稔歳之佑・ストーリー・サブ15~28
#include(稔歳之佑・ストーリー・サブ15~28,)
※誤植等が多いため、文脈的に正しいと思われる部分を差し替えたものを表記しています。
15.今日はいつの日か・二
なにか秘密があるのかな?
とある日
鬼谷書院
餅米蓮根:昨日、雪掛姉さんが踊ったあの踊り、本当に最高でした……
餅米蓮根:えっ……?
蛇腹きゅうり:「かわいい餅米蓮根ちゃん、この踊りはあなたにもとっても似合うよ!お姉さんと勉強しようか!」……と彼女は言うだろう。
餅米蓮根:なら……私は、や、やはり勉強しません……
餅米蓮根:でも……蛇腹きゅうりさんが雪掛姉さんをまねて話すと、本当に似ています。狗ちゃんたちの言った通り、あなたたちは本当に仲良しみたいね……
蛇腹きゅうり:ふん、どこが仲良しなんだ。書院の子供たちは勉強もせず、こんなくだらないことばかり考えているのか……
クラゲの和え物:あれ、なにがくだらないこと?
餅米蓮根:うわ―クラゲの和え物お姉ちゃん……音を立てずに近づかないでよ。
クラゲの和え物:へへへ、幽霊だから、浮いて歩けるよ。
蛇腹きゅうり:もう幽霊のふりをしないで、その浮遊をなんとかしろ……!
クラゲの和え物:ふん、あなたがあの笠を被ってカッコをつけるから、知らないもん〜自分でなんとかしてね。
蛇腹きゅうり:おい、早く俺の笠を返せ!
クラゲの和え物:ふん、冗談がつうじないや。あいつらをいじめないで!これあげるから――
クラゲの和え物:ところで、蛇腹きゅうり……最近、老虎菜を仕立屋に行かせてなにがしたかったのか?
蛇腹きゅうり:……ん?もちろん、新年の衣服を縫うためだ――って、あんたはそれをどうやって知ったんだ?
クラゲの和え物:もちろん、老虎自分が話してくれた。うーん……陳記甘栗一袋の代償がかかったって。
蛇腹きゅうり:あいつ……
クラゲの和え物:でも……彼が行ったのは女性ドレスを専門に扱う洋服屋だと聞いたけど。しかも、誰かさんはわざわざ注文する柄も指示したとか。なにか秘密があるのかな?
蛇腹きゅうり:どこに秘密があるんだ!くだらない……突然思い出した、金駿眉に仕事を頼まれてたんだ、失礼!
クラゲの和え物:ええー逃げないで!
餅米蓮根:蛇腹きゅうり兄さんは急に変になったみたい……顔が真っ赤になっちゃったよ。
クラゲの和え物:あの強情な男は、嘘をつくとすぐそんな風になっちゃうんだよ……ふん、絶対に秘密がある。
ふたりが話している時、中庭の隅にある梅の木の間から、新しい服を着飾った雪掛トマトが歩いて来るのが見えた。
雪掛トマト:なんでここはこんなににぎやかだと思ったら、あなたたちだったのね。
餅米蓮根:わー、雪掛姉さん!あなたの新しいドレス……本当に素敵!
雪掛トマト:老虎菜からもらったんだけど、光耀大陸の正月の風習で、みんな新しい服を作るんだって……
雪掛トマト:あいつはきっとパラータの新年の食事を作って欲しくて、私を買収しようとしたのね……
雪掛トマト:まあいいわ、餅米蓮根ちゃん、ちょうど踊りの練習をするつもりだけど、一緒に来ない?
餅米蓮根:え……え?待って、雪掛姉さん、私はまだほかのよ、用事が――
16.今日はいつの日か・三
あれは……とても奇妙な夢だった。
大晦日夜
鬼谷書院
夜空には花火が打ち上げられ、みんなが酒を飲んでご飯をいっぱい食べて、横になり寄り添っている。
蛇腹きゅうり:老虎菜、覚えてる?……この前、地宮に入った時、奇妙な香りで気を失ったことがあるよね。
老虎菜:うーん、おいしい――覚えてるよ、どうした?
蛇腹きゅうり:その時、みんなは奇妙な夢を見たと。雪掛は書院で授業をしている夢を見た、八宝飯たちは墓の夢を見た……あんたはどんな夢を見たんだ?
老虎菜:コホンコホン……お、俺は……食べる夢を見たかも、コホンコホン――
蛇腹きゅうり:おいおい落ち着け、大袈裟に反応すんなよ……
老虎菜:あれは……とても奇妙な夢だった。
蛇腹きゅうり:ん?どこが奇妙だ?
老虎菜:夢で見たのは……テーブルいっぱいに美味しい料理が並んでいるのに、その真ん中の大きなお皿に一本のレンコンがあった。
蛇腹きゅうり:レンコン……!?
老虎菜:うーん……甘い香りがする……でも、食べようと思ったら……
老虎菜:あいつは餅米蓮根の声でしゃべって、老虎菜兄さん、私を食べないでって……
蛇腹きゅうり:……
老虎菜:い、いや……どうしてあんな夢を見たのかわからない、本当だ……目が覚めてから、2日間なにも食べたくなくなったんだ……
老虎菜:なんだか、妙に罪悪感がする……
蛇腹きゅうり:はあ……あんたの気持ちは分かるよ……
老虎菜:え?
蛇腹きゅうり:そう考えると、俺の夢もそんなに奇妙じゃなかったかもしれないな……
老虎菜:あれ……どんな夢を見た?
蛇腹きゅうり:あ、いや、なんでもない……って、あの新しいパラータの焼き羊、いい匂いがするんだけど、食べないか?
老虎菜:いいよいいよ!
17.今日はいつの日か・四
彼は……ずっとあなたを探している。
大晦日夜
鬼谷書院裏山
灯りが灯る書院の中で、半分酔った人々が酒盃を片手に語り合う。真っ赤な服を着ているふたりが爆竹の音に合わせて庭で遊び回っている。
遠くから、このすべてを眺めている白酒が微笑む。手に握られて、しわくちゃになった新年の年賀状が風に舞い、やがて影の中の誰かの足元に転がる。
白酒:長い間隠れていただろう、出て来い……
ヤンシェズ:……
白酒:お前を覚えている、いい刀だ。やはり普通の護衛じゃなかったんだな。
ヤンシェズ:……ここでなにを?
白酒:ここ数日俺を尾行して、なんのつもりだ。
ヤンシェズ:……
ヤンシェズ:……書院に行かないのか。
白酒:ふん、まさかあそこの大晦日の宴に誘いに来たわけじゃないだろうな。
ヤンシェズ:……
白酒:知らない。
ヤンシェズ:……?
白酒:なんだ、信じないのか。
ヤンシェズ:彼は……ずっとあなたを探している。
白酒:他に用がなければ、失礼する。それと……もうついてくるな。
18.今日はいつの日か・五
一人の男が……
大晦日夜
聖教
冬虫夏草:今日はあのしつこい子犬を見かけないな。
ハイビスカスティー:ふふ、君の手下とまた一緒に遊びに行ったのかな……うちの蛇スープに悪影響を与えたら、君の責任ですよ。
冬虫夏草:どう考えても、うちのピータンが悪影響されるほうだろう。
ハイビスカスティー:そういえば、虫茶は?大晦日なのに、私たちふたりで酒をとは寂しいな。
冬虫夏草:ふん、へんなことを考えるなよ。女の子は夜中に男と酒を飲むわけがないだろう、虫茶はもう休んでいる。
ハイビスカスティー:ほおぅ、厳しすぎる兄だな。かわいそうな虫茶。
バタン、とドアが勢いよく開いて、蛇スープと虫茶は顔色が青ざめたピータンを引きずって入ってきた。
虫茶:兄さん……あたし……
ピータン:痛い……うう……ご主人様……
ハイビスカスティー:君の手下の様子がよくないようだ、彼を構ってやれ。
冬虫夏草:彼はどうした……?
蛇スープ:一人の男が……
冬虫夏草:男?
虫茶:さっき、屋上で月を見てたとき、チキンスープの部屋から一人の男が出てきて、あの人を見たら、ピータンがこんな状態になったの。
冬虫夏草:……彼を横にしてやってくれ、今すぐ生薬を調合してあげるから。
虫茶:うん……
虫茶:え……!?兄さん……
冬虫夏草:月を見に行ったって?今日は月があるのか?それに、なんで全身がお酒臭いが?虫・茶―兄さんが怒らないと、ボクを馬鹿にするつもり!?
虫茶:い、いや……違う……
ハイビスカスティー:もういいよ、大晦日だし、泣いてたらまた慌てるだろう?
19.今日はいつの日か・六
まるで昔の恋人に会いに行くみたいに。
大晦日夜
南離印館
京醤肉糸:はあ〜なんだか今年の大晦日はいつもより寂しくなった気がするな。もしかして年を取れば、年越しの感じも薄くなるのか?
松の実酒:……部屋中に舞姫や踊り子たちがこんなにいるのに、寂しいですか……?
京醤肉糸:なんだか機嫌が悪そうだな〜ほら、泉ちゃん、うちの服館長様にお酒をいっぱい注いで!
松の実酒:必要ない……自分でやります。
京醤肉糸:お正月くらい、楽しむべきだぞ。
松の実酒:貴方……まあいい。
京醤肉糸:ほらほら、約束だ。今日は説教は禁止だ。
松の実酒:……
京醤肉糸:乾杯〜はあ、残念なことに、片児麺が子供たちを鬼谷書院に連れて行ってしまった、琴を弾いてもらえないなあ。
松の実酒:片児麺は普段は真面目なのに、友達をこっそりと作っていたとは驚きましたね……うーん、なかなかうまくやっているようですね。
京醤肉糸:そうです……不思議ですが、片児麺の話によると、明四喜は今回招待されていないのに、自分から書院について行きたいと言い出したそうだよ。まさか、年越しの食事を食べたかっただけ?
松の実酒:私の知る限り、明四喜は鬼谷書院とは付き合いがないはずです。
京醤肉糸:確かに怪しいですね……彼は出発する前におしゃれをしていた、まるで昔の恋人に会いに行くみたいに。
松の実酒:昔の恋人……?
京醤肉糸:ヒック……まあいい、今日はお祭りだ。美しい景色を前に、彼のことを考えるよりも、楽しもう。もう一杯一緒に飲みますか!
20.今日はいつの日か・七
どうやら、内面に柔らかいところがあるようだ。
大晦日夜
鬼谷書院
金駿眉:やっと会えたね、片児麺さん。思っていたより、かなり気さくな方だね。
片児麺:気さく……もしかして、私の手紙の文面に、院長様は私を「付き合いにくい人」と誤解したのでしょうか?
金駿眉:そういうわけでもない。手紙の文言が堅かったから。実際に接してみたら、手紙に書いたような堅苦しさは感じませんね。
片児麺:実を言うと、院長様も私が想像したよりもずっとお若いです……お会いできて、私も手紙のように堅苦しくなくなりました。
金駿眉:ふふ……どうやら片児麺さんは、わたしを深山の書院に隠居しているおじいさんと間違えたらしい。
片児麺:ち、違います……書院の主人が徳の高い長者だとばかり思っておりましたし、お手紙を見ても、見聞が広い方だとわかりました。
片児麺:でも、食霊は人間と違い、見た目で年齢を判断するわけでありません……
金駿眉:そう、食霊にとっては……そんなことはどうでもいい。
片児麺:ええ、書院の古物を拝借したいという手紙を書いたときも不安でしたが、幸いにも院長様が快く貸してくれました。
金駿眉:あなたもいろいろ助けてくれたよ。ここ最近、書閣の破損した古画のほとんどはあなたが修復してくれて……
金駿眉:この度書閣のことも、あらかじめ注意してくれたあなたのおかげだ。
片児麺:それぐらい簡単なこと……あれ……
話しているうちに、片児麺は手元に毛むくじゃらの柔らかい感触を覚え、言おうとした言葉を忘れて、思わず手を伸ばしてそれを強く揉んだ。
片児麺:これは……あの猫耳麺っていう子のペットですか、やわらかい……
金駿眉:あなたもこのようなペットが好きらしいね。
片児麺:その……いえ、ちょっと目新しいと思っただけで……
金駿眉:ふふ、片児麺さんはモフモフが好きなんだね……どうやら、内面に柔らかいところがあるようだ。
21.雪が降りそうな夕方・一
俺様の面子を立ててくれるよな?
大晦日夜
地府
辣子鶏:お前、お正月なのに、なぜまだそんなに悲しそうな顔をしてるんだ?さあ、一緒に飲もう!
高麗人参:ゲホゲホ……残念ながら、今はお酒を飲める状態ではありません。
辣子鶏:この病人……まあいい――そうだろうと思って、いいお茶を持ってきた。お茶なら大丈夫だろう?
高麗人参:……
辣子鶏:東坡肉が作った豚肉の煮込みも持ってきた。食べていいぞ!
高麗人参:……本当はここで吾に付き合わなくてもいい。そなたは賑やかなのが好きでしょう?機関城は……今日はたくさんの人が集まっているはずです。
辣子鶏:知っていればいい!俺は忙しい。ここでお前と年夜飯を食ってから、機関城へ帰って、あいつらと食べたり飲んだりしなきゃならないんだ。
辣子鶏:だから、俺の時間を無駄にするなよ――料理がテーブルいっぱいに並んでいるだろう、さっさと食べろ!
高麗人参:……
辣子鶏:これでいい。地府はいつも陰気だろ?せっかくのお祭りだから、もっと盛り上がらないと……
高麗人参:……
辣子鶏:お前な、地府の他の者にお前の相手をさせないが、俺様の面子を立ててくれるよな?
高麗人参:そなたは酔っ払っている。しゃべりすぎです。
辣子鶏:フン、お前は話が少なすぎるから、こういう病気にかかるんだよ!これからはなんでも抱え込むな。
高麗人参:……
辣子鶏:聞こえたか!?
高麗人参:もうわかりましたから、早く食べましょう……
22.雪が降りそうな夕方・二
その中にいると、いつも悩みやトラブルが絶えないんだよ。
大晦日夜
機関城
金華ハム:なぜかわからないけど、今年の大晦日は例年より静かな気がしないか?
冰粉:たぶん、騒ぐ奴らが貴方様だけになったからかもしれませんよ。
金華ハム:え、先生、それはどういう意味……?
東安子鶏:うう……そのとおり。八宝飯、マオシュエワン、城主、そして君、適当に組み合わせただけで、火の粉が飛び散る。
金華ハム:おい、このガキ、さっさと肉を食え!
東安子鶏:うんうん、君も食べたい?僕が取ってあげるよ!
金華ハム:必要ない……俺も手があるから!
東坡肉:ふふ、今回は特に手間をかけて煮込み肉を作った、皆もしっかり味わってくれよ。
東坡肉:……あれ、回鍋肉、さっきから落ち込んでいるけど、もしかして料理が口に合わないの?
回鍋肉:いいえ……ただ、八宝飯とマオシュエワンが鬼谷書院に大晦日のお祝いに招かれたと聞いたのですが……
東坡肉:恐らく、吾のあの後輩は相変わらず短気なので、事前にお知らせを忘れたかもしれない……心配するな。彼は今地府にいるはずだ、もうすぐ帰ってくるだろう。
回鍋肉:そうでしたか……
冰粉:そういえば、あの地府の方は……
東坡肉:……ああ、世の中のことは、その中にいると、いつも悩みやトラブルが絶えないんだよ。後輩が少し彼を説得できるといいが……
東坡肉:さて、今日は酔って帰ると約束しただろう。さあ、まずは乾杯――
23.新年を迎える・一
親分のセンスが悪いとは言ってないから!
大晦日前
景安商会
年の瀬が近づき、景安商会は商売が繁盛している。麻婆豆腐が門に入る時、佛跳牆はいつものように山積みの商品を棚上げしている。
麻婆豆腐:対聯(※ついれん:中国の伝統的な建物の装飾のひとつ。門の両脇などに対句を記したもの)、花火、砂糖菓子……今年の年越し品もとても充実しているようだ。
佛跳牆:ああ、中には海外に販売するものもある、物が多すぎるので手伝ってもらうことになった。
佛跳牆は顔も上げずに言ったが、麻婆豆腐は豊富な商品に惹かれて、興味深そうに棚を眺めている。
麻婆豆腐:待って……この門像は、あまりにも凶悪すぎるだろう……
佛跳牆:……家を守り、魔除けのために使っているのだから、威厳と迫力が当然必要だ。
麻婆豆腐:門像はともかく、どうしてこの年賀の紅包(※ホンバオ:ご祝儀やお年玉のこと)にも妖魔や鬼ばかり描かれているんだ?
佛跳牆:なにが妖魔だ、これは……
麻婆豆腐:忘れるな。今年は卯の年だ。うさぎは可愛らしく、もちろん可愛いものと一緒に描けば、お客さんはもっと気に入ってくれる。
佛跳牆:……
麻婆豆腐:とにかく、あたしの経験では、このような怖いものは絶対に売れない。もっと好かれそうなものを用意しないと。例えば……あそこのやつ。
佛跳牆は麻婆豆腐の視線が向いている方向に目を向けると、玄関の前にちょうど小さな屋台があり、そこには愛らしいうさぎのグッズが並べられ、客が押し寄せていた。
佛跳牆:……景安商会の前で、堂々と客を奪う奴がいたとは……
麻婆豆腐:ふふ、でも相手のほうが商売は上手だな。
天津煎餅:え?親分?なにか用ですか?
佛跳牆:エヘン……俺が選んだものは、本当に売れないのか?
天津煎餅:親分、正直いうけど、怒らないでくださいね……売れないとは言わないけど、毎年同じものを売ってるから、麻婆姉さんのアドバイスを聞いて、品物を変えてもいいかと思います……
天津煎餅:ええっと、親分のセンスが悪いとは言ってないから!
佛跳牆:……わかったから仕事を続けろ。
24.新年を迎える・二
会長様の好感度が上がるでしょう。
大晦日前
景安商会
天津煎餅:親分、麻婆姉さんの指示で作ったものは全部完成しました!
テーブルいっぱいに並んだうさぎのぬいぐるみなどの品物を眺めていると、佛跳牆は真っ白で小さなうさぎのぬいぐるみを手に取って、眉間に皺を寄せた。
佛跳牆:……こんなに柔らかいぬいぐるみ、本当に好きな人はいるのか?
天津煎餅:わたしは好きなんだけど、ふわふわして可愛いですよね。
佛跳牆:……見た目がいいだけだ、役に立たないだろう。
天津煎餅:ふふ、親分、そんなこと言わないでよ、この帽子を試してみてください!とても快適ですよ〜
佛跳牆:貴方!
北京ダック:ふふ、最近景安に新しい品物が入荷したと聞きましたけれど、それは……
心地よい音楽と共に、懐かしい姿が部屋に入ってきた。佛跳牆が自分の頭にうさぎ耳のモコモコ帽子をつけられたことに気づかず、相手はもうからかい始めている。
北京ダック:ふふ、会長様もこんなかわいいものが好きなんですね〜
佛跳牆:……
佛跳牆の顔色が予想どおり怒っているのを見て、北京ダックは目を細め、白や緑色のうさぎのぬいぐるみの中に隠れている佛跳牆を興味津々で見つめた。
北京ダック:まあ、焦って脱ぐ必要はないでしょう、たまにはスタイルを変えるのもいい、会長様の好感度が上がるでしょう。
佛跳牆:……
天津煎餅:ダックさんの言う通り……!……うわぁ、親分、殴らないで!
25.酒飲んで楽しむ・一
やっぱり龍井は信頼できるな。
大晦日
湖畔の小屋厨房
煙がゆらゆらと立ち昇り、湯気が酒や料理の香りとともに厨房にただよっている。
雄黄酒:ふぅ……これでよし……
ロンフォンフイ:いい匂い……なんだこれ!食べてやる!
雄黄酒:……さっきも同じこと言ったでしょう。子推が君をこちらに押し込んだのも無理はありません。
ロンフォンフイ:オレは……味見してやろうと思っただけだ。
雄黄酒:本当に手伝いたいなら、先に作っておいた薬膳を持ってきてくれませんか。ここに置いてあったはずです……あれ、なくなっちゃった……
ロンフォンフイ:ベタベタした緑色のものってことか?あれ、オメェが作った薬膳か……
雄黄酒:……ロンフォンフイ、まさかまた盗んで食べちゃったんじゃないでしょうね?
ロンフォンフイ:あんな臭いものを食べるわけないだろう……
雄黄酒:なら、どうして消えてしまったのですか?
ロンフォンフイ:あははは……部屋の隅に積み上げられているのを見て、なにかの失敗作かと思って捨ててしまった……
ロンフォンフイ:いつも薬を試すために、オメェがいろいろなものを食べるから心配で……いたっ!また殴られた……
雄黄酒:……そうでしたか……でも、薬膳がなくなってしまうと、今夜の宴会の料理が足りなくなってしまう……
ロンフォンフイ:じゃあ山に行ってキジを狩ってくるか!
子推饅:なんでキジを狩るんですか……外にはたくさんの食材があるじゃないですか。
雄黄酒:子推?どうしたんですか?
子推饅:龍井は人間がたくさんの謝礼を贈って来たと。新鮮な食材がたくさん入っているようです。
雄黄酒:え?それはよかった!
ロンフォンフイ:やっぱり龍井は信頼できるな。オレも手伝ってやろう!
雄黄酒:だめだ、貴方は台所から離れた方がいい。
ロンフォンフイ:……わかった、じゃあ火を起こすのを手伝ってあげたらいいだろう!
26.酒飲んで楽しむ・二
それなら彼らの好意を裏切らないように。
大晦日前
湖畔の小屋厨房
細かい雪が降り積もり、梅の香りが池を包み、西湖龍井と武夷大紅袍が亭の中で向かい合わせに座っている。
武夷大紅袍:また、良い雪が降りました。今年も幸運な一年でありますように。
西湖龍井:ああ、今年は年獣に襲われることもなく、人々は良い年を過ごせます。
ふたりが話していると、遠くから誰かが雪を踏む足音が聞こえてきた。
武夷大紅袍:雪の日にやってくる人もいますか……お祈りに来た人でしょうか。
村人甲:龍神はご存知ですか?……あ、あも、もしかしてこの方が……!
村人乙:龍神様は青い衣を着て、角がふたつあると言われています……こんな仙人の姿、確かに神様だと思います!
村人甲:心を込めて祈れば、龍神様が現れると言われています!本当にそうですね!
村人乙:となると、龍神様の傍にいるこの方は、薬草に長けていると噂され、よく龍神様と一緒に現れる戦神様でしょう!
武夷大紅袍:……
村人甲:わ、私たちは隣の村の村民で、龍神様に1年間お世話になり、お礼を言いに来たのです!今年は怪物が出なかっただけでなす、土地も豊作になりました!
村人乙:これらは全部村の特産品で、村全体の気持ちです。ささやかな供え物ですが、龍神様、受け取ってください!
西湖龍井:いいえ、私は……
西湖龍井は好意を断ろうとしたが、そばにいた人にそっと止められ、間を置き、彼は理解した。
西湖龍井:好意はありがたいですが、骨を折る必要はありません。私がいる限り、できる限りのことはします。そして……豊作はあなたたち自身の努力で、私はなにもしていません。
武夷大紅袍:雪が積もっているので、帰り道はお気をつけてください。
村人甲:龍神様と戦神様、ありがとうございます!ふたりの神様のご加護が永遠に続きますように!
村民ふたりの喜びの表情を見て、ふたりは思わず笑みがこぼれた。ふたりの人影が遠くに消えた後、武夷大紅袍は思わず感嘆した。
武夷大紅袍:以前は、自分たちがただやれることをやっただけと言いましたが、人間たちにとっては、数十年にも及ぶものでしょう。
西湖龍井:しかし……彼らががんばっている限り、私の力は存続できたのかもしれません。
武夷大紅袍:ふふ、それなら彼らの好意を裏切らないように。ついでに、これらの食材をどうするかを考えてみましょう。
27.お年越し・一
湖畔の小屋
庭
冬の雪の日、小屋は穏やかな静けさの中に包まれている。北京ダックは庭内に入ると、見えたのはロンフォンフイが退屈して庭にしゃがんで雑草をかき回し、顔にはちょっと不満があふれている。
北京ダック:ふふ、どうかしましたか?
ロンフォンフイ:――ダック!ようやく来たか!来てくれないと死ぬほどつまらないよ!……雄黄酒も台所の手伝いをさせてくれないし……っていうか、なんでこんな多くの荷物を持っているんだよ!
ロンフォンフイ:いい香りだ!お餅、サクサク団子……ちょっと待って、なんでうさぎの形ばかりなんだれ?うさぎから奪ってきたのか?
北京ダック:単にとある会長さんから贈られたものですよ。
雄黄酒:ロンフォンフイ――!まだ皮付きのジャガイモと切ってないキュウリをそのまま鍋に……あ、ダ、ダックさんが来ました……すみません、失礼しました……
北京ダック:大丈夫、迷惑ではありませんか?
雄黄酒:もちろん、みんなダックさんが来るのを待っていました。
ロンフォンフイ:そうだよ、前回約束した酒は忘れてないよね?
北京ダック:もちろん忘れてませんよ。
ロンフォンフイ:へへ、それならいいよ〜ここに飲める人は一人もいないんだ。今晩はふたりで酔いつぶれるまで飲もう!
雄黄酒:あんまり飲みすぎないように……前回のことを忘れていないでしょう……
ロンフォンフイ:もう、何回注意されたことか……あれ、なんだか焦げ臭いが、スープを煮てたんじゃないのか……
雄黄酒:……しまった!ダックさん、失礼します!
北京ダック:大丈夫、気にしなくていいです。
北京ダック:そういえば、辣子鶏たちが見当たりませんね。いつもなら庭にはみんなが来ているはずですが。
ロンフォンフイ:最近修復する必要がある石碑がたくさんあるらしい。いつ来るかわからないな。あの法陣はいつも事故を起こすから、本当に頼りないんだよ。
北京ダック:そうなんですか……なにせ山河陣ですから、大変でしょう。無事であって欲しいです……
28.雪が降りそうな夕方・三
たまには髪型を変えたらどうだろう〜
大晦日
忘憂舎
新年にあたり、赤い提灯が山の雪色に映え、この小さな桃源地にも生気を与えた。
廬山雲霧茶が細く指を奏で、澄んだ琴音が雲のように流れ込んでいる。池のほとりに立つ西湖酢魚は、魚尾を軽く揺らしながら、音楽に浸っている。
西湖酢魚:廬山雲霧茶の演奏はますますうまくなってきましたね……
廬山雲霧茶:一緒に練習してくれてありがとう。
ふたりは静かにわらったが、遠くから騒がしい声が聞こえてきた。
亀苓膏:……これがあなたの言うサプライズ?
ワンタン:気に入らなかったのか、よく似合っているぞ。
カニみそ小籠包:ハハハハ!このマントにあるうさぎの刺繍、表情が亀苓膏とそっくり!
小籠包:このうさぎ耳帽子を合わせたら、もっと似合うよね〜
亀苓膏:……君たち!これらの変なものをどこで見つけたんだ?
ワンタン:景安商会の会長様からのプレゼントだ、捨てるのは悪いだろう。
亀苓膏:……佛跳牆?いつからこんなものが好きになったのか……
ワンタン:でもこのヘアロープも似合うよ〜たまには髪型を変えたらどうだろう〜
亀苓膏:君……!これ以上ふざけたら今日の晩ごはんはなしだ!
※誤植等が多いため、文脈的に正しいと思われる部分を差し替えたものを表記しています。
15.今日はいつの日か・二
なにか秘密があるのかな?
とある日
鬼谷書院
餅米蓮根:昨日、雪掛姉さんが踊ったあの踊り、本当に最高でした……
餅米蓮根:えっ……?
蛇腹きゅうり:「かわいい餅米蓮根ちゃん、この踊りはあなたにもとっても似合うよ!お姉さんと勉強しようか!」……と彼女は言うだろう。
餅米蓮根:なら……私は、や、やはり勉強しません……
餅米蓮根:でも……蛇腹きゅうりさんが雪掛姉さんをまねて話すと、本当に似ています。狗ちゃんたちの言った通り、あなたたちは本当に仲良しみたいね……
蛇腹きゅうり:ふん、どこが仲良しなんだ。書院の子供たちは勉強もせず、こんなくだらないことばかり考えているのか……
クラゲの和え物:あれ、なにがくだらないこと?
餅米蓮根:うわ―クラゲの和え物お姉ちゃん……音を立てずに近づかないでよ。
クラゲの和え物:へへへ、幽霊だから、浮いて歩けるよ。
蛇腹きゅうり:もう幽霊のふりをしないで、その浮遊をなんとかしろ……!
クラゲの和え物:ふん、あなたがあの笠を被ってカッコをつけるから、知らないもん〜自分でなんとかしてね。
蛇腹きゅうり:おい、早く俺の笠を返せ!
クラゲの和え物:ふん、冗談がつうじないや。あいつらをいじめないで!これあげるから――
クラゲの和え物:ところで、蛇腹きゅうり……最近、老虎菜を仕立屋に行かせてなにがしたかったのか?
蛇腹きゅうり:……ん?もちろん、新年の衣服を縫うためだ――って、あんたはそれをどうやって知ったんだ?
クラゲの和え物:もちろん、老虎自分が話してくれた。うーん……陳記甘栗一袋の代償がかかったって。
蛇腹きゅうり:あいつ……
クラゲの和え物:でも……彼が行ったのは女性ドレスを専門に扱う洋服屋だと聞いたけど。しかも、誰かさんはわざわざ注文する柄も指示したとか。なにか秘密があるのかな?
蛇腹きゅうり:どこに秘密があるんだ!くだらない……突然思い出した、金駿眉に仕事を頼まれてたんだ、失礼!
クラゲの和え物:ええー逃げないで!
餅米蓮根:蛇腹きゅうり兄さんは急に変になったみたい……顔が真っ赤になっちゃったよ。
クラゲの和え物:あの強情な男は、嘘をつくとすぐそんな風になっちゃうんだよ……ふん、絶対に秘密がある。
ふたりが話している時、中庭の隅にある梅の木の間から、新しい服を着飾った雪掛トマトが歩いて来るのが見えた。
雪掛トマト:なんでここはこんなににぎやかだと思ったら、あなたたちだったのね。
餅米蓮根:わー、雪掛姉さん!あなたの新しいドレス……本当に素敵!
雪掛トマト:老虎菜からもらったんだけど、光耀大陸の正月の風習で、みんな新しい服を作るんだって……
雪掛トマト:あいつはきっとパラータの新年の食事を作って欲しくて、私を買収しようとしたのね……
雪掛トマト:まあいいわ、餅米蓮根ちゃん、ちょうど踊りの練習をするつもりだけど、一緒に来ない?
餅米蓮根:え……え?待って、雪掛姉さん、私はまだほかのよ、用事が――
16.今日はいつの日か・三
あれは……とても奇妙な夢だった。
大晦日夜
鬼谷書院
夜空には花火が打ち上げられ、みんなが酒を飲んでご飯をいっぱい食べて、横になり寄り添っている。
蛇腹きゅうり:老虎菜、覚えてる?……この前、地宮に入った時、奇妙な香りで気を失ったことがあるよね。
老虎菜:うーん、おいしい――覚えてるよ、どうした?
蛇腹きゅうり:その時、みんなは奇妙な夢を見たと。雪掛は書院で授業をしている夢を見た、八宝飯たちは墓の夢を見た……あんたはどんな夢を見たんだ?
老虎菜:コホンコホン……お、俺は……食べる夢を見たかも、コホンコホン――
蛇腹きゅうり:おいおい落ち着け、大袈裟に反応すんなよ……
老虎菜:あれは……とても奇妙な夢だった。
蛇腹きゅうり:ん?どこが奇妙だ?
老虎菜:夢で見たのは……テーブルいっぱいに美味しい料理が並んでいるのに、その真ん中の大きなお皿に一本のレンコンがあった。
蛇腹きゅうり:レンコン……!?
老虎菜:うーん……甘い香りがする……でも、食べようと思ったら……
老虎菜:あいつは餅米蓮根の声でしゃべって、老虎菜兄さん、私を食べないでって……
蛇腹きゅうり:……
老虎菜:い、いや……どうしてあんな夢を見たのかわからない、本当だ……目が覚めてから、2日間なにも食べたくなくなったんだ……
老虎菜:なんだか、妙に罪悪感がする……
蛇腹きゅうり:はあ……あんたの気持ちは分かるよ……
老虎菜:え?
蛇腹きゅうり:そう考えると、俺の夢もそんなに奇妙じゃなかったかもしれないな……
老虎菜:あれ……どんな夢を見た?
蛇腹きゅうり:あ、いや、なんでもない……って、あの新しいパラータの焼き羊、いい匂いがするんだけど、食べないか?
老虎菜:いいよいいよ!
17.今日はいつの日か・四
彼は……ずっとあなたを探している。
大晦日夜
鬼谷書院裏山
灯りが灯る書院の中で、半分酔った人々が酒盃を片手に語り合う。真っ赤な服を着ているふたりが爆竹の音に合わせて庭で遊び回っている。
遠くから、このすべてを眺めている白酒が微笑む。手に握られて、しわくちゃになった新年の年賀状が風に舞い、やがて影の中の誰かの足元に転がる。
白酒:長い間隠れていただろう、出て来い……
ヤンシェズ:……
白酒:お前を覚えている、いい刀だ。やはり普通の護衛じゃなかったんだな。
ヤンシェズ:……ここでなにを?
白酒:ここ数日俺を尾行して、なんのつもりだ。
ヤンシェズ:……
ヤンシェズ:……書院に行かないのか。
白酒:ふん、まさかあそこの大晦日の宴に誘いに来たわけじゃないだろうな。
ヤンシェズ:……
白酒:知らない。
ヤンシェズ:……?
白酒:なんだ、信じないのか。
ヤンシェズ:彼は……ずっとあなたを探している。
白酒:他に用がなければ、失礼する。それと……もうついてくるな。
18.今日はいつの日か・五
一人の男が……
大晦日夜
聖教
冬虫夏草:今日はあのしつこい子犬を見かけないな。
ハイビスカスティー:ふふ、君の手下とまた一緒に遊びに行ったのかな……うちの蛇スープに悪影響を与えたら、君の責任ですよ。
冬虫夏草:どう考えても、うちのピータンが悪影響されるほうだろう。
ハイビスカスティー:そういえば、虫茶は?大晦日なのに、私たちふたりで酒をとは寂しいな。
冬虫夏草:ふん、へんなことを考えるなよ。女の子は夜中に男と酒を飲むわけがないだろう、虫茶はもう休んでいる。
ハイビスカスティー:ほおぅ、厳しすぎる兄だな。かわいそうな虫茶。
バタン、とドアが勢いよく開いて、蛇スープと虫茶は顔色が青ざめたピータンを引きずって入ってきた。
虫茶:兄さん……あたし……
ピータン:痛い……うう……ご主人様……
ハイビスカスティー:君の手下の様子がよくないようだ、彼を構ってやれ。
冬虫夏草:彼はどうした……?
蛇スープ:一人の男が……
冬虫夏草:男?
虫茶:さっき、屋上で月を見てたとき、チキンスープの部屋から一人の男が出てきて、あの人を見たら、ピータンがこんな状態になったの。
冬虫夏草:……彼を横にしてやってくれ、今すぐ生薬を調合してあげるから。
虫茶:うん……
虫茶:え……!?兄さん……
冬虫夏草:月を見に行ったって?今日は月があるのか?それに、なんで全身がお酒臭いが?虫・茶―兄さんが怒らないと、ボクを馬鹿にするつもり!?
虫茶:い、いや……違う……
ハイビスカスティー:もういいよ、大晦日だし、泣いてたらまた慌てるだろう?
19.今日はいつの日か・六
まるで昔の恋人に会いに行くみたいに。
大晦日夜
南離印館
京醤肉糸:はあ〜なんだか今年の大晦日はいつもより寂しくなった気がするな。もしかして年を取れば、年越しの感じも薄くなるのか?
松の実酒:……部屋中に舞姫や踊り子たちがこんなにいるのに、寂しいですか……?
京醤肉糸:なんだか機嫌が悪そうだな〜ほら、泉ちゃん、うちの服館長様にお酒をいっぱい注いで!
松の実酒:必要ない……自分でやります。
京醤肉糸:お正月くらい、楽しむべきだぞ。
松の実酒:貴方……まあいい。
京醤肉糸:ほらほら、約束だ。今日は説教は禁止だ。
松の実酒:……
京醤肉糸:乾杯〜はあ、残念なことに、片児麺が子供たちを鬼谷書院に連れて行ってしまった、琴を弾いてもらえないなあ。
松の実酒:片児麺は普段は真面目なのに、友達をこっそりと作っていたとは驚きましたね……うーん、なかなかうまくやっているようですね。
京醤肉糸:そうです……不思議ですが、片児麺の話によると、明四喜は今回招待されていないのに、自分から書院について行きたいと言い出したそうだよ。まさか、年越しの食事を食べたかっただけ?
松の実酒:私の知る限り、明四喜は鬼谷書院とは付き合いがないはずです。
京醤肉糸:確かに怪しいですね……彼は出発する前におしゃれをしていた、まるで昔の恋人に会いに行くみたいに。
松の実酒:昔の恋人……?
京醤肉糸:ヒック……まあいい、今日はお祭りだ。美しい景色を前に、彼のことを考えるよりも、楽しもう。もう一杯一緒に飲みますか!
20.今日はいつの日か・七
どうやら、内面に柔らかいところがあるようだ。
大晦日夜
鬼谷書院
金駿眉:やっと会えたね、片児麺さん。思っていたより、かなり気さくな方だね。
片児麺:気さく……もしかして、私の手紙の文面に、院長様は私を「付き合いにくい人」と誤解したのでしょうか?
金駿眉:そういうわけでもない。手紙の文言が堅かったから。実際に接してみたら、手紙に書いたような堅苦しさは感じませんね。
片児麺:実を言うと、院長様も私が想像したよりもずっとお若いです……お会いできて、私も手紙のように堅苦しくなくなりました。
金駿眉:ふふ……どうやら片児麺さんは、わたしを深山の書院に隠居しているおじいさんと間違えたらしい。
片児麺:ち、違います……書院の主人が徳の高い長者だとばかり思っておりましたし、お手紙を見ても、見聞が広い方だとわかりました。
片児麺:でも、食霊は人間と違い、見た目で年齢を判断するわけでありません……
金駿眉:そう、食霊にとっては……そんなことはどうでもいい。
片児麺:ええ、書院の古物を拝借したいという手紙を書いたときも不安でしたが、幸いにも院長様が快く貸してくれました。
金駿眉:あなたもいろいろ助けてくれたよ。ここ最近、書閣の破損した古画のほとんどはあなたが修復してくれて……
金駿眉:この度書閣のことも、あらかじめ注意してくれたあなたのおかげだ。
片児麺:それぐらい簡単なこと……あれ……
話しているうちに、片児麺は手元に毛むくじゃらの柔らかい感触を覚え、言おうとした言葉を忘れて、思わず手を伸ばしてそれを強く揉んだ。
片児麺:これは……あの猫耳麺っていう子のペットですか、やわらかい……
金駿眉:あなたもこのようなペットが好きらしいね。
片児麺:その……いえ、ちょっと目新しいと思っただけで……
金駿眉:ふふ、片児麺さんはモフモフが好きなんだね……どうやら、内面に柔らかいところがあるようだ。
21.雪が降りそうな夕方・一
俺様の面子を立ててくれるよな?
大晦日夜
地府
辣子鶏:お前、お正月なのに、なぜまだそんなに悲しそうな顔をしてるんだ?さあ、一緒に飲もう!
高麗人参:ゲホゲホ……残念ながら、今はお酒を飲める状態ではありません。
辣子鶏:この病人……まあいい――そうだろうと思って、いいお茶を持ってきた。お茶なら大丈夫だろう?
高麗人参:……
辣子鶏:東坡肉が作った豚肉の煮込みも持ってきた。食べていいぞ!
高麗人参:……本当はここで吾に付き合わなくてもいい。そなたは賑やかなのが好きでしょう?機関城は……今日はたくさんの人が集まっているはずです。
辣子鶏:知っていればいい!俺は忙しい。ここでお前と年夜飯を食ってから、機関城へ帰って、あいつらと食べたり飲んだりしなきゃならないんだ。
辣子鶏:だから、俺の時間を無駄にするなよ――料理がテーブルいっぱいに並んでいるだろう、さっさと食べろ!
高麗人参:……
辣子鶏:これでいい。地府はいつも陰気だろ?せっかくのお祭りだから、もっと盛り上がらないと……
高麗人参:……
辣子鶏:お前な、地府の他の者にお前の相手をさせないが、俺様の面子を立ててくれるよな?
高麗人参:そなたは酔っ払っている。しゃべりすぎです。
辣子鶏:フン、お前は話が少なすぎるから、こういう病気にかかるんだよ!これからはなんでも抱え込むな。
高麗人参:……
辣子鶏:聞こえたか!?
高麗人参:もうわかりましたから、早く食べましょう……
22.雪が降りそうな夕方・二
その中にいると、いつも悩みやトラブルが絶えないんだよ。
大晦日夜
機関城
金華ハム:なぜかわからないけど、今年の大晦日は例年より静かな気がしないか?
冰粉:たぶん、騒ぐ奴らが貴方様だけになったからかもしれませんよ。
金華ハム:え、先生、それはどういう意味……?
東安子鶏:うう……そのとおり。八宝飯、マオシュエワン、城主、そして君、適当に組み合わせただけで、火の粉が飛び散る。
金華ハム:おい、このガキ、さっさと肉を食え!
東安子鶏:うんうん、君も食べたい?僕が取ってあげるよ!
金華ハム:必要ない……俺も手があるから!
東坡肉:ふふ、今回は特に手間をかけて煮込み肉を作った、皆もしっかり味わってくれよ。
東坡肉:……あれ、回鍋肉、さっきから落ち込んでいるけど、もしかして料理が口に合わないの?
回鍋肉:いいえ……ただ、八宝飯とマオシュエワンが鬼谷書院に大晦日のお祝いに招かれたと聞いたのですが……
東坡肉:恐らく、吾のあの後輩は相変わらず短気なので、事前にお知らせを忘れたかもしれない……心配するな。彼は今地府にいるはずだ、もうすぐ帰ってくるだろう。
回鍋肉:そうでしたか……
冰粉:そういえば、あの地府の方は……
東坡肉:……ああ、世の中のことは、その中にいると、いつも悩みやトラブルが絶えないんだよ。後輩が少し彼を説得できるといいが……
東坡肉:さて、今日は酔って帰ると約束しただろう。さあ、まずは乾杯――
23.新年を迎える・一
親分のセンスが悪いとは言ってないから!
大晦日前
景安商会
年の瀬が近づき、景安商会は商売が繁盛している。麻婆豆腐が門に入る時、佛跳牆はいつものように山積みの商品を棚上げしている。
麻婆豆腐:対聯(※ついれん:中国の伝統的な建物の装飾のひとつ。門の両脇などに対句を記したもの)、花火、砂糖菓子……今年の年越し品もとても充実しているようだ。
佛跳牆:ああ、中には海外に販売するものもある、物が多すぎるので手伝ってもらうことになった。
佛跳牆は顔も上げずに言ったが、麻婆豆腐は豊富な商品に惹かれて、興味深そうに棚を眺めている。
麻婆豆腐:待って……この門像は、あまりにも凶悪すぎるだろう……
佛跳牆:……家を守り、魔除けのために使っているのだから、威厳と迫力が当然必要だ。
麻婆豆腐:門像はともかく、どうしてこの年賀の紅包(※ホンバオ:ご祝儀やお年玉のこと)にも妖魔や鬼ばかり描かれているんだ?
佛跳牆:なにが妖魔だ、これは……
麻婆豆腐:忘れるな。今年は卯の年だ。うさぎは可愛らしく、もちろん可愛いものと一緒に描けば、お客さんはもっと気に入ってくれる。
佛跳牆:……
麻婆豆腐:とにかく、あたしの経験では、このような怖いものは絶対に売れない。もっと好かれそうなものを用意しないと。例えば……あそこのやつ。
佛跳牆は麻婆豆腐の視線が向いている方向に目を向けると、玄関の前にちょうど小さな屋台があり、そこには愛らしいうさぎのグッズが並べられ、客が押し寄せていた。
佛跳牆:……景安商会の前で、堂々と客を奪う奴がいたとは……
麻婆豆腐:ふふ、でも相手のほうが商売は上手だな。
天津煎餅:え?親分?なにか用ですか?
佛跳牆:エヘン……俺が選んだものは、本当に売れないのか?
天津煎餅:親分、正直いうけど、怒らないでくださいね……売れないとは言わないけど、毎年同じものを売ってるから、麻婆姉さんのアドバイスを聞いて、品物を変えてもいいかと思います……
天津煎餅:ええっと、親分のセンスが悪いとは言ってないから!
佛跳牆:……わかったから仕事を続けろ。
24.新年を迎える・二
会長様の好感度が上がるでしょう。
大晦日前
景安商会
天津煎餅:親分、麻婆姉さんの指示で作ったものは全部完成しました!
テーブルいっぱいに並んだうさぎのぬいぐるみなどの品物を眺めていると、佛跳牆は真っ白で小さなうさぎのぬいぐるみを手に取って、眉間に皺を寄せた。
佛跳牆:……こんなに柔らかいぬいぐるみ、本当に好きな人はいるのか?
天津煎餅:わたしは好きなんだけど、ふわふわして可愛いですよね。
佛跳牆:……見た目がいいだけだ、役に立たないだろう。
天津煎餅:ふふ、親分、そんなこと言わないでよ、この帽子を試してみてください!とても快適ですよ〜
佛跳牆:貴方!
北京ダック:ふふ、最近景安に新しい品物が入荷したと聞きましたけれど、それは……
心地よい音楽と共に、懐かしい姿が部屋に入ってきた。佛跳牆が自分の頭にうさぎ耳のモコモコ帽子をつけられたことに気づかず、相手はもうからかい始めている。
北京ダック:ふふ、会長様もこんなかわいいものが好きなんですね〜
佛跳牆:……
佛跳牆の顔色が予想どおり怒っているのを見て、北京ダックは目を細め、白や緑色のうさぎのぬいぐるみの中に隠れている佛跳牆を興味津々で見つめた。
北京ダック:まあ、焦って脱ぐ必要はないでしょう、たまにはスタイルを変えるのもいい、会長様の好感度が上がるでしょう。
佛跳牆:……
天津煎餅:ダックさんの言う通り……!……うわぁ、親分、殴らないで!
25.酒飲んで楽しむ・一
やっぱり龍井は信頼できるな。
大晦日
湖畔の小屋厨房
煙がゆらゆらと立ち昇り、湯気が酒や料理の香りとともに厨房にただよっている。
雄黄酒:ふぅ……これでよし……
ロンフォンフイ:いい匂い……なんだこれ!食べてやる!
雄黄酒:……さっきも同じこと言ったでしょう。子推が君をこちらに押し込んだのも無理はありません。
ロンフォンフイ:オレは……味見してやろうと思っただけだ。
雄黄酒:本当に手伝いたいなら、先に作っておいた薬膳を持ってきてくれませんか。ここに置いてあったはずです……あれ、なくなっちゃった……
ロンフォンフイ:ベタベタした緑色のものってことか?あれ、オメェが作った薬膳か……
雄黄酒:……ロンフォンフイ、まさかまた盗んで食べちゃったんじゃないでしょうね?
ロンフォンフイ:あんな臭いものを食べるわけないだろう……
雄黄酒:なら、どうして消えてしまったのですか?
ロンフォンフイ:あははは……部屋の隅に積み上げられているのを見て、なにかの失敗作かと思って捨ててしまった……
ロンフォンフイ:いつも薬を試すために、オメェがいろいろなものを食べるから心配で……いたっ!また殴られた……
雄黄酒:……そうでしたか……でも、薬膳がなくなってしまうと、今夜の宴会の料理が足りなくなってしまう……
ロンフォンフイ:じゃあ山に行ってキジを狩ってくるか!
子推饅:なんでキジを狩るんですか……外にはたくさんの食材があるじゃないですか。
雄黄酒:子推?どうしたんですか?
子推饅:龍井は人間がたくさんの謝礼を贈って来たと。新鮮な食材がたくさん入っているようです。
雄黄酒:え?それはよかった!
ロンフォンフイ:やっぱり龍井は信頼できるな。オレも手伝ってやろう!
雄黄酒:だめだ、貴方は台所から離れた方がいい。
ロンフォンフイ:……わかった、じゃあ火を起こすのを手伝ってあげたらいいだろう!
26.酒飲んで楽しむ・二
それなら彼らの好意を裏切らないように。
大晦日前
湖畔の小屋厨房
細かい雪が降り積もり、梅の香りが池を包み、西湖龍井と武夷大紅袍が亭の中で向かい合わせに座っている。
武夷大紅袍:また、良い雪が降りました。今年も幸運な一年でありますように。
西湖龍井:ああ、今年は年獣に襲われることもなく、人々は良い年を過ごせます。
ふたりが話していると、遠くから誰かが雪を踏む足音が聞こえてきた。
武夷大紅袍:雪の日にやってくる人もいますか……お祈りに来た人でしょうか。
村人甲:龍神はご存知ですか?……あ、あも、もしかしてこの方が……!
村人乙:龍神様は青い衣を着て、角がふたつあると言われています……こんな仙人の姿、確かに神様だと思います!
村人甲:心を込めて祈れば、龍神様が現れると言われています!本当にそうですね!
村人乙:となると、龍神様の傍にいるこの方は、薬草に長けていると噂され、よく龍神様と一緒に現れる戦神様でしょう!
武夷大紅袍:……
村人甲:わ、私たちは隣の村の村民で、龍神様に1年間お世話になり、お礼を言いに来たのです!今年は怪物が出なかっただけでなす、土地も豊作になりました!
村人乙:これらは全部村の特産品で、村全体の気持ちです。ささやかな供え物ですが、龍神様、受け取ってください!
西湖龍井:いいえ、私は……
西湖龍井は好意を断ろうとしたが、そばにいた人にそっと止められ、間を置き、彼は理解した。
西湖龍井:好意はありがたいですが、骨を折る必要はありません。私がいる限り、できる限りのことはします。そして……豊作はあなたたち自身の努力で、私はなにもしていません。
武夷大紅袍:雪が積もっているので、帰り道はお気をつけてください。
村人甲:龍神様と戦神様、ありがとうございます!ふたりの神様のご加護が永遠に続きますように!
村民ふたりの喜びの表情を見て、ふたりは思わず笑みがこぼれた。ふたりの人影が遠くに消えた後、武夷大紅袍は思わず感嘆した。
武夷大紅袍:以前は、自分たちがただやれることをやっただけと言いましたが、人間たちにとっては、数十年にも及ぶものでしょう。
西湖龍井:しかし……彼らががんばっている限り、私の力は存続できたのかもしれません。
武夷大紅袍:ふふ、それなら彼らの好意を裏切らないように。ついでに、これらの食材をどうするかを考えてみましょう。
27.お年越し・一
湖畔の小屋
庭
冬の雪の日、小屋は穏やかな静けさの中に包まれている。北京ダックは庭内に入ると、見えたのはロンフォンフイが退屈して庭にしゃがんで雑草をかき回し、顔にはちょっと不満があふれている。
北京ダック:ふふ、どうかしましたか?
ロンフォンフイ:――ダック!ようやく来たか!来てくれないと死ぬほどつまらないよ!……雄黄酒も台所の手伝いをさせてくれないし……っていうか、なんでこんな多くの荷物を持っているんだよ!
ロンフォンフイ:いい香りだ!お餅、サクサク団子……ちょっと待って、なんでうさぎの形ばかりなんだれ?うさぎから奪ってきたのか?
北京ダック:単にとある会長さんから贈られたものですよ。
雄黄酒:ロンフォンフイ――!まだ皮付きのジャガイモと切ってないキュウリをそのまま鍋に……あ、ダ、ダックさんが来ました……すみません、失礼しました……
北京ダック:大丈夫、迷惑ではありませんか?
雄黄酒:もちろん、みんなダックさんが来るのを待っていました。
ロンフォンフイ:そうだよ、前回約束した酒は忘れてないよね?
北京ダック:もちろん忘れてませんよ。
ロンフォンフイ:へへ、それならいいよ〜ここに飲める人は一人もいないんだ。今晩はふたりで酔いつぶれるまで飲もう!
雄黄酒:あんまり飲みすぎないように……前回のことを忘れていないでしょう……
ロンフォンフイ:もう、何回注意されたことか……あれ、なんだか焦げ臭いが、スープを煮てたんじゃないのか……
雄黄酒:……しまった!ダックさん、失礼します!
北京ダック:大丈夫、気にしなくていいです。
北京ダック:そういえば、辣子鶏たちが見当たりませんね。いつもなら庭にはみんなが来ているはずですが。
ロンフォンフイ:最近修復する必要がある石碑がたくさんあるらしい。いつ来るかわからないな。あの法陣はいつも事故を起こすから、本当に頼りないんだよ。
北京ダック:そうなんですか……なにせ山河陣ですから、大変でしょう。無事であって欲しいです……
28.雪が降りそうな夕方・三
たまには髪型を変えたらどうだろう〜
大晦日
忘憂舎
新年にあたり、赤い提灯が山の雪色に映え、この小さな桃源地にも生気を与えた。
廬山雲霧茶が細く指を奏で、澄んだ琴音が雲のように流れ込んでいる。池のほとりに立つ西湖酢魚は、魚尾を軽く揺らしながら、音楽に浸っている。
西湖酢魚:廬山雲霧茶の演奏はますますうまくなってきましたね……
廬山雲霧茶:一緒に練習してくれてありがとう。
ふたりは静かにわらったが、遠くから騒がしい声が聞こえてきた。
亀苓膏:……これがあなたの言うサプライズ?
ワンタン:気に入らなかったのか、よく似合っているぞ。
カニみそ小籠包:ハハハハ!このマントにあるうさぎの刺繍、表情が亀苓膏とそっくり!
小籠包:このうさぎ耳帽子を合わせたら、もっと似合うよね〜
亀苓膏:……君たち!これらの変なものをどこで見つけたんだ?
ワンタン:景安商会の会長様からのプレゼントだ、捨てるのは悪いだろう。
亀苓膏:……佛跳牆?いつからこんなものが好きになったのか……
ワンタン:でもこのヘアロープも似合うよ〜たまには髪型を変えたらどうだろう〜
亀苓膏:君……!これ以上ふざけたら今日の晩ごはんはなしだ!
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