ハンバーガー・エピソード
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ハンバーガーのエピソード
自信に満ちあふれた、豪快なドイツ青年。
性格は明朗快活、スケートボードが大好き。
他人に褒められると謙虚な一面を示すが、実はチヤホヤされるのが大好き。
しかし女の子と二人きりになると右も左も分からなくなる。
Ⅰ 不調
(※誤字や文章がおかしい箇所を編集者の判断で変更して記載しています)
Ollie
caballero
Hardflip
……
風が耳元を掠っていく、体はスケートボードに連れられて舞い上がる。
オレは高台で次々と難易度の高いアクロバットを繰り出す。
オレにとって競技場はステージだ。
他人の演技の良し悪しなど気にしない、オレはただ好き勝手に舞い上がるだけだ。
「わお!ハンバーガーかっこいい」
「めっちゃかっけえ!」
「……」
喝采の声が絶えず伝わってくる。
バタ――
スケートボードが着地し、オレは立ち止まる。
右手を観衆に向けて高く振り上げる。
観衆はまるで喉が詰まったように沈黙し、手を振り下ろしたら、まるで指令を受けたかのように、観衆から鼓膜が破れてしまうかというほどの歓声が爆ぜた。
「チャンピオン!チャンピオン!チャンピオン!」
家に戻ったら、オレは適当にトロフィーを部屋の隅っこに投げ捨てた。
いったい何個目のチャンピオンなのか覚えていない。
スケートボードを学んでから今に至って、オレはあまりにも多くの相手を破ってきた。
素人からチャンピオンになるまで、オレは一日たりとも練習を怠ったことがない。どれだけのチャンピオンを手に入れてもそれは変わらなかった。
でも今……
オレはボードを持って鏡の前に立ち、自分を凝視する。頭の中で今日のことを思い返す、その動きがもたらした感覚を感じ取ろうとする。
ボードを下ろして乗ったオレは、狭い部屋の中で舞い出す。
翻し、蹴り上げる……
しばらくすると、オレは地面に座った。
「また……駄目だ」
何かがオレのリズムに詰まっている。
例えば高速に回り続ける歯車、たまに起こる不快な摩擦の音。
耳を澄ませて集中しなければ気付かないその摩擦を、オレは感じ取ったが、何処なのかはわからなかった。
この状況はもうかなり長い間続いていた。
何とかしなければならない。
そう思って、オレはボードを持って家を出た。
Ⅱ 滑り手旅団
街中を滑りながらオレは人並みを突き進んでいく。
ボードを蹴り、階段を飛び越え、周りの景色は視界を掠っていく。
たまにすれ違った通行人の驚いた声が耳に入ってくる、中には賛美の声も挟まれている。
いつもならば、オレは彼らにショーを披露してやっただろう。
崇拝されるのはいいことだ。
でも今日は駄目だ。
その不快な感覚はもうかなり長い間心の中に詰まっていた。
「何故だ」
空気に愚痴をこぼして、オレは次々と高難易度の動きをしていく。
その動きのどれも長い時間と努力を経てようやくマスターした親しいものだ、でも今はまるでいきなり離れていった友人のようだ。
挨拶はするが、ぎこちない。
オレは止まって前にある階段を見て大きく息を吸い込む。
ボードを手に取り、前に向けて走り出す。階段の間近に来てすぐボードを下ろして滑っていく。
体が空中で舞い踊り、ボードもまるで意識があるように翻る。
「動きは流暢……」
ボードを踏み、地面に落ち、体を安定させる、一連の動きに躓きがない。
「問題はいったい何処にあるんだ……」
心に詰まっているものは解けない。
その時、相次ぎと起こるボードの音がオレの思考を遮った。
「あんたがハンバーガーなのか?」
それは冷たい男の声だった。
頭を上げると、七・八人の男女が目の前に現れた。
「はじめまして、俺たちは滑り手の旅団だ」
その名前は聞いたことがある。滑り手の間ではかなり有名なグループだ。あちこちに旅をして、各地の滑り手に挑戦を挑んでいる。
「あんたがこの辺りで最も優秀な滑り手だと聞いた、一試合行ってみないか?」
一つの場所に長くいすぎたからこのような状況に陥ったのではないかと考えたことがある。滑り手の旅団なら、その経験を活かしてオレの問題を解決できるかもしれない。
「いいだろ!」
その挑戦、受けようじゃないか。
青年は驚きを隠せなかった、こうもあっさり受けるとは思ってなかったようだ。
が、彼はすぐ情緒を整えた。
「グルイラオ・スケートボード協会の採点標準で、レースショーでいく。」
「ここから町西まで、ルートはそれぞれの勝手でいい。アクロバットの点数が三位内であればあんたの勝ちだ。どうだ?」
三位内でオレの勝ち?
オレは意味有りげに笑った。
「どうもこうもねえ」
「怖気づいた?」
青年が目を細めた。
「オレが言いたいのは」
オレは笑いながら、
「一位を取れないなら勝ちとは言わないだろ」
Ⅲ 音楽少年
ゲームには勝利したけど、負けでもあった。
オレは簡単にスコアで滑り手の旅団を圧倒した、が、オレの問題は解決できないままだ。
「おまえのその感覚は聞いたことがないな」
青年は首を振った後、期待に満ちた表情で、
「おまえの実力なら最高の舞台に上がることもわけないだろう、本当に俺たちと一緒に来ないのか?」
「すまないが、今のところそんなつもりはない」
「いろんな場所に行けばもしかして解決策が見つかるかもしれないんだぞ」
青年はまだ諦めきれないようだ。
「おまえらは……もうかなりのところに行ったよな?」
「……」
滑り手の旅団は残念な顔を残していった。
オレは自分の練習に戻った。
「問題はいったいどこにあるんだ」
オレは慣れ親しんだ通りや車道を何度も何度も滑ったが、苦悩が増長する一方だった。
心の病になってしまいそうだ。
無意識のうちに、オレは広場にやってきた。
ここではいつもたくさんの滑り手が練習している、今でもかなり人が集まっている。
「誰かすごい奴がここで練習しているのか?」
滑りを止めて、オレは群衆の中心に向かった。
ずっと悩んで頭が腫れそうだから、他人の練習を見てリラックスするのも悪くない。
そう思って、オレは群衆の中心まで来た。
意外にも、目の前にいるのはスケートボードで踊ってる滑り手ではなかった。
それはエレキギターを弾きながら歌っている青年だった。
「道のりは厳しい、勇気があまりにも少ない、何を躊躇っているんだ、早く走らないか」
「Running、Running、Run right now」
「自由に走って、大声で笑って、Roaring、Roaring NOW!」
「……」
情熱的な音楽は、人間の魂を捉えるかのように、リズムラップを伴っていた。
体は無意識のうちに音楽につられて揺れ始め、心臓でさえ胸から飛び出したいようだった。
一曲の後、少年はギターを置いて、マイクを高くかざした。
「Thanks for listening、オレはコーラだ。この次はオレのオリジナル曲『ロックしよう、Hip-hop』を楽しんでくれ!」
群衆は再び沸騰した。
オレは一緒に沸騰したい気持ちを抑えて、必死に冷静を保とうとした。
とある一瞬で、オレは何かがわかったような気がした。
「もしかすると……こいつがオレの問題を解決できるかもしれない」
Ⅳ 悟り
その日から、コーラは毎日この広場に歌いにくる。
オレもトレーニング場をここに移した。
オレたちは変な友情を築き始めた。
互いにコミュニケーションはしない。
けど互いの感情を感じ取れる。
俺がボードに乗って空を飛び回るとき、コーラの曲もクライマックスを迎える。
コークのラップがよりエキサイティングになると、オレも更に踊りまくる。
よく判らない仕方で、心の靄が徐々に解けていく。
このような毎日は一ヶ月近く続いていた。
それから終わりが突然やってきた。
オレは最後の関門に阻まれた。
やはり、漠然とした感覚だけを頼っては駄目だ。
真に問題を理解しない限り、それを解決することはできない。
だからオレは、この問題に気付いた翌日に、コーラとの暗黙の了解を破った。
練習をやらずに、スケートボードを抱えて彼の前にやってきた。
「どうも、オレはハンバーガーだ」
「Hello boy」
コーラは驚いた風に、
「ユーの事は知っている、オレに何か用事?」
「おまえに聞きたいことがある」
オレは長く抱えてきた悩みや最近の不調な感覚をすべて彼に話した。
コーラはまず眉をひそめ、しばらく考えてから、いくつかの質問をした後、すぐに笑った。
「簡単だ、ユーの問題はもうわかった」
「But、それを解決するために、ユーはまずこのオレと一勝負しなけりゃならない」
「一勝負?」
オレは混乱した。
「YES!これまでのような別々とは違って、今回は一緒に」
そう言って、オレをスピーカーのそばに引っ張った。
「しっかり感じてみよう」
彼は言った。
音楽が始まり、オレは無意識にそのリズムに乗って踊り始めた。
スケートボードを踏み、オレは好き勝手に自分を飛ばし始めた。
「これは何の違いが……あるんだ?」
すぐに、オレはその問題に気付いた。
これは本当の意味の付け合わせであり、いつもの適当なものではない。オレは一人でやる時のように思い通りに動けないことに気付いた。
動きが長すぎると、リズムについていけない。
止まりが短すぎると、リズムを乱してしまう。
コーラの感情溢れる演奏はまるでオレを導いているようで、鮮やか過ぎることなく、全力で本当に表したいものを演奏していた。
その過程で正されたオレは、ようやく悟った。
彼の意図がわかった。
オレは自分に欠けていたものを見つけた。
それは表面上の付け合わせではなく……
「感情だ!」
「Yes、Congratulations、ハンバーガー」
テクニックやアクロバットで観衆の喝采を得ることに目が眩んだオレは、もっとも本質で単純なものを見落としてしまった。
オレのスケートボードは、技を見せびらかす道に偏ってしまった。
曲の後、オレは止まって、コーラの手を取った。
「ありが……あ、いや、Thanks、Cola」
「Yeah、それでいいぜ、Hamburger」
コーラはまるでまだ自分のロックの余韻に浸っているようで、オレに微笑んだ。
「一緒にもっと面白いことをやらないか?」
「え?」
「パートナーを組もうぜ、My brother、partner!」
「なぜ……Why?」
「学ぶべきものはまだまだたくさんあると思わないか?」
Ⅴ ハンバーガー
グルイラオは海に囲まれた商業の国である。
輸出入貿易の活発につれて、新興産業も現れてきた。
ここでは、素朴で古風なチャイナドレスと機械感溢れるピストルが同時に見られる。
グルイラオには、人々が考えもしないものに溢れている。
その中で、スケートボードはグルイラオの若者たちの間で流行ってる非常に特別なスポーツである。
それはサーフィンから始まり、堕神のせいで海での活動範囲が著しく減少した今、サーフィンは徐々に陸でのスケートボードに変わった。
「yaho〜」
今日ミドガルは二人の新しい客を迎えた。
空中でスケートボードに乗って踊っているハンバーガーは滞りなく一連の難しい動きを繰り出して、通行人の注目を集めた。
彼の後ろで、コーラは楽器の箱とスピーカーを引き摺ってゆっくり歩いていた。
「見たか?突破の気分は最高だ。おまえのおかげで、今のオレのスケートボード前よりもずっと滑らかになったぞ」
「喜んでくれて何よりだ、 My brother。But、興奮しすぎて今回の目的を忘れるなよ」
「安心しろ、忘れないさ」
ハンバーガーは笑いながら、一枚の鮮やかなチラシを取り出した。
「ナショナル・パフォーマンス・コンペティションだろ」
「……And?」
「あ……それから?」
「……」
コーラは再び溜息をついて、ポケットから一枚の招待状を取り出した。
「招待されたパフォーマンスもあったぞ」
そう言いながらコーラは再び招待状を開き、いくつものバツ印が描かれた招待者を見て難しい顔で呟いた。
「これは聖剣騎士団なのか、それともカナン傭兵団なのか……」
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