神恩頌歌・ストーリー
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神恩頌歌
プロローグ
人間と堕神の闘争は長く続けられてきた。例え平和な時代であっても、度々戦争が起きる。
どちらが侵略する側で、どちらが侵略される側なのか、これは両者における永遠の命題である。光があれば自ずと闇もある。
蘇生初旬
グルイラオ イパリヤ大聖堂
精巧なレリーフは生き生きとしており、まるで束縛を振り切って壁から抜け出そうとしているよう。美麗な壁画は厳かな雰囲気を纏い、まるで訪れた人々に古い伝承を伝えているかのようだった。
本堂の両側に配置された天使像の手元で揺れている蝋燭の光が、聖堂の荘厳さを映していた。
マントを身に纏ったミステリアスな男性が、書棚の前で教典を読んでいた。突然響いた誰かの足音によって、この場の静けさは破られた。
ドーナツは男性の背後まで近づき、一礼をした。
ドーナツ:主教様。
主教:準備は出来たのかい?
教典を閉じた男性。彼のフード下から厳しい視線がドーナツに注がれた。
ドーナツ:神恩軍の準備は完了しております。いつでも出発できます。
主教:君たちこそ神恩理会が最も信頼している矛だ。
主教:聖女よ、君に問おう!もし主の光を汚す不届き者が存在すれば……
ドーナツ:神罰を下す。
主教:もし主に異を唱える愚民が存在すれば……
ドーナツ:教典で無知な者を導き、血で無礼な者を脅かす。
男性は満足そうに目を細めた。
主教:よし、聖女よ行くが良い。
主教:主の光を更なる彼方まで届けよ。
ドーナツ:ハッ!
ドーナツは低い声で返事をし、礼をして立ち去った。
ストーリー1-2
蘇生五日
グルイラオ辺境の隔離区
ドーナツは部隊の先頭に立ち、冷静な様子で副官の報告を待っていた。
実際の状況は出発前に仕入れた情報よりも、もっと厳しいものだった。堕神の襲撃が予想以上に大きかったのだ。
まだ予定の半分も行軍できていないにもかかわらず、激しい戦闘を数回も繰り返した。そのため、彼女は軍隊を休ませるという判断を下した。キャンプ地では、普通の兵士、料理御侍とその食霊たちがまばらに座っていた。
ドーナツ:あとどれぐらい掛かる?
副官:半日は必要かと。
副官:この地域は戦闘が多発したためか、地形が変わってしまった場所もありました。
副官:実際の地形と照らし合わせ、ルートを練り直す時間が必要です。
ドーナツ:死傷者は?
副官:先頭部隊が6人、両翼の部隊が12人、後続は……既に予備部隊から人員を補充しました。
───
……
・<選択肢・上>補給部隊は?
・<選択肢・中>皆の精神状態は?
・<選択肢・下>食霊に死傷者は?
───
副官は報告を続けた。
報告を聞いて、少女はしばらく考えを巡らせた。そして、冷静沈着に命令を下す。
ドーナツ:第一隊と第二隊の作戦目標をチェンジ。
ドーナツ:弓兵は前へ、通常の矢じりから殺傷力の強い物に……
ドーナツ:……
少女の命令は副官によって一糸乱れず下に伝えられた。
約三十分後、軍全体が先程の疲弊した空気から打って変わり、全員元気な様子でドーナツの前に並び、彼女の検閲を待っていた。
ドーナツ:よし。
高い場所に立っている少女は、真剣な表情で教典を掲げながら声を上げた。
ドーナツ:出発!
神恩軍は再び行軍を始めた。
途中でまた数度戦闘が起きたが、ドーナツの指示のもと全て難なく対応する事ができた。
空が暗くなった頃、彼らは遂に目的地に到着した。しかし町の様子は予想に反し荒れ果てた廃墟になっておらず、そこにはまだ町の面影は残っていた。
ストーリー1-4
蘇生五日 夜
グルイラオ辺境の隔離区 セブンイント
神恩軍が町に近づくなり、何人ものシスターに足止めされた。リーダー格らしき食霊は、背中に霊体を背負っていた。
カヌレ:あの、どちら様でしょうか?
少女は穏やかな視線を神恩軍に送っているが、背後の霊体は杖を持ち上げて防御の体制を取っていた。
ドーナツは一歩前に出て、紋章を見せた。
ドーナツ:グルイラオイパリヤ大聖堂に所属する神恩理会、
ドーナツ:神恩軍軍団長、ドーナツと申します。
ドーナツの言葉を聞き、相手は明らかにホッとした様子を見せた。
少女と彼女の霊体は共に祈りを捧げる動きを取った。
カヌレ:失礼します。
カヌレ:では中に案内いたします、町の外は危険です。
神恩軍の案内をシスターたちに任せ、ドーナツはカヌレと共に町を歩きながら彼女から状況を確認していた。
ドーナツ:つまり、カヌレさんたちが偶然ここを通った際、今回の災いが起きたと。
ドーナツ:そしてここに残り、難民の受け入れと保護活動をしていたと?
───
……
・<選択肢・上>神は人を愛しています、慈しむのは当然の事。
・<選択肢・中>為すべき事を為しただけです。
・<選択肢・下>主が慈しむよう教えてくださいました。
───
ドーナツ:難民を別の場所に移動させる事を考えなかったのですか?
カヌレ:難民が多いため、隊列は長くなってしまいます、わたくし達数名の食霊だけでは対応できません。
カヌレ:そして、この辺にはまだ生きている人がいるかもしれません。出来る限り彼らを受け入れ、外に救援要請をするのが精一杯でした。
そう言っていたカヌレは、ドーナツに感謝の笑顔を浮かべた。
カヌレ:幸い、やっと貴方達が来てくださいました。
ドーナツは黙り、現状を打破する方法を考えた。
ドーナツ:では、これからの事はわたし達に任せてください。
ドーナツ:我が神恩軍が難民の避難に協力します、そして受け入れ作業も同時に行います。
カヌレ:心から感謝申し上げます。
カヌレ:貴方のお心遣いは決して忘れません。
ドーナツ:その必要はありません。わたし達の本来の目的こそ堕神を駆逐し、教義を伝え、民を助ける事ですから。
カヌレは頷き、再び祈りを始めた。
カヌレ:慈愛なる神よ、目の前の美しい少女を遣わせ、わたくし達を助けてくださった事に感謝を申し上げます。
ドーナツの顔は少し赤くなったが、すぐに落ち着いた。
ドーナツ:任せてくださいと言ったが、まだあなたたちの力が必要です。
ドーナツ:何と言っても我々に比べて、あなた達の方がこの辺の状況を把握しているので。
カヌレ:勿論です、わたくし達も精一杯協力させて頂きます。
ドーナツ:では、宜しくお願いします。
少しして、ドーナツは難民の事を思い出し補足した。
ドーナツ:難民リストと身元情報も提供してくれませんか?
ドーナツ:彼らのこれからの任務もこちらが用意します。
カヌレ:えっ?
ドーナツの予想に反し、この言葉を聞いたカヌレは驚いた顔をしていた。
ストーリー1-6
蘇生五日 夜
グルイラオ辺境の隔離区 セブンイント
カヌレの顔を見て、ドーナツは眉をひそめた。
ドーナツ:何か問題ありまして?
カヌレ:いいえ……あのドーナツさん、どうして難民に任務を与えるのでしょうか?
ドーナツ:は?
ドーナツ:もしかしてカヌレさんは全ての仕事をこなすつもりですか?
カヌレ:神は人を愛し、人を憐れむ。彼らは既にたくさん苦しみに耐えてきました。
カヌレ:このような時こそ、わたくし達が全てをしてあげるべきではありませんか?
ドーナツ:それは……
ドーナツは言いかけた言葉を飲み込んだ、彼女はこのような人をたくさん見てきた。
理想主義者の中に、精神的信仰に基づいて教会を建てる者は少なくはない。でもカヌレのように、明らかに多くの戦いを経験した食霊がそうである事に、ドーナツは驚いていた。
しばらく躊躇っていたが、ドーナツはあの皮肉な表現を口にする事にした。
ドーナツ:あなたは……聖母ですか?
カヌレは一瞬固まった、神聖な名詞だが何故か不快に感じたのだ。深く考えず、彼女は真面目に答えた。
カヌレ:この世にはたくさんの苦しみがあります。神がわたくし達に強い能力を与えたのなら、わたくし達がそれ相応の責任を担うのは当然です。それこそ神の導きでございます。
ドーナツ:それはあなたの独りよがりな考え方です、シスター様。
ドーナツ:主であっても、「何もしない人」が何度も祝福を賜る事はありません。
ドーナツ:わたし達は彼らを助けられる、彼らを導ける。だけど自分の運命は自分で勝ち取るしかありません、決して彼らの代わりに何かする事はできないのです。
カヌレ:可哀そうな人々に対してそれは酷ではありませんか?
───
……
・<選択肢・上>シスター様は「酷」という言葉の意味を誤解しているかと。
・<選択肢・中>シスター様がそうお思いなら。
・<選択肢・下>十分に寛容だと思いますが。
───
二人は長い間論争していたが、遂にドーナツの我慢が限界に達した。
ドーナツ:シスター様が心苦しいなら、全てをわたしに任せて構いません。
カヌレ:……
カヌレ:やめてください。
ドーナツ:何事も代わりに出来るのなら、主はとっくに災厄を除いておられる、我々の力など必要ないでしょう?
カヌレ:……
カヌレ:いけません……
カヌレはまだ自分の意見を主張していた。ドーナツは冷たい声で彼女に向かって言い放った。
ドーナツ:わたしがやります。
そう言って、彼女は右手を上げ何かのサインを送った。突然、軍服を着た二人の兵士が現れた。
ドーナツ:シスター様、今のあなたには他に選択肢はありません。
ドーナツの話が終わると、二人の兵士は護衛のようにカヌレに近づいた。
ドーナツ:もう遅いので、戻ってゆっくり休んでください。これからセブンイントの治安維持は我が神恩軍が引き受けます。
カヌレ:君は……
ドーナツ:堕神との戦いは遊びじゃありませんよ、シスター様。
ドーナツ:状況にそぐわない善意は全ての人を救えない上、さらに事態を悪化させます。
ストーリー2-2
蘇生五日 夜
グルイラオ辺境の隔離区 セブンイント
副官:本当にこれで宜しいのでしょうか?
ドーナツ:何か問題でも?
副官:少し乱暴すぎやしませんか……
ドーナツ:あのシスター様の考え方を聞いたでしょう。
ドーナツ:本来の計画通りに進めると、わたし達の任務は彼女と彼女が率いるシスター団と協力し、難民らを隔離区から移動させ、隔離区周囲の堕神をある程度討伐する事。
ドーナツ:状況が許すなら、隔離区外に新たな拠点を建て、まだ隔離区から避難出来ていない難民を保護しつつ、隔離区の奪還を目指す。
ドーナツ:それなのに彼女は……彼女は……
ここまで言って、ドーナツは痛くなった頭をさすった。
───
はぁ……
・<選択肢・上>貴方様のせいではないです……
・<選択肢・中>何と言えば宜しいのか……
・<選択肢・下>想定外の事は起きるものです……
───
ドーナツ:あなたは知っているはずだ、神恩軍の責務とは。
副官:不潔を駆逐し、民衆を救う事。
ドーナツ:堕神との戦いは決して容易い事ではない。世間はこれを食霊の責任であると思い込んでいる、人間は座って待っていればいいと。
ドーナツ:我々はこれは間違った考えだと知っているが、この考え方は既に人間の心に深く根を下ろしてしまっている……救いはただ単に相手に手を差し伸べるだけではない……
副官:相手に自分を変える方法を教えるものですね。
ドーナツ:少し準備しよう、明日は生存者を招集する。
蘇生六日 昼
セブンイント 中央広場
ドーナツは広場でセブンイント軍事化管理条例を読み上げ、健康な若い男性難民を徴集し、神恩軍と食霊と共に外で任務を行うよう要求した。
女性、老人、一部の負傷者は拠点の建設及び補給するよう求めた。神恩軍からは相当な物質が支給され、同時に撤退チームを組織し難民を隔離区から連れ出す手筈も進められる。
予想通り、この条例は神恩軍を除く全員の不満を引き起こした。
ふざけるな!俺達は難民だ、何故軍に入らなければならない?!
なんだと?!堕神と戦わせる?!これはお前ら食霊の責任じゃねーか?!一般人に出来る訳ないだろう?!
神恩理会は愛と善意を伝える組織じゃないのか?まさか私たちを前線に行かせるなんて?!これは暴政だ!
……
このような抗議の声、罵りの声は一瞬にして広場に広がった。
ドーナツ:静かにしてください!
ドーナツの一喝は全ての声を覆い、広場は妙な静寂に包まれた。
そして、少女は悪魔のように、冷たい声で言い放った。
ドーナツ:主は人に愛を与える、それに対し、人は自分の両手を差し出し受け取らねばならぬ。
ストーリー2-4
蘇生十日 昼
セブンイント付近の山地
難民と兵士で混合編成されたいくつかの小隊が山の斜面に潜んでいた。彼らは堕神の視線が届かない場所に集まり、自分らが得た情報を交換していた。
ここの地形はあまり変わっていなかった、撤退する時はここの道にした方がいい……
周辺地域を全て調べた。異化堕神は3体、普通堕神は10体程いたが、そいつらの行動ルートには一定の法則があった……
再度マークした地点を確認しましょう、先程言っていた枯れ木の森の様子も。問題がなければそこに拠点に建て、補給部隊のルートの一つとして……
……
蘇生十日 昼
セブンイント北東
難民と兵士によって混合編成された陽動部隊は戦場に現れた。彼らと堕神との間には食霊二人がいた。
部隊の最前列、ドーナツの副官は指示を飛ばしながら、走り回って全員の応援をしていた。
副官:緊張するな!心配するな!訓練通りやればいい!出来るよ!
───
……
・<選択肢・上>リラックス、リラックス!
・<選択肢・中>深呼吸、深呼吸!
・<選択肢・下>落ち着け、落ち着け!
───
副官:一!二!三!撃て!
副官の命令と共に、同時に数え切れない矢と矛が堕神を襲った。
衝撃を受けた堕神に傷を付けられなかったが、動きを止める事は出来た。
神恩軍の食霊二人はこのチャンスを逃すまいと、突撃し堕神を倒した。
そして彼らの背後から大きな歓声が爆発した。
蘇生十日
グルイラオ辺境の隔離区 セブンイント
ドーナツとカヌレは屋上で忙しなく働く人々を見ていた、手元には大量の報告書が次々と届いていた。
ドーナツは数ページの報告書をカヌレに渡し、淡々と語った。
ドーナツ:まだ何か言いたい事はありますか?シスター様。
カヌレは黙って報告書を読み、眉をひそめて何かを考え込んでいるようだった。
しばらくしてから、彼女はようやく口を開いた。
カヌレ:まだ理解できません。
カヌレ:教典により、神は迷える仔羊を導くために、わたくし達を差し遣わしたと……
ドーナツ:それは……
ドーナツはカヌレの話を中断し、短剣を抜き東北を指した。目を細め、視線はまるで空間を超えて戦場に来たようだった。
ドーナツ:この土地でここまで生き残った人間は、
ドーナツ:決して仔羊などではない。
ストーリー2-6
蘇生十六日
グルイラオ辺境の隔離区 セブンイント
町を囲む外壁は全て一新され、様々な防衛工事が施されていた。
町内部の治安も整然としていた。新たな撤退チームも準備が出来ていた、護衛するのは神恩軍に所属する食霊四人と、難民で結成された二つの部隊だった。
全ては神恩軍が来たばかりの頃とは変わっていた。
人々がドーナツとカヌレを見る目も明らかに変化していた、畏敬の念が込められていた。
カヌレは全てを観察してから、躊躇いながらもドーナツに聞いた。
カヌレ:神恩理会はずっとこのように人を助けてきたのですか?
ドーナツ:神恩理会の教義は、同じような組織と比べて大した違いはありません。
ドーナツ:ただわたしの率いる神恩軍は少々強引なだけです。
カヌレ:ですが……やはりどこか間違っていると思います。
───
……
・<選択肢・上>どこですか?
・<選択肢・中>詳細を伺おう。
・<選択肢・下>言ってみてください。
───
カヌレ:このように暴力で強制管理した場合、結果が良くても、なんだか……
カヌレ:やはり神の使者は優しく、人を慈しまなければなりません。
カヌレ:今人々はわたくし達に対して、畏敬の気持ちしか持たないではありませんか?
ドーナツ:畏敬は悪い事か?
カヌレ:信仰の中に畏敬なんてあってはならない……
ドーナツ:あなたは間違っている、シスター様。
ドーナツ:畏敬を持ってこそ、彼らがわたし達の話を聞いてくれる、そして自主的に伝えようとしている事について考える。
ドーナツ:ただ布教したいがために布教するだけでは、与えられた恩恵のためだけに信教するだけ、それは本物の信仰ではない。
ドーナツ:それに……
ドーナツは人差し指を唇に当てて、まばたきをし、可愛らしい笑顔を浮かべた。
ドーナツ:本当に畏敬しかないと思う?
ドーナツはチラシを配っている兵士を指して、カヌレに見るよう勧めた。
カヌレは戸惑いながらチラシを受け取り、それを読んだ。
カヌレ:蘇生十七日の夜、神恩理会主催のパーティーがセブンイントのヴァンハンセン聖堂にて行われます。是非奮ってご参加ください。
ドーナツ√宝箱
蘇生十七日 夜
グルイラオ辺境の隔離区 セブンイント
まだセブンイントに滞在している難民はヴァンハンセン聖堂の前に集まってきた。そして神恩軍兵士の導きのもと会場に入った。
災難のせいで荒れた聖堂は、兵士とシスターたちの簡単な掃除のおかげで、元の様子には戻らなかったが、人をリラックスさせるような姿には戻っていた。
ドーナツも別の新しい服に着替えていた。小さな体はふんわりとしたベールに包まれ、綺麗な装飾によって少女のしとやかさが際立った。今の様子は普段の厳しい姿と比べ、まるで別人のようだった。
ドーナツ(スキン):こんばんは、シスター様。
ドーナツは可愛い笑顔を見せ、いたずらにスカートを持ち上げお辞儀をした。
カヌレ:……
カヌレ:本当にびっくりしました……ドーナツさん。
ドーナツ:そんな失礼な顔、やめていただきたい。
ドーナツはカヌレのリアクションを意外には思わなかった。逆に彼女は自分がカヌレにどう見られていたのかをよく理解していた。
ドーナツ:(でも、これが本当のわたしであると誰が知っている?)
ドーナツは怒ったふりをしてカヌレに向かって言った。
ドーナツ:神恩軍軍団長の前に、わたしは一人の女の子だよ!
カヌレ:……
カヌレ:申し訳ございません。
会話を終え、二人は聖堂の広間に来ていた。カヌレの疑いの視線を浴びたまま、ドーナツは最初の冷たい態度から一転、優しく親しみやすい姿で司会を務めた。
ドーナツは賞賛の言葉で、会場にいる一人一人を励まし、敬虔な姿で、会場全員に祝福を与えた。まるでカヌレが憧れている天使のようだった。
ドーナツに対する人々の態度の変化を感じながら、カヌレはもう一度驚いた。このような方法で人と人の距離を縮めることができると思っていなかったのだ。
少なくとも、カヌレにはこのような事は出来ない。
パーティーが終わった後、カヌレはまだあの話題を続けるべきか悩んだが、またドーナツに話し掛けた。
カヌレ:少し貴方の話の意味が分かったと思います。
ドーナツは笑みに似た表情を浮かべる。
ドーナツ:信仰を導くことはきっと、ただ祈るだけではないですよ。
カヌレ√宝箱
蘇生十七日 夜
グルイラオ辺境の隔離区 セブンイント
まだセブンイントに滞在している難民はヴァンハンセン聖堂の前に集まってきた。そして神恩軍兵士の導きのもと会場に入った。
災厄のせいで荒れた聖堂は元の様子には戻らなかったが、兵士とシスターたちの簡単な掃除のおかげで、人をリラックスさせるような姿には戻っていた。
カヌレはドーナツから貰った台本を持ちながら、頭を悩ませていた。
カヌレ:これはどういう意味ですか?ドーナツさん。
ドーナツ:シスターのやるべき事を手伝って頂きたいだけです。
ドーナツは軽く言って、台本を手に取りパラパラとめくった。
ドーナツ:パーティーを司会して、シスターの立場で来場者全員に祝福を与え、できる限り友好な姿を見せ、そして……
ドーナツの話は止まり、笑みに似た表情で補足した。
ドーナツ:シスター団と神恩理会が同盟関係を結ぶ事を宣言する。
カヌレ:それに何か意味はあるのですか?
ドーナツ:前に言ったように、神恩理会が求めているものは人の畏敬だけではありません、主に対する信仰も必要です。
ドーナツ:簡単に言えば、わたし達にとって教義の布教も必要な事です。
カヌレ:ではわたくしにこんな事をさせる意味は?
ドーナツ:我々神恩軍より、人々は明らかにシスター団の前にいる時の方が気楽だ。
カヌレ:(貴方方が強引すぎるせいでしょうに……)
ドーナツ:人々を導くためには、剣と教典両方必要だ。あなたはきっとそんな事を勉強しなかったと思います。
カヌレ:……
カヌレ:神への信仰は、自発的に望むものだと思います。
ドーナツ:もしあなたが急に食べ物を乞食の前に捨てても、餓死寸前になっている場合以外、きっと口にするのを躊躇するでしょう。
カヌレの疑いの目を見て、ドーナツは残念そうにため息をついた。
ドーナツ:すみません、この比喩は少し不適切でした。とにかく、わたしが言いたいのは……
ドーナツ:我々が善意を持っていても、表現方法が適切でないなら、相手は受け取りません。
ドーナツ:信仰を導くことはきっと、ただ祈るだけではないですよ。
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