誰も知らない・ストーリー・メインⅢ保安署
第九章-潜入
保安署に潜入
シェリー:キャンディ屋にいた怪しい奴は、貴方でしょう?
スコーン:キャンディを食べないように注意した者のことを指しているのなら……そうだ。
シェリー:貴方は何者?私たちの正体も、やろうとしている事も、大祭司の行方まで知っているなんて……まさか、貴方自身が大祭司だったりして?
スコーン:……
シェリー:さっき「三年前と同じ」って言っていたわね……三年前のことは機密事項よ、多くの詳細は私も把握していないのに、貴方はどうして知っているの?
シェリー:それはつまり……三年前、貴方も現場にいて、目撃し……全てに関与しているからよ!
シェリー:共犯者は黙りなさい!
ハギス:…………
スコーン:ハギスに八つ当たりする必要はない。オレが誰なのかを知りたければ、ついて来て。
スコーン:自分の目で確かめた方が早いから。
夜
セロ町保安署
保安署の門を見た時、シェリーは一瞬きょとんしたが、スコーンは驚く彼女を気にせず、慣れた様子で曲がりくねった廊下を抜け、奥にあるドアの前で立ち止まった。
ハギス:資料室……権限が必要……部外者立ち入り禁止……
ピッーー
普通に見えて実は頑丈なドアが開いた。スコーンがドアを開けるためのカードを仕舞い、目でシェリーを促して、ようやく彼女は我に返った。
シェリー:……もしかしたら盗んだカードかもしれないし、その手には乗らないわ……
治安官:あれ?スコーン?
スコーン:……お久しぶりです。
治安官:三年ぶりだな……その二人は?
スコーン:事件の関係者。
治安官:事件?はぁ……三年も経つのに、どうしてまだ諦めきれないんだ……
スコーン:どれだけ時間を掛けても、生き残った者には真実を見つける義務がある……これは彼がオレに教えてくれた事です。
治安官:フンッ、本当にあいつとそっくりだな……部外者をここに長居させるな、いいな?
スコーン:ああ。
スコーンのやりやすいようにするためか、保安官は資料室を出て行った。そしてドアから出る前、スコーンの肩を軽く叩いた。
シェリー:……貴方、本当に保安官なの?
スコーン:正確に言えば、三年前までは、だけど……行こう、キミに見せたい物が中にある。
シェリー:……ハギス、外でお姉さんのことを待っててくれないかしら?
ハギス:えーじゃあ、あんまり待たせないでね……
シェリー:良い子ね、もちろんよ〜
シェリーは笑いながらハギスを資料室から送り出した。振り返るとスコーンが複雑そうな顔をしていた。
スコーン:一人にさせて大丈夫なのか?
シェリー:私はまだ貴方を完全に信用していない。口裏を合わせないように、貴方たちを離れさせておかないといけないわ。
シェリー:だけど、その質問をしてきたということは、ハギスの正体を知っているのね?
スコーン:この数年、オレは当時の事を調べてきた、当然知っている。
シェリー:そう?じゃあ、調査結果を言ってご覧なさい。
シェリー:……証拠はあるの?
スコーン:オレが、証拠だ。
第十章-真相
かつての事件の真相
三年前
セロ町保安署
ダンキ:あれ……おかしいな……
スコーン:どうしたの?
ダンキ:この店のクレープ、味が変わったみたいだ……
スコーン:……前の店の店主が行方不明になったから、別の店から買って来たんだ……
ダンキ:また誰かが行方不明になったのか……
スコーン:「黒い黎明」の捜査を続けるのか?リーダーのクロウリーを捕まえても、何の成果も得られなかったし……
ダンキ:あいつらと話をした感じ、神隠しのような誘拐事件を起こせる程頭は切れていないように思ったんだ。
スコーン:やっぱり、あの錬金術師がキーマンだと思う。
ダンキ:そうだな、彼がセロ町に来た時期と最初の失踪事件が起きた時期が近すぎる。それに、町には滞在せずわざわざ郊外に一人で住んでいる所も怪しい。
スコーン:なら、彼の滞在先を調査してくるよ。
ダンキ:ああ、私は教会に行って、昨日の報告書にあった奇妙な器具を見てくる。なんとなく、おかしい気がするんだ……
三年前
セロ町郊外
ダンキと別れたあと、スコーンは先を急いだ。ダンキは彼の御侍で、何年も一緒に暮らし、仕事をしてきたので息はピッタリだ。いつも一緒に行動していた良きパートナーと、手分けして捜査していることに、彼は微かな不安を覚えた。
スコーン:今度こそあいつから何か手掛かりを見つけないと……うん?あれは……
ハギス:うぅ……先生……先生……
スコーン:クロウリーの食霊?今までクロウリーはずっと彼を閉じ込めていたはずだ、どうして今日は……
クロウリーを調べていた時、スコーンはハギスに会っていた。相手は食霊だが、色々な面で放っておけない存在だった。ハギスの様子が気になった彼は、後をついていった。そしてすぐに、彼らが向かっていた場所が同じであることに気付く。
ハギス:先生……いないの?みんな……どこに行ったの?イヤだ、一人はイヤだ……
スコーン:先生?あいつはハギスの先生だったのか?やはり「黒い黎明」の関係者か……
ハギス:あれ?これは……キャンディ?キャンディだ!前に誰かが嬉しそうに食べてたのを見たことがある!きっと、美味しい……
スコーン:……
ハギス:うっ……一個だけなら、先生は怒らないよね……パクッ……
ハギス:おっ、美味しい!これが「甘い」なんだね!うぅ……これ以上食べちゃダメだよね……早く先生を見つけよう!チェス盤を持って行こう、今度こそ先生に勝つよ!
(明転)
スコーン:……そして、オレはハギスを追って教会まで行った……オレたちが到着した時にはもう火の手が上がっていた、ハギスに犯行する時間はない。
シェリー:アリバイがあるってことね……
スコーン:彼があの時食べていたキャンディは、多分幻覚作用のある物だった。
シェリー:……それで、教会の外にいた彼の様子がおかしかったのね……その後は?錬金術師を追っていたんでしょう?結果は?
スコーン:……火事になった教会の裏門から、彼が出て行くのを見かけた。
シェリー:!やっぱり……やっぱり彼の仕業だったのね!
スコーン:あの時は犯人を捕まえるのに必死で、ハギスの異常に気付けなかったんだ、まさか三年も牢に入ることになるとは……もっと早く気付いていれば……
スコーンは拳をぎゅっと握り締め、明らかに後悔している様子だった。
スコーン:今回帰ってきたのは、犯人を捕まえるためだけでなく、ハギスの無実を証明するためでもある。
シェリー:つまり、あの錬金術師……三年前の惨劇を引き起こした真犯人は、今セロ町にいるってこと?
バンッーー
資料室の外で突然大きな音がした。シェリーとスコーンは顔を見合わせ、すぐに音がする方へと走っていった。
(明転)
おかしな少女:イヤ、来ないで……助けて!
ハギス:悪い人だ……悪者だ……返してーー!
第十一章-少女
追いかけてきた少女
ハギス:ハァ……ハァ……悪い人……悪者……お前たちみんな悪者だ……
おかしな少女:…………
シェリー:キャンディ屋にいた女の子?どうしてこんな所に?
おかしな少女:……びっ、尾行してたの。
シェリー:尾行?!キャンディ屋から?全然気付かなかった……
おかしな少女:私の、唯一の才能が、目立たないことなの……
おかしな少女:私は……私は何も……
シェリー:じゃあ、貴方の手にある物は何?
おかしな少女:イヤだ!
スコーン:目的は?早く言わないと、強盗罪で逮捕する。
おかしな少女:い、言います!私は……お店で貴方たちの話を聞いたの、このペンダントが大事な物だって……だから、だからこれを使って友だちを助けようと思って……
スコーン:友だち……もしかして「黒い黎明」に捕まっているの?ペンダント一本なんかであいつらを騙せると思った?
おかしな少女:だ、だって!もう他に方法はないの、あいつを止めないと、リルは生贄として殺されてしまうの!
スコーン:生贄……あの忌まわしい儀式はまた……
シェリー:あいつらは今どこにいるの?
おかしな少女:わっ、私も知りません、教えてくれないです……
スコーン:……三年前、儀式はアムビエル教会で行われた。
シェリー:教会?鹿も言っていたわ、深夜この町の教会から変な物音がするという噂を聞いたって……
スコーン:行くぞ!アムビエル教会に!
第十二章-教会
叫びが夜を切り裂く
アムビエル教会
三年が過ぎた今も、炎に侵された痕跡を残したアムビエル教会は、夕闇の中まるで燃えているようにそびえたっていた。
三人はシャリーンに案内されて教会に忍び込んだ、そして奥に行けば行く程不気味さが増していく。
ハギス:……ここ好きじゃない……シェリー!スコーン!早く帰ろう!
ドーナツ:今ならまだ間に合いますよ、神恩軍が外で控えていますから。
シェリー:!!!
ドーナツ:安心してください、鹿に呼ばれてここに来ました。
シェリー:なるほど……これが段取りってやつだったのね……
ドーナツ:彼らは顔を出せないみたいなので、わたしが協力します……どうしますか、ここから出たいですか?
ハギス:うん……
スコーン:いや、あいつがどこにいるかわからないのに、単独行動させるのは危険だ。
シェリー:ハギス、しばらく我慢してくれない?全ては……もうすぐ終わるから。
ハギス:……わかった……
おかしな少女:ここに隠し扉がある!
(明転)
ギシッーー
シェリーが反応するより先に、シャリーンは隠し扉を開けた。一瞬にして全員の緊張が高まり、身を屈めて素早く扉の中へ入り、それぞれ遮蔽物を探して身を隠した。
隠し扉の向こうには大きな空間が広がっていた。その中で一際目を引くのは、高い段差の上にある祭壇。祭壇の中央には杯に似た奇妙な金属器具があり、その両脇には黒いマントを羽織った男がいて、興奮しながら何かを叫んでいた。
大祭司:……敬虔な信徒たちよ、ついにこの日が来ました!誰も私たちを傷つけることは出来ません……何故なら、私たちは永遠の命を与えられているからです!
信徒:永生ーー!永生ーー!
シェリー:……狂ってる……スコーン、貴方が言っていた錬金術師はここにいる?
スコーン:いや、狡猾なあいつは簡単に顔を見せない。
ハギス:えっ?あれはキャンディ屋のおじさん?キャンディーー
スコーン:シーッ……儀式が、始まる。
狂った歓声の中、黒い服を着た二人が、猛獣を閉じ込められる程の大きな檻をいくつも担いできた。しかし、その中に猛獣はいなく、眠っているような人々が入っていた。
一人の少女が現れた時、落ち着いていたシャリーンが急に目を丸くし、飛び出して行った。
おかしな少女:リル!
シェリー:!!!
おかしな少女:この悪人!早くリルを返して!
大祭司:……何人たりともこの神聖なる儀式を止めてはなりません……誰か!
大祭司の命令で、黒い服を着た数人がシャリーンを取り囲んだ。小さな女の子は途方に暮れながらも、強気で背筋を伸ばした。
おかしな少女:リルを……返して!
ドーナツ:……彼女を手伝いに行かないのですか?
シェリー:任務がある、今はまだダメよ。
ドーナツ:武器を持たない子どもが身を挺しているのに、力を持つわたしたち食霊が隠れたままで良いのですか?
シェリー:貴方は……
シェリーが驚いているのを見て、ドーナツは思わず笑った。遮蔽物の後ろから立ち上がり、女の子とほぼ同じ体格の彼女だったが、その気概は一つの軍隊にも匹敵するものだった。
ドーナツ:神恩軍だ!異端共よ!手を上げろ!
大祭司:神、神恩軍?!フンッ、たかが小娘一人を私たちが恐れると思っているのか!
シェリー:……このバカ……動きを止めなければ反抗と見なし!武力での鎮圧をさせて頂くわ!
大祭司:チッ、食霊が二人も……ハハッ、お二人は何か誤解しているのではないでしょうか?私たちは通常の宗教活動をしているだけですよ、お二人が思っているような事はなにも……
シェリー:とぼけるな!大勢の人を閉じ込めることが必要な活動って何?小さな女の子にまで手を出そうとしていたじゃない!
大祭司:勘違いですよ。子どもにいたずらされるのが怖かったので、この場から遠ざけようとしただけです。彼らについてですが、彼らの魂は穢れていて、今から浄化しようとしているだけですよ。ご覧の通り、私は彼らを傷つけていません!
シェリー:彼らは全て届出のある行方不明者だわ、彼らを連れ帰って調査するためにご協力を。
大祭司:待っ……
大祭司の同意を得ずに、シェリーとドーナツは檻の錠を壊した。扉が開くと、シャリーンは待ちかねたようにリルを抱えて外に向かって走って行った。
キャンディ屋店主:待て!生贄を連れて行くな!
おかしな少女:!!!
キャンディ屋店主:儀式は続けなければならない!その子どもは……その生贄は!死ななければならないんだ!
そう言いながら、店主は懐からナイフを取り出し、血眼でシャリーンとリルの方に向かって走って行った。
キャンディ屋店主:貴方が動かないのなら、私がやります!
大祭司:こ、この愚か者!
キャンディ屋店主:死ねーー!
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