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カツ丼・エピソード

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最終更新者: 時雨

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カツ丼のエピソード

明るく熱血、正義感がとても強く、単純すぎて少しおバカな少年。かつては巡査として働いていた。身体能力が高い、腕っぷしも強く、足も速い、犯人確保を得意としている。警視庁の裏の顔を見てしまったため、巡査を辞めることに。自分だけの正義を探すために日暮探偵社の一員となった。

Ⅰ.弱虫

長い眠りの中、大きな声によって起こされた。


血と煙の匂い、角で倒れているゴミ箱から出る悪臭、太陽を抱いているかのような高温でさえも……泣き叫んでいる彼の声の方が強烈だった。


彼は俺の御侍だ。彼は俺を見た瞬間、驚きも失望もせず、鼓膜を突き破るような泣き声を上げながら、指示を飛ばして来た。


「あ、あいつを、追ってくれ!」


あまりの衝撃で俺はすぐに反応出来なかった。鼻水と涙で大変なことになっている彼の顔をボーっと見た後、彼のお腹の傷から血が出ていることに気付いた。


「でも、血が出ているよ、早く手当てしないと死んじゃう!召喚されたばっかりなのに、長官を失うなんてイヤだ!」

「いいから、早くっ!……うっ、早く行け!」


彼の真っ赤な傷と真っ白な顔は、恐ろしい程に対照的に映った。俺はやはり動けず、揺れているが迷いのない彼の両目を見つめた。


「だから早く行け!うっ……な、殴るぞ!」


彼は持っていた銃を俺に向かって投げて来た。それは俺のすねに当たって、痛みで泣きそうになった。

だけどこの痛みよりも、召喚されたばかりなのに御侍にこんな扱いをされている事に泣きそうだった。


(酷い……)


「行ってくる!」


御侍は泣きすぎたせいか、話している時も嗚咽が止まらない。その姿は弱々しく、まるで子どものようで、どれだけ大声で叫んでいても、迫力が感じられない。

でも、契約を結んでいるからか、あの決意に満ちた眼差しを前に、俺は彼に逆らうつもりは微塵もなかった。


誰を追えばいいのか、追いついたらどうすればいいのかわからなかったけど、本能のままに走って、御侍を傷つけたであろう人物を捕まえた。

俺はその者を地面に押さえつけ、大きく息を吸って呼吸を整えた。


(あれ、こんな時何を言えばいいんだろう?)


幸い、近くの巡査がすぐに俺たちを見つけてくれた。


「こっ、ここで何があった?」

「君は良い人なのか?」

「あ、ああ」

「こいつを捕まえてくれ!悪者だ!」


御侍がいる場所に戻った頃には、俺の両足は疲れてガクガクになっていた。

御侍は目を閉じたまま、横たわったまま反応がない。

俺は彼の横に膝をつくと、頭の中は真っ白になっていた。汗が地面に滴る音だけが聞こえる。


「何をしているんですか?」

声がした方を向くと、長い刀を持っている細身の女の子が、真剣な表情で立っていた。


「俺……」

「何をボーっとしているんですか?まだ息があります、早く病院に連れて行ってください!」


命令のようなその言葉をきっかけに、俺はすぐに自分の袖を引きちぎり、無造作に御侍の腰に巻きつけ、彼を抱き上げて走り出した。

だけど、数歩走るとすぐに引き返すこととなった。うまく口が開かない。


「どうかしましたか?」

「病院、病院はどこにあるんだ?」


御侍が病院で目覚めた時、自分の状態がいかに深刻か彼の視線でわかった。

幸い彼はまだ弱っているみたいで、すぐにまた目を閉じた。


「あの……」

鼻をすすってから彼の方を見た。

「ごめんなさい」

「え?」


御侍は顔を逸らして、赤くなった頬を隠そうとした。

「あんな酷い態度で貴方に命令してごめん、あの時は焦っていたから」

「いや、そのせいで泣いている訳じゃないよ。違う!泣いてない!徹夜したから目が腫れただけだ。とにかく無事で良かったよ、ははは……」

「あと……」


彼は心の準備が出来たようでわ改めて俺の方を向いた。

病院の白いカーテンは、黄金色の夕焼けに照らされ橙色になっていた。そして風に吹かれ、軽やかになびいた。

隙間から光が差し込んできて、床やベッド、俺の手に届くところに散った。


「ありがとう」


輝いている御侍の笑顔を見て、鼻の奥がツンとなった。


「これからもよろしくな、相棒」


俺もつられて笑い出した。興奮して、思わず点滴が刺さっている方の手を強く握ってしまった。

「いった!」

「ごめん!嬉しくてつい!うわっ!血が出ているよ!どうしようどうしよう!ナースコール!あああそんなんじゃ間に合わない!ナースさん!ナースさん大変だ!」


Ⅱ.おっちょこちょい

「なーにが相棒だ、相棒をほったらかして一人で任務に出る奴がいるかよ」


アルコールを含ませた綿棒を出来た擦り傷に強く押し当てると、彼は痛そうな声を上げた。なんだか可哀想になって、すぐに綿棒を外した。


「ごめんごめん、危ない事に巻き込みたくなかったんだ」

「俺を連れて行ってくれないし、その上毎回傷だらけになって帰って来るから、俺は皆から弱虫だって言われてるんだぞ!それに、危険な状況になっても俺を庇おうとするなよ。俺は食霊だから傷の治りが早いんだ!そうだな、肉をいっぱい食わせてくれたら、傷が出来てもすぐに元気になるよ!」

「わかったって、本当にごめん!また冷蔵庫を肉でいっぱいにしてやるから!」


その言葉を聞いて、俺はニカッと笑った。


俺の御侍は別に犯罪者が恐れる大物なんかじゃない、彼は警視庁にいる極普通の巡査に過ぎない。なのに、いつも危険な任務に志願していた。


相棒も連れずに、いつも一人で凶悪な犯罪者を追いかけている。

もやしみたいに痩せているクセに。


彼のおかけで、俺も巡査になった。

迷子の子どもを母親のところに連れて行ったり、屋根に登って降りられなくなった子猫を救出したり、年老いたじいさんばあさんが道路を渡れるように手を貸したり……とにかく、この仕事が大好きだ!


それに制服もとっても!カッコいい!


たまにも泥棒を捕まえたりもした。俺は足が早いから、一番得意な業務だ。

些細な雑事ばかりだけど、俺はこの仕事を誇りに思っている。


地味な仕事が多ければ多い程、この町が安全で平和であることを示しているから。


ただ、不満があるとしたら……

ーーもっと御侍の力になりたいけど、なかなか機会がないことだ。


彼はそそっかしい人で、いつも傷だらけになる。

凶悪犯を捕まえることは、泥棒を捕まえるのと違って、被害者の感謝の笑顔が見れない、凶悪犯の罵倒しか聞こえないんだ。

でも何故か彼は

俺を好きなのは俺を任務に連れて行ってくれない。


少しでも彼の重荷を分担してあげたい……


「で、今回はどんな悪者を捕まえたんだ?」


御侍はすぐに答えなかった。ほんの少しの沈黙の後わ彼は頭を掻きながら、ヘラヘラと笑い始めた。

「へへっ、逃しちゃった」

「は?君から逃げられるってことは、かなりの相手だろ?」

「それ、褒めているのか?」

「何言ってんだよ、君は凄いだろ!」


どうしてか、水を飲んでいた御侍は俺の言葉を聞いて急に激しく咳き込んだ。

「ゴホゴホッ!褒めてくれてありがとう!安心して、次は絶対に捕まえてやるから!」


御侍の声はいつも通り元気と自信に満ち溢れていた。彼はいつも有言実行してくれる、だから俺も安心して薬箱を片付けた。


この時、突然話題を変えた彼の違和感に、自信の裏に隠していた彼の不安に、もし気付いていれば……

もしかしたら、全ては変わっていたかもしれない。


Ⅲ.運が悪い

カツ丼!」

「はいっ!」


思わず点呼を取る時の勢いで応えてしまった。振り返ると、そこにはここで唯一俺をあだ名で呼ばない親友である玉子焼きが立っていた。

しかし、いつも冷静沈着で無表情な彼女は、何故か今日は焦っているように見えた。


「また子猫が川に落ちてしまったのか!それとも、子どもの風船が気に引っかかったとか?」

「いいえ……」

彼女は言い淀みながら、不安そうな表情を見せた。


「あなたの御侍ちいて話があります……」

「彼は報復を受け、二発打たれた上に刃物で刺されたそうです」

「既に病院に運ばれましたが、まだ命の危険があるそうです」

カツ丼、待ってください!」


突然周りの音が聞こえなくなった。何かが脳内で轟いている、頭蓋骨が割れるような激しい音が鳴り響いている。

俺は玉子焼きの制止を振り切り、まるで驚いた馬のように猛ダッシュを始めた。


(長官……長官……長官……)


あの太陽のような笑顔で頭がいっぱいになった。

あの安心感のある笑顔をもう一度見たいと必死になった。


(大丈夫だ、大丈夫だ……)


(彼なら絶対に大丈夫だ)


病院の中はらいつも通り白で埋め尽くされていた。

白い病室の中、白い布団に包まれた彼の白い顔だけが見えた。

周りの環境に溶け込む程に白く、まるで透明になったかのようだ。


「運が悪かったな、まさか犯人の家族に目を付けられるとは」

「本当だな、犯罪者が罪を償うのは当たり前のことなのに、まさか巡査に報復しようとするとは」

「まったく、怖い世の中だ……」


一瞬、何を言っているのか分からなかった。

運が悪かった?

新しい靴を履いている時にうっかり水たまりを踏んじゃう事、買ったばかりのクレープを地面に落としちゃった事、こういうのが「運が悪い」って事なんだと俺はわかっている。


だけど……悪者を捕まえて正義を貫き通した御侍がわ報復された事って……

「運が悪い」という簡単な言葉で片付けて良いのか?


これはれっきとした犯罪だ。


「怪我をしたのは俺の御侍だ。犯人はいまどこにいる?彼に聞きたいことがある」

俺に尋ねられた巡査は、答えを躊躇した。


「俺は巡査の一人として、今回の襲撃事件についての調査を申請します」


規則通り申請書を提出すると、警視庁はすぐに刑務所の訪問を許可してくれた。

だけど驚いたことに、相手は二十代の女の子だった。


「どうして御侍を傷つけた?」

「御侍?」

彼女はしばらく考え込むと、困惑した表情は急に冷たくなった。


「あの人は貴方の御侍なの?へぇ、御侍がああなら、食霊も食霊ね、同じくらい愚か」

「どういう意味だ!」

「愚かじゃないなら、私にそんなバカな質問を聞いたりしないわ。どうして?あいつが死ぬべきだからよ」

「やめろ!この世に死ぬべき者なんていない!しかも、御侍は悪者を逮捕し、民のために町を守っているんだ、どうして死ななければならない!」

「民のために?」

彼女は嘲笑った後、目が微かな絶望な染まった。


「貴方の御侍は何もわかっていない!」

「どういうこと?」


「私の兄、私の兄は無実だ!彼は他人に利用されただけなのに!あの巡査は、理由も聞かずに彼を連れ去ったのよ!兄は、もうすぐ生まれてくる自分の子どもの顔も見られないなんて……」

「嘘だ!警視庁……警視庁はきっと全て調査した上で御侍を派遣して犯人を逮捕させたんだ」

「警視庁?警視庁の言葉を全て鵜呑みにするのね」

「なっ……」

「もういい、これ以上貴方と話すことはない」


女の子はそう言ってベッドに倒れ込み、俺が何を聞いても声を発さなくなった。

仕方がないから、俺はとりあえず帰ることにした。


それが、最初で最後の面会だとも知らずに。


Ⅳ.臆病者

俺は刑務所を出て病院に戻り、ガラス越しに御侍を見守った。

彼は既に峠を越えたみたいで、医者からは「すぐにでも元気になってに家に帰れるだろう」と言われた。

高く吊るされたボトルを見つめ、彼の血管に注入されていく冷たい液体を一滴、二滴と数えた。


改めて考えた。あの少女に言葉はあまりにも根拠がなく、説得力もなかった。

それに、面会を拒否されているから、これ以上彼女にこだわっていても埒が明かない。

俺は、この問題を一先ず脇に置くことにした。


警視庁ならが全てを調査してくれると、確信していたからだ。


一晩中病院にいたが、御侍は目覚めなかった。日が昇ったから、俺は警視庁に戻って仕事をしなければならなくなった。

たった一人の巡査が入院しただけで、警視庁は何も変わらない。

いつも通り業務が続く。


カツ丼、電話!」

「え?はいっ!ああ、本当ですか?!良かった!すぐに向かいます!」


人混みをかき分け、警視庁から飛び出て、病院へと向かった。


(彼が目覚めた!)


俺はかつてない程に喜んだ。無茶をする彼をどう説教するか、どれだけ肉を買ってもらうか、色々と考えた。


自分の足の早さに今まで不満はなかったけど、今日ばかりはもっと、もっと早くと自分を追い込んだ。

一刻も早く、彼のそばに行きたかったんだ。


しかし、唐突に状況が変わった。

俺はその場に立ち尽くすことしか出来なかった。


契約が消えた。

御侍との契約が消えた。

契約が消えたということは…


あまりの驚きに身動きが取れず、何の反応も出来なかった。

汗が額から目に流れ込んで、針に刺されたような痛みに襲われるまで、どれだけの時間が経過したかわからない。


目の前が霞んでいて、契約による導きも失われているけど、果物屋の品物をひっくり返し、階段につまずいたりしながらも、よろよろとどうにか足を進めた。

転んで出血した膝をさすることも出来ないまま、立ち上がって走り続けた。手足がしびれて感覚が失っていき、喉から血がせり上がってくるのを感じた頃。


白い部屋に横たわり、上から下まで白に溶け込んでいる御侍が見えた。


「臆病者だな」

「そうだな、巡査が恨まれるなんて日常茶飯事だろ、こんな事で自殺するなんて」

「情けねぇ、噂になったら俺たち巡査がなんて言われるか」


自殺?

彼のような誠実で、熱血で、正義のために命を捨てるような男が自殺する訳がない。

自殺なんてありえない。


「嘘だ!」

「なんだ?どこのガキだ」

「俺の御侍が自殺したなんて嘘だ!あんなに笑顔で毎日仕事をしている人が、自殺なんてする筈がない!それに俺はガキじゃない!俺は……俺は……!」

「ああ、あいつの食霊か」

「御侍を失うとはね、お気の毒に。もういいか、喧嘩する気はないからな」


去っていく巡査たちの後ろ姿を見ていると、視線の端に白い布に覆われた御侍の輪郭が見えた。


傷だらけで任務を終えた彼が、傷は英雄の勲章だと誇らしげに見せびらかして来たことを思い出した。

炎天下の中任務から帰ってきた彼が、冷蔵庫を開けると生肉だけが山積みになっているのに気付き、子どものようにガッカリしていた様子を思い出した。

彼のことを思うと、思い出の中の世界は色とりどりで、活き活きとしいてる、今ある世界とは異なる世界のようだ。


彼は、こんなつまらない単色に染るべきじゃない。

なら俺が、彼が残した空白に、真実の色を重ねよう。


「俺はガキなんかじゃない!正義の味方だ!」

そして、彼の最も忠実な相棒だ。


俺の声が病院内に響き渡ると、遠くから嘲笑う声が聞こえてきた。病室から顔を出して俺のことを不思議そうに見ている者もいる。それでも俺は背筋を伸ばし、堂々と病院を出た。


警視庁に戻った俺は、白い壁と黒い床、そして白いシャツと黒い制服を着た人たちを見た。

ここは相変わらず白黒ハッキリとしている。


俺は御侍を信じている。だから、彼がいた警視庁を信じる。 これからも、彼の代わりに正義を守り、真実を見つけていく。

彼が現実逃避のために自殺した臆病者ではないことを証明してみせる。


カツ丼


玉子焼きだ。


「副庁長が呼んでいます」


Ⅴ.カツ丼

巡査は尋問の後、自腹を切って犯人にカツ丼をご馳走することがある。

特に深夜になると、犯人たちはその贅沢な一口に感動して、全てを白状する。

だからカツ丼というのは、警視庁の犯人への優しさなどではない。

あくまで、事件を早く解決させるための手段に過ぎないのだ。


それを聞いたカツ丼の御侍は「自分の食霊を道具にさせたりしない」と心に決めた。

カツ丼は彼にとって、ただの食霊ではない、なくてはならない相棒だからだ。


更に……カツ丼は正義、真実、そして未来を信じている純粋なひとだった。

彼自身と違って……

あのような絶望的な闇に……触れてしまったから。


いつか全ての闇に立ち向かえるように成長したら、カツ丼と共にそれに立ち向かおうと彼は決めていた。


最初、カツ丼は彼の想像通り、自分から情熱や正義感などあらゆる輝かしい物を学んだ。


そしてより多くの人の笑顔を見守っていくと、共に誓った。


ただ、現実は想像していた物とはかけ離れていたのだ。

深追いするあまり、絶望の淵に落ちてしまった。


しかし、彼は決して臆することはなかった。

真実を探究し、正義を貫くことが彼の使命だったから。


ようやく真実に近づきそうになっていた時、彼は報復を受けた。


彼は自分を殺そうとした少女を恨んではいなかった。

自分が上官の命令に盲目的に従ったため、無実な命がこの世から永遠に消えてしまった。

だから、報復されても恨むことなんて出来ない。


そして、負傷した後……

口封じのために殺されても、さほど驚くことではない。


彼は病院のベッドに横たわり、必死に目を見開いて、横にいる悪人を見つめた。


死に直面しても、彼は恨んだり、恐れたりしなかった。

ただ、この人の顔だけはしっかりと覚えておきたいと思っていた。


彼は知っていたり

いずれ誰かが彼に裁きを下すだろうと。



ただ……

カツ丼は……


(私はただ、貴方に光だけを見せたかったんだ……だけど結局、この危険な陰謀に巻き込んでしまった……)


そう思った彼は、思いっきり手を上げた。だけど、あの男が自分の命を繋いでいる細い管をいとも簡単に千切る様子を、ただ見つめることしか出来なかった。



あの日の後、カツ丼は警視庁の副疔長から手紙受け取った。


自分の御侍からの手紙だ。

最も信頼している戦友からの手紙だ。


御侍がいつこの手紙を残したのかわからなかった。


ただ、手紙の中の御侍は、いつものように世界の光と正義を信じていた。

カツ丼に自分が出来なかった事を、願いを叶えるためにも、正義を貫き続けて欲しいと願っていた。


(この町を守ってくれ)


カツ丼は手にした手紙を握り締め、しっかりと頷いた。


警視庁は正義の象徴であり、今まさに自分の力が必要とされている。


御侍がここにいたから、今の彼はここにいる。


彼は御侍を死に至らしめ、自分を生かしている正義を、ここで守り続けると誓った。



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