夜明けの灯火・ストーリー
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夜明けの灯火
プロローグ
ある日
機関城
冰粉:先生、これは一体……
回鍋肉:私の失策です。
冰粉:直言お許しください、これは失策の問題ではないかと。
冰粉は部屋いっぱいの飾り提灯を見て、思わず頭を抱えた。
冰粉:どうしてこんなに作ったんですか?
冰粉:城主?
回鍋肉:ええ……はぁ、話せば長くなります。
(明転)
一ヶ月前ーー
辣子鶏:これはなんだ?醜い、醜すぎる!俺の機関城にこんな醜い物を置かれてたまるか!
八宝飯:チキン野郎、審美眼ってヤツがないのか?醜いってなんだ、この飾り提灯は人参様がわざわざオイラに持って来させた地府の特産品だぞ!
辣子鶏:地府の特産品がなんだってんだ?あの木偶に何がわかるんだ!俺が醜いつったら醜い!
八宝飯:あんたなぁ……ははーん、妬んでんだろ?まあ、あんたら機関城には機械とバカ以外、なんも特産品がないからな〜
辣子鶏:誰がそのボロ提灯を妬んだりするかっ!俺たち機関城の特産品は数えても数えきれねぇほどわるわ!
辣子鶏:回鍋肉!俺も飾り提灯が欲しい、あのボロよりも何千何万倍も綺麗な奴!
(明転)
冰粉:……
回鍋肉:設計図を見て気に入ったみたいだったので、作りました。
回鍋肉:まさか、見習いたちが張り切ってしまい、たった一ヶ月でこんなに多く作るとは……とにかく、私の誤算です。
冰粉:それは……はぁ、こんなに多くの提灯、機関城全員に一つずつ配ったとしても余ってしまいますね、もったいない。
回鍋肉:外で売るのはどうでしょう?
冰粉:良い方法ですね。あの者が来てから、機関城の修繕費だけで収入に匹敵する程になってしまいました……
回鍋肉:では、もういくつか作りましょう。
冰粉:いえもう結構ですよ、まずこれらを処理してからにしましょう……しかし、書院の方で試験を行う予定なので、某は手が離せません……
回鍋肉:提灯を売る人選は、二人ほど候補がございます。
冰粉:詳しくお聞かせください。
冰粉:!
回鍋肉:騒ぎを起こしている元凶二人に、身をもって償って頂きましょう。
冰粉:お待ちを……あの二人の性格上、地上に降り立てば、また余計な面倒事を引き起こして、暴れるのではないでしょうか。
回鍋肉:とは言え、あの二人の荒い気性さえ正す事が出来れば、あちこち爆発されたり、家を壊されたりする事はなくなりましょう。機関城の財政もここまで火の車ではなくなる筈です。
冰粉:それは……
回鍋肉:問題を解決するには、やはり根本から手を付けなければなりません。
分厚い請求書が薄くなっていく様子を頭に浮かべたのか、冰粉は笑顔を深めた。
冰粉:ごもっともです!
回鍋肉:では二人に声を掛けて来ます。
冰粉:待ってください、某が行きましょう。二人は某の大千生と仲が良いんですよ。
回鍋肉:では、お願い致します。
ストーリー1-2
昼
機関城の街道
金華ハム:つまり、俺が売った提灯がこのバカよりも多ければ、帰って来たら辣子鶏と戦って良いって事か?
マオシュエワン:バカって言うな!
金華ハム:チッ、口を挟むな、先生に話を聞いてんだ。
冰粉:ええ、城主と手合わせさせてあげます……
冰粉:(彼の気が向いたらですけど……)
金華ハム:ククッ!何が何でも勝たねぇとな!マオシュエワン、お先だ!
マオシュエワン:は?!抜け駆けか!!!先生、これは反則だろ?!このハム野郎!待て!!
元気満々な二人の後ろ姿を見送って、冰粉は思わずため息をついた。
冰粉:はぁ……何もしでかさないと良いのですが……
もうすぐ年末、市場は人で埋め尽くされていてとても賑やかだった。美食や装飾、提灯を売っている露店も数多くあった。二人はそれを横目で見て、人ごみでしばらく探してから、ようやく冰粉が予約した二つの露店を見つけた。
金華ハム:……奥の方に行け。
マオシュエワン:は?なんでだ?俺は外側が良い、外の方が広いからな!
金華ハム:広くてなんの役に立つんだ?そんなに提灯持ってねぇだろ、早く奥行け!
マオシュエワン:うわーー!
金華ハムは九割近くの力を使ってマオシュエワンを押した。マオシュエワンは躓いて、無意識に目の前にあった木の机を掴んだ。その後必死で机にしがみつき、歯を食いしばって金華ハムと根比べを始めた。
マオシュエワン:提灯の数は同じだろ、あんたもこんな広い場所は必要ないだろ……
金華ハム:お前に何がわかるんだ!この野郎、押しても動かねぇ牛かよ……
マオシュエワン:あんた、これ以上力を入れたら、机が壊れてしまうだろうが!
―――
……
・壊れてもお前に譲らねぇよ!
・お前が先に手を放せばいいだろ!
・知らねぇよ!俺は……広い方が欲しいんだーー!
―――
麻婆豆腐:ちょっと!そこの二人、人の店で何してるの?!!
金華ハム:あ?
マオシュエワン:は?
二人は振り返って割って入って来た女性を見た、驚いてはいたが、どちらも机から手を放す気配はなかった。
金華ハム:人の店?
マオシュエワン:誰の店だ?
パキッーー
麻婆豆腐:あーー!あたしの谷地佛(やつだも)の机!早く手を放せ!!!
ストーリー1-4
麻婆豆腐:あーー!あたしの谷地佛(やつだも)の机!早く手を放せ!!!
ドンッーー!バンッーー!
大きな音の後、金華ハムとマオシュエワンの頭にはコブができ、叫びながら地面にうずくまった。
マオシュエワン:いっーー痛ってぇ!何すんだ?!
金華ハム:ふざけるな!喧嘩売ってんのか?!!
麻婆豆腐:喧嘩?あたしの机を弁償してくれたら買ってあげるよ!!
金華ハム:……
マオシュエワン:……
金華ハム:おいっ、金はあるか?
マオシュエワン:……金持ってるように見えんのか?
麻婆豆腐:何?お金無いの?
そこまで聞いて、麻婆豆腐は威嚇するように手首を回した。まるで次の瞬間にも二人の頭にはまた大きなコブが出来るかのようだった。
金華ハム:つ、つけといてくれ!金を稼いだらすぐに返す!
マオシュエワン:そうだ!金が出来たらすぐに返すぜ!
―――
……
・わかった、あたしを騙す度胸なんてないようだし!
・まず借用書を書いて貰おう!
・わかった、そうするしかないみたいね。
―――
紆余曲折を経て、二人はようやく露店の場所を分け、各自飾り提灯を配置し始めた。
マオシュエワン:よしっ!もう良いだろう、売るぜ!
子ども:わあーー
マオシュエワンが俯くと、露店の前に小さな男の子が立っていた。その子は提灯を見て目をキラキラとさせていた。
マオシュエワン:よぉ坊主、この提灯が気に入ったのか?
子ども:好き!でも……高いから……買うお金がないよ……
マオシュエワン:あ?……大丈夫だ!気に入ったんなら持ってけ!お兄さんの奢りだ!
子ども:だ、だけど……お母ちゃんが、いくら貧乏でも、お父ちゃんみたいにタダで人様から物を貰っちゃダメって……
マオシュエワン:ん?父ちゃんみたいに?あーじゃあこれならどうだ?俺が提灯をあんたにあげるから、あんたは提灯を持って俺のために宣伝してくれないか?
子ども:宣伝?
マオシュエワン:ああ、みんなに提灯を買いに来て貰うんだ!それなら俺の手伝いをしてくれたって事だから、タダで貰った事にはならねぇだろ?
子ども:わかった!頑張ってお兄ちゃんのために宣伝する!!
マオシュエワンはヘラヘラと笑いながら、提灯を持って走って行く男の子に向かって手を振った。金華ハムその様子を見て鼻で笑った。
金華ハム:あのバカ、金が稼げないだけじゃなく、タダであげるなんてな!これで俺に勝とうとしてるのか?アホらしい……
???:おいっ!まだ金を払ってないだろ!誰か!泥棒だ!
近くの露店から叫び声が聞こえて来た、金華ハムは「泥棒」という言葉を聞いて、目を光らせた。
金華ハム:泥棒はどこだ?!待ちやがれ!!!
ストーリー1-6
金華ハム:自分のもんはちゃんと見ておけ、もう盗まれんなよ!
???:もちろんです……本当にありがとうございます……
盗品を主に返した後、金華ハムは自分の露店に戻った。
金華ハム:盗まれるなんて、マヌケな……あれ?
金華ハム:……この野郎!俺の提灯を盗んだのは誰だ?!早く出しやがれ!!
麻婆豆腐:……
マオシュエワン:坊主、提灯が欲しいのか?金がない?いいぜ、あげる!
麻婆豆腐:…………
金華ハム:おいっ!なんで俺の提灯を買わないんだ?!ああ?!逃げんな?!!
パンッーー!
麻婆豆腐:もう見てられない、二人とも早くこっちに来て!
金華ハム:?
マオシュエワン:え?呼んだ?
―――
……
・アンタらの事よ!
・うるさい、早く来なさい!
・アンタら以外いないでしょう……
―――
麻婆豆腐:そんな調子でいつになったらあたしの机を弁償出来るんだい?!
マオシュエワン:えっと……ぜっ、絶対に踏み倒したりしねぇって!
麻婆豆腐:じゃあどうして提灯をタダであげてたの?!お金を稼ぐ気あるの?どこ見てんのよ、アンタの事を言ってんの!!アンタみたいな商売人見た事ないわよ?!
マオシュエワン:……
麻婆豆腐:あとアンタ!!なんだその態度、そんなに怖い顔して?!!!誰も怖くて買い物に来ないでしょう?!!!
マオシュエワン:怖いのはあんたの方だ……
金華ハム:そうだ!俺様は辣子鶏の奴と戦いたいだけだ、金なんてどうでも良い……
ドンッーー!バンッーー!
音とともに横にあった石版が割れた。口答えしようとしていた二人は、麻婆豆腐の優しそうに見えるが奥に嵐が潜んでいる目を見て、口を噤み大人しく彼女の前に膝をついた。
麻婆豆腐:あーイライラする。今の子はなんでこうも役に立たないの……
麻婆豆腐:アンタらこのままじゃ、お金どころか、人様に迷惑を掛けてしまうかもしれないよ!
二人は悔しそうに、そして申し訳なさそうに頭を下げた。麻婆豆腐も彼らの頭の上にある大きくて丸いコブを見てため息をついた。
麻婆豆腐:わかった、こうしよう。このあたしが自ら商売のコツを教えてあげるよ!
ストーリー2-2
マオシュエワン:師匠、本当にこれでいけるのか?
金華ハム:師匠?
麻婆豆腐:いけるかどうか、試してみればわかるでしょう?
マオシュエワン:はい!師匠の言う通りにします!
―――
……
・少し自分の意見を持たねぇか!
・お前って奴は……
・どの口で「師匠」って呼んでんだ!
―――
ジャンジャンーー!
マオシュエワン:さあさあさあ!よってらっしゃい、みてらっしゃい!これは正真正銘の火の輪だ!信じられない奴は触ってみると良いぜ!
マオシュエワン:これから、俺の傍にいるこの兄ちゃんが、三回とんぼ返りをしてから火の輪をくぐって見せるぜ!
金華ハム:……俺たちは提灯を売るんだろ?
マオシュエワン:何ボーッとしてるんだ?早くくぐれ!
金華ハム:はぁ……
ヒュンッーー!
マオシュエワン:ジャジャーン!どうだ?傷一つついてないだろ!
町人!:よっ!良い身のこなしだ!素晴らしいっ!
自分の足元に通行人の投げ銭が集まって来るのを見て、金華ハムは両目から火が出そうになっていた。
金華ハム:ふざけるな!俺たちは大道芸人じゃねぇんだ!
マオシュエワン:わあああ!お金がいっぱいだ!ハム野郎、もっとくぐれ!
金華ハム:お前!
町人B:もう一回!もう一回!
金華ハム:フンッ、そんなに見たいなら……目をかっぴらいて見ておけ!
はやし立てられた事で、金華ハムは姿勢を変えて何度もマオシュエワンの火の輪をくぐった。彼の素晴らしい大道芸を見るために、見物人は更に集まった。
マオシュエワン:こっちを見てくれ!この火の輪に見覚えはないか?
町人A:おや?そう言われると確かに……
マオシュエワン:ほら、火の輪を内側に向けて捻ると……ジャンッ!提灯に大変身!
町人B:おお!これは新しい!
マオシュエワン:これはうちの先生が作った特製機械提灯だぜ!色んな形に変える事が出来るし、防火も出来る!これさえあれば、紙の提灯が燃えるのを防ぐ事が出来るぜ!他では絶対に買えないぞ!
金華ハム:そうだ!この機を逃したらもう買えねぇぜ!
町人A:これは面白い!一つくれ!
町人B:私にも一つくれ!
提灯の露店はすぐに客で囲まれた。麻婆豆腐は火の輪の炎で炙られ汗だくになっている金華ハムと、彼の傍で客寄せをし続けているマオシュエワンを見て、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
麻婆豆腐:悪くない。二人が力を合わせれば、一人の力を遥かに上回る!これなら、あたしの新しい机もどうにかなりそうだわ!
町人C:提灯くれ!
マオシュエワン:ほれっ!
張三:あの、すみません……
マオシュエワン:ちょっと待ってくれ、あの客にお釣りを渡してから!
張三:私、私は提灯を買いに来た訳では……
マオシュエワン:?貴方は……
張三:私は、お金を返しに来ました……
ストーリー2-4
張三:私は、お金を返しに来ました……
金華ハム:金?
張三:実は……これは前に私が提灯を盗んで引き換えたお金です……
その人が持っている皺くちゃになっているお金を見て、金華ハムはハッとしたーー
金華ハム:この野郎!俺の提灯を盗んだのはお前か!!!
子ども:父ちゃん……
突然割って入って来た男の子の怯えた声で、その場は一瞬落ち着いた。
マオシュエワン:あれ?あんたはちょっと前に来てた……
張三:宝っ!
子ども:お兄ちゃんたち、ごめんなさい。うちのお父ちゃんが、お兄ちゃんたちの物を盗んだんだ……
張三:宝……もっ、申し訳ございませんでした!盗むべきではなかったです!しかし、妻の墓を作るため家はもう一銭も残っておらず、宝のために、私は……
子ども:お父ちゃん、僕は大丈夫だよ……
張三:……まさか私が貴方たちから盗んだ提灯を、貴方たちはタダで宝にあげていたなんて……私は、宝の前でこんな事をするなんて……本当に死んだ宝のお母ちゃんに会う顔がない!
子ども:お父ちゃん泣かないで……お父ちゃんは改心出来るよ……
張三:宝、ごめんよ……お父ちゃんが恥をかかせてしまった……これから改心するから……
張三:このお金を返します……どうか、許してください……
二人はその話を聞いて、何か思う事があったのか、いつまでもそれを受け取ろうとしなかった。
ボロボロの服を着ている張三を見てから、痩せ細っている男の子を見たら、二人はもう怒る気にはなれなかった。
マオシュエワン:家族のために盗んでいたのか……
金華ハム:可哀想だぜ……なら、金はあげてしまうか。
麻婆豆腐:ダメよ!
金華ハム:!お前にはひとの心がないのか?!それに、これは俺らの金だ、俺らの勝手だろ!
麻婆豆腐:……あたしが言いたかったのは、そのお金をそのまま渡してはいけないっていう事。自分の力で稼いだお金じゃないなら、彼は安心して受け取れないでしょう。
マオシュエワン:なるほど!流石師匠だぜ!
金華ハムが麻婆豆腐の話を反芻していた時、隣の露店からそろばんを鳴らす音が聞こえて来た。それを聞いた彼は閃いた。
金華ハム:おいっ!算術は出来るか?
張三:えっ?えっと……出来ます……
金華ハム:なら俺たちのために計算してくれ。提灯全部売れたら、その金は賃金としてお前にやるよ。
張三:!
金華ハム:お前も息子に良い所を見せてぇだろ?
張三は興奮した様子で金華ハムを見た。目には信じられない気持ちと、喜びと感謝が溢れていた。
張三:わ、私を信じてくださるのですかっ?!
―――
……
・うるせぇ!早く働け!
・早くしろ!もう客来てるだろ!
・ボーッとしてんじゃねぇよ、お釣りを客に渡してやれ。
―――
張三:ええ!はい!ただいま!
マオシュエワン:よぉーー金華ハム、そんな思いやりがあるとはなぁ。
金華ハム:フンッ、手が回らねぇから手伝いが欲しかっただけだ。
マオシュエワン:ははははは、なんだハム野郎、もしかして照れてんのか?
金華ハム:黙れ!俺は照れてなんてねぇ!!
マオシュエワン:顔が真っ赤になってんのにか?あっーー!おいっ顔を殴んな?!!!
ストーリー2-6
マオシュエワン:金華ハム!もうとんぼ返りはしなくていいぜ!提灯全部売り切れたぜ!
金華ハム:フゥ……ま、待て、少し眩暈が……
マオシュエワン:見ろ!机の弁償代を返しても、こんなに残ってるぜ!!
金華ハムの足取りが落ち着く前に、分厚い金の束を持ったマオシュエワンは金華ハムの元に突進した。あと少しで金華ハムにぶつかるところだった。
金華ハムはマオシュエワンを見てから、嬉しそうな満足そうな顔をしている市場の人々の顔を見て、彼自身も満足そうな笑顔を浮かべた。
―――
フンッ!
・流石俺様だ!
・タダ働きにならなくて良かった。
・まあまあだな。
―――
マオシュエワン:心を合わせて協力すれば、何でも出来る!兄弟がいれば、何でも出来るぜ!
金華ハム:……
マオシュエワン:なんだ?こんなにたくさん稼いだのに、なんで暗い顔してんだ?
金華ハム:……ただ、これじゃあ勝負の決着がつかねぇじゃねぇか?
マオシュエワン:えっと……
この日は色んな事が起きたため、勝負のために今まで頑張って来た事を二人とも忘れていた。
金華ハム:……いいや、負けを認めよう。俺は提灯を何個も失くしたからな。
マオシュエワン:だけど……俺も提灯を何個も人にタダであげちゃってる。
金華ハム:……
マオシュエワン:……
二人は夜空の下で、お互いを見つめ合った。そして、相手の顔に浮かぶ大量の汗と埃だらけの顔を見て、突如笑い出した。
マオシュエワン:ハハハハッ、兄弟なら苦も楽も共にしようぜ!
金華ハム:ハハハハッ、良いぜ!兄弟なら共に罰を受けよう!
マオシュエワン:兄弟よ!
金華ハム:兄弟よ!
こうして二人は心を通じ合わせ、肩を組みながら賑やかな市場から離れた。
マオシュエワン:……ところで、罰ってなんだろうな?
金華ハム:どんな罰でも良いだろ、大千生じゃなきゃ……
マオシュエワン:大千生……
金華ハム:……
マオシュエワン:……
金華ハム:マオシュエワン、金をくれ……この野郎!どこに行くんだ!!!
マオシュエワン:俺は兄弟のためならなんだってするが!大千生だけは……本当に勘弁してくれ!!
金華ハム:もうおせぇよ!!
マオシュエワン:うわーーっ!タスケテーー!!!
金華ハム√宝箱
夜
機関城
金華ハム:来いっ!
マオシュエワン:来いっ!
冰粉:……なんです?
冰粉は帰って来るなり自分の前に膝をつく二人を見て、何を企んでいるのかわかりかねていた。
金華ハム:勝負がつかなかったから、話し合って、共に罰を受ける事にした!
冰粉:罰?どうして罰を与えなければならないのですか?
金華ハム:えっ?
冰粉:貴方達は誰かを傷つけましたか?
金華ハム:いや!
冰粉:では、このお金は貴方達が稼いで来たものですか?
金華ハム:そうだ。
冰粉:では、どうして某は貴方達を罰する必要があるのでしょう?
金華ハム:だが、決着はつかなかった……
冰粉:それなら、二人の勝ちという事になりましょう。そしてこのお金は、二人への褒美にします。
金華ハム:本当か?!
冰粉:無駄遣いをしてはいけませんよ。
マオシュエワン:わかった!先生ありがとう!先生さようなら!
マオシュエワンは大喜びで金を持って部屋から出て行った。金華ハムはそれを見てやっと冰粉の言葉を理解したのか、勝利の喜びを噛みしめた。
金華ハム:…………勝った……ハハハッ、俺は勝ったぜ!!!
辣子鶏:金華ハム、マオシュエワンと一緒に提灯を売りに行ったらしいな?どうだ?暴れて結局一銭も残ってないんじゃないか?
辣子鶏:うわっーー!
金華ハム:?!
金華ハムの拳が辣子鶏に向かって行くのを見た冰粉は、城主はこの攻撃を難なく避けられるとわかりつつも、無意識に大千生を繰り出した。蕾が開いた事で、金華ハムは丸ごと包み込まれた。
辣子鶏:……こいつはまたどっかおかしくなったのか?
冰粉:えっと……私の説明不足です。殴り合いではなく、手合わせという意味だったのですが……
辣子鶏:なんだそれ……まあなんだっていいや。腹減った、飯はもう出来たか?
金華ハム:俺は弱い……この世で一番弱いバカ野郎だ……俺には生きる価値なんてない……
辣子鶏:……
金華ハムは大千生の分泌液によって、極度に消極的になっていた。彼は部屋の隅に縮こまり、独り言を呟きながら震えていて、とても可哀想な様子だった。
冰粉:食事はもう用意できてます、城主先に向かってください。金華ハムが回復したら、向かいます。
辣子鶏:わかった、じゃあ待たねぇからな!
辣子鶏を見送ってから、若い先生は可哀想な青年の方に近づき、手を伸ばして軽く彼の真っ赤な髪を撫でた。
冰粉:今日は申し訳ありませんでした、いつか機会を設けてあげますから。
何か思いついたのか、冰粉は柔らかい髪を撫でながら、笑みを深めた。
冰粉:これからの機関城は、更に賑やかになりそうですね。
マオシュエワン√宝箱
夜
機関城
マオシュエワンは罰を受ける心づもりで機関城に戻った。しかし冰粉は彼らを罰する事なく、その上提灯を売ったお金を褒美として彼らに与えた。
マオシュエワン:だけど……こんな大金、何に使えば良いんだ?
マオシュエワン:そうだ!!!
辣子鶏:おせぇ!飯が食いたい!飯が食いたい!早く食べないと、お前らの城主は餓死するぞ!
金華ハム:食べるな!まず俺と勝負してから……
ぎゅるるるーー
辣子鶏:ほら!お前の腹も鳴ってるだろ!先に飯だ……飯はまだか?!
マオシュエワン:ただいま!
辣子鶏:なんだ?マオシュエワンが飯を作ったのか?!怪しい!お前外に出て誰かとすり替えられたんじゃねぇのか?
マオシュエワン:何をごちゃごちゃと……俺特製の酸菜魚を食べて見ろ!
辣子鶏:……これは本当に……酸菜魚か?
マオシュエワン:そうだ!酸菜があって、魚があれば、酸菜魚だろ?
金華ハム:この大量の唐辛子は……
冰粉:マオシュエワン!機関城の唐辛子はタダじゃねぇんだぞ?そんなに入れてどうすんだ?!
マオシュエワン:しかし……唐辛子は入れれば入れる程うまいだろ!
辣子鶏:……まあ良い、死にゃしなければ……え?回鍋肉、なんで俺を引っ張ってるんだ?
回鍋肉:ゴホッ、一度口に出した言葉は、取り消す事は出来ません。金華ハムが勝てば、辣子鶏と手合わせする事になっています。約束を反故にしてはいけません……
金華ハム:!
回鍋肉:しかし、何で手合わせするかは決めていません……では、どちらがより辛い物が食べられるか、勝負するのはどうでしょう。
金華ハム:えっと……
マオシュエワン:どうした?辛いの食えねぇのか?
金華ハム:は?何言ってやがる!唐辛子如きがなんだ!勝負してやる!!
三十分後ーー
辣子鶏:ヒッーーはぁ……金、金華ハム、早く、早く負けを認めろ……お前の口は腸詰めみたいになってるぞ!
金華ハム:ゲホッ……認めるもんか、はぁ……お前の顔も、トマトみたいになってやがるぜ……み、水を飲んでも良いか?
回鍋肉:水を飲むと負けを認めた事になります。
金華ハム:フゥーーハッ!まだ食える!
二人の背後で、冷水を持って待機している冰粉は二人の様子を見て頭を横に振った。彼はどうやったって、こんな事でムキになる二人を理解出来なかった。
最終的に、辣子鶏と金華ハムは倒れ込み、冰粉と回鍋肉の胃袋は空っぽのまま、マオシュエワンただ一人はーー
マオシュエワン:やっぱこの味だな!唐辛子最高っ!!
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