スキンカーニバル 妄想遊行・ストーリー
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目次 (スキンカーニバル 妄想遊行・ストーリー)
①スターゲイジーパイ/煌めく晩餐会
ナイフラスト地方に残忍な国王がいた。
彼は毎晩、一人の美しい少女を花嫁として王宮に迎え入れるが、翌日は必ず彼女を殺すという。
人々は毎晩、王宮から届く少女の泣き声を聞いた。
その心が砕けそうな声は夜の安らぎを引き裂き、そして夜明けになると消える。
人々はこの国王の残忍さと悪行に耐えられなかった。
彼らは様々な方法で暴君の命令に反抗しようとしたが、結局は全て無駄となった。
だがいつしか、国王は隣国にまで手を伸ばし、花嫁を送ってするよう要求し始めた。
隣国の王と王妃たちも困り果てている。
彼らには獰猛な国王に抗う力はなかったのだ。
しかし、罪のない人を犠牲にすることも望まない。
何か、その凶暴な国王を阻止出来る方法はないのだろうか?
「父君、母君、わたしに行かせてください」
途方に暮れていると、隣国の若い姫が両親の前に立った。
「自分を犠牲にして、暴君の花嫁になります」
姫の言葉に恐れはない、真剣そのものだった。
隣国の国王と王妃が反対しているにもかかわらず、姫の主張と暴君の催促を前に、彼らは娘を捨てざるを得なかった。
別れの当日、姫は最も華麗な服に着替えた。黒い髪は腰まで真っすぐ伸び、グレーの瞳には星が煌めいているよう。そして、滑らかな肌は雪のように白い。
まるで一輪のバラのような美しさだった。
人々は姫の美貌と勇気に驚嘆すると同時に、これから萎れて行く彼女の命を嘆いた。
姫の目に一切の迷いはない。彼女は別れを惜しんで両手で顔を覆い、泣いている王妃と国王にキスをして別れを告げた。
彼女は一歩、一歩、馬車に踏み入れ、国民の視線が遠ざかってゆく。
それから、隣国の人々は姫の情報を得る事はなかった。
ある日、あの国の情報が届くまでは。
姫を妻にした後、若い勇士が王宮に潜り、ある夜国王を短剣で殺したという。
暴君は死んだのだ。
人々は先王の派閥と旧貴族らを消し、新しい玉座にその若い勇士を座らせた。
「隣国の新王からの言伝です、両国の和平を願うため、今夜は我が国へ正式に訪問するとの事」
国王は快く同意したが、娘の犠牲を思い出すと、少しばかり暗い気持ちになった。
夜が来た。
無数の花が飾られたカボチャの馬車がゆっくりと隣国に入って行った。どうして新王がこのような馬車に乗っているのだと、人々が困惑している時、ゆっくりと馬車の扉が開いた。
馬車の中には美しい少女が座っていた。ワインレッドのドレスを身に纏い、王権の象徴である聖冠を被っている。
「あ、あの方は__」
人々は目を疑った。
「皆さまに祝福と平和捧げます。これから、あたしが隣国の新王よ」
かつての姫はゆっくりと馬車を降りる、彼女の目では「勇敢」という名の光が眩しく煌めいていた。
②ペルセベ/暗夜の守護者
コウモリの群れは真夜中の鐘の音を追いかけて、崖の縁に屹立する古城へと集まった。
彼らは綺麗に磨かれた靴を履き、従者を乱暴に扱い、自分より身分の高い人に媚びる。
彼女らはピンク色の贅沢なドレスを身に纏い、首にある色鮮やかな宝石をひたすらに他人に見せびらかしている。
城門前の馬車は黄金の河のように流れるが、悪路で砕けそうになっていた。様々の妖艶な仮面を被った者が窓から顔を出している。
催促しても誰も来ないため、貴族たちはやむを得ず馬車から降り、粛然と城門をくぐる事に。
一つの扉が開くと、一つの扉が閉まる。
この高慢な連中は、缶詰の中に閉じ込められたイワシのように、古城の主が決めたルールを守るしかない。
抑えきれなくて、隣の人とヒソヒソと会話をする者もいた。
「……これが新たな王が開いた舞踏会、かしら……」
新たな王は……怪物だ。
強く、横柄で、好戦的で、傲慢__
噂によると、鎖で岩すら砕ける巨人と鋭い牙で生者が最も大事な物を丸呑みにする犬神だそうだ。
彼……それとも犬?貴族たちが跪いて靴にキスしたくなるほどの独裁者というのは、謎の存在である。
最後の扉が開き、最後の扉が閉じた。
華美な装いの者たちはまるで生まれたてのヒナのよう、キラキラと輝く大広間で、階段の上にある真新しい玉座を眺めた。
そこには誰もいない。
ヒソヒソと話し声が広がる中、二つの足音が近づいてきた。
黒い新月が彼の忠実なパートナーと共に、レッドカーペットの上を歩いて来た。
「新王……」
「新王が来たぞ!!!」
貴族たちはその恐ろしい姿の黒犬を見て、大広間は驚きの声に満ちた。
彼らの新王はやはり……あの黒犬の怪物でしょうか。
それとも、その黒犬のそばにいる、黒髪の青年?
……
コホンッ、悪気はない。が、伝説の怪物の王が普通の人間のような恰好をしているものか?
賛辞が溢れている、誰も彼らから目を逸らせない。その男の唸り声が爆発するまでは。
「何だこのバカな集まりは!あのクソ野郎が俺様をバカにして、こんな弱い連中を集めてきたのかよ?!」
彼は思いっきり殴り合える集会だと思い、ノリノリで駆けつけたのに、まさかの光景に興が冷めたようだ。
居ても立っても居られない貴族たちを捨て置き、ペルセべは怒ったまま来た道を戻った。
新王の威厳?高価な王冠?
彼にとっては全部どうでもいい事だ。
彼はこの享楽の国を力でおさめられるし、未練なく離れる事も出来る。
ペルセべはイライラしながら黒髪をかき乱しているが、足取りに迷いはない。
今、まさに時が来たのだ。
③アクタック/血色の桎梏
パチン!と指が鳴った。
宴会の主は自ら指揮者のタクトを持ち上げ、豪華な幕に覆われたままの鳥籠に客人の視線を誘導する。
「紳士淑女の皆様、大変お待たせいたしました!いよいよ……今回のオークションの目玉商品の登場です!」
仮面やフードで顔を覆っている人々はひそひそと会話を交わしていた、まるで次のおもちゃをどう分解するかを考えている子どものようにはしゃいでいる。
素晴らしい、実に素晴らしい。これこそが彼の狙い通りだった。
宴の主は、自分のポケットの中で金貨がジャラジャラする音がもう聞こえているかのような得意げな表情を浮かべている。
だが、これ以上客人たちを夜風に晒してはいけない。
ロビーで蝋燭が次々と灯っていく、曖昧な煙が揺れ、異香が濃くなる。
雰囲気を盛り上げるかのように、ドライアイスの白い煙がホール内を流れていく。
その時、巨大な、冷たい鉤がゆっくりと降りてきた。
漁師が使う湾曲した鉤のようで、魚を簡単に突き通す鋭い針の先は、この時分厚い幕を突き刺していた。
その場にいた人々は首を伸ばして、鳥籠の中に居るカナリアの登場を期待していた。
入口に立つ守衛も例外ではなかった。
……柔らかそうに見える霧が、少しずつ彼らの背中を上っていることに気づかないまま。
「チューリップ・アンジェリケのような優しい髪色……」
「高貴な血統を象徴する銀灰色の瞳……」
「大蛇の鱗よりも冷たい肌……」
「さて、紳士淑女の皆様、今回の目玉商品を……是非その手に!」
返事がない。
商品の美しさに圧倒され、呼吸を奪われた人々が声を取り戻すまで、短い沈黙が続いた。
「……三千!」
「四千八百!」
「五千だ、郊外の農園付きで!」
ハンマープライス。
商品に絡みついている鎖の先端は、落札者の手に渡った。
「……貴方は……」
アクタックは顎を少し上げ、嬉しそうにしている落札者を見下ろした。
「ルールに則り、まずはお金を支払って頂きます」
「そっ、そうだな!早く来い、現金を渡す!」
落札者はしきりに宴の主を呼ぶ。
彼は持ち歩いていたバッグに入っていた金貨をテーブルに撒いた。宴の主は花が咲き誇るような笑顔で、輝く金貨を何度も撫でる。
「これでいいだろ?さっさと帰ろう!」
「……もういい」
アクタックは静かに返事をした。
「証拠を確保した……捕まえろ」
客人や守衛の誰もが気づいていないうちに宴会場は地獄絵図と化した。
客人たちは声を張り上げ、鳥獣のように散り追っ手から必死に逃げた。
「なっ、な……お前は誰だ……」
突然の出来事に落札者は床に倒れ込みながらも、ずるずると太った体を移動させ、背後にあるテーブルの下に隠れようとしていた。
「貴方のようなゲスに説明する必要はない」
アクタックはそう言いながら落札者に近づく、絡みついた鎖が音を立てる。
「だが、貴方の短い人生は残り僅かのようだから、情けに教えてやろう。犯罪の証拠を残した事以外で、貴方が犯した最大の過ちは……」
影は次第に煉獄を覆い、業火は燎原に燃え広がり、罪を消した。
「貴方は”ルール”を守る人だが」
「……残念なのは、貴方は未だにその”ルール”の主が誰であるかわかっていない事だ」
魔王は烈火の中央に立ち、魔を屠る刀を握りしめていた。
④レッドベルベットケーキ/薔薇の荊棘
「__足りない、まだ足りないです!みすぼらしい金額じゃ、神はお前たちの敬虔さを感じられないのです!」
「__もっと!もっと入れるんです!もっと贖罪金を払えば、巡礼の苦行から免れますから!」
グルイラオのある辺鄙な村で、贖罪券を売る聖職者たちが木箱の前に出来た長蛇の列に向かって大げさに言い放つ。
「__さあ、罪人たちよ、硬貨を箱の中に投げこみ、その音をもっと大きくしよう!聞いてごらん、この綺麗な金属の声は、魂が煉獄から飛び出る時の音に聞こえないですか!」
煽りにまた煽ると、ポケットから分不相応な貴重なネックレスを箱に入れる者も出て来た。
あっという間に、何の変哲もないない木箱が金貨や財宝でいっぱいになった。
「チャンスはこれっきりです__幸運児たちよ、貴方たちはまた一歩、罪の洗礼に近づきました__」
「神様の恩恵が皆に届きますように!」
大げさ祈りが、今日の略奪に終わりを告げる。
聖職者たちは木箱を持ち上げ、信者の視線から消えて行った。
「どんな偉い奴も、私たちに人の罪を赦す権利があると信じ切っているようだな……箱に金を投げるだけで……はははははっ!!!!!」
彼らは路地裏で大笑いしていた。
「あら、キラキラしたお宝たち!本当に、本当に可愛いわ!」
得意げな笑い声の中に、いきなり情熱的な女性の声が割りこんだ。
聖職者のような恰好をした女性は、ゆっくりと彼らに近づいて行く。
体中にの装飾と宝石が嵌めこまれた十字架は、このボロボロな路地裏で眩しいほどに輝いている。
木箱の金銀財宝を見て、彼女は大袈裟に唇を押さえる、まるでとんでもない物を見たかのように興奮していた。
何人かの聖職者が一斉にお辞儀をし、彼女の指にある一番大きな指輪に視線を向ける。
「私たちは既に貴方様の言う通り、付近の村を全部回りました!泥棒、強盗、殺人犯などの罪深い奴らは、罪が消せると聞くと一斉に群がって来ましたよ!」
「そうでなくっちゃ~罪にまみれている者ほど、金を使って自分の罪を洗い流そうとするものよ……」
聖職者の一人が木箱を叩いて、女性に近づき彼女の言葉を遮った。
「物は全部ここにあります。では、以前約束してくれた司教の指輪についてですが__」
「せっかちね?」女性は笑い出した。
「そうね、神がこの世にいたとしても、その恵みと権力は教会には及ばないわ。哀願する愚かな弱者たちと比べたら、あなたたちはこの無上の権力を求めている、最高に賢いじゃない……」
女は指輪を少しずつ、少しずつ指から外していく、聖職者たちは息を止めて固唾を飲んで見守っている。
「大変!忘れるところだったわ!」無上の権力の象徴をようやく外したところで、彼女は大袈裟な声を上げた。
「__主教の指輪は一つしかないわ、あたしは__誰に渡せばいいのかしら?」
電光石火、聖職者たちは餌を奪うハイエナのように飛び起き。
次の瞬間、殴り合いが始まった。
「主教の指輪を最初に見つけたのは私だ!私のものであるべきだ!」
「恩知らずめ!主教になれるのは私だ!」
「私の指輪を奪うな!」
やがて聖職者たちはの額から血が流れ、欲望に満ちた両眼を赤く染めた。
「あら!あたしは早く帰らなきゃ、怪我なんてしたら大変だわ!」
女は胸を押さえ、また大袈裟に言ってこの場を離れた。
そして、厄介物を振り払うかのように指輪を壁の隅に投げ捨てる。
路地裏の入口に逃げた途端、女の背後から怒鳴り声と人が地面に倒れ込む鈍い音が聞こえてきた。
「勤勉な罪人たちも、神の庇護を受け、栄光を享受できるようお祈りしますわ~」
女性は振り向いて、財宝の詰まった木箱を愛人の肌をさするかのように撫でながら、にっこりと笑った。
「だけど__あの指輪は本物だって、一言も言ってないわよね?」
⑤シーザーサラダ/自由の歌
むかしむかし、ある若い詩人がグルイラオ中を旅していたという。彼は愛する楽器を携え、自作の歌を歌っていた。
彼の歌声は無限の魔力に満ちている。
悲しんでいる人たちを笑顔に変え、絶望している人たちに希望を与えた。
人々は彼を愛し、彼が讃える無数の詩や文章を作った。
人々は彼を渇望し、彼が通るところには拍手と笑い声が鳴り響く。
「親愛なる詩人よ、君の素性を教えてくれないかい?」
「親愛なる詩人よ、君の行方を教えてくれないかい?」
人々は彼の名前を知りたがったが、彼は決して明かさなかった。
人々は彼の足を止めようとしたが、彼は決して止まることはなかった。
自由奔放な詩人は、ただ美しい歌声と愛する楽器を持って放浪するだけ。
彼の歌は人々に知れ渡り、宮中の貴族から庶民にまで歌い継がれた。
ある日、彼の存在が王様の目に止まった。
吟遊詩人は権力と富のために演奏したくはなかったが、王室の要請に逆らえず、皇宮に出向く事に。
「若者よ、君の琴には人の心を慰める力があると聞いた、一曲お願い出来るだろうか?」
「……御心のままに」
そして、詩人の歌声と琴音が煌びやかな宮殿に響き渡った。
人々は美しい音楽の中に陶酔していて、誰も詩人の目にある煩悶と軽蔑に気付かない。
一曲が終わると、王様はとても喜んでいた。
そして、王様が手を振ると、何人もの従者が色とりどりの宝石、金貨や絹を持って吟遊詩人の前に立った。
「これは……?」
「若者よ、私は君の音楽が大好きだ、君を王室専属の楽師として雇うことにした。君は数え切れないほどの財宝が手に入れるから、もう放浪する必要はないよ」
「……」
「どうした、若者よ、それだけでは足りないのか?」
「いいえ、私には何の価値もありません、私は自由に歌いたいだけなのです」
王様の笑顔が引きつった。
「若者よ、きっと旅の途中で疲れたんだろう。大丈夫だ、最高の客室と美食を用意しよう。十分な時間を掛けてこの件について考えるといい」
「違います、俺は……」
王様は拒否する吟遊詩人を無視し、従者に命令して彼を王宮の部屋に閉じ込めた。
美酒と金貨が次々と送られたが、吟遊詩人の心を動かすものはなかった。
彼は二度と口を開いて歌うことはなかった。
ある日、メイド長が突然王様の前にやってくると……
「陛下!大変です!吟遊詩人が逃げました!」
吟遊詩人は夜色に乗じて、煌めく金の延べ棒や銀貨を階段のように積み上げ、華麗な絹や毛皮を紐にして、窓から降りて王宮から逃げた。
彼にとって、金銀財宝は本当に価値のないものだっだのだ。何故なら、彼は自分の楽器を持ち去っただけで、他の財宝は全部自由の架け橋にしたのだから。
怒った王様は、吟遊詩人を捕えるために町中を捜索するよう命じた。
もちろん彼は成功しなかった。
鳥が最終的に鳥籠を破るのは、ただ晴れ空で飛ぶ事を望んだからだ。
⑥ムースケーキ/夜明け間近
グルイラオにはかつて暗黒の王国が存在していた。
愚かで無能な王がその王国を支配していたという。
自分のために国民を絶え間なく働かせ、華麗な城を建てさせた。弱者を出来る限り搾取して金を巻き上げ、豪奢な寝宮を飾った。
彼の暴政は国中の不満を引き起こした。それと同時に、隣国もこの国の現状を察知した。
無能な王の統治は風前の灯火。王国は内外共に危機に直面し、一触即発の状態に。
「王を目覚めさせる方法を思いついた」
ある日、歌劇団の団長が団員たちにこう言った。
年若い団長は黒いマントを羽織っていて、腰にあるおもちゃの宝剣がキラキラと輝いていた。
彼は王の腐敗と無能のせいで王国の滅亡を招いたという全く新しい劇を作り上げたのだ。
「戦士たちよ、私と共に王国の栄光を取り戻そう!」
少年団長は若い戦士を演じた。
戦士は剣を高々と掲げ、目をキラキラと光らせた。
彼は人々を率いて、硝煙立ち込める戦場に向かって突撃した。
旗と武器を掲げた人々は自分の弱さをわかっていても、勝利のために戦いたい渇望を隠さない。
「正義!その旗は破られてもなお雷雨の中ではためく!」
「勝利!その角笛は砕けてもなお戦場に響き渡る!」
彼は民を率い、王の統治を覆し、そして、彼の剣は王の心臓を貫いた。
人々は歓声を上げ、叫び、少年を取り囲んだ。王国はやがて新たな希望を迎えたのだ。
舞台が終わると、拍手と歓声が沸き起こり、誰しもが戦士の勇敢さに心を打たれた。
しかしーー
王はそれを歌劇団が自分を挑発しているとみなし、全ての怒りを若い団長にぶつけた。
少年は捏造された罪名によって、冷たい地下牢に入れられることに。
愚かな王はこれで彼の心と力をすり減らす事が出来ると思ったのだ。
少年と一緒に閉じ込められたのは、数羽の声が掠れたカラス。
公演中に羽を振り、拍手をするような動作をしただけという理由で。
「僕がここに閉じ込められたのは、彼の威厳を傷つけたから、じゃあ君たちは?君たちはただ飛んでいただけだ、何の罪があるのだというの?」
少年はため息をつきながらカラスに向かって呟く。しかしその時、地下牢の隅から微かに物音が聞こえてきた。
「誰かいるの?」
「団長!」
壁の向こうから見覚えのある面々……歌劇団員たちが出てきたのだ。
「どうしてみんなここにいるの?」
「愚かな王様が晩餐会に出かけている隙を狙って、忍び込んだんだ!」
「団長、早く僕たちと逃げましょう!」
「待って……」
少年は振り返り、自分と同じように閉じ込められているカラスを見た。
すると、新たな発想が彼の頭の中に浮かんだ。
……
晩餐会では、着飾った貴婦人や紳士が音楽に合わせて踊っていて、和やかな景色を作り上げていた。
突然、誰かが遠くに見える火を指差した。
「見ろ!なんだあれは!」
宮殿から少し離れた森が燃えていたのだ。そして、炎の中には真っ黒な少年が立っていた。
その背後には何羽ものカラスが鳴いて飛んでいる。
貴族たちは怯えた鳥の群れのように、礼儀や優雅さを忘れ逃げ惑った。
カラスの黒い羽は炎に照らされ、金色に輝く、まるで火を浴びて生まれ変わった鳳凰のようだ。
「戦士たちよ──私と共に王国の栄光を取り戻そう!」
少年は今回本物の宝剣を掲げている。
そして、その目には本物の炎よりも強い意志が燃えていた。
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