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エデンの徒花・ストーリー

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作成者: Mayusagi
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エデンの徒花

プロローグ

寒冬

極雪原


 吹き荒ぶ風、空の上に集まる雨雲。日光は遮られ、もやの下で世界は今にも天地が分かたれる時の混沌に陥りそうな様子を醸し出している。

 真っ白な雪原の上で、一人の孤独な人影が北風に逆らい、よろよろと歩いている。その一歩一歩から力を使い切ったかのように感じられるが、立ち止まることはなかった……


寒冬

ミドガル


 朝からカプチーノはマントに落ちた雪を振り落とし、「エデン」の扉を開いた。


カプチーノ:おはよう!また来たよ!

エデンの園スタッフ:ほう、いったい朝から誰がこんな雪の日に来たのかと思ったら、カプチーノか。久しぶりだ。

カプチーノ:うん、この前は学校の期末テストで忙しかったからさ。

エデンの園スタッフ:そうか、ダニエル先生はてっきり植物園の仕事がつまらなくて、大事な実習生が逃げたのかと思っていたよ。

カプチーノ:あれ、欠席届を書いて郵便で送ったはずだけど。先生はもらってないの?

エデンの園スタッフ:それはよくわからないな。ダニエル先生はもう半月ほど探索に行っているから、その欠席届は先生が出発したあとに届いたのかもしれないな。

カプチーノ:探索?

エデンの園スタッフ:ああ、説明するよ。毎年、ダニエル先生は一人で探索する時間を作るんだ。「この世界の失われた種」を探すためだそうだ。

カプチーノ:失われた種……それを、一人で?

エデンの園スタッフ:そう、あの場所は人間にとって危険すぎるといつも言っていた。あなたも知っていると思うが、食霊として、まず自分からやらなければならないと言って動くのが先生だからな。


 カプチーノは何かを考えているかのように頷いた。


カプチーノ:ダニエル先生は、今回はどこを探索しているの?

エデンの園スタッフ:ん……確か、半年前と同じく「極雪原」に行ったはずだ。


寒冬

極雪原


マッシュポテト:この天気だと、吹雪が来ますね……早く急がないと……


 マッシュポテトはそう独り言を呟きながら、足を速めた。しばらくすると、ついに一見普通そうに見える山石の前にたどり着いた。


マッシュポテト:ようやく見つけました。


 すると、目の前の「山石」が突然震え出した。表面を覆っていた雪が落ち、びっしりと絡み合った大きな紫の藤蔓という本当の姿が現れた。


マッシュポテト:久しぶり、相棒、苦労をかけましたね。


 紫色の藤蔓は少しずつヤシのようなサイズの団子にまで縮まり、マッシュポテトの周りで興奮した様子で跳ね回った。ひどく懐いている様子でそばを回ったあと、背中の黒い洞穴を現した。

 マッシュポテトは楽しそうにそれを撫でると、洞穴のほうへと向かった。が、数歩と歩かないうちに、とある黒い影が洞穴の奥から出てきた。マッシュポテトの頭上を素早く通りすぎるや、外の雪原へと飛んでいった。

 マッシュポテトはびっくりした。よく見ると、それは大きく翼を広げて羽ばたくカラスだった。マッシュポテトは胸を撫で下ろし、そばにいる藤蔓を指で軽く弾いた。


マッシュポテト:これ、吹雪を避けるためにあの鳥を入れましたね?どうやら、極雪原にまったく生き物がいないわけでもないようですね……


 マッシュポテトは自分を落ち着かせて、さらに奥へと進んだ。

 外の氷河の世界と違って、洞穴の中は暖かく湿っており、岩壁と地面にはぽつぽつと蕨が生えている。

 前方へと視線を移してみると、上にある氷に覆われた谷の隙間から光が差し込んでおり、洞穴の奥に天井が自然とできている。ぼんやりとした光の下には、人の手で作られた花畑がある。


マッシュポテト:(ここの温度は、霊力によってよく維持されているみたいですね。この環境で「あれ」をうまく実らせることはできるのかな……)


 マッシュポテトは期待をこめて花畑へと近づいた。だが、花畑の近くまで進むと、目の前の光景にマッシュポテトは驚き、顔が真っ青になった。花畑は思っていた通りに花を咲かせていたが、まるで大きな野獣に踏みつけられたように、人の泣き顔みたいな花が倒れて散らかっている。


マッシュポテト:どういうことですか?


 疑問に思ったマッシュポテトは突然、肩を叩かれた。

 理性よりも本能が先に反応したマッシュポテトは、無意識に横へと避け、藤蔓が勢いよくその人物を叩いた。


ミネストローネ:うっ!


 悶絶する声とともに謎の邪魔者は目の前の花畑に倒れ、傷口から流れた血があの人面の花に滴り落ちた。


マッシュポテト:まずい!


 マッシュポテトは口と鼻を押さえようとしたが、もう間に合わない。ある種の栄養を得たかのように、赤い霧が人面の花から勢いよく放出された。マッシュポテトの目の前の光景が、だんだんと歪んでいった……


ストーリー1-2

極雪原

洞穴内


 ミネストローネは全身に痛みを感じて悪夢から目覚めたが、もしやもう一つの悪夢へと迷い込んだのではと思った。

 ――近くに、長髪の見知らぬ者がいる。先程、ミネストローネを攻撃してきたやつだ。

 ミネストローネは起きようとしたが、チクリと胸が疼いた。


ミネストローネ:それは……


 下へと目を向けると、紫色の光を発している藤蔓が自分に絡みついている。大人しそうに見えるが、よく見たら藤蔓の表面には鋭い棘がたくさんついている。

 あの長髪の男はこちらに背を向けて、何かをいじっているようだ。


ミネストローネ:何をする気だ?


 ミネストローネの目に警戒の光が宿り、ある考えが脳裏をよぎった。


―――

ミネストローネはどうする?

・<選択肢・上>起きていないふりをする。

・<選択肢・中>ツルを振りとけ、奇襲をする。

・<選択肢・下>相手と挨拶をする。

―――


 ミネストローネが次の行動に移ろうとした直前、意外にも藤蔓があっさりと自らを解放してくれた。

 まるで頭と尾がない子蛇のように、長髪の男の隣へとにょろにょろと近づいていき、体を巻いて相手の足首に触れている。すると、その巻きつかれた相手は嬉しそうに顔を上げて、こちらへと走ってきた。


マッシュポテト:よかった、ようやく目を覚ましたんですね!

ミネストローネ:いたっ――放せ……

マッシュポテト:ああ、ごめんなさい、傷口に当たりましたか?


 マッシュポテトのハグから抜け出し、差し伸べられた手を避けたミネストローネは、すぐそばにある石壁を使って体を起こした。まだ恐れが拭えないのか、そのまま後ずさりをする。


ミネストローネ:(こいつ、馴れ馴れしいな……)


 まだ警戒心はあるが、マッシュポテトの真摯な眼差しを前にし、ミネストローネは頑張って口角を上げて笑顔で返した。


ミネストローネ:……大丈夫、ただのかすり傷だ……でも、本当に手加減しないんだな。ちょっと挨拶したかっただけだっていうのに、急所を避けていなかったら、未だに夢の中だったかもしれないぞ。

マッシュポテト:すみません、こんなところに人がいるとは思わなかったから、つい……


 マッシュポテトは恥ずかしそうに笑って、後ろでキョロキョロしている藤蔓の玉を叩き返した。ミネストローネはその動きに気づいて、興味深そうにそれを見つめた。


ミネストローネ:それは眷属か何かか?……数日前にこの雪原を通りかかったときに道に迷ったんだが、そいつのおかげでこの洞穴で吹雪をやり過ごすことができたんだ。こうして見ると、やはりアンタがこの洞穴の主なんだな、命の恩人に感謝する。

マッシュポテト:いえいえ、感謝する必要はありませんよ。この洞穴は大自然が残してくれた奇跡であり、僕はその中で花を育てているだけなんです。

ミネストローネ:花を育てる?

マッシュポテト:うん、花を育てるんです。そうだ、自己紹介を忘れていました。初めまして、僕はマッシュポテト。植物学の先生ですよ。ダニエルって呼んでくれても構いません、これは僕の人間としての名前です。

ミネストローネ:……初めまして。オレはミネストローネ、人間の名前はない。好きに呼んでくれ。

マッシュポテト:うん、わかった。そうだ……ミネストローネ、その、あの花畑に何があったのか知っていますか?


 ミネストローネマッシュポテトの後ろにある花畑の花が散らかって倒れている光景を見たあと、首を横に振った。


ミネストローネ:三日前にここに来た時には、その花はとっくにそういう風になっていた。花のことを怪しんでいたから、近づいてもいない。アンタの眷属がこの間の吹雪から逃がすために他の動物をここに連れてきたんじゃないか?

マッシュポテト:うーん、確かにそうかもしれない……これは僕にも責任があります。ちゃんとその子たちを見てやればよかった……


 マッシュポテトは肩を落としてため息をついた。


ミネストローネ:変なやつだな。こんな極寒の地で、しかも自分でも面倒を見られない所で花を植えるか?


 マッシュポテトは一瞬ぽかんとしたあと、突然後ろめたい表情を浮かべた。


マッシュポテト:うっ……これは仕方なくて……実は……あっ!後ろ!


 ミネストローネが振り返ると、突然何かに顔を覆われた。手でそれを取ってみると、なんとそれは……


ミネストローネ:ん?これは何だ??

マッシュポテト:見た通り、テスト用紙ですね。

ミネストローネ:それはわかるが、なんでここにこれが飛んできたのかって聞きたいんだ。

マッシュポテト:それは……気をつけて、また来ました!

ミネストローネ:これまた何だ?時限爆弾か?

マッシュポテト:いや、それはただの目覚まし時計だと思います……

ミネストローネ:目覚まし時計?ただの目覚まし時計なら、なぜ止められないんだ?待て!これは、知っている……


 ミネストローネは目覚まし時計を捨てて、飛んできた赤いトサカの雄鶏を両手で掴んだ。鶏は絶えず翼を振っている。


ミネストローネ:ダニエル、説明してほしいんだが、何か重要なことを教えていないよな?ダニエル?ダニエル?――どうしてそんな遠くに隠れているんだ?


 マッシュポテトは顔を真っ青にして隅っこに隠れており、隣の藤蔓もびくびくとしながら葉を散らしている。


マッシュポテト:ごめん、僕はそういう尖った口を持った動物が怖くて……ミネストローネ、友よ、これはすべて悪の花が作り出した幻なんです。もう説明している時間はありません、早くそいつらをやっつけてください!


ストーリー1-4


 無数のよく肥えた鶏が四方から飛んできた。中には視界を遮るほどのテスト用紙と止められない目覚まし時計も交ざっている。ミネストローネは手で一つ一つ掴み、すぐに洞穴の中が鶏の羽でいっぱいになった。

 ミネストローネは思わず歯を食いしばった。


ミネストローネ:いつまでやるんだ?終わりにする方法はないのか?


 ミネストローネはまた適当に一匹の鶏を捨てて、ついに我慢しきれなくなった。


マッシュポテト:体に「悪の花」がついている幻を見つけて破壊すれば、他のものは全部消えるはずです!

ミネストローネ:悪の花の印?花畑の花びらのことか?


 ミネストローネは口をすぼめて花畑を一瞥した。あの花は人の泣き顔みたいな特徴のある見た目をしている。しかし……


ミネストローネ:面倒くさい……ダニエル、下がっていろ!

マッシュポテト:これは……


―――

マッシュポテトはどんな反応をするだろうか?

・<選択肢・上>退く

・<選択肢・中>手伝いをする

・<選択肢・下>そのまま動かない

―――


 マッシュポテトが反応するよりも早く藤蔓の玉が目の前に飛び出し、大きな網となって防いだ。

 ――ドサッ。


マッシュポテト:ゴホゴホゴホ……


 爆発の煙が消え去ったあと、ミネストローネは銃を腰に戻した。洞穴は一瞬にして静かになった。鶏、テスト用紙、目覚まし時計は花びらとなり、悠々と散っている。


マッシュポテト:すごい……


 藤蔓は球状になり、主の真似をするように二本の枝を差し出して拍手した。

 ミネストローネは体の花びらをはたき落として、マッシュポテトの前に行くと立ち止まった。


ミネストローネ:で?一体どういうことだ?

マッシュポテト:ここは危ないから、歩きながら話しましょう。


───


マッシュポテト:「悪の花」は精霊時代に存在した肉食の花で、理論上この世界では絶滅しています。花が咲くと生物の負の感情を引き出し、動物や人間がその花に触れると悪夢のような幻へと落ちてしまうのです。

マッシュポテト:花はそれを利用して、通りかかった昆虫や動物を捕食します。しかも、侵入者の霊力が高いほど、悪夢はより真実に近いものとなるんです。そして、幻の内容は侵入者にとって最も暗い潜在意識に関係しています……その罠に落ちたものは、ほとんど帰ってこないそうですよ。

ミネストローネ:つまり、さっきアンタに打たれて気絶したときに傷口の血が悪の花に触れたから、今もその幻の中にいるっていうことか?

マッシュポテト:はい。

ミネストローネ:ここから出る方法は何だ?

マッシュポテト:記録によると、ここに現れるものはすべて獲物が怖がるものだから、幻に勝つには、ここに現れた自分が恐れるものに勝つしかありません。


 マッシュポテトの話が終わると、隣のミネストローネが立ち止まって変な目で彼を見た。


マッシュポテト:どうかしましたか?

ミネストローネ:アンタの怖がるものってちょっと変だなと思っただけだ。

マッシュポテト:こ、こほんっ……まあ……教師だから、毎回生徒のテスト用紙を添削するのは確かに面倒なことだけど……今の子は、特に貴族の子供は何でも書いちゃうんですよ。全然想像もできない答えが飛んでくるときもあるくらいで。

ミネストローネ:話を聞かないなら叩けばいいだろ。

マッシュポテト:それはだめですよ。子供は植物と同じで、親や先生の指導が必要なんです。この仕事には根気がなくちゃならない。先生になるのは大変ですが、自分の教え子が立派になったとき、それはもう、ものすごい達成感を覚えるんですよ?

ミネストローネ:……好きにしろ。

マッシュポテト:止められない目覚まし時計については……間違いなくみんなにとっての悪夢なんじゃないかな。経験したことはありませんか?平日に目覚まし時計に支配される恐怖を。

ミネストローネ:オレは食霊だ。食霊はみんな、アンタのように人間の仕事に熱意を持っているわけじゃない。

マッシュポテト:えっ?


 マッシュポテトはしばらく言葉が出なかった。


マッシュポテト:で、でも、僕たちは人間と同じで、生活に熱意を持つことで充実した暮らしができるわけで……

ミネストローネ:それはアンタの考え方だ。まあ、それより、もう一つ気になることがある。

マッシュポテト:は?

ミネストローネ:精霊時代に危険すぎて全滅した植物だっていうのなら……ダニエル先生は、なぜわざわざそれを復活させようとしたんだ?


ストーリー1-6


マッシュポテト:えっと、復活ではないかな、植物学的に言えば、種は芽を出していないときは休眠期に入っているんです。条件が合っているかどうかというだけの話で……

ミネストローネ:もっと簡単に言ってくれ。

マッシュポテト:わかりました。つまり、悪の花は絶滅していないんですよ。僕がそれを育てているのは繁殖させるためではなく、その種をより多く入手することで、この種の植物の遺伝子を保存するためなんです。

マッシュポテト:多くの人はそんな習性なんて消えてほしいと思っていますが、この星全体の植物の多様性から見れば、この植物の遺伝子には存在意義があります。今でこそ、人に幻を見せる効果をうまく利用することができませんが、その不思議な力がこれから先の世界に貢献しないとは言えないんじゃないかな。

ミネストローネ:なんか、すごそうだな。

マッシュポテト:植物学の学者として、やるべきことをしているまでですよ。


 マッシュポテトは笑いながら首を横に振った。


マッシュポテト:とはいえ、万が一のために試験地をこんな寒い場所にしたけれど、結局花の力に引っかかったうえ、あなたまで巻き込んでしまいました。

マッシュポテト:だから、僕は詰めが甘かったんです。この古の植物の力を甘く見ていたんですよ。


 ミネストローネは答えず、ただマッシュポテトの後をついていく。しばらくして、ミネストローネは突然口を開いた。


ミネストローネ:ダニエル、オレに聞きたいことはないか?

マッシュポテト:ん?何を?

ミネストローネ:なぜ極雪原にいるのか、とか。

マッシュポテト:通りかかったからじゃないのですか?

ミネストローネ:そのことに疑問はないのか?十二月の真冬に、なぜここを通りかかったのか。

マッシュポテト:毎回話の最後にいちいちなぜって聞いていたら、キリがないですよ。

ミネストローネ:普通ならそうかもしれないが、今はオレたち二人しかいない。知り合ってからまだ数時間だけだし、もしアンタをはめるとしたら……

マッシュポテト:え?まさか?

ミネストローネ:……ん?

マッシュポテト:まさか、僕をはめる気ですか?

ミネストローネ:さあ。


 ミネストローネは笑みを浮かべて、マッシュポテトを避けて前へと進んでいった。マッシュポテトは眉をひそめて考えてみたあと、その背中を追っていった。


マッシュポテト:もし僕をはめるつもりだったなら、さっき僕が怖がるような幻が現れたとき、助けたりなんかしませんよね?

ミネストローネ:もっと大きな陰謀があるのかもしれないぞ。

マッシュポテト:んー……そうだ!


 マッシュポテトは突然手のひらを叩いた。


マッシュポテト:思いつきました、あなたに聞きたいことなら確かにあります。

ミネストローネ:は?


 ミネストローネは足を止めて振り返った。すると、背後でさすっていたはずの手は次第に拳へ変わろうとしていた。


マッシュポテト:何か怖いものはありますか?

ミネストローネ:これは……

マッシュポテト:鬼とか、暗闇とか、あるいは他の何かとか……

ミネストローネ:それを聞いてどうする?

マッシュポテト:さっき教えたじゃないですか。悪の花は人を閉じ込めるだけでなく、相手が一番怖いものを幻として生み出して、その人を恐怖に陥れるんです。

マッシュポテト:だから、もし何か怖いものがあるなら、先に教えてもらってもいいですか?そうすれば、また遭遇したときに心の準備ができますし。

ミネストローネ:ふ、怖いものは何もない、ただ――


 ミネストローネはフッと緩い笑みを浮かべたあと、その笑顔に若干の悪戯っぽさを帯びていった。


ミネストローネ:ただ、この前、結構怖いホラー小説を読んだんだ。

マッシュポテト:えっ???


 言葉が終わらないうちに、突然、低い笑い声が広々とした洞穴の中に響いた。

 幽霊のような女の声が突然響きはじめ、ミネストローネは全身がこわばった。マッシュポテトもびっくりして、左右を見回したあと、突然ミネストローネの後ろを見つめた。

 爪が黒く塗られた手が、ミネストローネの肩にぽんと乗せられている。


???(ターダッキン):ミネストローネ……困った子ですね……

???:その頭、ぼろぼろのようだから交換でもしようかと思うのだけれど……どう思いますか?


―――

ミネストローネはどんな反応をする?

・<選択肢・上>避けない

・<選択肢・中>相手を攻撃する。

・<選択肢・下>マッシュポテト連れて走り出す。

―――


 黒い爪はその皮膚をかすめ、あらわになっている喉元へと伸びていく。ミネストローネはその場に打ちつけられたかのように動けない。

 十の指が喉元で合わさろうとしたその瞬間、マッシュポテトは前へと飛び出し、片手で鬼の手を塞いだ。黒い爪、伸ばされた手に食い込む。

 一本の藤蔓が鬼の手を登り、一瞬で赤髪の女の幽霊をきつく縛った。ミネストローネが我に返ると、マッシュポテトはぐいっと引っ張り、そのまま前へと逃げ出した。


マッシュポテト:ぼうっとしてないで、早く逃げましょう!


ストーリー2-2


 ミネストローネは、マッシュポテトに引きずられたまま逃げていった。


マッシュポテト:どうかしましたか?


 ミネストローネは下を向いたまま、しばらく硬直している。そしてようやく顔を上げたかと思うと、顔に笑みを浮かべていた。


ミネストローネ:オレは傷を負っているから、もう走れない。

マッシュポテト:えっ?まだ痛むのですか?ちょっと見せてください。

ミネストローネ:いい。


 マッシュポテトは鼻先を指でさすった。


マッシュポテト:そういえば、さっきのは何だったんでしょう……吸血鬼とか?

ミネストローネ:は?

マッシュポテト:つまり、あなたが読んだホラー小説って、全部都市伝説みたいな怪談なんじゃないんですか?

ミネストローネ:……そうかもしれない。

マッシュポテト:ふう、怖かった。次の幻が現れる前に、他に何を読んだのか教えてくれませんか?

ミネストローネ:覚えていない。ゾンビとか、海の怪物とかだったかもしれない。

マッシュポテト:ええ?そんな、一体どういう小説を読んだんですか?


 ミネストローネは黙ったまま、石壁にもたれながら下を向いて少し笑った。

 マッシュポテトミネストローネの顔色を見ると、まだ青白いままだ。前へと歩み出て、肩をぽんと叩く。


マッシュポテト:大丈夫、大丈夫。これは全部偽物です。怖いなら、また現れたときにさっきみたいに逃げればいいんです。私が後ろを守りますから。


 ミネストローネは不思議そうな顔でマッシュポテトを見た。


ミネストローネ:いいよ、ありがとう。

マッシュポテト:そもそも、僕のせいなんです。僕が悪の花を植えたから、今ここに閉じ込められてしまっている。ただ、このままずっとやつらと鬼ごっこしているわけにはいきません。何とかしてここから脱出しなくちゃ……


 マッシュポテトがぶつぶつ言っていると、突然、周りが妙に静かだと感じた。マッシュポテトが顔を上げると、すぐ隣にいるミネストローネはいきなり動かなくなった。


マッシュポテトミネストローネ?寝てしまったのですか?


―――

ミネストローネの異変に気づいたマッシュポテトは、どうする?

・<選択肢・上>もう一声

・<選択肢・中>逃げる

・<選択肢・下>相手が動くまで観察

―――


 誰も返事をしてこない。マッシュポテトは試すように、指でミネストローネに軽く触れた。が、一瞬でミネストローネは灰になった。


マッシュポテト:!!


 灰がマッシュポテトの顔に飛びついてくる。彼は思わず、地面にへたり込んだ。


マッシュポテト:う、うそです。全部うそです。真に受けたら罠にかかります……


 ごくりと唾を飲み込み、必死に落ち着こうと自分に言い聞かせながら、マッシュポテトは壁にくっついた。


マッシュポテト:今のは全部幻覚です。僕の恐怖心を煽る幻覚である以上、信じなければいいんです……ミネストローネはきっと大丈夫です。今、僕がやるべきことは、この幻覚を誘発する原因を探し出すことです。

マッシュポテト:そうです、いつからおかしくなったのでしょう?あの女性の幽霊が現れた後、僕はずっと彼の腕を掴みながら行動していました。僕が手を彼から離した後に、隙を突いてあの幻と入れ替わったに違いありません――


 そう納得するマッシュポテトだった。が、ふと彼は、とある問題を意識する。

 ――もし、最初から、ミネストローネなんていう存在はいなかったのだとしたら?

 ピシリ、と亀裂が走った感覚がした。果たして一連の出来事は本当だったのだろうかと、疑い始める。

 マッシュポテトは、洞窟に入った瞬間に奥から逃げ出してきたあの真っ黒な烏の存在を思い出す。


マッシュポテト:腐った土を食べ、暖かい地域に生息しているはずの烏が、なぜ真冬の中、このひどく寒い極雪原にいたのでしょうか?しかも、仲間もいなく、たった一匹で。

マッシュポテト:まさか、あの時から…すでに幻の中に落ちて……?


 まるで彼が出した結論を証明するかのように、突然周りの景色が歪みはじめた。先程出会った女性の幽霊が再び、彼の目の前に姿を現わした。


???:あの老夫婦は別の国で見つかりましたので、もう安心してお見送りできますよ、ダニエルさん。


 ああ、彼女は恐ろしい幽霊などではない――そうだ――かつて両親の葬式で一度出会ったことがある――彼女はターダッキン、ミドガルで暮らしている葬儀屋だ。

 そう思った途端、正体不明の不安感が急に彼を襲った。


マッシュポテト:(もし彼女が悪夢に投影された現実世界の存在ならば、じゃあ、ミネストローネの正体は一体……?)

マッシュポテト:(一体どこなんだ、あの顔を見たのは……確かに懐かしさを感じたから、僕は絶対、どこかで彼と会ったことがあるはず……!ですが悪夢の世界にまで入ってくるなんて、彼と出会ったときは一体どんな状況だったんでしょう……)

マッシュポテト:(もし、それさえ分かれば、悪夢の世界から脱出できるのでしょうか?)

マッシュポテト:(早く、早く思い出さなくちゃ――本当に極雪原の洞窟で遭難してしまえば、誰も助けてくれるはずがありません。)


そう思うと、マッシュポテトは思わず冷や汗をかいた。


ストーリー2-4


 一方、女性の幽霊はスタスタとミネストローネのほうへと歩いてきた。

 ミネストローネは突然昏睡状態に陥ったマッシュポテトを壁まで運んだ後、すぐそこにいる彼女のほうへと振り向いた。ずっと笑顔のままだった表情が、突然冷たく凍りつく。


???:ミネストローネ、交換するならどの頭がいいですか?

ミネストローネ:オレらの前から消えろ、ターダッキン。助けなんぞ求めてねえ……一度アンタを焼けたなら二度目だってできるぜ、分かってんのか?


 ギュッと拳銃を握り締め、ミネストローネは銃口をターダッキンの額に向けた。


ターダッキン:……


 そして、声を発することも動くこともしないミネストローネターダッキンは、しばらく膠着した。


ターダッキン:ねえ、ミネストローネ。私はただの幻なんですよ。本当になんの後ろめたさもないのなら、どうして撃たないのですか?

ターダッキン:覚えているでしょう?私が貴方を拾ったあの日のこと――


 バァン!

 真っ赤な液体弾丸によって、ターダッキンの幻は話の続きを遮られた。

 まるでマリオネットのような動きで彼女はゆっくりと下を向き、自分の体に視線を移す。赤い弾丸に貫かれた胸元は、少しずつ腐蝕していき、消えていく。が、彼女は微笑んだ。


悪の花の幻像:我が主よ、おめでとう……また無駄な善良性を少し失ったようだね……練習はあと少しで終わりだ。残った厄介事をすべて解決すれば、我々はきっと……

ミネストローネ:黙れ。


 ミネストローネがさっと手を振る動作と共に、ターダッキンの残像も空気中から消え、黒い煙となった。その次の瞬間、黒煙は彼が出していた手のひらへと潜り込み、とても綺麗とは言えない花となった。そして、まるで泣き顔のようなその花も、すぐに彼の体へと溶け込み、姿を消した。

 マッシュポテトは依然として昏睡状態のままだ。眉間にしわを寄せ、とても辛そうに見える。

 ミネストローネは拳銃を収め、しばらく沈黙を保ったあと、そっとマッシュポテトに近づいた。


───

ミネストローネはどうする?

・<選択肢・上>マッシュポテトを起こす

・<選択肢・中>マッシュポテトを置いていく

・<選択肢・下>マッシュポテトを殺す

───


ストーリー2-6


マッシュポテト:(温度がもう少し上がればいいのになあ……って、あれ?)


 マッシュポテトは、急に上がりはじめた周りの温度を感じ取った。

 虫の鳴き声、花の香り…そしてなにより、懐かしい土の匂いが……

 彼を目覚めさせ、そして驚かせた。

 注ぎ込む日差し、そそり立つ樹木、懐かしいドームも豪華絢爛なままだ。


マッシュポテト:エデン……僕は、戻ってきたのですか?


 日差しと共にゆらゆらと動く木の葉にぼーっとしていた彼の目の前に、突然、無邪気な顔がぱっと現れた。


カプチーノ:ダニエル先生?ここで居眠りしていたんですか?

マッシュポテトカプチーノくん……なぜここに?

カプチーノ:ああ、実は、先生に別れを告げようと思って、やって来たんです。

マッシュポテト:別れを告げる?


 木の幹に手を添え、体を支えながら立ち上がったマッシュポテトは、少しの眩暈を覚えた。


カプチーノ:はい、先生。これからは、もうエデンに来ることはないでしょう。

マッシュポテト:期末テストの準備ですか?なら構いません。また冬休みの時に、実習をしてくれればいいですから。

カプチーノ:いいえ、ダニエル先生。期末テストではありません。ここには植物しかないから、とてもつまらなくて、もう二度と来たくないと思っただけです。ただ礼儀を守るならば、最後に先生にちゃんと別れの挨拶をしなくてはなりませんので。

マッシュポテト:そなたは……

カプチーノ:では、さようなら。


 瞬きをするカプチーノに、マッシュポテトはなにかを言おうとした。しかし、忽然と襲ってきた二度の目眩にまた飲み込まれた。

 彼は目を閉じた。しばらくしたあとにまた開けてみると、カプチーノの姿はもうどこにもなくなっていた。彼はエデンの入口へと走り出した。が、どんなに走ってもたどり着けない。

 見渡す限りの生い茂った木々。静寂の中で、懐かしい恐怖感が道に迷った彼を襲った。


───

……

・<選択肢・上>一人にしないで…

・<選択肢・中>どっちに進めばいい?

・<選択肢・下>こっちを見捨てるな!

───


 彼の震えた声につられるように、周りの植物も騒ぎ出した。波打ちしはじめた足元の土の中から無数の紫色の蔓が生え伸び、彼の全身にくるくると巻きついた。


マッシュポテト:(この世界をまるごと絡めとってしまえば、誰も逃げられなくなりますよね?)

マッシュポテト:(もしこの世界の中にいるのが僕だけなら、もう何も失わずに済みますよね?)

ミネストローネ:ダニエル、しっかりしろ!


 でも、急に現れたこの裂け目はどういうことなのだろう?

 暗闇の中、マッシュポテトは身を丸くして縮こまった。彼の世界がなんの前触れもなく急に揺れ始める。そしてその裂け目から、一人の姿が現れた。

 マッシュポテトは顔を上げた。目の焦点は失っているが、口元にはなんともいえない笑みが浮かんでいた。


マッシュポテト:あなたですか。あなたのことはまったく覚えていませんが、こうして見ると、僕から何かを奪おうとしているのでしょうね……


 次の瞬間、辺りをびっしりと覆っていた蔓から毒の棘が生え、一気にミネストローネを襲った。


ストーリー3-2


 世界は裂けて初めて、光が注ぎ込まれるものだ。

 目の前を火の光がよぎった。その刺激のせいか、目を開いたマッシュポテトの目尻に、無意識に涙が零れ落ちた。

 目の焦点を合わせると、ようやく自分の目の前で松明を掲げている人物がミネストローネだということに気づいた。


ミネストローネ:目は、覚めたか?

マッシュポテト:……僕は、一体……?

ミネストローネ:知らない。何かにやられたんじゃないのか?歩いている途中に、急に倒れたんだ。

マッシュポテト:そうですか……確かに怖い夢を見たのですが……けど、今はもう思い出せません……

ミネストローネ:夢ってそういうもんだろ?

マッシュポテト:でも……

ミネストローネ:悪夢なら尚更だ。

マッシュポテト:そ……そうですね。でも、僕は一体どうやって目を覚ませたのでしょう?

ミネストローネ:分からない。ただ、ちゃんと目覚めたってことは、きっと悪夢の中で何らかの恐怖心に打ち勝ったんじゃないのか?

マッシュポテト:……恐怖心に勝った?

ミネストローネ:ああ。行こう、ダニエル。アンタが目を覚ました以上、引き続き出口を探すぞ。


 そう言いつつ、ミネストローネは前へと歩き出した。ポンポンと自分の頭を叩いたあと、マッシュポテトも急いで立ち上がった。


マッシュポテト:待っていてください――


 その言葉に応えるように、ミネストローネは足を止め、よろめきながらも必死に追いかけてくるマッシュポテトを待った。


マッシュポテト:困りましたね……ねえ、僕たちは今、どこにいるんでしょうか?

ミネストローネ:さあな。ここの景色はオレらの心境の変化によって変わるらしい。とりあえず、進もうか。


───

先に進むと、道が3つに分かれていた。一番選びたくない道はどれ?

・<選択肢・上>暗い左側

・<選択肢・中>一人しか通れない中間

・<選択肢・下>鍾乳石がある右側

───


 二人はひたすら歩き続けた。しかし、長い道はどう見ても果てがない。

 だんだんと焦燥感を覚えはじめたミネストローネは、マッシュポテトに気づかれないように手のひらを出して確認する。幸い、あの泣き顔の痕は消えたまま、なんの異変もない。何かを思い出したように、彼は急に足を止めた。後ろにいたマッシュポテトは不注意で彼の肩にぶつかった。


マッシュポテト:ご、ごめん……

ミネストローネ:謝る時間があるなら、脱出方法を考えたほうがいいんじゃないのか?

マッシュポテト:これは……

ミネストローネ:オレたちはもう結構歩いたはずだ。なのに、全然進んでいる感じがしない。

マッシュポテト:……なるほど、わかりました……

ミネストローネ:これは……

マッシュポテト:多分、しょっちゅう道を迷う……からかな……それが、僕が一番怖がることだと悪の花は勝手に勘違いしたのではないでしょうか……

ミネストローネ:(本当に、こざかしい相手だな。)

ミネストローネ:道に迷うことに対する恐怖心か?ダニエル、攻撃ターゲットのない恐怖心で出来た迷宮を、どうやって抜け出せっていうんだ?

マッシュポテト:多分……出口という場所が、僕たちに必要なのでは?

ミネストローネ:(……出口?)


 ミネストローネは拳を握った。


ミネストローネ:(フッ、オレを無理矢理あの場所に直面させる……やつの狙いはこれか…)


 なにかを思い出したかのように、ミネストローネは沈黙した。


マッシュポテトミネストローネ、大丈夫ですか?

ミネストローネ:ああ、行こう。

 無言のまま、二人は歩き続けた。が、突然、目の前の景色が一変した。道の突き当りに階段が現れ、まるで果てなどないかのように、螺旋を描きながら下に続いている。


ストーリー3-4


 螺旋状の階段は渦のように暗闇の中に身を隠し、底のない深淵に繋がっていた。


マッシュポテト:あれ、道が変わりました。ここはどこですか?

ミネストローネ:さあな。ただ、特別な選択肢が出現した以上、それに従って降りてみようじゃないか。

マッシュポテト:ええ、そうしましょう。えっと、あの、ミネストローネ。なんなら今度は、僕が先に行きましょうか?

ミネストローネ:なんでだ?

マッシュポテト:分かりません。でも、目が覚めた後、なんだか急に怖くなくなって。それに、下に何があるのか分かりませんし。もしかしたら、あなたが怯えていた女性の幽霊がこの先にいるかもしれませんよ?

ミネストローネ:ああ、一理あるな。


 おとなしくマッシュポテトの言葉に従い、ミネストローネは「どうぞ」というポーズをしながらマッシュポテトに道を譲った。

 二人の探検隊は引き続き下へと出発した。が、いつまで経っても、段階は果てを見せてはくれない。


マッシュポテト:ふう……ここって……

ミネストローネ:疲れたか?戻るか?

マッシュポテト:いいえ、もうここまできた以上、戻るわけにはいきません。

ミネストローネ:本当に怖いものが待ち受けていたらどうする?

マッシュポテト:どうせ全部フェイクです。怖がることはありません。

ミネストローネ:……

マッシュポテト:あ、着きましたよ!


 そう話している間に角を一つ曲がると、長い下り道は急に終わりを告げた。目の前に広がる暗がりの平地の中に、ひどく錆びた赤い鉄の扉が立っている。空気には、血の匂いが充満している。


マッシュポテト:あれは?


 しかし、その言葉が終わらないうちに、突然扉から物凄い音がした。

 バァン!

 扉からたくさんのホコリが落ちた。扉の向こうに、何か巨大なモンスターがいるようだ。

 マッシュポテトがびっくりした。


マッシュポテト:……中には何ですか?また何かのホラー小説のシーンですか?


───

扉の向こうに何かがいる。ミネストローネはどう答えるか?

・<選択肢・上>ホラー小説の怪物?

・<選択肢・中>私も知らない。

・<選択肢・下>プライベートです。

───


ミネストローネ:とにかく嫌いなやつだ、見る価値がない。

マッシュポテト:そのものは存在する限り、それもまたあなたの恐怖の一部です。残酷ですが、ここから離れたいなら……立ち向かわなければなりませんよね。

ミネストローネ:……

マッシュポテト:一応見に行きましょう。怖ければ、目をつぶって僕の後ろに立ってください。


 ミネストローネはしばらくためらって、マッシュポテトの提案に賛成した。

 マッシュポテトが慎重にあの扉へ行く。

 近いところまで、彼はここは犯人を拘禁する籠と気づいた。赤い錆びは扉に付く、そして扉で小さい鉄柵がある。はっきりではないが、狭い鉄条網の向こうで頭を下げる人の姿が見える。

 マッシュポテトがあの人を観察する。手を足が全部縛られた、頭を下げ、長髪が顔を遮った。


マッシュポテト:人間ですか……?わあ!!!


 マッシュポテトがもっとあの姿をよく見ようとした時、いすに座るあの人が突然扉へ突っ掛かった。マッシュポテトはびっくりして後ろに戻り、そしてミネストローネにぶつかった。

 ミネストローネマッシュポテトの後ろから彼の目を遮った。


ミネストローネ:言っただろう?見る価値がないってな。


 マッシュポテトはまだ状況を把握できていなかったが、人が突入する声が耳に入った。次に巨大な爆発音が来た。

 マッシュポテトミネストローネから離れ、ある苦しい黒い影が猛火の中に叫んで灰になることを見るしか何もできなかった。


ストーリー3-6


 周りの全てが捻じ曲げられた。マッシュポテトはまるで竜巻に投げ出されたかのように、柔らかい地面に落ちた。


マッシュポテト:痛いな……ん?僕たち、幻覚から脱出しました?


 彼の手が地面を触った時に、急にぽかんとした。足元にたくさんの悪の花がいる。しかし、この時、悪の花たちが信じられないほどのスピードで枯れていく。

 悪の花たちが悲しく叫んで、一つの巨大な怨霊になる。何かを呼ぶように、苦しく岩窟で暴れまわる。岩窟までがたがたする。


ミネストローネ:行け、ここが危ない!!

マッシュポテト:待って、彼の胸を見て!


 あの泣いている怨霊の胸から、ある光が出た。


ミネストローネ:あれは何だ?

マッシュポテト:記載によると、人形の実の心臓が悪の花の種です。存在する時間が短いから、僕は……

ミネストローネ:今はそういうことを言う暇がない、とりあえずここから離れるぞ!


 マッシュポテトは惜しそうに悪の花を見て、少し躊躇した後、ミネストローネと一緒に外に飛び出した。

 怨霊が二人の考えに気づいた。そして二人を追いかけて攻撃する。怨霊の攻撃がミネストローネに当たった。ミネストローネマッシュポテトの背中を押し、すぐ怨霊に掴まれた。


ミネストローネ:行け!

マッシュポテト:待って!


 マッシュポテトが気づく前に、岩窟の外に押し出された。

 無数の岩が落ちて、入り口をせき止めた。

 彼は目の前の光景にショックを受け、頭が真っ白になった。

 バァン!

 数秒後、大きな音と黒い煙と共に、ある人影が出てきた。


ミネストローネ:先に行けと言っただろう?またアホのように止まった……行け!

マッシュポテト:よかった……


───


 紫の藤蔓玉がマッシュポテトの手元から落ち、土に速く根ざす。藤蔓の成長スピードが早い、やや間をおいて二人を中心に温室ができた。


マッシュポテト:ここで少し休みましょう。僕の計算が正しいなら、この吹雪は三日後に止むはずです。その時また道を探して、この雪原を離れましょう。


 ミネストローネは地面に座って、マッシュポテトの提案を黙認した。


マッシュポテト:疲れた……今回……本当に大変になりました。これ、食べませんか?


 マッシュポテトがカバンからチョコレートミネストローネに渡す。


ミネストローネ:ありがとう。

マッシュポテト:けっきょく最後は悪の花の種を貰えませんでしたね。残念残念。


 ミネストローネチョコレートを開ける手が止まった。


ミネストローネ:あの種がなければ、アンタはまたここで実験を続ける?


 マッシュポテトが手を振る。


マッシュポテト:諦めるしかないですね。悪の花の力が僕の想像より強いです。ところで、ミネストローネは次にどこへ行きますか?

ミネストローネ:正直、オレはずっとあちこちに流浪するだけで、計画などあまり考えてなかったけど。今回の件で、少しやりたいことが見つかったようだ。

マッシュポテト:それはよかったですね。もしやりたいことが済んで、次の目標がないとしたら。僕のところへ来てください。ミドガルに「エデン」という植物園があって、そこでお会いできます。いつでも歓迎しますよ。


───

マッシュポテトの誘いに対して、ミネストローネはどう答えるか?

・<選択肢・上>行く。

・<選択肢・中>その時はその時。

・<選択肢・下>興味ない。

───

マッシュポテト:あ、そうだ。最後の悪夢はともあれ、倒してよかったな。

ミネストローネ:……倒す?いいえ、ついでに処理しただけです。


ミネストローネ√宝箱


 マッシュポテトの顔が藤蔓に触れて、ようやく目を開けた。


マッシュポテト:嵐が……止んだ?

マッシュポテト:よかった!ミネストローネ、ここから出られますよ!……ミネストローネ


 温室を消し植物玉に戻した藤蔓をマッシュポテトは腕に巻きつけた。白い雪原の中、物音一つしなかった。ただマッシュポテトだけが残っていた。


一年後

ミドガル・エデン


カプチーノ:ダニエル先生!今回は何を言ってもついていきます!

マッシュポテト:お気持ちはありがたいですが、だめです。

カプチーノ:――ダニエル先生!もしまた迷子になったらどうするんですか!去年と同じように!

マッシュポテト:頼む――


 マッシュポテトは慌ててカプチーノの口を塞ぐ。


マッシュポテト:――そんなこと大声で言わないでください!


 カプチーノマッシュポテトから逃げ、おどけ顔をして、向きを変えて入り口へ走った。


カプチーノ:もし連れて行かないなら、もっと大声で言いますから!エデンだけでなく、外でも言いますから!人の多い町中でも言いふらすから!

マッシュポテト:まったく‥…そういう恥ずかしいことをなぜ彼に教えてたのか――戻ってきなさい!


 マッシュポテトが困りながら植物園の入口へ追う。


カプチーノ:やだ、連れて行かないならやだもん――いたっ!


 カプチーノがしゃべりながら入り口まで走ると気付かずに人にぶつかった。


マッシュポテト:何を言ってるんですか、まず冬休みの宿題が終わってからにしましょう。


 マッシュポテトは腹を立てて入り口まで追って行ったが、ある人物を見た瞬間にあっけにとられてしまった。


ミネストローネ:こんちは、ダニエル先生。

ミネストローネ:宿題はないが、一緒にいけるか?

マッシュポテト:……ミネストローネ?!


 運命の種はとっくに蒔かれていた。芽吹いた時には、また新たな物語が始まることになる。


マッシュポテト√宝箱


 3日間猛威をふるっていた大雪が、ようやく止んだ。温室玉の中で、マッシュポテトが藤蔓に寄りかかって休憩している、そばにいるミネストローネは目を覚ました。

 彼はいつもの笑顔をやめて、目をそばに寝ているマッシュポテトの方に向ける。

 マッシュポテトの首を触ろうとした瞬間、手を引いた。

 ミネストローネの手の中に泣き顔が浮かんだ。


???:最後の危機も回避したし、後顧の憂いを断つほうがいいだろ。


 ミネストローネはせせら笑いをしながら手の中の泣き顔を見つめる。


ミネストローネ:オレは警告したはずだが。もしオレを操りたいならば、躊躇なく殺すってな。

???:オレたちはすでに共生している……アンタはオレを殺さない……

ミネストローネ:試してみろ。


 泣き顔はちらちら光って、最後は悔しそうに消失した。

 ミネストローネは手を引いて、黙って立ち去った。結界のせとぎわに来て、手のひらを開いた。藤蔓は何かを感じたように、逃げ出せるように道を譲った。

 ミネストローネは突然、昨日のマッシュポテトとの会話を思い出した。


マッシュポテト:この数日は眠れないと思いましたが、まさかぐっすり眠るとはね。

ミネストローネ:アンタの温室玉の中にいるからだろ。

マッシュポテト:それはそうかもしれませんが。もう一つの理由は、閉じ込められるのは僕一人だけではないということです。僕、一人にされるのが一番怖いですからね、ははは。

マッシュポテト:な、なんですか?その顔は?笑わないでくださいよ。


 冷たい風が顔に吹き、ミネストローネは思い出から現実に引き戻された。

 カラスが静かに彼の肩に止まった。ミネストローネは握りしめた手を開くと、その手のひらには黒い種があった。カラスはそれをくわえてどこか遠くへ飛んでいった。


ミネストローネ:暖かいところにしか蔓延しない種……あの場所が一番うってつけだ。


 彼は襟を正し、躊躇なく白い雪原へ進んだ。そして一度も振り返ることはしなかった。



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参加して確認とか誤字修正とか表に書き込むぐらいしかできないけれど、作品に愛さえあればそれでいいですよね?

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ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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