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メリークリスマス・ストーリー

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作成者: 時雨
最終更新者: 時雨

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メリークリスマス

プロローグ


ある日

ハカールの邸宅


 タ、タ、ターー

 ルーベンサンドは本から目を離し、目の前を行ったり来たりしているウェルシュラビットを見ている。


ルーベンサンド:どうしてもこのまま歩き回りたいなら、一階でやってください。

ウェルシュラビット:ここのところ、ハカールは何をしても僕を呼んでないけど、あの秘密めいた様子を見ると、何か新しい計画を立てているに違いない……

ウェルシュラビット:僕を疑ってるんだろう?僕が密かに君を助けていることを知ったから……君、全然焦らないのか?

ルーベンサンド:……こっちが聞きたいですよ、どうして私よりも焦っているですか……

ウェルシュラビット:もう時間がないって言ったのは君でしょ?ハカールの薬はただの鎮静剤で、薬に対する抗体ができると、君は堕化し、理性も失ってしまう……

ウェルシュラビット:だから僕が助けてあげてるんだよ!

ルーベンサンド:……しかし、焦っても問題は解決しません。それに……

ハカール:ラビットちゃん、どこ?

ウェルシュラビット:!!!


 一階から聞こえてきた声に驚いたウェルシュラビットはルーベンをちらりと見て、平静を装いながら一階へ駆け下りた。


ハカール:ここにいたか、ラビットちゃん。

ウェルシュラビット:(良かった、ルーベンの部屋から出てきたのに気づいてないみたい……)

ハカール:エヘン、僕に何の用だ?そして……君の後ろにいる奴は?

ハカール:新しい仲間よ、さあ、自己紹介しましょう〜

シュプフヌーデルン:……シュプフヌーデルンだ。

スレンダー:おい、俺もいるだぜ!

ウェルシュラビット:あれ?腹話術もできるの?

シュプフヌーデルン:いいえ。今話していたのは、僕の左手だ。

スレンダー:お前の左手なんかじゃない!俺は俺だ!俺の名はスレンダー!覚えとけよ、ガキが!

シュプフヌーデルン:うるさいぞ……

ウェルシュラビット:……また変なのが来たな……

ハカール:ふふ、きっと仲良くなれるよ。それじゃあ……

ハカール:これから新しい友達と一緒にやることがあるの……ルーベンの「お世話」は引き続き頼むよ、ラビットちゃん。

ウェルシュラビット:……今回も、僕の協力いらないのか?

ハカール:心配しないで、後からいくらでもチャンスあるから、今回はアナタには向かない仕事なのよ……

ハカール:それに、もうすぐクリスマスなのに、ラザニアがまたどこかに行ってしまったわ……だから、ルーベンと一緒に、ワタクシの邸宅に少しでもクリスマスの雰囲気を盛り上げてね。

ウェルシュラビット:またクリスマス……食べる事すら出来ない人もいるのに、あの貴族らは人から搾り取ったお金で、この日ばかりは贅沢をする正当な理由を見つけるなんて……

ハカール:ふふ、だからワタクシたちは貴族から搾り取ったお金で楽しむのよ……

ハカール:楽しみなさい、きっと……とても思い出に残るクリスマスになるだわ〜


ストーリー1-2


クリスマスイブの少し前

ナイフラストのとある村


シュプフヌーデルン:だから……やはり赤い服の方は怖く感じやすいというのか?

ハカール:いや、実はこの服は、人間を身近に感じさせ、幸せにするためのものよ。

シュプフヌーデルン:……欲しいのが恐怖だ、それこそが胃袋を満たせる。

ハカール:ふふっ、怒らないで。人はリラックスしている時の方が美味しい恐怖を生み出すのよ。


―――

⋯⋯

・だからこの服を着ればいいんですか?

・それで人が怖がらないなら……許せないぞ。

・どうして、貴方を信じなければならないですか?

―――


ハカール:焦らないで、村の中の畑に一滴ずつ、これをかけるのを手伝ってね。

スレンダー:馬鹿にするなよ、何かの危険な薬にしか見えないだろ?こいつに人の土地に毒を盛らせて、それがバレたらどうするんだ?

ハカール:だからこの衣装を着てるんだわ。もし誰かに見つかったら、サンタのふりをして袋に入ったプレゼントを渡せばいいのよ。

スレンダー:どうりでクリスマスイブを選んだわけか……だが、俺たちが欲しいのは人間の恐怖だけで、命じゃない。

ハカール:安心しなさい、この薬は致命的なものじゃなく、ワタクシのちょっとした実験だけだわ……どうなの?心優しいスレンダーさん、他に質問はありますか?

スレンダー:…………

シュプフヌーデルン:そういえば……サンタって何?

ハカール:……

スレンダー:おい、サンタを知らない?じゃあクリスマスも知らないのかよ?

シュプフヌーデルン:……

ハカール:ならばスレンダーが教えてあげてね。薬を注ぎ終えたらここに戻って合流するの、いいよね?

ハカール:ワタクシを信じなさい、最高級の恐怖を味わわせてあげるわよ〜


 そう言って、この悪しき計画を考え出したハカールは得意げに去っていき、シュプフヌーデルンも言われた通り、村の畑に薬を撒きに行ってしまった。二人が去った後、すぐ近くの茂みからガサガサという物音がした。


ウェルシュラビット:どうりで僕を呼んでなかったわけ、村の作物に手を出すなんて!

ウェルシュラビット:これらの作物は、村人にとって一年間の労働の成果だ。お腹を満たすだけでなく、来年の生活費にもなる……実験なんかに使えるもんか?!

ルーベンサンド:お静かに、こっそり外に出ているんですから……

ウェルシュラビット:前の話とは違う、目標はクソ貴族だけだと言ったのに!今の彼女は、平民を虐げる貴族たちとまったく同じじゃないのかよ!

ルーベンサンド:ウェルシュ、落ち着いてください。聞いて、今の貴方はもうハカールのために働いているのではなく、私の手助けをしているのです。

ウェルシュラビット:……そ、そうだ……

ルーベンサンド:薬がもう土地に染み込んでしまいました、これは取り返しのつかない事実です。しかし、何もできないわけではありません。これからのやることは、ハカールの計画を阻止することです。

ウェルシュラビット::でも、どうして……このままハカールに文句を言うのもだめだろう、それは君に迷惑かけるだし……

ルーベンサンド:「ホルスの眼」を知っていますか?新聞で読んだけど、彼らは無料で様々な不思議なことを手助けしています……

ルーベンサンド:もしかしたら、手紙を出して、彼らに助けを求めてもいいかもしれません。


ストーリー1-4


クリスマスイブ

ホルスの眼


パフェ:……わかってる、年中残業で大変だったよね、ザッハだって疲れるわよ……

パフェ:けれど、すべての仕事を私たちに任せて、自分でフランスパンとクリスマスを過ごすという行為には、やはり許せないだわ!

ザッハトルテ:……クリスマスを過ごすわけではありません、別の任務があるのです……

パフェ:そうなの?では、任務を交換しましょう。私が村に調査に行くのは目立ちすぎるとは思わないかしら?この任務は私には向いてないだわ。

ザッハトルテ:しかし、僕たちの任務はなおさらあなたにふさわしくないですよ……温泉男湯のおばけ調査、行ってみたいですか?

パフェ:………………………………わかったわ。私の任務の詳細を教えなさい。

ザッハトルテ:依頼状には、村で普通に育てられている作物が、わけもなく有毒な作物になってしまったので、その原因調査に協力し、良ければ解決策も出してもらいたいと書かれています……

ザッハトルテ:スケジュールによると、あなたとクレームブリュレはすぐに行動する方がいいでしょう……残念ですが、クリスマスはあの村で過ごすことになるかもしれません。

パフェ:いいのよ、予想通りだわ。もしかしたら予定より早く終わるかもしれないし、そういえば……クレームブリュレは?

ザッハトルテ:……あの人は……


 しばらくして――


クレームブリュレ:クリスティーン様、どうしてそんなに早く歩くのですか?待ってください!

パフェ:待たないだわ……恥をかきたくないんだから!

クレームブリュレ:恥をかくですって?お金持ちのお嬢様が人里離れた小さな村に従者一人だけを連れてくるのを、どうしたら自然に見えるか、ずっと考えていましたのに!

パフェ:……村を応援しに来た慈善家を装うのは構わないが……この大げさなバナーを引っ張るのはやめてくれない?


 瞥了眼身后布蕾举得高高的红色横幅,芭菲不禁又加快了脚歩,试图与横幅上金灿灿的「慈善天使」四个大字拉开距离。

(※意訳:クレームブリュレが後ろに高く掲げた赤い横断幕を見つめながら、パフェは思わず足を速め、横断幕にある「慈善の天使」という4つの金色の文字から距離をとろうとした。)


パフェ:慈善活動というより、明らかに自分のための広告だわ……

クレームブリュレ:何しろ、見返りを求めない慈善家よりも、自分を売り込むために小さな村を訪れる偽善的なお嬢様の方が一般的でしょう。

パフェ:さすが鹿の学生だわ……この変装が必要だったらいいけど……

クレームブリュレ:ご安心ください、お嬢様。卵を投げつけられないように、このあたしが守ってあげますよ!

パフェ:どうもアリガトウ……

クレームブリュレ:へへ、どういたしまして〜でも……手紙を出して助けを求めたのに、この村があまりにもお祭り騒ぎなんでしょう。


 周りを見渡すと、クリスマスの準備をしている人たちがいて、みんな幸せそうな笑顔をしている。


パフェ:そんなに幸せそうに、かえってちょっと異常を感じるわ……まあ、そんなことより、まずは畑に行ってみるわよ。


 戸惑いながらも人ごみの中を歩いていくと、やがて二人は村の畑に行き着いた。しかし……


パフェ:土ごとが黒くなってるのに、どうしてまた作物を持ち帰るの?

クレームブリュレ:これでも食えるのか……あの、すみません!この作物を食料として収穫しているのですか?


 クレームブリュレに呼び止められた少女は、籠から摘んだばかりの黒い作物を見て、そしてクレームブリュレを見ると、とても困った顔をした。


女の子:どうしてそれを聞くの?作物を植えたからには食べるものでしょう……それに、今年のカボチャはなぜかいつものより甘いよ!

クレームブリュレ:……


 少女は作物が何の問題もないと思ったようで、籠を抱えたまま嬉しそうに家の中に戻っていき、クレームブリュレと苺パフェは互いに顔を見合わせることになった。


クレームブリュレ:えっと……


―――

⋯⋯

・あたしの目がおかしいのでしょうか?

・これはどういうことですか?

・彼女は何かの幻術にかかっていたのかな?

―――


パフェ:……どうやら今年のクリスマスは、村で過ごすことになりそうだわ。


ストーリー1-6


 二人は畑の黒くなった土を瓶に詰め、郵便配達人に頼んでその瓶を学校に送ってもらい、成分を調べてもらった。この後、調査は行き詰まった。


パフェ:村の土地も作物もそうなっているのに、村人は誰もおかしいと思わない……

パフェ:村人から役立つ手がかりをもらえないし、畑や作物がしゃべらない。犯人を見つけるのはまるで干し草の山から針を探すようだわ……

クレームブリュレ:犯人が実際に存在すればの話ですよ……もしかしたら、畑や作物がこうなったのは、何かに汚染されただけかもしれません……

パフェ:ありそうだわ……そうよ、依頼状を書いた人を探したらどうかしら?

クレームブリュレ:……依頼人たちよ、お願いだから今後は署名をしてください。こんなことで匿名にする意味があるのかよ……

パフェ:……ここで考えるだけでもしょうがない、手がかりを探しに行きましょう。


―――

⋯⋯

・うん、今はこうするしかありません。

・しかし、手がかりはどこにあるでしょう……

・わかった、貴方の言う通りにします。

―――


 そこで、二人は郵便局を離れ、あてもなく調査を続けた。しかし、密かに後を追っていたあの二人は、とてつもなく不安そうな顔をしていた。


ウェルシュラビット:何だよあの二人!ハカールが犯人だって一目瞭然だろう!

ルーベンサンド:どこが一目瞭然です?

ウェルシュラビット:だってその作物、ハカールの口とまったく同じ色しているじゃないか?

ルーベンサンド:それは単なる偶然でしょうね……それに、あの二人はハカールを見たことがあるわけでもないし、その女は今どこに隠れているのかもわかりません。

ウェルシュラビット:だったら、シュプフヌーデルンのやつも?あんなに背が高くて人混みの中をうろうろしてるのに、それも見えないのか?

ルーベンサンド:背が高いだけで、疑うことはできないですよ……彼女たちの注意を引くには、別の方法を考えないといけません……


 そう言って、ルーベンは何か思いついたように、道端で遠くないところのサンタさんを眺めている小さな女の子に近づいて、ひざまずいて尋ねた。


ルーベンサンド:サンタさんに興味があるようですね。どうして挨拶に行かないのですか?

女の子:うぅ……あのサンタさん、背が高くて、表情もないの……ちょっと怖いから……

ルーベンサンド:怖い?いや、私のメガネと、あそこのお兄さんの……ラビットバッジは、このサンタさんからもらったものですよ。怖がらないで、プレゼントをもらいに行って良いですよ。

女の子:ほ、本当?

ルーベンサンド:ええ。でも、貴方だけではいけません。サンタさんはワイワイするのが好きなので、仲間を集めて大きな声で挨拶をして、プレゼントをお願いしましょう。

女の子:わ、わかった!ありがとう、お兄さん!


 それを聞いた女の子は、すぐに振り返って駆け出した。幸い村はそれほど大きくなく、女の子はまもなく子どもをたくさん連れて、人目を避けて畑に毒を盛ろうと企むシュプフヌーデルンに向かって駆けつけた。


男の子:すげえ!本当にサンタさんなんだ!まさかクリスマスイブに来るとは!

女の子:サンタさん!プレゼントちょうだい!

シュプフヌーデルン:……うるさい……


 シュプフヌーデルンは子どもたちに油断してしばらく逃げられず、子どもたちの興奮した声はすぐにクレームブリュレと苺パフェの注意を引くことになった。


クレームブリュレ:あ!あ、あいつ!

パフェ:どうした?あのサンタさん、知っているのかしら?もしかして、鹿教官の同僚では……

クレームブリュレ:えっと、先生ならサンタというよりトナカイみたいなものでしょう……

クレームブリュレ:それより、あいつはあたしたちと同じ食霊ですよ。この前、ザッハたちと一緒に調査で会ったことがあります……

クレームブリュレ:あたしの記憶が正しければ、彼は「恐怖」を餌にしています。このサンタの衣装は本当に似合わないですね……

パフェ:「恐怖」を餌に?その場合、容疑者としての動機があるだわ。

クレームブリュレ:でも、ここの人たちは恐怖を感じていないですよ……おかしいですね……本人に聞いてみましょう!

パフェ:待ちなさい!前にも会ったことがあるし、彼は本当の犯人なら、先手を打たれるでしょう?

クレームブリュレ:なら……

パフェ:貴方は周りに彼の仲間がいるかどうか調べて……このサンタは私に任せたわよ。


ストーリー2-2


 サンタに近づいて、苺パフェは二人の身長差がとんでもないことに気がついた。彼女自身はそんなに背が低くないのに……


パフェ:そ、そんなこと気にしてる場合じゃないだわ……


 彼が子どもたちから逃げ出す前に、苺パフェが小走りで彼の前に立ちはだかった。


パフェ:こんな若いサンタさん、なかなか見られないわ。貴方も慈善活動のために来ているのかしらパフェ

シュプフヌーデルン:え?

パフェ:……この子たち、誰も貴方を知らないみたいだから、この村の人ではないはず……

パフェ:子どもたちのプレゼントもお金をもらってないようで、慈善活動じゃないかしら?

シュプフヌーデルン:言うことがわからない……


 シュプフヌーデルンは本当に苺パフェの言葉を理解していないようで、立ち去ろうとし、それを見た苺パフェも慌てて後を追った。


パフェ:私も慈善事業で来たんだわ。でも、この村の畑は変になっているようで……何が起こっているのか、知ってるかしら?


―――

⋯⋯

・どうして僕に聞くんですか?

・知るか。

・知るわけないでしょ。

―――


パフェ:村人は誰もその作物の変化を見ることができないようなので、外来者にしかわからないのかなと、推測したけど……

シュプフヌーデルン:外来者ではなく、その毒のある作物を食べていない人こそ、異常を見抜くことができる。

パフェ:この……!

シュプフヌーデルン:僕はサンタなんかじゃない。この赤い服のせいで、僕をサンタと勘違いしてしまうのだろう。でも……

シュプフヌーデルン:この服、元々赤じゃなかった。

パフェ:やはり貴方の仕業だよね?貴方が土に毒を盛ったのでしょう?

シュプフヌーデルン:あ、だから……驚かされた?

パフェ:???

シュプフヌーデルン:足りないか……僕の手、喋れるよ。スレンダー、吠えてみろ。

スレンダー:俺は犬じゃねぇよ!

パフェ:……

パフェ:(そうだ、こいつは恐怖を餌にしているようだわ。先の話も、私を怖がらせるためなのかしら……)

シュプフヌーデルン:ちぇ、驚いていなかったか……今回はスレンダーのせいだ。

スレンダー:ふざけんな!今回は邪魔してないのに、お前は怖がらせるのが下手なんだからよ!

パフェ:……失礼します……


 これ以上何も聞かれないと思った苺パフェは、騒々しい声から離れ、代わりに物陰に隠れているクレームブリュレのところへ歩いた。


クレームブリュレ:どうですか?何か聞き出されたのですか?

パフェ:いいえ、変な人だったわ……聞き出せなかった。

クレームブリュレ:確かに、あたしもそれを経験しましたから……ちなみに、こっちにも手がかりを見つかりませんでした……

クレームブリュレ:あれ、なぜあそこはそんなににぎやかなんですか?みんなその方向に向かっているようですね……

パフェ:あそこはたしか……村のホール?


ストーリー2-4


平安夜

礼堂内


 人々と共にホールに入ると、狭い空間はやはりほぼ満員だった。クレームブリュレと苺パフェは、周囲が腐敗臭さえ放つ黒い作物で埋め尽くされていることに気がついた。


パフェ:この人たち、何が間違っているのに気づかないのか……彼らは、何か書いているようだけど……

クレームブリュレ:すみません、あの……今夜は何かイベントやっているんですか?何を書いているのですか?

村人:外から来たのか?どうりで知らないわけだ……今日、メモに願い事を書いておけば、サンタさんが叶えてくれるぞ!

クレームブリュレ:サンタさんって……教会の神父様のことですか?それとも、外でうろうろしている背の高い男ですか?

村人:何を言ってるんだ、本物のサンタさんに決まってるだろ!

クレームブリュレ:……


 村人はクレームブリュレのサンタへの質疑に苛立ったようで、彼女に構わなくなり、頭を下げて再びメモに書き込んだ。


クレームブリュレ:ここの大人はみんな子どもっぽいね?実際にサンタさんがいると信じてるなんて……

パフェ:多分、あの毒のある作物のせいでしょうね……カボチャが腐っているのも見抜けず、それでも美味しいと思った少女がいたじゃないかしら……

クレームブリュレ:そうですね、あの女の子も、ここにいる人々も、すべて変に見えています……


 二人が顔をしかめて考え込んでいる時、背後から子どもの声が響いた。


男の子:お姉ちゃんたち、どうしてこんなところに立ってる?願い事を書かないの?

パフェ:サンタさんに叶えてもらうような願い事はないわ。

男の子:へぇ?もったいない!サンタさんは何でも叶えてくれるのに!

パフェ:他人に頼って叶えると、本来の意味を失ってしまう願いもあるのよ。

男の子:……変なお姉ちゃんだな……

パフェ:……

クレームブリュレ:自分で叶えてこそ意味がある願いですか……例えば、舞踏会で……

パフェ:まだ冗談を言える気分なの?

パフェ:あのサンタは、毒作物と関係があるかもしれないと感じるわ……今頃、ホールのどこかに隠れているかもしれないのよ……


 トン、トン、トン……

 次から次へと濁った音がして、クレームブリュレと苺パフェは、さっきまで熱心に願い事をしていた人たちが、眠た顔に幸せそうな笑みを浮かべながら、次々と地面に倒れていることに気づいた。

 ホールの証明も不気味にゆっくりと点滅し始め、やがて完全に消えて、全員を暗闇に包んだ……


クレームブリュレ:ど、どういうこと?パフェ――


 苺パフェの位置を確認したかったが、クレームブリュレは一歩を踏み出したところで、冷たく、ぬるりとしたねばねばした感触が彼女の手足を包んだ。


クレームブリュレ:こ、これは……

パフェ:ブリュレ!どこだ?私、絡まれたわ!

クレームブリュレ:くっそ……


 クレームブリュレは手にした火炎放射器を握り締め、銃口から炎が噴き出し、自分を包んでいたものに焼きついた。そのため、拘束が少し緩み、クレームブリュレも炎の光で背後にいる人物を見ることができた。


クレームブリュレシュプフヌーデルン?!やっぱり怪しいね!貴方の目的は一体何だ?!


―――

⋯⋯

・僕はただ、お腹を満たしたいだけです。

・関係ないです。

・ここに来るつもりはなかったけど……

―――


クレームブリュレ:……


 シュプフヌーデルンの答えにクレームブリュレは言葉を失った。その時、ホールの暗闇が不気味な青い光で照らされ、まるで怪火が周囲をより不吉な光で照らしたかのようだった。

 その直後、ホールの奥に幽霊のような人影が現れた。


ハカールメリークリスマス!ワタクシが……みんなの願いを叶えてあげましょう。


ストーリー2-6


ハカールメリークリスマス!ワタクシが……みんなの願いを叶えてあげましょう。

クレームブリュレ:!どこかで会ったような気が……

パフェ:手配書だ。それが何十人もの命を奪った指名手配犯、ハカールだわ。

ハカール:ふふっ、残念だけど、正確に言うと、合計784人の命を奪ったわよ。

パフェ:……自慢するつもりかしら?

ハカール:いや、ワタクシだって、まだまだ頑張る必要があると思うのよ。

パフェ:この……!


 相手の態度に怒った苺パフェは、攻撃しようとしたが、シュプフヌーデルンの触手に巻きつけてしまい、動けなくなった。ハカールは軽く微笑むだけで、村人たちの願いが保管されている箱の前に歩み寄り、一枚のメモを取り出した。


ハカール:では、みんなの願いを聞いてみましょう……

ハカール:食べきれない食べ物……無尽蔵の財産……愛……出世……権力……ああ、人間の欲望は、どんなに時間がたっても本当に、つまらないほど変わらないわ。

ハカール:でもいいのよ、もともとアナタ方には期待していなかったわ。

パフェ:何をする?!

ハカール:ふふ……クリスティーン様の言う通りだわ。ある願いは、他人に頼って叶えると本来の意味を失ってしまうの。

ハカール:だから……その願いを叶えるために、この人間たちに命を捧げさせよう。

パフェ:罪のない人々を殺して、何になる?!

ハカール:うん……彼らの願いはつまらないものだけど、そんなつまらない願いから生まれる食霊が大半を占めているわ……強力なワタクシたちを召喚する能力、いわゆる「希望の力」は、正しく使えば……

ハカール:ふふ、悪役として、これ以上アナタ方に言ってはいけないわ。とにかく……ワタクシの実験に少しでも貢献できるのなら、彼らはいい死に方をしたと思うのよ。

クレームブリュレ:させるか!

ハカール:!?


 苺パフェハカールが話している間、クレームブリュレは静かに火炎放射器で体に巻きついた触手を焼き払い、決然とハカールに銃弾を放った。

 しかし、クレームブリュレは暗闇と焦りによって、狙いを定めることができなかった。ハカールは面白そうな表情で攻撃をかわした。


ハカール:本当にいいの?ホールにいるこのすべての命を、ワタクシの手に委ねることになっても。

クレームブリュレ:!!!


 ハカールは半瞬の躊躇もなく、数発の弾丸を地面に寝ている村人たちに向かって勢いよく飛ばしていた。


 クレームブリュレはとっさに銃を構えて炎を噴き出し、弾丸を逸らした。しかし、炎が消えた時、ホールにはハカールシュプフヌーデルンと共に消えていた。


パフェ:ブリュレ!追いつくんだわ!

クレームブリュレ:……


 クレームブリュレはホールから追い出さず、火炎放射器で、切断されたとはいえ苺パフェの体に巻きついている触手を焼き払った。


パフェ:あなた……

クレームブリュレ:あきらめて、今のあたしたちはあいつに敵わないんです……あたしは先生から学んだのは、殉職する方法じゃなくて、生き続ける方法なんですから。それに……

クレームブリュレ:今回の任務は、村の毒作物の件を調査し、村人たちを助けることでしょう。指名手配犯を逮捕することじゃないですよ。

パフェ:……


 悔しいが、床一面に倒れた村人や、乱雑になったホールを見て、苺パフェは諦めるしかなかった。


クレームブリュレ:この村人たちの農作物が荒らされ、しかもクリスマスイブにこんなことが起こって、もう最悪でしょうね……次は、彼らがまともなクリスマスを過ごせるように、手助けしてあげましょう。


―――

⋯⋯

・わかったわ。

・そうよ、とにかく……まだチャンスはたくさんあるから。

・その通りだわ。

―――


クレームブリュレ√宝箱


 狭いホールの中で、苺パフェは賑やかな人々を眺めながら、長いため息をついた。


パフェ:早く終わらせて良いクリスマスを過ごしたいのに、結局、水の泡になってしまったわ……

ポロンカリストゥス:えぇ〜純朴な村人たちと、親愛なる同僚たちと一緒に、素敵なクリスマスになるでしょう?

パフェ:この村人たちの安全が確保されていなければ、普段毎日会っている同僚たちと一緒にクリスマスを過ごすのは御免だわ。

パフェ:それに貴方、忙しくないなら、なぜ最初から一緒に来なかったのかしら?そうすれば今頃、任務が終わっていたかもしれないのに……

キビヤック:鹿は、忙しい……今日も休みのはず……だったのに……

ポロンカリストゥス:ふふっ、私の仕事は、君が思っているよりずっと複雑なんだ。今回来てたのも、ブリュレちゃんに頼まれたからだよ。

パフェ:いいわよ……そういえば、検査の結果はどうなったのかしら?あの時、村人たちが急に意識を失ったのは、体に何か異常があったのでしょう?

サルミアッキ:いいえ……みんな、大丈夫、だけど……休む必要が、ありそうだ。

ポロンカリストゥス:その作物の毒は奇妙なもので、幻覚作用しかなかったよ。薬効が切れると、その作物を食べた村人たちは、少しの脱力感以外、大きな影響を受けなかった……

ポロンカリストゥス:しかし、畑が回復するには少し手間がかかるな……サンプルはもうルートフィスクのオフィスに送られた。彼はその毒についてさらに研究してくれるはず。

サルミアッキ:先生は、嬉しそう……おそらく、長い時間、研究室を離れることはない……あたしは、ここで……しばらくの間……みんなの世話をする……

パフェサルミアッキ先生、本当に大変だわ……これだけの村人の面倒を見るのは。

サルミアッキ:大丈夫……キビヤックも、手伝う……


 その言葉が口をついて出た途端、薬と水を持って歩いていたキビヤックが、自分のシャツの裾を踏んでよろめき、地面に倒れそうになった。


ポロンカリストゥス:……一体手伝ってるのか、迷惑かけてるのか……早く任務を終わらせたいからって、そんなに急がなくても、戻りたいなら先に行けばいいし、別に誰も止めないよ。

キビヤック:一人で、先に戻りたくない……

ポロンカリストゥス:……だったらおとなしくしてろ!こっちの事情が終わったら一緒に戻るから。

キビヤック:うん!

クレームブリュレ:先生……今回はご迷惑をかけてごめんなさい……


 ポロンカリストゥスのちょっと不機嫌な声を聞きながら、クレームブリュレは反射的に起き上がって自分の過ちを認めようとした。しかし、その場しのぎのベッドから出る前に、体に痛みを感じ、そのまままた倒れこんでしまった。


パフェ:いいから、騒いでないでちゃんと横になりなさい。まったく……火傷したら早く言いなさいよ……

クレームブリュレ:自分の銃で火傷しちゃったなんて、簡単に言えることじゃないですね……

ポロンカリストゥス:いいよ、ブリュレちゃん。今回は犯人を捕まえることはできなかったが、村人たちを守ることができたし、十分な手がかりも得られた……

ポロンカリストゥス:その優秀な業績に対して、来年にホルスの眼のボーナスと休日を増やすよう、陛下にお願いするよ。

クレームブリュレ:やった!先生!先生は世界一番いい人ですわ!

キビヤック:……

ポロンカリストゥス:はいはい、私はやることがあるので学校に戻るから……ここは君たちに任せるよ。

クレームブリュレ:イエッサー!必ず任務をやり遂げます!


 窓の外では雪が舞い、遠くではクリスマスベルが鳴っていた……ホールに横たわる人も、座る人もが静かに歌い、ゆっくりと力強い合唱になっている。

 この世の中では、いつもうまくいかないことがたくさんある。例えば、祝日にやりきれない仕事があるとか、願いが叶わない代わりに災難に遭って命を落としそうになるとか……

 しかし、常に希望を抱き、努力を惜しまない限り、仕事は必ずでき、身体は健康になり、願いは叶うのだろう……

 希望があるなら……希望は、自分に与えることのできる、最高の贈り物だ。


シュプフヌーデルン√宝箱


 静まり返った林道で、極めて焦っている二人の足音が聞こえてきた。


ウェルシュラビット:急げ急げ、ハカールたちの前に帰らねば……ああ、まだクリスマスの飾り付けが!すっかり忘れてた!

ルーベンサンド:……むしろ、今一番すべきことは、静かにすることだと思います……万が一、ハカールたちが近くにいるなら……


 しかし、この頃、ウェルシュラビットはあまりに慌てふためいていて、音量を抑えるどころではなかった。彼はルーベンを引きずってハカールの邸宅まで戻り、ドアを引き開けた。


ウェルシュラビット:こ、これは……


 彼が出て行く前とは全く違い、いつも寒くて何もなかった部屋は、様々な装飾で彩られ、カラーライト、風船、雪の飾り……ソファーの横には豪華なクリスマスツリーが立ち、その下に座っていたラザニアは二人を見つめた。


ラザニア:どこに行っていた?一人で大変だったぞ。

ウェルシュラビット:えっと……僕は……

ルーベンサンド:クリスマス用の飾りを買いに行きたかったのですが、場所がわからなくて、迷子になりそうでした。

ウェルシュラビット:(嘘つくの早すぎ……でもラザニアが疑ってないようだ、良かった……)

ラザニア:だったら、夕食は君たちに任せたよ。ほら、ラビットちゃん。


 ウェルシュラビットは、呆然とラザニアから2つのサンタ帽を受け取り、眉を寄せて、意味わかんない顔で彼を見上げた。


ラザニア:クリスマスツリーを買う時のおまけだ。いらないなら捨てるけど。

ウェルシュラビット:もったいないよ……結構、暖かくていい感じなのに……


 すぐに、ルーベンサンドの頭にも、おどけたサンタ帽がかぶせられた。


ルーベンサンド:……

ウェルシュラビット:まあ、少なくともバレなかったから、そんな難しい顔しないでよ……ホルスの眼とやらが村人の面倒を見てくれるといいな……行こう。

ルーベンサンド:???

ウェルシュラビット:なんだ、僕一人で夕食の支度をさせるつもりじゃないよな?

ルーベンサンド:……いいえ、行きましょう。


 実際、もし可能なら、ルーベンはウェルシュラビットよりもクリスマスを過ごしたくない。

 何しろ、かつてはその日が彼ら、彼の家族にとって最も待ち望んだ、そして最も幸せな日だったから……でも今は……

 その空いた席を見て、彼らは悲しい気持ちになるだろうか……


ルーベンサンド:(大丈夫……うまくいけば、もうすぐ……もうすぐ、再会できる。)

ルーベンサンド:(少なくとも今回、ホルスの眼と呼ばれる組織が、魔法学院のやつどもとは違うことが確認された……もしかしたら……)

ルーベンサンド:(帮助斯派柯特家族,从那个「坟墓」里,逃出来……)

(※翻訳:スペクター一家をその「墓」から脱出させるのを手伝ってください……


 そんな思いで、ルーベンの連日の重たい気持ちは、ようやく少しの間だけ和らいだ。慌ただしいウェルシュラビットの指令のもと、着々と夕食の準備を進めている。その時、かすかにドアが閉まる音が聞こえた。


ルーベンサンド:(ハカールが戻ったかな……)


 やがて、ハカールラザニアがリビングで談笑する声が聞こえ、ルーベンはやっと胸をなでおろした。


ルーベンサンド:(バレなかったようだ……)

シュプフヌーデルン:おい、貴方たち、僕のこと尾行してたよな?

ルーベンサンド:!!


 突然の背後の音にルーベンとウェルシュラビットは驚き、後者は手に持っていた皿を落としそうになった。

 そんな二人を見て、シュプフヌーデルンは微かに笑みを浮かべた。


シュプフヌーデルン:僕の記憶が正しければ、ハカールの手配は、ここにいてもらうことでしょう。そして……貴方はさらに、自由を持たず、監視される必要がある存在です。

ルーベンサンド:……

シュプフヌーデルン:貴方たち、ハカールを裏切ったのか?

ウェルシュラビット:バ、バカなこと言うなよ!

シュプフヌーデルン:バカなこと?だったら、このことをハカールに教えたら?

ウェルシュラビット:!

ルーベンサンド:……貴方の目的は?

シュプフヌーデルン:フンッ……そう、もっと、もっと恐怖を……

シュプフヌーデルン:貴方の恐怖、苦いけど、とても濃い味わいですね……予備食として丁度良い。

ルーベンサンド:……だから、これからもお腹を満たすために、ハカールには、しばらく私たちのことは言わないでしょう?

シュプフヌーデルン:うん……どうかな。少なくとも今回は……私を満腹にしてくれたお礼だと思ってください。


 彼はかすかな笑みを浮かべ、左手を二人に差し出し、友好的とは言い難い仕草をした。


シュプフヌーデルン:ごちそうさまでした……



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