八宝飯・エピソード
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八宝飯のエピソード
好奇心が旺盛で、どんなお宝も欲しがる守銭奴。風水への造詣が深く、魔除けの腕もあるが、怖がりなためあまり頼もしく見えない。実際の所、お宝そのものをそこまで重視していない、彼が好きなのはお宝たちにまつわる様々な物語。複数の古墳にあるお宝の物語の断片を繋げ、一つの完全な物語を完成させたことがある。その物語に感動したため、お宝を集めるのが好きになった。時々、お宝を取り出してはそれに宿る物語を振り返ることがある。
Ⅰお出掛け
「ドンッ!」
「ゴロゴロゴロォ──」
強い振動のせいで持っていた揚げ餃子を落としてしまった。こめかみに青筋を立てたオイラは、拳を強く握りしめ、出来立ての豆乳を一口だけ飲んだ。
「おいっ!地府の野郎ども!!!早く出て来いっ!!!!!」
こめかみがズキズキと痛むし、自分の歯がガタガタと鳴っている音が聞こえる。
「なあっ!ビビってんのか!!!出て来いやっ!!!!!」
「この野郎、もっぺん言ってみやがれ!誰がビビってるって?!ああん!!!!!」
机を強く叩きすぎて手の平が痛むけど、負けてらんねぇ。
地府の入口から飛び出ると、予想通り頭上には巨大な鳥が浮かんでいた。こんな暇人、機関城のヤツらしかいねぇだろ?!
腰の八宝羅盤を回転させ力を蓄え、空飛ぶ巨鳥に向けて打ち込んだ。
すると、巨鳥の頭の上に立っている跳ねっ返りは、悲鳴を上げながら攻撃をかわした。
「おいっ!バカ野郎、俺を殺す気か?!」
仰向けに倒れたと思ったらすぐに跳び上がったヤツを見て、思わず舌打ちをした。
チッ、当たってねぇのかよ。
「この野郎!舌打ちしただろ?!今舌打ちしただろ?!なあ!!!!!」
うるさい声で痛くなった耳を撫でてから、ヤツに向かって叫んだ。
「朝っぱらから何してんだ!城主はよくあんたみたいなヤツを生かして来たな?!」
「フンッ!その城主が探しに来いって言ったんだ!リュウセイと地宮を発見したらしい!俺たちにあんたと鳳爪を迎えに来させたんだ!」
「迎えに来たついでに、門を爆破するヤツがいるかよっ?!」
「聞こえないと思ってな!あっそうだ、モフモフ鳥は見てねぇか?」
「は?城主の傍にいつもいるだろ」
「それが、さっき城主が大砲の弾にしてあんたらの門に撃ち込んだんだ、そこら辺に落ちてねぇか?」
マオシュエワンが指した方を見ると、金色の毛玉に美味しそうな焦げ目がついて、微かに良い匂いを漂わせていた……
「ぎゅる……ぎゅるるるるる」
オイラは自分のお腹を見て、ツバを飲み込んだ。
あっ朝飯まだだった。
腹減ったな。
痙攣している金色の毛玉を、慣れた手つきでその後ろ足を掴んで肩に乗せた。
突然、裾が引っ張られた。
振り返ると、猫耳麺(ねこみみめん)の小さくて丸い顔があった。
「八宝飯(はっぽうはん)、ぼっ、僕もついていっていいですか?」
彼の相変わらず手触りの良いほっぺを両手で包んで撫でた。
そして、彼の脇の下に手を入れて抱き上げ、巨大な猫の上に乗せる。
「じゃあ、一緒に行こう!」
「はいっ!」
Ⅱ地宮入口
機関城は巨大な機械の鳥の形をしていて、巨鳥の上には桃源郷のような天空都市がある。
まあ、この天空都市には脳みそが空っぽなヤツしかいねぇけどな。
いつも通り他のヤツらに軽く挨拶をしてから、巨鳥の頭の部分にある展望台まで上がった。強い風で服の裾が靡く。
天空の城である機関城は巨大な鳥の形をしているだけあって、鳥のように空を翔ることが出来る。
あの頼りなさそうな城主がまさかこんな機関術を使えるとは、人参のヤツも驚いていた。
ほとんどのひとはその飛躍した思考回路についていけないだろう。
風に煽られて、髪と服が乱れている隣の辣子鶏(らーずーじー)を見て、オイラは思わず頭を振ってため息が出た。
正直、このチキン野郎がもし一言も喋らずじっとしていてくれれば、その外見だけなら城主の威風はある。
だけど……
「よぉ、来たか!そうだ、棗が食いてぇから、一つくれ」
それを聞いて、オイラは八宝羅盤を背後に隠した。
「これは地宮に閉じ込められた時のための非常食だ! あんたのおやつじゃねぇんだ!」
「ケチだな、地宮に入る前に補充すればいいだろ?お前の八宝羅盤の中で霊力に包まれた棗は買ってきた物よりもうまいんだ。一つぐらいくれても良いだろ!」
ほらなっ!そういうとこだぞ!
口を開いた瞬間にひとを幻滅させるチキン野郎が!!!!!
くだらない話をしている内、数え切れないほどの山や川を越え、雲に囲まれた山間に巨大な機械鳥は止まった。
機関鳥は徐々に下降し、オイラは梯子を伝って地面に降り立ち、辺りを見渡した。
「……どうして古墳は深い山谷とか、何かヤバいことが起きそうな荒地にしかないんだ」
「知るかっ。さっさと歩け、後ろがつっかえてんだ」
振り返ると、弁当を持参している機関城の連中がいて、開いた口が塞がらない。
「……地宮の探索に来たんだぞ!遠足に来たんじゃねぇよ!」
「あ?遠足じゃねぇのか?城主が遊びに行くって言ってたぜ」
「そうだぞ、地宮の見学は遊びだろ?」
……人参たちに見せたいくらいだ!いつもオイラのことを奔放過ぎると愚痴ってるけどな!機関城の連中と比べたら!オイラは泰山の如く落ち着いているぞ!!!!!
「八宝飯、早く入口を探して来い!こっちは先に始めてるからな」
「猫耳ちゃん!こっちに来い!お前が好きなお菓子もあるぞ」
「リュウセイ!これはこの前あんたが言ってた酒だ、わざわざ現地に行って調達してきたんだ!確かに良いもんだな、一緒に飲もうぜ!」
暇人共は敷き物を敷いて食い始めた上に、猫耳麺とリュウセイベーコンも拉致ってった。
掴んでいた八宝羅盤からミシミシと音が聞こえてくる。
「チクショウ!!!オイラの分の酒も残しやがれ!!!!!」
「うるせぇな、早く自分の仕事をしろ!」
八宝羅盤の針は暇人共に影響されることがなく回り始めた。羅盤から放たれる白い光が薄れていくと共に、針の動きは徐々に緩やかになり最終的にある方向を指して止まった。
その方向にゆっくり歩いていくと、鬱蒼とした草原を見つけた。しゃがんで指先で土地の感触を確かめる。
……
見つけた。
「おーいっ!食事は後だ!入口を見つけた!」
辣子鶏は自分の容姿に申し訳ないと思わないのかってぐらいの食べカスを顔中につけていた。彼は口元を拭って立ち上がり、服についた草をはたいた。
「どこだ?」
「この下にある、掘る道具を持ってこないと──」
「マオシュエワン!」
「おぉ!」
「爆破しろ!」
「よっしゃ行くぜー!」
「ドッカーーーン!!!!!」
Ⅲお宝
「おい、怒んなって」
「八宝飯、ゆっくり歩けよ、なんで怒ってるんだ?」
俺はバカだ!!!この世でいっっっっっちばんの大バカ者だ!!!
ヤツらに入口の場所を教えるなんて!!!
ヤツらみたいなクソ野郎共に入口の場所を教えるなんてなっ!!!!!
「あんなのただの瓶や壺だろ、全部土で出来てるから何の価値もねぇよ。もう怒んなって」
「後で美味しいもんでも買ってやるから」
「オイラをモフモフ鳥なんかと一緒にすんな?!」
「一緒な訳ねぇだろ!モフモフ鳥はお前みたいにチョロくねぇよ!!!」
「チキン野郎今なんて言った?!誰がチョロいって?!警告しておくが、俺様にも尊厳ってもんがあるんだ!」
ため息を一つついて、暇人共を無視することにした。持っていた提灯で通路の壁画を観察する。
「……この壁画、くり抜いて売ったら良い値段するんだろうな……ヒッーー」
後頭部に冷たい視線を感じて振り返ると、リュウセイが眉を上げて妖しげな表情でオイラを見つめていた。思わず首をすくめた。
「わかった、わかった、手は出さねぇって!自分が宝を取らないからって、人にも取らせないなんて」
ぶつくさと言いながら更に前に進んだ。通路の中の至る所に紋様が刻まれていて、地面にすらおかしな形の獣の模様が刻まれている。
その獣たちは灯りに照らされて、怪しさ満点だった。
「騒ぐな!こっからは誰も勝手に動くなよ!」
幸いなことに、機関城の連中は事の重大さを知らない訳ではない。オイラの指示を聞くと、すぐにふざけるのをやめた。辣子鶏はオイラの傍にやってきて、オイラの提灯を借りて入念に辺りを見回した。
「どうした?」
「機関が仕掛けてあるかもしれない」
彼は眉毛を上げてあごを触った、口角を上げて笑う彼の姿に、少し嫌な予感を覚えた。
「機関、か」
「おいおい、大人しくしてくれよ。この墓にある機関はあんたの機関術とは違うんだ、一つ間違えばここが崩落してしまうかもしれない」
「お前は破れるのか?」
「オイラを誰だと思ってんだ。離火を使って、ここら一帯を照らしてくれないか?」
指を鳴らす音が響いた後、辣子鶏の肩に乗っていた離火は低く唸ってから、火を噴いて目の前の通路を照らした。
火柱が通路を照らしてくれている短い間で、オイラは機関の配置を確認して頷いた。
「オイラについて来てくれ、オイラが踏んでないところは踏むな」
長い通路を抜けるとある小部屋に辿り着いた。そこはまだ玄室ではないけど、部屋の中には多くの宝物があって、オイラはよだれが出そうになった。
リュウセイ、鳳爪と猫耳ちゃんは既に古物の整理に追われていた。リュウセイの提灯を使って古物に宿っている物語を記録し始めている。「遠足」に来た機関城の連中も、彼らの手伝いだったり、辺りの観察を始めていた。
おやつを食べて眠くなったのか、いつも元気な辣子鶏はその輪に加わることはなかった。彼はオイラの横に座って、リュウセイの提灯が映し出す物語を眺めた。
膝を抱えている様子はなんだか子どもっぽく見えた。
いや、いつも子どもっぽいの間違いだな。
「八宝飯、どうして宝物を探しているんだ?」
突然横から聞こえて来た声にたじろぎ、影絵を見つめていたオイラは辣子鶏の方に視線を移した。
ヤツはオイラの方を向いていなかった、膝を抱えたまま大人しく影絵を眺めている。まるでさっきの質問はヤツの口から出てきた物じゃないかのように。
「……オイラのことを守銭奴って呼んでるだろ?宝探しの理由なんてわかりきってるじゃないか」
「まあ……確かにお前は守銭奴だ。だけど宝物をいっぱい集めてるところは見ているが、売るところはあまり見たことがないぞ」
「……」
「なんだ、恥ずかしいのか?まさか運命の人を探している、とか?……はっきり言うけど、この世とあの世は交わらないぞ?無理はしない方が……おいっ、蹴るな!」
コイツ、人の心が無いように見えて……チッ……
「辣子鶏、物語を聴くのは好きか?」
「……何だ急に」
「死物は時として、生きている人よりも多くの物語を語ってくれるんだ」
オイラは顔を上げて、暗くなっていく影絵を見つめた。
「それらは、時に人の悲喜、時には国の仇や恨みを語ってくれる。そして多くの場合、彼らの悔しさ、叶えられなかった願いを教えてくれる」
「そうなのか……」
「古物から読み取れるのは、その古物の歴史だけじゃない、その古物が生きてきた全ての時間だ。オイラは時間の痕跡を残しておきたい。その場にいた人たちの痕跡を残すためにな」
「無関係なひとたちのためにか?自分の身を危険に晒してまでやる価値があるのか?」
提灯は再び明るい光を放った、オイラはまた顔を上げて影絵を見つめた。
「ほら、こういう物語を眺めているとわかるだろ。価値があるかどうかなんて」
「……お前は本当に、とんだバカ者だな」
Ⅳバカ
リュウセイと鳳爪が全ての物語を記録すると、辣子鶏は立ち上がった。
服についた埃を払い、一つ背伸びをした。
「お前らの仕事が終われば、今度は俺の番だ」
「箸より重い物を持たない」機関城の城主を眺める。人参のヤツは一体どんな手を使って、オイラたちと一緒に危険で汚い地宮を探索するよう、この箱入り坊ちゃんを説得したんだ。
彼が全身をほぐしていると、肩に乗っていた離火が低く鳴いた。離火は彼に頬ずりをした後、一本の小さな筆に姿を変えた。
軽快に、オイラにはわからないような動きをした後、彼がふれた煉瓦は青色から淡く光った。彼は顔を上げて、煉瓦から空中に浮き上がったオイラには読めない文字を眺めた。その表情は……何かを懐かしんでいるように見えた。
筆を執り、空中を彷徨い続ける文字の足りない部分を埋め続けた。
淡い青は、彼の筆が進むと共に徐々に明るくなっていき、地宮全体を照らすほどになっていった。
彼の表情はいつになく真剣で、額の端からは汗がだらだらと流れている。
文字が全て補完されると、彼はホッと一息をついた。
「ふぅ、終わった」
顔に出さないよう隠していたようだったが、結局よろけてオイラの肩に腕を回すことになった。
少し弱っている彼の姿を見て、思わず最初に会った時のことを思い出してしまった。
その時も、今みたいな瘴気に満ちた山だった。
堕神が蔓延るようになってから、多くの山は森は踏み入れることの出来ない立ち入り禁止の区域になった。
当時、オイラはまだ地府に加入していない。地宮を回って宝探しをする日々を過ごしていた。
霧の中から真っ赤な服を着てやってきた彼は、緑が広がる山で一際目立っていた。
その表情は全てを嘲笑うかのような傲慢さがあり、人というよりは山に潜む怪物のように見えた。
助けを求める声が聞こえる方に向かうと、赤い服の青年は高い木の枝の上に座っていた。彼は堕神に攻撃されている人間たちを不敵な笑みを浮かべながら眺めていたのだ。
「助けて!助けてください!」
「どうしてお前らを助けなきゃならんのだ?」
記憶の中の彼の笑顔は艶やかで美しかった。しかしその美しさは、不気味な霧に覆われ、血生臭さが広がるこの山林の中では、何か恐ろしい物に見えた。
彼が纏う気配を感じた。
彼は……食霊だった。
人間たちを助けた後、オイラは離れようとした彼を引き留めた。
「どうして引き留めた」
「どうして彼らを助けなかった」
「目障りだったから」
「は?」
「バカ者、気を付けろよ」
彼はそれ以上何も言わずに去って行った。
彼が向かう方には巨大な機関鳥が見えた。
オイラの背後を狙った墓荒らしたちが刺してきた小刀を止めて、遠くに飛んでいく機関城を見てオイラは黙り込んだ。
その後も何度か彼に会ったが、彼はいつも混乱した状況の中現れた。
「おいっ、お前はいつも何かを探し回っているんだ?一緒に探してやろうか?」
「あんたこそ、毎日飛び回って、何をしているんだ?」
彼は、面倒事はごめんだと言いながら、地宮で怪我をしたオイラを地府に投げ込んだ。
機関城以外の者は彼にとってどうでもいいと、彼は言っていた。
だけど彼は幾度となく敬遠されている汚い地宮に入っては、自分の力を消耗してまで、オイラにはわからないけど、人参によると光耀大陸全員を助けているような事をしている。
肩に回されている腕を取って、機関城のヤツらの方に彼を投げた。
「オイラのことをバカ者って呼んどいて、あんたこそがバカ者だろ」
でも、彼みたいなバカじゃなかったら、オイラみたいなバカとは友だちにはなれなかっただろうな。
Ⅴ八宝飯
「ドッカーン!」
「チクショウ!またかよアイツら!!!!!」
猫耳麺は八宝羅盤を持って怒り狂いながら走り出し、機関城の喧嘩を買いに行く八宝飯を見て、思わずため息をついた。
「もうーため息つかなくても良いよーあれは男同士の友情ってやつだよ、大人になったらわかるようになるよー」
豆汁(とうじゅう)は猫耳麺の柔らかい髪を撫でながら、笑顔で食べたくない野菜を油条(ようてゃお)の器に入れた。
「……」
「なによ」
猫耳麺は自分の器を持ってその場から逃げた。言い争う豆汁と油条を見て、外で絶え間なく鳴り響く爆発音を聞いて、またため息をついたのだ。
突然、頭に何か感触があることに気付いて、彼は顔を上げた。
「諦聴(たいちょう)、大丈夫ですよ。ため息をつかないでください」
「あっ!人参さま!貴方さまの化身は……」
「法陣の中の情報が乱れているため、調整するのに少し時間が必要なようです。吾もしばし休憩を取ろうと思い、出てきました。」
猫耳麺はよくわからないまま一つ頷いて、大人しく食事を自分の口に運んだ。目の前で繰り広げられている光景を見て、急に笑い出した。
「みなさんはとても仲が良いですね。だけど人参さま、どうして八宝飯は機関城のみなさんと仲が良いのに、僕たちの地府に来たのでしょうか?」
「友情に距離は関係ありませんよ。例え世界の果てや大海の端にいたとしても、例え百年会っていなくとも、困った際に助けてくれる者こそ親友、再会した際わだかまりもなく以前と態度が変わらない者こそ知己である」
「うぅ……」
「城主が求めているものは、八宝が求めているものにあらず。だが、彼は八宝のためなら、彼が求めているものも探してくれる。これが"千金は得易いが、知己は得難い"ということです」
猫耳麺は高麗人参の話を聞いて頷く。モフモフ鳥をつまみ、肩に辣子鶏の腕を回して戻って来た八宝飯を見ると首を傾げた。
「人参さま……つまりお二人は友人だけれど、友人という立場で相手を束縛せず、ただ相手のために相手が求めているものを探している、ということでしょうか?」
「はい」
「では何故お二人はいつも喧嘩ばかりするのですか?」
高麗人参は、また取っ組み合いを始めそうになっている二人を見てから、首を傾げている猫耳麺を見て、しばし黙り込んだ。
「心配することは何もありませんよ、それは彼らの感情表現の一つなのでしょう」
「うぅ……しかし、彼らは一度も僕と喧嘩していません……もしかして……僕のことが嫌いなのでしょうか……」
「……いえ、それは彼らの間だけの……特殊な感情表現なだけですよ」
顔を合わせる度に喧嘩をする二人は、ようやく理性を取り戻したのか、座って鳳爪が淹れたお茶を飲んだ。
辣子鶏は自分の袖を煽って涼みながら、同じく疲れ切っている八宝飯の方を見た。
「そうだ、お前が探していたヤツの手掛かりは見つかったのか?」
「地宮に行きまくって、そこにある古書を全部調べたけど、玄武王朝の地宮にいるだろうって事以外、何もわかっていない」
「お前さぁ、なんでわざわざ言い伝えに登場する人を探そうとしてんだ」
「フンッ!玄武帝に関する多くの出来事は全て歴史の中に消えている、史料のほとんどが消されてるんだ。あんたは自分が去った後、玄武帝の王朝で何があったのか知りたくねぇのか?あの時の出来事は人参にすらわからない事が多い、もし言い伝えに登場しているそのひとを見つけられれば、きっと全部わかるようになるぞ!」
「……わかったわかった!話が長いっ!」
二人が楽しそうに話していると、落ち着いた足音が近づいて来た。
幽々たる声がする方を見ると、リュウセイベーコンが立っていた。
「また地宮を見つけた、外の石碑を見る限り玄武帝と関連がありそうだ。二人とも、ついて来るか?」
「もちろんだ!」
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