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誰も知らない・ストーリー・サブⅢ保安署

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協力

利益の天井

一週間前

神恩理会


ドーナツ:捜査要請?神恩軍もあの陛下の配下になったとはね、わたしは知りませんでした。

ポロンカリストゥス:誤解ですよ、要請ではなく協力です~

ドーナツ:聖潔で独立していることこそ神恩軍の誇りである、誰かと協力する必要なんて……

アールグレイ:まして、名を馳せているシャンパン帝国は、我々のような小さな軍隊の力は必要ないでしょう?

 軍隊長が困っているのを見て、ソファーに座って話を聞いていた青年は立ち上がり、二人の会話に加わった。

ポロンカリストゥス:いえいえ、神恩軍のお力に代わるものはありませんよ。そして今回は状況が特殊でして、共に国民の安全を守りましょう。今我々の助けになれるのは貴方方しかおりません。

ドーナツ:国民の安全?

ポロンカリストゥス:神恩軍も最近「黒い黎明」というカルト組織を調べているんでしょう?あいつらは三年前の事件に関わっていて、私も捜査を命じられています。

ドーナツ:……情報が欲しいんですか?

ポロンカリストゥス:ふふっ……私はこれでも情報課の先生です、それだけのためにわざわざ訪ねるのは、あまりにも情けないではありませんか。

ポロンカリストゥス:私が欲しいのは……貴方の片目です。

アールグレイ:何の冗談ですか?

ポロンカリストゥス:焦らないでくださいよ~これからの動きで私たちは正体がバレるのはまずいんです、そのため「権威」が必要となります……もし今後神恩軍が私たちが行動しているのを見かけても、見逃してくださると助かるのですが~

アールグレイ:簡単なお願いなのにそんなに回りくどく言えるんですね。鹿教官から言い回しの極意を学ばないといけませんね。

ポロンカリストゥス:伯爵様も中々の腕前で~

ドーナツ:……つまり、見逃せば良いのですね。

ポロンカリストゥス:その通りです~もちろん、タダ働きはさせません……神恩理会は最近資金難だそうですが……

ドーナツ:国民を守ることこそ神恩軍の使命です。やるべき事をやるだけなので、報酬はいりません。

ポロンカリストゥス:軍団長様は噂通り頼りがいがありますね……では宜しくお願いいたします。


 回りくどいのは神恩軍らしくない、双方はすぐに協力関係を結んだ、しかし……

 今少女は火事で荒れたオペラハウスを見て、思わずため息をついた。

アールグレイ:私たちが来たのを見て、後始末を押し付けてどこかに行ってしまいましたか。流石テ・キ・パ・キしてますね。

ドーナツ:……こんな事になると知っていたら、手伝いをよこしてもらうんだった……

神恩軍兵士:報告します!オペラハウスの中を確認しましたが、死者は見つかっていません。生存者の確認も終えています、負傷者は病院に送りました。現在負傷していない生存者から聞き取りをしています、そして……

ドーナツ:?

神恩軍兵士:負傷者の処置、物資の費用についてですが……その……

アールグレイ:神恩理会の支援金が底をついたみたいですね、軍団長様。

ドーナツ:…………

アールグレイ:流石シャンパン陛下の腹心ですね、初めて共同作業でこんなにサプライズをしてくださるなんて……

アールグレイ:しかし軍団長、安心してください。帝国のこの「ご恩」は、後日また改めてお返ししなければなりませんね。


強行突破

保安署の厳重警備

保安署


 セロ町の保安署には建物が二棟ある。低い棟は被害届の処理を担当し、高い棟は各種機密文書を保管庫となっている。保管庫は保安署内部にある建物のため、部外者は簡単に入ることは出来ない。

 タルタロスの警備システムにはかなわないが、この地の最大の公共安全機構であるため、無断侵入することは基本的に不可能だ。

 しかしそんな情報は、この町以外の者は知る由はない。

オイルサーディン:……本当に入れるのか?

ポロンカリストゥス:保安署は町民のために開放しているから、入れない道理はないはず……

オイルサーディン:……はず?

ポロンカリストゥスシェリーちゃんたちも入れたし、安心して、きっと大丈夫~

 飄々と笑っている青年を見てオイルサーディンは不安を感じていた。しかしこれ以外方法がないため、彼は青年の後に続いて保安署に入ろうとした。

治安官:止まれ!ここは部外者立ち入り禁止だ。

ポロンカリストゥス:誤解しないでください、被害届を出しに来たんです。

治安官:被害届?被害届はあちらに出してください。

ポロンカリストゥス:なるほど、ありがとうございます~

保安官:…………

 二人は保安官の指す方へと向かったが、背後から視線を感じ振り返ることすら出来ずにいた。

オイルサーディン:これからどうするつもりだ?

ポロンカリストゥス:正面突破が無理なら、頭を使うしかないね~

オイルサーディン:?


 二人は遠回りして、やっと保安署の裏に回り込んだ。裏口を見つけることは出来なかったが、二階にある窓が開いていることに気付いた。

ポロンカリストゥス:典獄長、少し手伝って、上を見てみる。

オイルサーディン:……これが頭を使う方法か……

ポロンカリストゥス:早く、見つかってしまうよ!

オイルサーディン:…………

 窓から侵入する行為を良しとしていないが、状況が状況なため典獄長は仕方なく壁に手をついて、青年が上りやすいようにした。しかし青年は肩に乗ると動かなくなったため、流石のオイルサーディンもイラつき始めた。

オイルサーディン:何をグズグズしている!早くしろ……

治安官:何を早くしろって?

オイルサーディン:!!!

 頭上から貫禄のある声が聞こえてきて、オイルサーディンは冷や汗をかいた。現状入ることも逃げることも出来ず、肩の痛みを我慢して立ち尽くすことしか出来なかった。

治安官:窓を開け換気してたら、まさか仕事が舞い込んで来るとはな。サボるのも大変だ……

ポロンカリストゥス:あの……保安官さん、誤解ですよ。被害届を出しに来たのですが、ちょうど私たちの荷物を盗んだ強盗がこの建物に入って行くのを見たんです!

治安官:おや?そうなのか……安心しろ、関係者以外この建物から出入りする事は出来ない、入って来たのなら出られないだろう。それにしてもお二人さん……

治安官:被害届を出しに来たのだろう?じゃあ、書類を作ってやるから来な。

 目の前の保安官はにこやかに対応してくれたが、拒否できない雰囲気を醸し出していた。これ以上言い訳を言ったら余計怪しくなるため、青年は仕方なく頭を縦に振った。

ポロンカリストゥス:セロ町の治安管理は流石ですね、これは安心だ……あはは……


楽しさを取り戻して

少年の考え

ハギス:……どこの部屋も開かないし……見た目は一緒だし……つまらない、本当につまらない!

 資料室の外に追い出されたハギスは、その棟を全部回った。見知らぬ場所への好奇心はあったが、すぐに飽きてしまったようだ。我慢も限界に近い、不機嫌そうな顔をしていた。

ハギスシェリーたち遅いな……つまんないよ……

治安官:……オペラハウス?わかりました、すぐに応援を派遣します……

ハギスオペラハウス……そうだ!先生を探さないと!

保安官:誰だ?!

ハギス:あれ?スコーンと仲の良いおじさんだ!

保安官:君は?君はどうしてここにいるんだ?

ハギス:おじさん、さっきオペラハウスって言わなかった?

保安官:……これは我々保安官の仕事だ、君は心配しなくて良い。

ハギス:でっ、でも僕の先生はまだオペラハウスにいるんだ!

保安官:先生?安心してくれ、死者は出ていないそうだ、君の先生もきっと無事だよ。

ハギス:先生を見つけてくれたの?!早く会わせて!

保安官:保安署の聴取に付き合ってもらわないといけないから、しばらくは無理だ。

ハギス:聴取って、何?

保安官:誰が彼らをオペラハウスに連れ込んだのか、目的はなんなのか……ほら、私は仕事に戻らないといけない、君も早くスコーンの所に戻りなさい。

 保安官はハギスの頭を軽く叩くとその場から離れて行った、そのため事件を解決するための重要な手掛かりを見逃すことになったのだ。

ハギス:……儀式に使う生贄を作るため……先生は、儀式を成功させて、人々を新たな輪廻に連れて行って、永久の幸せを与えようとしているんだ……

ハギス:だから、その人たちは必要な犠牲……

ハギス:先生すごい、ハギスも先生みたいになりたい!みんなに新しい生を与えて!一緒に新しい輪廻に行きたい!

 自分が執着している存在を思い出して、少年の目に熱い光が灯った。彼は静かな廊下を走り回って、狂った交響曲を奏でた。

ハギス:ははははは……きっと面白いね!!!!!


幽閉

暗闇の奥……

三年前

アムビエル教会


クロウリー:長官殿、礼拝のためにやって来た訳ではないようですね?

スコーン:これは捜査令状です、どうかご協力ください。

クロウリー:セロ町の一員としてもちろん協力致しますよ……しかし私の所で気の毒な行方不明者を探すのは時間の無駄かと。

スコーン:それは保安署が判断致します、心配には及びません。

 スコーンの言葉を聞いたクロウリーは、肩をすくめただけで不満を示すことはなかった。落ち着いた様子で若い保安官を連れて教会に入る彼は、確かに誘拐事件の犯人には見えなかった。

クロウリー:教会のメインホールには誰も隠せませんよ、そこには行かなくて大丈夫でしょう……こちらは私の寝室……そしてこちらは倉庫……

 ドンッ――

スコーン:何の音ですか?

クロウリー:……お恥ずかしい話ですが、私の食霊が倉庫にいるんです。

ハギス:だっ、誰かいるの?助けて!僕を出して!!!

スコーン:?!

クロウリー:お見苦しい所を……彼は私の食霊ですが、言う事を聞かないんです。礼儀も知らないため、罰を与えているのですよ。

スコーン:罰?

クロウリー:安心してください、言う事を聞かない食霊に体罰を加えるなんて馬鹿なことはしませんよ。一時的に彼の自由を奪っているのみ……自分の食霊をしつけるのは公共の治安を妨害しているとは言えませんよね?

 若い保安官はクロウリーを一瞥して、無言で物音のする部屋へと向かった。

クロウリー:この部屋は狭いため、多くの人を隠せませんよ。ドアの外から見てみてください。中に入っても構いませんが、貴方を傷つける可能性があるのでおすすめできません。

スコーン:……結構です。

クロウリー:では、裏庭の方へとお連れします。

スコーン:ああ。


 人が遠ざかっていく音を聞いて、部屋の中に居た食霊はそれ以上あがくことをやめた。そして、また深い絶望に陥った。

 光のない狭い空間の中、傷だらけの体を丸めた小柄な食霊は、自分がどんな悪い事をしたのかわかっていなかった。そして、どうすれば今の苦境から脱することが出来るのかもわからず、苦しみを耐え続けることしか出来なかった……

 カサッ――

ハギス:!!!

 暗闇の中に長くいたせいで、淡い月明かりですら眩しく見える。食霊は眩しさに耐えながら顔を上げると、木くずが金色の雪のように舞っているのが見えた。そして聖なる光の中、誰かが自分に向かって手を差し伸べていた。

スコーン:はぁ……早く、オレの手を掴んで!

ハギス:誰……?

スコーン:キミを救いに来た。

 目の前の手を見つめていると、ハギスは突然目が熱くなった。彼は木くずのせいだと思ったが、長期にわたって御侍の暴力を受けて来たことで涙はとっくに枯れていたはずだった。

 「救う」、ハギスは御侍の口から何度もこの言葉を聞いてきた、この時初めてその身をもって救われる感覚を感じた。それと同時に彼は幸福も感じた。嬉しそうに笑い、必死で血まみれの手を掴んだ。


スコーン:……彼は犯人ではない。

 三年経っても、若い保安官はあの手の感触を覚えて居る。彼は掌を、三年間の後悔を握りしめた。

スコーン:オレは……もう二度と無実の罪を着せられた彼を、狭い檻に閉じ込めさせない!


すれ違い

意図的な誘導ミス

三年前

保安署


スコーン:ダンキ!

ダンキ:えっ?教会に行ったんじゃ?どうして……

スコーン:知らせを受け取って急いで来たんだ、大丈夫か?

ダンキ:私?大丈夫だ、何の問題もない。

スコーン:おかしい……

ダンキ:ちょうど良かった、良いニュースがある。オペラハウスで行方不明者の一部が見つかったそうだ。

スコーン:見つかった?つまり……誘拐事件はクロウリーたちの仕業じゃない?

ダンキ:それはまだ断定出来ない、被害者は精神的に問題があるみたいだから、聞き取りも出来ない……教会で何か見つけたか?

スコーン:そうだ!早く戻らないと!彼がオレを待ってる!

ダンキ:彼?おいっ!はぁ、最後まで話てから行け……


 御侍と別れた若い保安官は、すぐにアムビエル教会に戻った。教会の近くには、クロウリーから逃がした食霊を隠していたから。

スコーン:(食霊は御侍の命令に逆らうことは出来ない、クロウリーにもう捕まってはいけない……今までは閉じ込めるだけで済んだけれど、もしかしたらもっと酷いことに……)

スコーン:ハァ……おいっ、どこにいる?おーい!

 急いで教会に戻ったが、どこにも少年はいなかった。彼は落ち込んだ、 悔しさと後ろめたさが押し寄せたため、探し人が木陰の後ろから見ていたことに気付かない。

ハギス:先生……どうして隠れなきゃいけないの……

???:ハギス、そのひとは保安官ですよ。

ハギス:保安官……

???:ハギスはこの前オペラハウスで物を盗みましたよね。

ハギス:盗んだ?いや……盗んでない、御侍様が……

???:でも保安官たちはそんな事知りませんよ。だから、彼は貴方を助けに来た訳じゃありません、貴方を捕まえに来たのです。

ハギス:いや……もう閉じ込められたくない……先生!早く逃げよう!

???:フフ……ちょうどいいですね、新しい事を教えようと思っていたのです、行きましょう。

 男は恐怖で震える少年を支え、マントで彼を包み、暗い影の中彼を現場から連れ去った。


再び訪れる

放浪商人を自称する青年

シェリー:……三年前、何があったか知っているの?

スコーン:三年前、オレは「黒い黎明」の調査をしていた、そして……オレの御侍こそ、あの時クロウリーを逮捕した保安官、ダンキだ。

シェリー:……ハギスに先生がいることは知っているかしら?

スコーン:先生?

シェリー:このチェス盤は、その先生の物らしいわ。

 シェリーはチェス盤を取り出して少年の前に差し出した、すると相手の表情が暗くなっていくのが見えた。

スコーン:……オレは確かに、このチェス盤を知っている……

三年前

セロ町郊外

ダンキ:家に着いたら、変な事を言うなよ。

スコーン:?

ダンキ:忘れたか?この前取り調べで何も聞き出せなくて、そんな自分に腹を立ててただろ?

スコーン:……わかった。

 ダンキは笑いながら食霊の頭をなでた。食霊もスキンシップに慣れていたようで、どう御侍の役に立てるか考えていた。

 コンコンーー

ダンキ:失礼します、保安署の者です。

???(青年):すみません、何か事件でも起きたのですか?

ダンキ:事件ではありません、外から来た方に簡単に住民登録をしてもらおうと思いました。失礼ですが、長く滞在する予定ですか?

???(青年):私は旅の商人です。しばらくここに滞在し、旅の費用が貯まったらすぐにここを離れる予定です。

ダンキ:そうですか……おや、チェスが好きなんですか?

???(青年):フフ、暇つぶしのための物ですよ。

ダンキ:相手がいないと出来ませんよね?買い物客と一緒にするんですか?

???(青年):自分とさすのも楽しいものですよ。

スコーン:それは何ですか?

ダンキ:おいっ!人様の物を勝手に触るな?!

ダンキ:……すみません、私の相棒は少しせっかちでして、気にしないでください。

???(青年):いえいえ……それは私の実験道具です。万が一もありますので、あまり触れない方が良いですよ。

スコーン:実験?

???(青年):錬金術を聞いたことはありませんか?まだ研究段階ですが、いつか実用化したいと思っているんです。

ダンキ:錬金術?ゴミを金に変える法術ですか?

???(青年):それだけではありませんよ……錬金術に精通すれば、死者を復活させることだって出来ます。

ダンキ:それは……大げさではないですか……

???(青年):フフ……この世界に、ありえない事なんてありませんよ?お二人の大切なひとが突然亡くなった時、何に代えても復活させようとするでしょう?

スコーン:しない。

???(青年):ほう?

スコーン:バタフライエフェクトというのを聞いたことがある。わずかな変化で、世界に影響してしまうかもしれない……私欲のために、誰かを陥れるようなことをしたりしない。

ダンキ:コホンッ……まあまあ、ではこれで失礼いたします。行くぞ。

 客人が帰って行くのを確認した後、部屋の主はやっと握り締めていた青いペンダントを置いた。既に閉じられたドアには、先程まで立っていた正義の心を持つ少年がチラつく。

???(青年):……実に興味深い……いつか、貴方がその選択をする日が来るのを楽しみにしています……


火災現場

災害後の定住

オペラハウス

 軍団長である少女はステージの上から神恩軍を指示していた。火災が起きた現場だったため、彼女は大粒の汗をかいていた。声も絶えず叫んでいたことで枯れて来ている。しかし彼女の顔から疲れは見えない。

神恩軍兵士:報告します!二人の負傷者の意識が戻っていることを確認しました、聞き取りが可能です!

ドーナツ:どこにいる?

神恩軍兵士:えっと……

ヌガー:このバカ!

 兵士が答えようとした瞬間、どこからともなく怒号が飛んで来た。軍団長が声の方を見ると、観客席である少女が少年の頬をつねって、説教しているのが見えた。

ヌガー:叫ばないでって言ったでしょう!喉が潰れたらどうするんですか?!

シフォンケーキ:ゴホッゲホッ……俺……

ヌガー:口答えする気ですか!次の公演を楽しみにしていたのでしょう?せっかく素敵な衣装を用意したのに、ステージに上がれなくて後悔するのは貴方ですからね!

シフォンケーキ:……公演より、お前を助ける方が大事だったから……

ドーナツ:お二人、少し宜しいでしょうか?神恩軍の聞き取りにご協力願います。

ヌガー:彼は喉の調子が悪いみたいです……私がお答えいたします。

ドーナツ:今日は公演がないはずですが、どうしてこちらに来たのでしょうか?

ヌガー:数日後ここで公演する予定だったので、前もって会場の下見に来ました。新しい衣装を作るためでもあります。

ドーナツ:では……お二人はここに着いた後に起きた事を覚えていますか?

ヌガー:……発狂した人がいました。その人はライターを出して何かをしようとしていた所、誰かにぶつかって転んでしまい、火事を引き起こしました。

ドーナツ:発狂?

ヌガー:具体的なことは私にもわかりません、途中酸欠で一回意識を失ったみたいなんです。意識が戻った時には、既に貴方方が到着していました。

シフォンケーキ:?

ドーナツ:……ご協力ありがとうございます、ゆっくり休んでください。公演の成功を祈っています。

 少女が離れて行くのを確認して、ヌガーはやっとホッとしたように溜息をついた。

ヌガーオペラハウスの損傷が大きくなくて良かった。急いで補修すれば、公演が出来るかもしれないわ。

シフォンケーキヌガー……ゴホッ、ど、どうして嘘をついたの?

ヌガー:バカ!彼女に「時空の輪」の欠片のせいであの人たちが発狂したって伝えたら、欠片は凶器になって、私たちはそれを持ち帰れなくなるでしょう。

シフォンケーキ:そっか……

ヌガー:もう口を閉じてなさい……欠片を手に入れた、薬を作ってその喉を治してあげます!

シフォンケーキ:おうっ!ゴホゴホッ……

ヌガー:うるさいっ!これ以上話したら、口を塞ぎますよ!

シフォンケーキ:…………


強奪

計画された略奪?

保安署


 保安署は閑散としているため、ハギスはしばらくぶらぶらしても、数人しか見かけなかった。ついイライラして足早に歩いていると、最終的に走り出してしまった。

 タタタッ――

ハギス:捕まえた!

おかしな少女:!!!

 ハギスは急に足を止め、彼を追っていた女の子は反応できず危うく彼にぶつかるところだった。

おかしな少女:貴方は……

ハギス:君は?

おかしな少女:……

ハギス:あれ?ここはスコーンのカードがないと入れないじゃなかったの?どうやって入って来たの?

おかしな少女:……入る方法があったのよ。

ハギス:でも……キャンディ屋の方が楽しいのに、どうしてこんなの所に来たの?

おかしな少女:…………

ハギス:何か話してよ。

おかしな少女:貴方は……「黒い黎明」のひと?

ハギス:また「黒い黎明」!どうしてみんなこれを聞くんだ!

おかしな少女:嘘をつかないで、「黒い黎明」を知らない訳がないでしょう!

ハギス:嘘はついてない!噓つきは大嫌いだ!

おかしな少女:なら、どうして「黒い黎明」のペンダントをつけているの?

ハギス:ペンダント?これは……これは先生のだ!

おかしな少女:違う!これは「黒い黎明」の物よ!

ハギス:先生のだ!

おかしな少女:……「黒い黎明」の物なら、黒い太陽のシンボルがあるはず……ペンダントを見せてくれない?

ハギス:ほら、見せれば良いでしょう!

 ハギスは無防備にペンダントを差し出すと、なんと女の子はペンダントを奪って逃げだした。

ハギス:ペッ……ペンダント!あああああ!!!!!返して!!!!!

おかしな少女:!


モノローグ

命についての独白

……

この世界はつまらない。

人々は毎日忙しなく過ごし、苦難とつかのまの幸せで自分を満たす。

そしてまた時間に追われ、全てが無に帰す。

私は死に触れたことがある。それは冷たく、硬く、絶望を覚えるもの。

すぐそばにあるのに、何も出来ない苦痛。

あの苦痛を体験したから、それを永久に埋葬すると決めた。

もし貴方の死は、覆すことの出来ない既定事実なら。

じゃあ、私は「死」を長い歴史の中から、徹底的に抹殺しよう。

貴方は無罪だ。

無知のまま忙しなく過ごす人々よりも、価値のある命だ。

賎しい、卑しい人々は、貴方の再生のため、自分を捧げることはべきだ。

それこそが彼らが一生のうち、最も輝くの瞬間だ。

あの世界は、寒いですか?

もう少しだけ、待っていてください。

夢の中の全てを実現させます。

貴方の笑顔、貴方の幸せ、貴方が愛した全て……

どんな対価を払おうと、必ず再現してみせます。


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タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
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  • RPG(ロールプレイング)
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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