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ナシレマ・エピソード

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ナシレマのエピソード

好きな人のためなら何でもする少女。いつも恥ずかしげな表情で、普段はいつも海辺で日光浴している。外界で好きな人からちょっかいを受けると、コントロールを失い暴走しやすくなる。そんな彼女を止めるには、好きな人のハグが意外に効果てきめん。



Ⅰ 幸せな生活

御侍様はいつも幸せそうに笑っている。


きっと幸せな家庭を持っているからだと思う。


しかし、ご主人様がいないときに、御侍様は私に悩みを漏らす。


「ねえ、ナシレマ、結婚してからもう一年以上経ったのに、なぜ妊娠できないの?」

「大丈夫、いつかできるさ~」


私はいつも根気よく彼女を慰める。


御侍様はたまに子供のことで悩むが、幸い気持ちにそれが影響することはない。おそらく彼女の夫、


あの穏やかで賢い男の慰め方が私より上手だからだろう。


「大丈夫、きっとかわいい子供ができるから、それまでに二人の世界を十分に楽しもう。」


これこそ幸せな家族だよね、毎日彼達の幸せな笑顔を見ていて、私も思わず憧れるようになった。


「私をこんな風に愛してくれる方がいればいいな。」


この願望が私の心の中で根を下ろし、少しずつ大きな木になろうかという時、私は偶然ある光景を見た。あの優しい男は御侍様が飲む水に何かを入れた。


あれはなんだろう?


Ⅱ 偽りの愛情

あの男は毎日同じ時間に、御侍様のコップに白い薬を入れる。薬は水に触れた瞬間に溶ける。


御侍様が薬を飲むなんて聞いたことがないので、私は疑うようになった。


だから、あの男が再びコップに薬を入れた時、私はコップの中の水を入れ替える。


こうして、同じことが繰り返された。一か月後、御侍様は喜んで吉報を知らせに来た。


「あなた、ナシレマ、いいことがあったの!」

「そこまで喜ぶなんて、いったいどうしたんだい?」

夫は彼女に笑いかけながら聞いた。


「これ見て~」

御侍様は後ろに隠していた手を出し、報告書を私達に見せながら、恥ずかしそうに言った。

「私……妊娠した!」


その瞬間、白い薬が私の頭の中で浮かんできて、思わず男の顔に視線を向けた。


男のいつもの優雅な笑顔は既に消え失せている。


それどころかむしろ、彼は青い顔をしていた。


あ、なるほど、彼の蒼白な表情を見ると、あの薬は何なのか、想像がついた。


喜んでいる御侍様は夫の異常には気がつかない。男も短時間で驚いた表情を抑えていつも通りの顔を見せた。


本当の気持ちを一生懸命に隠そうとしている男と騙されていることを一切知らない御侍様を見つめ、私は思わず嫌悪感を覚えた。


「何よ、こんなの本当の愛じゃないでしょ?」


私は心の中でつぶやいた。


Ⅲ 背後に潜んでいる真相

御侍様のお腹が段々大きくなるにつれて、夫が家に帰らない日が増えている。


「仕事で忙しいと言っているけれど、週四回も外泊だなんて多すぎない?」

一人で家に居る御侍様は段々大きくなったお腹を撫でて独り言を言う。


そして夫が再び外泊するという日に、彼女は私にこう言った。

「ねえ、ナシレマ、お願いがあるんだけど、彼が本当に仕事をしているのか見てきてくれない?」

彼女はわざと何気ない口調で言った。


「別に疑っているわけではないの、ただの興味。これも愛情ってものよね」


私は分かったような、分からないような、そんな気持ちで出発した。


しかし、私は男の仕事先に行かなかった。代わりに御侍様の家の西に向かった。この方向に従って行くと、もう一つの家があることを知っていたからだ。


そこには、あの男の愛人が住んでいる。


男の本当の気持ちを知るために、御侍様が妊娠した時、私は男を尾行してここに来たことがある。


あの男が別の女を抱きしめている光景を再び見て、これをどう御侍様に伝えたらいいかを私は考え始めた。


男が浮気した程度の簡単な話ではない。男と御侍様との婚姻は、最初から巧妙な嘘だったのだ。


男は御侍様の一途な性格を利用し、彼女の豊かな財産を狙って結婚し、本当の恋人を別のところで養っている。


これが、最近彼らの家の前で立ち聞きした真相だ。


Ⅳ 歪んだ愛

「ねえナシレマ、人を愛するのはどういうことか分かる?」


御侍様は優しく笑いながら言った。


「人を愛するとは、いつでもその人と一緒にいたいということだよ~」


「他人の邪魔は許さないわ~」


彼女は私の目を見つめ、明るく笑っている。


彼女の膝の上で横になり、目を閉じている彼女の夫と、彼女の後ろで倒れ、髪が乱れたまま動かない愛人を見つめ、私はそのまま黙り込んだ。


「こうすれば私たちはずっとずっと一緒に居られるの~」


血は御侍様の両足の間から流れ出て、木造の床の隙間に滲んだ。


目の前の光景を見て、彼らの生活に憧れて生じた心の中の大きい木は、一瞬にして倒れた。


「あなたがいつか好きな人と出会ったら、私と同じミスを犯さないでね……」


御侍様の声が徐々に低くなり、彼女は視線を私から愛する男へと移し、屈んで男を抱きしめた。


「絶対……絶対最初から……彼を捕まえて……」


言い終えた瞬間、御侍様の呼吸も止まった。


Ⅴ ナシレマ

ナシレマを召喚した料理御侍は、海辺の町に住んでいる豪商の一人娘だ。


しかし幼い頃から父親の厳しい教育を受けてきた彼女は、親の愛情を感じられずに育ったので、両親の反対を押し切り、優しい性格の他には何もない男と結婚した。


その時、彼女は運命の愛に出会ったのだと信じていた。


結婚当初こそ、彼女は幸せな生活に満足したが、偽りの幸せは新たな命の到来によって破綻した。


妊娠した彼女は、自分の食霊から夫が財産を狙って彼女と結婚したことを知らされた。


そして一年以上が経っても妊娠できないのは、あの男が毎晩コップに避妊薬を入れていたからだ。


もうどうでもいい。真相を聞いた彼女には怒りも悲しみもなく、ただただ膨らむ腹を撫で、少なくとも彼との子供がここに宿っているとだけ考えた。


しかし、男が家に帰らない日が徐々に増え、最初こそ仕事で忙しいという理由で自分を納得させていたが、すべての真相を知った彼女は、それでも毎晩一人でベッドに横になるしかないのだった。


眠れない。


今彼は何をしているんだろう。もしかして、自分と一緒にいる時と同じように、二人は愛し合っているのか。


ある日、彼女は自分の手ですべてを終わらせようと決心した。


男と愛人が熟睡している時、彼女は部屋に侵入し、二人の命を奪った。


そして彼女自身も激怒のあまり流産してしまい、同じ部屋で息絶えた。


契約の力の波動を感じて走ってきたナシレマが目にしたのは、自分の御侍様の最期の数分間のみだった。


ナシレマの心にあった至高の愛は崩壊し、愛に対する理解がひどく歪んだ。


「愛は信頼を置けないもの。相手を完全に自分のものにしたいのなら、持てる手段すべてを尽くして隣に縛りつけておくしかない」


そう決めた彼女は、今後はそれに基づいて行動した。


しかし本当は彼女がまだ愛に憧れているからか、心の声はまだ語りかけてくる。

「私のせいで御侍様を死に追いやった」と。

だから彼女はその懺悔から、いつも自分を危険な所に置いている。


おそらく彼女自身にもなぜかは分かっていないのだろう。


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