー

「千里ーー!」


聞きなれたオーナーの声が聞こえ、千里は裏の厨房へと走っていった。


エビチリ

「ん? そちらの方は?」


厨房にはオーナーと他の料理人たちと、見知らぬ男性がひとり立っている。一度も会ったことがないのに、何故か千里はその人物の特徴をどこかで見たことが……聞いたことがあるように感じた。


オーナー

「紹介しよう。こちらは、先月、お爺さんが探していた屋台のご主人のお孫さんだ」


エビチリ

「なんだと!?」


続きが気になるシーンで、この話はストップさせる。千里はいたずらっぽく訊ねた。


エビチリ

「○○、屋台のご主人のお孫さんがどうやって見つかったのか、当ててみない?」

【選択肢】

・お爺さんが新聞に投稿したんじゃない?

・漫画家がお爺さんに連絡したの?

選択肢

お爺さんが新聞に投稿したんじゃない?

エビチリ

「ん、その方法も悪くないね」

「でも、お爺さんは人に迷惑をかけたくなくて、あの日も僕たちにずっと謝っていたよね」

漫画家がお爺さんに連絡したの?

エビチリ

「○○、賢い! 違うけど、だいぶ近いよ!」

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エビチリ

「漫画のお陰なのは確かだよ!」


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三 至高の味と情・参

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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エビチリ

「キミは、お爺さんが探していた店主のお孫さんなのですか?」


男性

「貴方が言っているのが、あの漫画の店主のことなら、そうです。」

「あの漫画に出ていた人物には、見覚えがあります。祖父が若かったときの写真とまったく同じでした。それだけじゃなく、我が家の伝統料理も載っていて、それでわかりました。」


エビチリ

「素晴らしいですね。大人になっても漫画が好きだなんて……いや、そうではなく。それは、どんな漫画だったのでしょうか!?」


男性

「貴方たちはご存じありませんか?いつも読んでいる漫画の最新話に、お爺さんと男の子の物語が描かれていたのです。細かい心理描写もあって、読んでいて涙が出そうになりましたよ!」


エビチリ

「あの日、この店にいて、この出来事を知っていて、更に漫画を使って人探しまでできる人って…まさか、あの漫画家のおじさんが?」


オーナー

「本当にすごいことだよ!もうお爺さんには連絡したよ。明日、うちの店に来てくれるってさ。」


男性

「安心してください。私は、祖父の技を受け継いだ男ですから!」




翌日




男性

「貴方があのお爺さんなのですね。こんなに長い間、我が家の伝統料理を思い続けてくださり、ありがとうございます。亡くなった私の祖父も、己の料理をこれほど楽しみにしてくれているお客様がいることを知ったら、さぞかし喜ぶでしょう!」


おじいさん

「彼はもう……なんということか。人は年を取るものだからな、バカげたこと言ってしまいましたね。私も、そろそろお迎えが来るような年なのに、彼がどうなっているのかを考えなかったなんて……」


孫の男は、こうした雰囲気には慣れていないようで様子で頭を搔いた。そして料理の皿を両手で持って、お爺さんの前に置く。


男性

「お爺さん、私の料理を食べてください。そして、私が祖父の味をしっかり守れているか、評価してください。」


おじいさん

「わ……わかった。」


お爺さんは料理を食べ始める。少しずつ大切に味わっているようだ。そして、半分食べ終わったところで、その顔から涙が溢れ出す。


エビチリ

「お爺さん……泣かないでください……」


おじいさん

「私はただ……嬉しいだけだ。貴方の料理は本当に美味しい……あの世で私のことを待ちくたびれている妻に会ったら自慢するよ。妻があの世に逝く前にずっと食べたがっていたが、結局食べられなかったあの味を、私は食べたのだと……」

「私の妻は、私と一緒に育って苦労の多い半生を過ごさせてしまった。逝く前に、あの味を一口味わいたいといつも言っていてね。どんな海の幸や山の幸でも満足させられなかったのだ。本当に幸せや楽しみを得られない人で……」

「私は役立たずだ……若い頃はお金がなく、毎日同じものばかり食べさせていた。今はお金に余裕ができたが、妻が逝く前に食べたいと言っていた料理を、ついぞ食べさせてあげられなかった……」


静まり返る店内で、お爺さんの消え入りそうな声だけがそのまま床に落ち、染み込んでいった。


おじいさん

「私は何を言っているのだろう……雰囲気を台無しにして嫌な老人だ。お兄さん、ありがとう。こんな老いぼれのためにこの店にわざわざ足を運んでもらって、料理を作ってくれて。」


お爺さんは涙を拭いてお礼を述べ、会計を済ますとこの間と同じようにひとりで店を出て行った。


話がここまで進んだところで、千里はとても複雑な表情を浮かべ、ため息をついた。


【選択肢】

・とても残念な話だね。

・まぁまぁ良い始末だったんじゃないかな。

選択肢

とても残念な話だね。

エビチリ

「そうだね。でも結果が悪くなったのは良かった……」

「亡くなった人の感情は消えてなくなるけれど、漫画や料理の時間は、回廊には刻まれて遺るよ。」


まぁまぁ良い始末だったんじゃないかな。

エビチリ

「そうだね。お爺さんはやっと奥さんと一緒に食べた思い出の味を食べられたし。」

「あのときのお爺さんの表情は、普段お客さんが見せてくれる幸せで満足している表情とは違ってた。懐かしさ、無念、安らぎ……何とも言えないたくさんの感情が混ざり合ってた。でも、彼があの料理を愛していることは間違いないよ。」


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千里が話している時、裏の厨房からおじさんがひとりで出てきた。彼は遠くから鮮やかな服を着た千里を見て、千里に劣らない大きな声で叫んだ――


オーナー

「まったく。千里、お前ってやつは!さっき常連客にお前がここにいるって教えてもらったけど、にわかには信じられなかったよ。」

「あっ、こちらは?」


エビチリ

「こちらは〇〇。私の一番大切な……友達です!」


オーナー

「おぉ、そうか。いまのお前は成功しているのがわかって、私も本当に嬉しいよ。

 忙しい合間をぬって、絵を練習していた日々が無駄にならなくてよかったな!」


【選択肢】

・当時の千里について教えてもらえませんか?

・忙しい合間をぬって絵の練習?

選択肢

当時の千里について教えてもらえませんか?

オーナー

「もちろん。千里があなたをここに連れてきたのです。ぜひとも、あなたに聞いてもらいたい。」


忙しい合間をぬって絵の練習?

オーナー

「ははは、そうそう。あのとき千里は、この店で誰よりも一生懸命、努力する子だったよ。」


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オーナーは懐かしそうに、ほっとしたような表情で話し始めた。


オーナー

「千里、お前もあの漫画家のファンになったのか?これまでは『トマトソースの百通りの使い方』ばかり読んでたのに、あの漫画家さんの漫画を読んでるね。それに休憩中も新しい料理の模索をせず、ずっと何かを描いているようになった。」


エビチリ

「オーナー、あの漫画家さんのファンレターコーナーって見たことあります?あの漫画家さん、音信不通になった昔の文通相手を探す手伝いもしたことがあって。それで無事に再開して、今は一緒にいるって便りが来たんですよ!」

「漫画とは……本当に不思議な存在だよね。時空を超える力がある。失われた感情を甦らせ、みんなの心にある美しさを作品に込められる。」


オーナーはフゥと息を吐き、千里の顔を撫でながら話し出した。


オーナー

「わかった、千里。遠慮しないで、やりたいことをやるといいさ!」


エビチリ

「オーナー?」


オーナー

「李さんと相談して、お前のシフトを変更したんだ。私たちはずっと、成長期の子どもが休まず働いて、仕事の時間を過ぎても家に帰らないことを気にかけていてね。」

「千里、やりたいことがあるなら、やりなさい。そうそう、あの漫画家があなたを訪ねて来て、隣りの部屋にいるよ。」


エビチリ

「オーナー……」

「はい!より多くの人に、大好きな美食文化を漫画の力で伝えて、好きになってもらえるように頑張ります!ぼ……僕、ひとまず彼に会ってきますね!」


漫画家

「千里、俺は今度引っ越すんだ。だから今後、君のエビチリを食べることが難しくなるかもしれない。」

「このペンを君にあげよう。これは餐庁で浮かんだインスピレーションをメモするために使っていたペンだ。記念として君にあげるよ。」


エビチリ

「俺……」


漫画家

「君は最近ずっと私の漫画を見ているな。自分でも勉強しているようだが、漫画家になりたいのか?」


エビチリ

「はい……なりたいです!」


漫画家

「君ならきっとなれる。信じているよ。」

「それと、これは俺の単行本だ。内容を追加したから、見てくれないか?」


千里は漫画を受け取り、ページを開いた。


そこには、あのお爺さんの短編ストーリーがある。連載と違いがあり、料理を注文する少年の隣に、少女がいることだ。


彼女の髪型はツインテールで、料理を持っている少年を見ながら、瑞々しい笑顔を浮かべていた。


オーナーは、千里の漫画に関する夢の物語を、すべて話してくれた。


エビチリ

「漫画家のおじさんが僕に話したことは教えないでって言ったのにぃ!どうして〇〇に話しちゃうのかなぁ、恥ずかしいなぁ……」


オーナー

「まったく……私がお前のことを理解してないとでも思ってるのか?」


【選択肢】

・もうあなたは夢を叶えたじゃないか。

・あなたはオーナーとの約束を果たせた。

選択肢

もうあなたは夢を叶えたじゃないか。

千里はあっけにとられ、頭を振った。


エビチリ

「僕はまだ夢を追いかけてる途中だよ!もっと多くの人が食の文化を好きになるように努力し続けるんだ!」


あなたはオーナーとの約束を果たせた。

エビチリ

「〇〇、褒めてくれてありがとう。でも、今もまだ頑張っているところだよ!」


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千里はぞっと身を乗り出して、不思議そうな眼差しを向けるオーナーの傍で、声をひそめて話し出す。


エビチリ

「実は、僕の化霊と同じようなものでさ。僕は、新しい環境に適応するように、料理人の陳さんが創り出した新しい料理なんだ。僕も新作漫画を通して、愛する素敵なものたちが、新しい生命力を持つようにしたいんだよね。」

「美しく素晴らしいものを作品として残し、伝えていけたらってね。それが僕の求める理想なんだよ!」



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