マテ茶・エピソード
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マテ茶のエピソード
優雅に自らを律し、あらゆる者を平等に見下す。大半の事柄に不快を覚え、世界の秩序全てを自らが制定し、一切を自らが指揮下し、他者は従順に従うことを望む。クレメンス家との目的の一致により、そこに留まっているため、たとえクレメンスの当主に対しても常に遠慮なく直言する。その生来の高貴な気質は、人々をして彼の言葉に反論し難くさせ、知らぬ間に従順に、さらには崇拝さえさせるのである。
Ⅰ.質問と答え
「雪はなぜ白い?」
今、私の前に、遠方から来たという二人の「客」が座っている。
窓の外には降り積もる雪が夜に映え、室内の暖炉の炎がその二人の瞳に揺らめいている。
視線を交わした一瞬で、彼らの貪欲な欲望が見て取れた。
ふっ、どうやらまた、クレメンス家に取り入ろうとやって来た愚か者たちのようだ。
なぜ世の中の人間はこれほどまでに愚かで短絡的なのか、権力と富にただ従うばかりで。
「えっと……雪は元から白いものでは……」
その一人が恐る恐る口を開き、会話を始めようとする。
私は少し眉を上げ、冷たい視線で彼を見つめ、その無知と愚かさを内心嘲笑していた。
「何だ?知らないのか?それでは、私と話す資格はないな」
私はわざと語尾を伸ばし、軽蔑のニュアンスを込めて言った。
二人は気まずそうな表情を浮かべたが、反論もできず、ただ卑屈に愛想笑いを浮かべ、自身の無知をごまかそうとする。
「かねがね先生の博学ぶりは伺っておりました。だからこそ、わざわざお会いに上がったのです」
彼らの言葉には追従の色が滲んでおり、私はますます嫌気が差した。
「ふん、残念だが、基本的な常識すら持ち合わせていない者たちとは話す気はない」
私は軽く首を振り、口調には嘲笑がにじんでいた。
「ですが……この質問は、今の話題とどう関係が?」
彼らの声には困惑の色が混じっている。
「何の関係もない。言っただろう、これは基本常識だ」
私は淡々と答え、眼差しは冷ややかなままだ。
「常識ですって?!そんな荒唐無稽な常識、知っている者がいるのですか?」
どうやらこの答え方は受け入れ難いようで、声には怒りが込められていた。
私は少し首を傾げ、傍らで静かに立つ茶髪の少年に視線を向けた。
私の視線に気づいようで、彼はうつむき、眼には緊張と不安が浮かんでいる。
「タジン鍋、お前が答えてみよ」
私はなおも彼を指名して答えを求めた。
「ええと……雪が白く見えるのは、あらゆる色の光を反射し、ほとんど光を吸収しないからです。だから私たちの目には純白の光景として映るのです」
少し躊躇したが、その答えは正確だった。
「聞こえたか?では、無意味な会話はここまでだ」
私は軽く手を振り、彼らに去るよう合図をした。
「な、なんですって……枢機卿様!ちょっとお待ちください……」
彼らは愕然とした表情を浮かべ、まだ何か言いたそうだったが、私はもはや聞く耳を持たなかった。
「タジン鍋、客を送れ」
「かしこまりました」
タジン鍋は慌てて応え、彼らを退出させた。
「こ、これは何たる態度だ?!」
「……全く途方もない……」
遠くからかすかに聞こえる彼らの不満も、私は全然気にしない。
ようやく、煩わしい連中は去った。
私は深く息を吐き、全身の力を抜いた。
「ああ――やっと静かになった……」
タジン鍋はすぐに戻ってきた。
彼は私の前に立ち、何か言いたげに口ごもっている。
「本当にこれで良かったのでしょうか……あの方々は、当主様の大切な客人では?」
本当に重要な客人なら、最初から私のところへよこしたりはしない。
「そうか?私はむしろ、当主が多忙を極めているゆえに、私に始末を任せたのだと思っていたが」
彼はしばし沈黙し、それから小心翼翼と尋ねた。
「……だから先生はいつも、様々な問題を出しては相手を困らせるのですか?」
「どうした?そんな問題が難しいのか?」
タジン鍋は気まずそうな表情を浮かべた。
「以前読んだ脚本に書いてあったのを見ていなければ、私も先生の質問には答えられなかったでしょう」
「そうか」
それは彼ら自身が準備不足だったというだけの話だ。
私はほほえみ、ソファから立ち上がり、窓辺に歩み寄って外の景色を見つめた。
「それなら、今度はお前にも台本を用意してやろう。これであの馬鹿どもへの対応を任せられる」
タジン鍋は明らかに私がそんなことを言うとは思っていなかったようで、彼は一瞬固まり、すぐに慌てて手を振った。
「そ、そんなことはできません……」
はあ……本当に、一つとして頼りになるものはないな……
Ⅱ.会話
高く聳え厳かな大広間で、陽光がステンドグラスを通し、まだらな影を落としている。
私の視線は光と影を交差させ、窓の外に舞い落ちる細かい雪を見つめながら、思考はこの雪のように乱れている。
「どうした?また何か考え込んでいるの、枢機卿様?」
少しからかうような声が背後から聞こえ、雪の夜にふと舞い落ちる花びらのように。
小さなものだが、私の沉思を破るには十分だ。
(※沉思/沈思(ちんし)とは深く静かに思考する状態のこと)
「君をここに招いた覚えはないが、マントヴァ」
私の口調は冷たく、感情一片もなく、ゆっくりと振り返り、招かれざる客をまっすぐに見据える。
彼は豪華な服装に身を包み、口元にはからかいの笑みを浮かべ、何も気にしていないようだ。
「あら~もうすっかり親しくなったと思ってたのに」
マントヴァはさらに笑みを深め、私の冷たさなど彼にとっては単なる面白い挑戦でしかないようだ。
彼の言葉には幾分のひやかしが込められており、数歩近づき、自然に私の隣のベンチに座った。
その態度は、まるで私たちが長年会っていない旧友のようだ。
「勝手に勘違いしてたみたいだね」
私は眉をひそめ、心中にいら立ちが湧き上がる。
「分かっているなら、さっさと立ち去るべきだ」
「それは勿体ない、もっと君を知りたいんだよ、枢機卿様」
マントヴァは全く気にしていない様子で、頬杖をついて私を見つめ、目には好奇心の光が輝いている。
「そうだ、簡単に話そうか~教えてよ、何が枢機卿様をそんなに夢中にさせているのか?」
私は深く息を吸い、内心の動揺を鎮めようとする。
「簡単だ、ただの常識問題さ。なぜ氷は透明なのに、雪は白いと思う?」
私の口調は淡白だが、かすかな期待が隠されている。
彼が慌てふためく姿を見て、これまでの連中のようにしょげて帰るのを期待している。
しかし、マントヴァは何か面白い話を聞いたかのように、大笑いした。
「君がそんな可愛らしい質問をするとはね。どうやら、有名な高嶺の花にも感傷的な一面があるようだ」
彼の笑顔は陽の光の中で一層輝いて見えたが、それも私の心中のいら立ちをさらに募らせる。
私は歯を食いしばり、感情を爆発させたい衝動を必死にこらえる。
「可愛らしい?ふん、私をパーティーで出会った貴族の令嬢のように扱うな、マントヴァ」
低く力強い声は、一語一語が歯の隙間から絞り出されるようだ。
マントヴァの笑みは幾分か収まり、目には一瞬だけ真剣さが走った。
「失礼、ではどう扱えば?」彼は軽く問いかけ、あらかじめ決められた答えを待っているようだ。
私は彼を睨みつけ、口調には幾分かの諦めが混じっている。
「それは君の答え次第だ」
私は振り向き、彼とのやり取りを続けることを拒み、去ろうとした。
マントヴァは突然立ち上がり、私の行く手を遮った。
「分かった、分かった。」
彼は仕方なく首を振り、目には一瞬だけ狡猾さが光った。
「氷の結晶が透明なのは単一の結晶による反射が弱いからで、雪の結晶は無数の氷の結晶で構成されている。複数の結晶による反射により雪の結晶は『鏡』となり、光が雪の結晶の間で絶えず屈折、反射を繰り返す。だから、雪は白く見える。この答えで満足か?」
「どうやらクレメンス家も、少なくとも馬鹿を引き取る趣味はないようだな」
予想通りのことが起きなかったのは少し残念だが、彼の言い分を聞くこともできないわけではない。
「で、用件は?つまらない用事で私を訪ねるとは思えないが」
「最初から言ってたじゃないか」
マントヴァの声には幾分かの優しさと誠実さが込められており、本当に私に信じさせたいように見える。
「君をもっと知りたいんだ、枢機卿様。そうすれば、もっと上手く君を助けられるからな……」
「助ける?」
私は少し眉を上げ、視線には審査と不可解さが含まれている。
「助ける」という言葉が彼の口から出ると、何か捉えどころのない深い意味があるように感じられる。
マントヴァは私の反応を予想していたようで、軽く笑った。その笑顔には、より深遠さと含みが増している。
「まさか、クレメンス家のことを気にしていないなんて言わないよな?」
Ⅲ.猜忌
「まさか、クレメンス家のことを気にしていないなんて言わないよな?」
マントヴァの声が少し沈み、瞳の奥に深くゆらめく光を宿す。探りであると同時に、誘いであるかのようだ。
私の眉は自然と曇り、心は目に見えない煩わしさに絡め取られる。
彼の言葉は鋭い刃のように、静かに私の心の奥をかすめていく。
――クレメンス家。私と深く結ばれながらも、言葉に尽くし難い複雑な思いを抱くあの家のことを。
私の御侍は、かつてクレメンス家出身の枢機卿であった。
その知恵と弁舌は、家の中に高い声望をもたらし、クレメンス家長の最も親密な盟友たらしめた。
しかし、御侍の生命は時の侵食に抗えなかった。
彼がこの世を去った後、私は彼の忠実な相棒であり後継者として、当然のようにその重責を引き継ぎ、クレメンス家の新たな「指針」となった。
「クレメンス家のことは、もちろん気にかけている」
私はゆっくりと口を開く。声には幾分かの警戒と疑念が混じっている。
マントヴァと見つめ合う視線は、まるで二つの力が静かに激突するようだ。
「だが、私がより気になるのは、君の言う『助け』というものが、果たして何を意図しているのかということだ」
「あら…家の一挙手一投足が、多くの人の心を動かしています。最近、クレメンス家は突然、料理人ギルドに介入する『美食家協会』を設立しましたね」
彼の口元に、意味深な笑みが浮かぶ。そこには嘲笑と期待が同居している。
「枢機卿様は家長の御前でご重用されているお方。これが誰の提案か、ご存じないはずはないでしょう?」
「それは……ノーランのことか?」
もちろん知っている。ノーラン、あのクレメンス家にあって、ひときわ異彩を放つ存在のことを。
――食霊を召し使うことだけができない、ほとんど完璧な天才のことを。
いつも失敗ばかりする道楽息子のセヴィルとは違い、ノーランは天賦の才に恵まれ、文武両道に秀でている。
この凡庸な家の中で、彼の存在は無視しがたい。
だが、マントヴァがわざわざ私にこの話を持ち出したのはなぜだ?
もしかすると、あの哀れで無知な御侍の名誉を挽回させたいのか?
「あら、また何を考え込んでいるの?直接私に聞いた方が早いですよ、枢機卿様」
彼の言葉にはからかいの色が滲み、私との心理戦を楽しんでいるようにさえ見える。
私は深く息を吸い、これ以上回りくどいことはしないと決める。
「君は私にこの件に介入してほしいと?」
「しかし、ご存じの通り、家長は折に触れて私と話すことはあれ、自身の決定を簡単に変えるような方ではない」
私はわざとためらいと無念さをにじませ、マントヴァの真意を探ろうとする。
マントヴァの口元に、一層意味深な笑みが浮かぶ。
「枢機卿様、ご謙遜なさいませ。あなたの影響力は、それだけにとどまりません。それに、私はあなたにこの計画を止めてほしいのではなく、より良く推進してほしいだけだ」
「推進せよ?なぜだ?」
「それはもちろん、クレメンス家が料理人ギルドをより良く管理できるようにするためです」
彼は微笑みながらうなずく。私の疑念は意に介さない様子だ。
「『美食家協会』の設立は、ノーラン個人の願いであるだけでなく、クレメンス家の未来の鍵であると信じています」
確かに、「美食家協会」の存在は、クレメンス家がこの世界を管理するための極めて便利な手段を提供する。
このティアラ大陸で最も広く分布する料理人ギルドとして、「美食家協会」は自然と家の政策施行の架け橋の一つとなるだろう。
「なぜノーランを助ける?」
私の心の疑念は、雪だるま式に膨らんでいく。
マントヴァは、セヴィルの食霊として、本来はセヴィルの立場と一致するはずだ。
この計画が順調に進めば、中心的な推進者であるノーランは、疑いなく前例のない支持と声望を得る。
最近、家の中でノーランの声望が高まっているからか、それに乗じようというのか?
あるいは、これはマントヴァが御侍のために仕組んだ、精巧な罠なのだろうか。
まずノーランを雲の上に押し上げ、その後、容赦なく奈落の底に突き落とすために?
ふん、もし本当にそんな浅はかで荒唐無稽な目的のために私を利用するつもりなら、彼の傲慢さにはあきれるほかない。
「そんな風には言わないでください、枢機卿様。何と言っても、私はセヴィル様の食霊ですから」
マントヴァの眼差しは深遠で神秘的なものに変わる。
「随分と聞こえのいい言葉だ」
マントヴァは単純な男ではない。彼の行為の裏には、複雑な動機が潜んでいる。
「あまり考え込まないで、もう少し私を信頼してください。私の意図については……時が答えを示すでしょう」
「しかし、どうか私の目的があなたと一致していることを信じてください」
マントヴァは紳士的に一礼し、踵を返して去っていった。
Ⅳ.暗流
マントヴァとの会話の後、私の視線は自然と「美食家協会」へと向かうようになった。
当主の含蓄に富み深遠な言葉から、私は次第にこの組織の背後にある複雑な構図を組み立て始めた。
表向きは料理人ギルドに従属し、補助的な役割を演じているが、実態は水面下で激しい流れが渦巻いていた。
「美食家協会」のメンバーには人間もいるが、実際には食霊が主導権を握っている。
そしてこれを引っ張っているのは、クレメンス家に新たに戻ってきた私生児、ウィリアムだった。
この会長の立場は、まるで盤上に無造作に置かれた駒のようだ。
取るに足らないように見えて、実は深い意味を秘めており、その背景を推測せずにはいられない。
考えるまでもなく、あの私生児は家族が諸勢力のバランスを取るために利用されているだけの駒に過ぎない。
――いつでも犠牲にされ得る道具だ。
そして「美食家協会」の、補助のようでいて独立した機能も、どこか尋常ではない気配を潜めている。
それは主のいない食霊に外部任務を執行する権利を与えており、これは紛れもなく家族にとって、より隠蔽された「障害物」処理の途を提供していた。
このような取り決めは、巧みに料理人ギルドの直接介入を回避すると同時に、家族の将来の布石にもなっている。
ふと、以前マントヴァが私に語った言葉の意味が理解でき、それによって私の心中の青写真がまた少し鮮明になった。
そうであるならば、ノーランとマントヴァ、彼らにどんな企みがあろうと、その目標が私の構想と一致する限り、わざわざ手出しする必要はない。
私はただ流れに乗り、彼らの布局を利用して、事態を私の望む方向へと静かに導けばいいのだ。
当主との内輪の会話の中で、さりげなく話題を誘導し、それらの微妙な考えを春風が雨を育むように彼の心に潜ませればよい。
一人の決断に影響を与えることなど、特にこの心細やかな当主にとっては、造作もないことだ。
彼に信じ込ませればいい。あの決断はすべて彼自身の心の底からの願望であって、外部からの誘導ではないと。
その瞬間、私は彼の瞳にきらめく光を見た。それは同時に成功の前兆でもあった。
その後、全ては信じがたいほど順調に進行した。
普段目立ちたがりで思い上がった連中が、今回は妙に沈黙している。
まるで世界全体が抑圧的な静寂に包まれ、迫り来る嵐を予感させているようだ。
案の定、「美食家協会」の台頭は、急速に家族内部の焦点となった。
家族内で名声を高めつつあるノーランは、彼特有の手腕で、音もなく彼自身の巨大な人脈網を紡ぎ始めている。
具体的にどのような手段を用いたかは分からないが、その計り知れない深謀遠慮を、私は嫌いではない。
くだくだとしゃべり続けるだけの愚か者たちと比べれば、ノーランのような野心家は、私の盟友としてよりふさわしい。
結局のところ、知者との対話だけが、人を興味深くさせるのだから。
どうか……
次に当主の座に就く者が、私を失望させませんように。
Ⅴ
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