コルン・エピソード
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コルンのエピソード
高いコミュニケーション能力を持ち、たちまち周囲と打ち解ける少年。時に狡猾な印象を与えることもあるが、根は純粋な優しい子。極度の貧困を経験し、数多の苦難を乗り越えてきた。「無念や苦労から解放された超大金持ちになる」と誓いを立て、「美食家協会」で見習いから正式メンバーへの昇格を目指し、日々奮闘している。
Ⅰ.贫穷(※貧困)
人間ってほんと、ありがたさも大切さも分かんないよね。
冷めたピザだって食べられないわけじゃないし、炭酸の抜けたコーラだって悪くないのに、なんでテーブルの上に置きっぱなしなんだよ?
それに、プリントがズレたTシャツ、取っ手が折れたマグカップ、コーヒーこぼしたキャンバスシューズ、ちょっとだけ割れた鏡……
みんなまだちゃんと使えるじゃん!ゴミ箱に捨てるなんて、ひどすぎる……
やってらんないなぁ、まだ輝いてる宝物に気づくのは、僕だけかよ!
「コルン、昨日も最後まで残ってただろ?今日は早く帰っていいよ」
「えっ?マジで?ありがとうお姉さん!世界一キレイだよ!」
「クソガキ、こういう時だけ口がうまいんだから」
その先輩にウインクして、僕は嬉々として退勤のスタンプを押した。
いつも通り、他の店員に廃棄確定された「宝物」をポケットに詰め込み、満足げに家路を急いだ。
今日は冷え込むから、寒い時はお腹がすきやすい。早く帰って御侍様に夕食を作らなきゃ。
広い大通りから路地に入り、住宅街を抜けると、僕と御侍様の家がひっそり立っているのが見える。
見た目はみすぼらしいけど、僕はぜんぜん気にしない。
だって御侍様と一緒に住んでるんだから、ここは世界一のあたたかい場所さ~
「ただいま!御侍様、今夜は…」
突然途切れた言葉に応えたのは、バタンと閉まるギシギシ軋むドアの音だけだった。
僕は玄関に立ったまま、冷たい風が肌を刺しても動こうとしなかった。
「ない……何もかもない……なんで……全部なくなってるんだ……」
もともとボロボロだった家は、今やさらにみすぼらしくなっていた。
汚い床と天井以外には、壁に埋め込まれたため持ち出せない棚とコンロ、それにカビ臭い空気だけが残っていた。
いや、まだあった。昨日1時間以上も水の中で待ってやっと捕まえた魚が。
灰色の床の上で、貧乏に溺れて死んだみたいに転がっている。
「……また賭博で負けたんだ」
事態を理解した僕は、笑いながらその魚を拾い上げた。
「ったく、苦労して捕まえた魚こそ『最高の宝物』だろうに。なんでそれを残したんだ……?」
「家の中は空っぽ……次に負けたら、今度は僕を売るのかな?」
「いや、僕がいなくなったら、御侍様にお金を稼ぐ奴がいなくなる。売れるならとっくに売られてたはず。」
「そうか……つまり僕が御侍様にとって『最高の宝物』ってことだよね?」
「御侍様……戻ってくるんだよね?」
外の冷気がどこからか流れ込んできた。首をすくめて魚を流し台で洗い直した。
断水する前に洗い終わってよかった。魚を調理すれば御侍様が……
「あっ、包丁ない……鍋もないじゃん……」
「それに、作ったとして……誰が食べるんだ?」
魚を置いて部屋の中心に立つ。
一人きりの家は、突然全ての醜さをさらけ出した。
薄暗くて、ジメジメして、ボロボロで、汚くて、冷たくて、空っぽで……
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
逃げ出したい。
ごみ捨て場みたいな臭いがする、墓場みたいなこの家からじゃない……
必死でこなす三つのアルバイトから、一日でも数円でも節約しようと頭をひねる毎日から、長い時間をかけて貯めたものが一瞬で消えた今から……
逃げるんだ……。絶対に逃げるんだ。
この貧乏から。
この小さな家を見回しながら、僕はこれほどまでに憎んだことはないと気づいた。
ポケットには店から持ち帰った『宝物』がいっぱいだ。一つ一つ取り出し、テーブルに並べた。
選ぶ時は、いつも御侍様に必要か、喜んでくれるかを考えていた。
なのに御侍様が売る時は、僕が悲しむかどうかなんて考えもしなかった。
ずるすぎる。
なんで、僕がこんな生活に耐えなきゃいけないの?
僕だって、チップを惜しみなくくれるお客さんが羨ましい。分厚い上着とか、甘いケーキの香りとか。
僕もお金持ちになりたい。
そんなの、悪いことじゃないよね?楽に生きられるようになりたいだけなんだ……
鼻をすすりながら、カチカチのピザを御侍様の分すら残さず口に詰め込んだ。
そして『宝物』も全部ポケットに押し戻した。は?御侍様の分を残せだって?ありえない!
悪いな、御侍様。
どうあっても、僕は絶対に、絶対に……
絶対に、こんな生活はごめんだ。
Ⅱ.
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Ⅲ.
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Ⅳ.
編集中
Ⅴ.
編集中
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