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獅子頭・エピソード

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獅子頭のエピソード

小さな太陽と呼ばれている少年は、ライオンのように活気があり、周りの人々に元気を与えている。

提灯職人として、彼の大胆であり、同時に繊細な性格から素晴らしい提灯を作っている。

Ⅰ.久しぶり

「ううう、獅子頭、助けて、うさぎちゃんが壊れちゃった、動かなくなっちゃった……」

「ん?泣かないで、見てあげる!」


 子どもの足音と泣き声が午後の静けさを破った。僕は絵筆を置き、泣きながら飛び込んできた男の子を抱き上げてあやしながら、数日前にあげたうさぎの飾り灯籠を受け取った。

 見ると、壊れたのは左右の足で、かかとは思い切り踏みつけられたらしく、関節が壊れてしまっていた。


「どこが壊れたかわかったよ。心配しないで、すぐ直すから!」


 男の子をポンとたたき、うさぎの灯籠を修理するところを見せてやった。

 直った灯籠を床に置いてそっと押すと、それは自分で飛び跳ね始めた。


「動いた!もう絶対、隣の王二にいちゃんには見せないよ、いつも僕をいじめるんだ!今夜は灯籠祭りだろ。僕の灯籠のほうがすごいからって、踏みつけたんだよ!!」

「だったらやりかえしちゃいなよ、それとも、あたしがおしおきしてあげようか?」

松鼠桂魚(りすけつぎょ)!」


 男の子が告げ口をしていると、聞き慣れた声が聞こえた。僕は笑って手を振った。


「今回は帰りが早かったね。あちこち行かなかったの?」

「行きたい場所があったんだけどね、ちょっと嫌な噂を聞いたから、上京しようかと思って。」

「上京?帝京に行くの?」


 松鼠桂魚の話を聞いて驚いたけど、彼女が釣り竿を取り出してハシバミの実をうさぎの顔の前にぶらさげ、まるで釣り上げようとしているような様子を見て、思わず笑いだした。


 僕と松鼠桂魚はどちらも御侍様に召喚されたのだけど、御侍様が亡くなると、それぞれの別の道を進むことにした。


 僕は光耀大陸の西の果てに有名なからくりの師匠がいることを聞いた。その人はすごいからくりをたくさん作っていて、動物はまるで自然の中にいるように動くという。僕は灯籠を生き返らせる方法だと思い、遠路をいとわず教えを請うことにした。

 松鼠桂魚の方は次々と冒険に出かけたが、何回かの冒険を終えると手に入れた「おみやげ」を持って僕を訪ね、ドキドキするような、あるいは目もくらむような冒険の話を語ってくれた。

だが今回、彼女がしてくれた話は奇妙なものだった。


「あたし、このあいだ行った町で、食霊をつかまえた人がいたって聞いたんだ」

「食霊をつかまえた?つかまえてどうするの?」

「あたしも変だと思ったんだけど、その人も噂を聞いただけで、つかまえたのがどんな人なのかもわからないって。でもやっぱり見てみたくなって、もし噂が本当なら、何か手伝えるかと。」

「気をつけなきゃダメだよ、もし本当なら、できるだけ遠くに逃げて、つかまらないようにしなきゃ!」

「あたしがつかまるわけないじゃん!」


 松鼠桂魚はうさぎを放し、釣り糸を僕に向かって放った。僕は笑いながら攻撃をかわし、彼女とふざけ始めた。


 僕らはこのとき、これが不吉な事件のプロローグになるとは想像もしなかった。


Ⅱ.帝京の客人

 松鼠桂魚が帝都に行って半月たった。僕の生活は相変わらずだ。街の子どもに灯籠を作り、師匠にからくり作りを習い、どうやってからくりと灯籠を組み合わせるかを研究した。


でも今日はちょっと違った。


「師匠、お聞きください。私たちは――」

「聞いてもムダだ。帰りなさい」

「師匠、本当のことを知りたくないのですか!」

獅子頭、お客様のお帰りだ」

「はい――」


 門をぴしゃりと閉めたが、清蒸武昌魚はそれを前にしてもあきらめず、もう1度師匠にチャンスをもらおうとした。

 僕は削りたてのほぞを置き、手を払って立ち上がると、彼を庭に引き入れ、声を落とした。


「門をたたかないで。師匠は興味がなければ、相手にしてくれないよ」

「師匠にお願いしたい大事なことがあるんだ、どうしたらもう1回会ってくれる?」

「うーん……師匠が君を追い払ったのがなぜかわからない。でも師匠は下手に出られると弱いから、何度も来てみて。決心が固いと思ったら、師匠はうんと言うよ」

「本当?」

「もちろんだよ。僕もその手で弟子にしてもらったんだ……ハハ、僕が言ったことは師匠には内緒にね。」

「ありがとう。また来るよ」


 武昌魚は僕の経験を聞くと帰って行った。彼が再びやってきたとき、ちょうど師匠は何かの材料を買いに行って、しばらく帰らないときだった。

 武昌魚のがっかりした顔を見ると、師匠が彼を避けるために出かけたんじゃないかとはとても言えなかった。

 でもこれが、師匠について知る機会になったのだ。


 武昌魚によると、師匠は元は水利工事担当の役人で、没落した名門の家柄だったが、いつも庶民に味方し、皆のためにたくさんの仕事をして、慕われていたという。しかしそのために同僚に排除され、横領したという濡れ衣まで着せられた。

 師匠は怒って役人を辞め、田舎で子どもの頃に始めたからくりの研究をし、たくさんの農具を改良して、人々に貢献した。


「師匠の昔のことは知らなかった。そうだったのか……道理で師匠は帝京に行かないし、帝京から来た人に会おうとしないわけだ。ところで、君はなぜ師匠に会いたいの?」

「俺の友人……師匠の息子さんが、ある戦役で犠牲になったんだ。俺は師匠の力を借りて仇討ちがしたい。それから……彼や、いい国を作ろうと戦っている兵士たちの夢をかなえてやりたい。師匠ならわかってくれると思ったが…」


 武昌魚は苦しそうな表情をした。ここで壁にぶつかるとは思わなかったのだろう。僕は彼の肩をたたき、なぐさめようとした。


「師匠は、人にはそれぞれの運命があると言っている。誰もが自分の道を行き、他の人は口出しできないと。それは君の友人が自分で選んだ道だ。仇討ちには何の意味もないと師匠は言うんじゃないかな」

「でもこれは、よい国を作るためなんだ!師匠も帝京で嫌な思いをしたじゃないか。支配された朝廷は……いずれ国をダメにする。」

「君は師匠に何をしてほしい?」

「師匠の作った堤防は、今でも壊れずにいる。皆は師匠をずっと覚えている。水は船を浮かべることも、ひっくり返すこともある。民の心をつかめば天下をつかめる。師匠がからくりの術を人々のために使えば、きっと民の心をつかめる。皆を俺たちの戦いに引き入れられれば、貴族が国を独占する状態を変えて、庶民のためになる国を作れる」


武昌魚の言うことをすべて理解できたわけではなかったけど、夢を語る彼の興奮は僕にも伝わり、偉大なことをやり遂げようとする彼を助けたいと思った。


「師匠が帰ってきたら、知らせるよ。でも師匠を説得できるかは、君次第だ。そうだ、君は帝京から来たんだよね?」

「うん……まあな。それが何か?」

「僕に松鼠桂魚っていう友だちがいる。食霊をつかまえた人がいると聞いて帝京に行ったんだ。君、このこと聞いたことある?松鼠桂魚は冒険に行くと連絡して来ないんだけど、今回はちょっと心配で……君、帝京に友だちはいない?ちょっと様子を聞いてもらえないかな?」


 話し終わると、武昌魚が少し緊張しているのがわかった。


「帰ったら君の友だちの様子を調べてもらうよう手紙を書くよ。心配しないでくれ」


 僕はうなずき、武昌魚ともう少し話をして、彼を送った。

 武昌魚は心配するなと言ったけど、なぜか僕はふっきれない不吉な予感がした。


 松鼠桂魚に何かあったわけじゃないよね……?


Ⅲ.師弟の密談

 師匠が帰ってきた夜、僕はすぐに武昌魚には知らせず、逆に、時間をかけて煮たスープを持って師匠のご機嫌伺いをした。


「言ってごらん、私のご機嫌をとって何が目的だ?」

「師匠の目はごまかせませんね。」


 僕は、にやっと笑うとお盆を抱えて師匠の前に座り、首をかしげて70歳を過ぎ白髪になった師匠を見た。


「師匠、武昌魚が来た理由をなぜ聞いてやらないのです?彼が帝京と言ったとたん追い払うなんて。師匠は普段からあまりお客さんに会いませんが、あんな仕打ちをしたことはありません」

獅子頭、お前はなぜからくりを学んでいる?」


 師匠が反問してくるとは思わず、黙ったが、やはりその問いについて真面目に考えてみた。師匠は無駄なことを言った試しがないからだ。


「僕は灯籠が好きなのです。生き生きとした灯籠を作りたい。うさぎやトラのように飛び跳ねるものだけじゃなく、人のようにリアルなものを作りたいのです。からくりで生きているようなものを作れるのは、師匠しかいないと聞きました。学び始めてから、からくりはそうしたものを作るだけじゃなく、人々に有益なものを作り、皆を笑顔にするものだと気づきました。誰かの笑顔を見るというのは、なんていいことなんでしょう。」

「そうだ、私もそう考えている。では、私が自分のからくりを使って人を傷つけようとするだろうか?からくりは人を笑顔にするものだ。傷つけるものじゃない。仇討ちを選び、誰かが私のからくりで笑顔をなくすとしたら、私はそうするだろうか?」

「しかし……彼らは息子さんを……」

「人にはそれぞれの運命がある。息子は自分の夢のために命を投げ出した。そこがあいつの死に所だ。この世の中、父親が息子の意志を受け継ぎ、夢を叶えてやるものだと決まっているわけではない。もし死んだのが私であっても、息子に仇討ちをしてほしいとは思わない。仇討ちは袋小路だ。入り込んだら、二度と出て来られない」


 僕は師匠の言ったことを考えてみた。なぜかその言葉からは悲しみと無念さが伝わってきた。師匠は口でいうほど、息子の死を淡々と受け入れたわけではないだろう。


「少し疲れた。獅子頭、下がりなさい」

「はい。ゆっくりお休みください」


 師匠の部屋を出ると、明かりが消えた。

 僕は中庭に立ち、師匠の部屋を振り返りため息をついた。


「明日、武昌魚を訪ねてみよう」




 翌朝早く、師匠のことを伝えるために武昌魚に会いに行った。

 驚いたことに、武昌魚は僕が口を開く前に1通の手紙を差し出した。


獅子頭松鼠桂魚がつかまった」


Ⅳ.恩師との別れ

松鼠桂魚がつかまった!?」

「あわてるな。これは友人から聞いた話だが、松鼠桂魚はとりあえず無事だ。すぐ松鼠桂魚を救い出すことはできないが俺が帰るまでは時間を稼いでくれる。向こうと協力して彼女を助け出す」

「僕も一緒に行く」

「……何だって?」

「君のやろうとしていることで、この国がどうなるかはわからない。でもそれが悪いことじゃないことは信じられる。からくりのわかる人はいらないかい?僕は師匠の直弟子だ。からくりの腕は師匠にはかなわないけど、君の必要には十分応えられる。一緒に松鼠桂魚を助けてくれたら、帝京に残って君を手伝うよ。」


 武昌魚は僕の願いを断らなかった。すでに何か策を考えていたのかもしれない。僕を連れて行くことでその目的が果たせるのだろう。


 帰り道、武昌魚は松鼠桂魚の居場所を説明してくれた。

 松鼠桂魚を捕まえた組織は、野心と欲望を満たすため、御侍をなくした食霊をさまざまな実験で痛めつけ、屈服させようとしていた。

 彼の友人が時間を稼いでくれるとはいえ、急がないと松鼠桂魚も痛めつけられるだろう!


 差し迫った足音で師匠は何かを悟ったのだろう。顔を上げ、ノックもせず入って行った僕を見た。

 近づくと、師匠の目に普段と違う自分が映っているのに気づいた。抜き差しならない松鼠桂魚の様子を聞き、いつもの笑顔を忘れ、眉をしかめた僕は、突然成長したかのようだった。


「行くのか?」

「はい、師匠。僕は……松鼠桂魚が危険だと知りながら、放っておくことはできません。」


 師匠が僕の気持ちに気づいたことを不思議だとは思わなかった。師匠と話したあの夜、すでに武昌魚と帝京に行くことは考えていたが、まだ決心がつかなかったのだ。


 僕は決然と師匠を見た。師匠には僕の決心がわかってもらえる。上京に反対されるはずはない。


「行くがいい。」


 師匠はため息をついた。老け込んだ顔は残念そうだった。


「帝京には何人が古い友人がいるが、まだ生きているかどうかわからない。お前たちのやろうとしていることは危険だ。友人たちが生きているなら、私の直弟子が困難にあったとき助けてくれるはずだ。」

「師匠……弟子のわがままをお許しください。」


 師匠は手を振り『班』と刻まれた玉の飾りを僕にくれた。


「持って行きなさい。私の証、お前が私の弟子である証だ。私について学び始めたときの気持ちを忘れるな、獅子頭。」


 師匠は最後にそう言うと、門を閉め、僕を送ろうとはしなかった。


 出発前、僕はもう一度師匠の部屋を見ると、荷物を持った手を握りしめて、そっと言った。


「師匠、ありがとうございます……きっと松鼠桂魚と一緒につかまっている食霊を助け出します。絶対にがっかりさせません。」


Ⅴ.獅子頭

 獅子頭は、自分が人を助けるための「餌」になる日が来るとは思わなかった。


 獅子頭はつかまった食霊を助けるため、清蒸武昌魚金華ハムの協力を得て、食霊が監禁されている場所に潜り込んだ。


 清蒸武昌魚金華ハムは行動を起こす前に綿密な計画を立てたが、成功するかどうかは実行する獅子頭にかかっていた。


 幸い、獅子頭は肝心のときにボロを出したりしなかった。彼は松鼠桂魚だけでなく、 金華ハムの助けを借りて、捕まっていた他の食霊たちも助け出した。


 しかし、悪人どものところから罪のない人々を助け出すには、その代償が必要だ。

 金華ハムがスパイであることが見つからないよう、すべての手がかりが獅子頭に向くようにし、松鼠桂魚が監禁されていた部屋には獅子頭が身につけている小さな灯能を残した。


 清蒸武昌魚獅子頭が悪人どもにつかまらないよう、獅子頭や助けた食霊たちを佛跳牆(ぶっちょうしょう)に託した。

 このとき佛跳牆は大きな商船を持っており、それは逃げてきた食霊をかくまうのに十分だった。


 獅子頭佛跳牆の商船に隠れている間、食霊の何人かは佛跳牆に頼んでどこかに連れて行ってもらい、何人かは佛跳牆の船に残って手下になった。


 獅子頭は最初、佛跳牆はつきあいにくいと感じていたが、ある日、佛跳牆が養生している松鼠桂魚の暇つぶしに、桜の島旅行記を渡しているのを見て、佛跳牆への見方が変わり自分から帝京と清蒸武昌魚のことを聞いてみた。


「……武昌魚に会いに帝京へ戻りたいのか?」


 佛跳牆は鋭く獅子頭の意図を悟り、獅子頭も否定はしなかった。

 彼は船の帆を見上げて佛跳牆に聞いた。


「君は、家をなくして流浪の旅をしている人を見たことがあるかい?」


 佛跳牆は海での暮らしが長い。家をなくしてしかたなく海に出た人もいるが、命を守るために海に出るしかなかった人もいる。だから皆申し合わせたように過去のことは言わなかった。

 佛跳牆獅子頭が船で誰かの話を聞いたのだろうと思っていたが、獅子頭がいきさつを話し出して、やっとわかってきた。


「僕は以前、帝京は光輝く街だと思っていた。帝京は歌や踊りに満ちていて、確かににぎやかだ。でも、帝京の周りにたくさんの難民が集まっているとは思いもしなかった。 彼らは天災人災で田畑や家を失い、代々続いた家を捨てるしかなかった。天災は逃れようがないけど、人災は帝京の役人や貴族たちのせいだ。少しでも食べ物が手に入ったらと帝京へ逃げてきても、帝京は彼らを入れようとはしないし、食べ物の配給もしない。」


「師匠の元を離れたとき この国はどこも自分の住んでいる場所のように平和だと思っていて、武昌魚のやろうとしていることの意味がわからなかった。今はわかる。僕は武昌魚と一緒に、不公平な世の中を変えて、 罪のないかわいそうな人たちを助けたい」


 佛跳牆獅子頭が少しずつ話す帝京での経験を聞き、彼の頭をなでてやった。


「決心がついたんなら 送っていくぜ。それから一つ提案がある。役に立つかわかないが……」


 半年後、海から帝京へやってきた商人が王宮ヘ入った。

 この商人は若い皇帝のために、からくりに詳しい食霊を連れてきた。この食霊は皇帝に人と同じ形をして、自由に動く灯能を献上した。

 海外の珍しい宝を捧げ持って近寄ってくる灯龍人形を見て、皇帝は大喜びした。皇帝はその商人に褒美を与えただけでなく、その食霊を王宮に留まらせたのだ。


 後にこの食霊は、若い皇帝が本来の権力を奪回した時に、重要な役割を果たしたのであった。


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タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
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  • RPG(ロールプレイング)
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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