【HoK Wiki】ヒーローデータ:戈婭(-)
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【掲載日:2026年1月22日(木)】
「Honor of Kings@人物百科事典」のYouTubeチャンネルを開設いたしました。
こちらのチャンネルでは、本ゲームの各種公式アニメの日本語字幕付き動画を制作しています。
本Wikiと併せて、よろしくお願いいたします。
Honor of Kingsに登場する戈婭(-)についてのデータを載せています。

目次 (戈婭)
ヒーローデータ
![]() |
|---|
戈婭(-)
入手方法
| ステラ | 13888 |
|---|---|
| バウチャー | 588 |
プロフィール
| 種族 | 身長 |
|---|---|
| 人類 | 170cm |
| 系統 | 本拠地 |
| 武道 | 沙海 |
| 所属 | 身分 |
| 沙海 | 瀚海トゥーラーンの盟主 |
| 好きなもの | 嫌いなもの |
| - | - |
| 特技 | 日本語CV |
| - | (未実装) |
| ストーリー | |
| 頭脳と腕っぷしを兼ね備えた戈婭は、沙海(さかい)において新たに名を馳せる「強者」である。彼女の行動は迅速かつ果断で、その一挙一動にためらいの影はない。巨大なエンジンの轟音──それは、他の勢力にとっては悪夢の象徴でありながら、苦難に喘ぐ流浪の者たちにとっては救いの兆しでもある。風のように駆け抜けるこの女首領は、世界を変えるつもりなど毛頭ない。だが近い未来、雲中(うんちゅう)砂漠のすべてが、彼女の存在によって変わることになるのだ。 | |
バックストーリー(翻訳済み)
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| 簡略バージョン |
|---|
| 頭脳と腕っぷしを兼ね備えた戈婭は、沙海において新たに名を馳せる「強者」である。 彼女の行動は迅速かつ果断で、その一挙一動にためらいの影はない。巨大なエンジンの轟音──それは、他の勢力にとっては悪夢の象徴でありながら、苦難に喘ぐ流浪の者たちにとっては救いの兆しでもある。 風のように駆け抜けるこの女首領は、世界を変えるつもりなど毛頭ない。 だが近い未来、雲中砂漠のすべてが、彼女の存在によって変わることになるのだ。 |
| 詳細バージョン① |
| 戈婭は、雲中砂漠における「無法者の筆頭」として知られていた。 商隊を襲撃したばかりの盗賊団を待ち伏せし、一大組織・砂蛇(すなへび)団の陣地を奇襲し、さらには見捨てられた沙海の民たちをも匿う──誰よりも掟を破り、誰よりも自由だった。 本来ならば砂漠に呑まれ、その一粒の砂として消えるはずの少女は、幼いころ、異国から来た調査隊に出会い、その一員として迎え入れられた。彼女はそこで「砂舟(さしゅう)」の操縦技術を学び、それが生涯で最も幸福な日々となった。 だが、ある夜の襲撃がそのすべてを打ち砕く。隊は壊滅し、生き残ったのは戈婭ただひとり。 彼女は学んだ技術と、命知らずの勇気を武器に、再び雲中砂漠に根を下ろした。 戈婭は砂漠を疾駆し、次々と盗賊団の根拠地を打ち壊していった。 その果てに、かつて調査隊を襲った真相が少しずつ明らかになり始める。 そしてその過程で、彼女のもとに自然と人が集まり始めた。彼女の背中に惹かれた者たちが、自らの意志で集うのだ。 無軌道に突き進む少女は、いまや多くの仲間と共に、さらに遠くへと駆け抜ける勇気を得ていた。 |
| 詳細バージョン②「捕風」 |
| それは、彼らが雲中砂漠を逃げ続けて三日目のことだった。 黄砂はまるで果てしない海のようにうねり、烈日の灼熱が連なる砂丘を焼き焦がしていた。砂丘はまるで天に迫る大波のように盛り上がり、その頂へと必死に登ろうとする影が二つ。 三日前の真夜中、突如襲いかかった盗賊団が彼らの眠りを破った。略奪と殺戮の果てに、生き残ったのは一人の老人と一人の少年だけだった。 老人はついに砂丘の頂にたどり着き、足を止めた。少年はふらつき、水袋を抱えた腕がほどけ、羊皮の袋が砂の斜面を転がり落ちていく。 彼らの前に広がる視界には、黒い砂嵐が幾筋も天と地を貫いており、それはまるで巨大な玄蛇が身をくねらせるかのようであった。 一度でも近づけば、砂の海に潜むその渦が、彼らを瞬く間に引き裂くだろう。 その背後からは、命を追い立てるような鞭の音が近づいてくる。残された足跡はすぐさま蹄に踏み荒らされ、砂に飲み込まれた。 老人は歯を食いしばり、黒き砂嵐の方へと一歩を踏み出す。だがその瞬間、舞い上がる砂塵の中から十数の影が閃いた。まるで獲物の血の匂いを嗅ぎつけた鮫の群れのように、風の中を切り裂きながら彼らを取り囲む。 老人は少年を抱きしめ、絶望の叫びを上げた。 「盗賊団だ! 別の盗賊団が来やがった……!」 だが少年は恐怖よりも好奇心の光を宿していた。彼の瞳には、迫り来る盗賊たちの奇妙な乗り物が映っている。形も大きさも異なるそれらは、地面に触れることなく砂の上を滑るように進んでいた。彼はふと、恩師の手帳に描かれていた「舟」の絵を思い出す──波を裂き、風を追い、障害をものともせず進む夢の乗り物。 二つの集団が、一人の老人と少年を挟んで相対した。近年、沙海では「船団」と呼ばれる勢力が台頭し、多くの商隊たちの財路を断っていた。 今ここで顔を合わせた彼らの間には、剥き出しの敵意が走る。一方の盗賊団の頭目が警戒心を露わに問いかける。 「何者だ? どこの筋の連中だ?」 対する首領は、砂舟の上に跨がり、風の匂いを帯びた声で応じた。 「通りすがりの『風捕り』さ」 「……女だと?」 盗賊たちは驚嘆の声を漏らした。雲中砂漠では女首領も珍しくはない。だが、彼女は若すぎた。しかも『捕風』という命懸けの仕事をしているという。 彼女は黒い手袋をはめた指先から、さらさらと黒砂を零した。その砂がもう一方の掌に落ちると同時に、瞳の奥に淡い蒼光が閃く。そこには、荒々しい凶気と貪欲の輝きが混ざっていた。彼女の視線は、馬背の上に積まれた戦利品の袋と、その上に刻まれた弦月の印に止まる。頭目はその視線の意味を悟り、怒声を放った。 「ここは俺たちが先だ! 順番もわきまえずに来やがって、規矩ってものを知らねぇのか!」 「規矩?」 彼女は鼻で笑い、顎を上げて告げた。 「命を握る者の言葉こそが、『規矩』ってやつよ」 誰も彼女がいつ手弩を構えたのか見えなかった。次の瞬間、矢が風を裂き、頭目の怒声をその喉元で断ち切った。 同時に、砂舟隊は流民たちを避けながら盗賊団を包囲していた。 「お、お嬢……いや、お姐さん!」 頭目の副手が血相を変えて叫ぶ。 「この二匹の羊を差し上げます! 同業者同士、ここは見逃してもらえませんか? 今後とも仲良くやりましょうや!」 「フン。こんな痩せた羊、歯の隙間も埋まらないわ」 戈婭の視線は、なおも盗賊団の荷袋に留まった。 「お前たち、『砂蛇団』と繋がってるな?」 副手は味方に会えたと勘違いし、慌てて頷く。 「いい心がけね」 戈婭は弩弦を引き絞り、冷ややかに笑った。 「でも、お前の親玉は教えてくれなかったみたいね──瀚海(かんかい)トゥーラーンの戈婭は、『闇を喰らう闇』が大好物だってことをな!」 「──かかれ!」 戦闘は一瞬だった。矢が唸り、風が叫び、盗賊たちの叫び声が砂に吸い込まれていく。戦利品を回収し、「風捕り」たちの隊は再びエンジンを唸らせて帰途についた。 その傍らで、少年が勇気を振り絞って声を上げた。「お姉ちゃん、僕も砂舟に乗ってみたい!」 老人が慌てて少年の腕を掴み、何かを言いかけて口を閉ざす。祈るような眼差しで、女首領の背中を見つめるしかなかった。 「じいさんと一緒に家に帰んな」 女首領は振り返らず、風の轟音の中に声を紛れさせた。 「一度踏み出した道ってのは、もう戻れなくなるもんだ……」 |
| 詳細バージョン③「雷区」 |
| 「言え。この家の主はどこへ行った?」 戈婭の手弩の矢尻が、焚き火の光に照らされた肥えた男の額を押しつける。 「わ、わからねぇ……。俺が来た時には、もうこの小羊しかいなかったんだ!」 男が震えながら指さした先では、毛を剃り落とされた小羊が長い棒に縛りつけられている。 「じゃあ、聞き方を変えようか」 戈婭は身を翻し、膝で男を地面に打ち据えた。片手で喉を押さえつけ、もう片方の弩弦を引き絞る。矢の先端は男の眼球までわずか数ミリ。男は恐怖に喉を詰まらせ、悲鳴を漏らした。 「い、言う! 言うよ! 磐牙(ばんが)団だ! あいつらが言ってたんだ、この家族が余計なことに首を突っ込んだって! だから……殺したんだよ! 俺は関係ねぇ! 俺はただの通りすがりだ、命だけは勘弁してくれ!」 戈婭は男を長棍に縛りつけ、その火の揺らめきを黙って見つめた。 砂漠の夜は冷たく、焚き火の炎がかすかに揺れている。中年の男がその炎を頼りに戈婭の壊れた砂舟を修理していた。口ひげの整った顔に煤が浮かび、火の下から掘り出した焼き芋を、足元の金髪の妻へと差し出す。 妻は熟練した手つきで服を縫いながら、戈婭の方を振り返り、微笑んだ。 「おいで。座りなさい」 膝の上から顔を出した小さな女の子──アナニが、跳ねるように戈婭の手を引く。「戈婭お姉ちゃん、アナニの椅子に座って!」 戈婭が座ると、母親が皮を剥いた芋を手渡す。戈婭は一口分を割り、小さなアナニに差し出したが、その瞬間、羊のドナが顔を伸ばして横取りしてしまった。 「ドナ!」 アナニは慌てて羊を引き寄せ、ブラシで毛を整えながら、好きな歌を歌い始める。 「荷馬車がゴトゴト、子羊を乗せて行く......ドナドナ──」 アナニが歌い終えると、皆が手を止めて拍手を送った。羊のドナは気持ちよさそうに月に向かってくしゃみをし、アナニは戈婭の膝に頭をのせて物語をねだる。ドナは不満そうに地面をかき、結局、二人の隣に寝そべった。 戈婭は物語を語るのが得意ではなかった。彼女の人生経験は豊かだが、子どもに語れるようなものではない。 それでも彼女は星空を見上げ、かつて聞いた話を手探りで思い出しながら、羊飼いと四十人の盗賊の話を語り始めた。やがてアナニの寝息が静かに聞こえ、父親がそっと娘を抱き上げる。母親は戈婭の手を引き、屋内へと誘った。彼女は戈婭の体に合わせて仕立て直した素布の衣を見せ、試してみろと笑う。 戈婭が袖を通すと、不思議なほどにぴたりと馴染んだ。まるで、衣だけでなくこの家そのものが、彼女を受け入れてくれているかのようだった。 焚き火の前に戻り、戈婭は静かに歌い出した。 「荷馬車がゴトゴト、子羊を乗せて行く......」 縛られた男が震え、涙を流す。 「や、やめてくれ……」 戈婭の声は低く、鋭く空気を切り裂いた。 「他人を羊のように殺すぐらいなら、自分が焼かれる痛みも知っておくといい」 そして、長棍を火にかけた。 翌朝。戈婭は一匹の毛を刈られた小羊を連れて、「鉄壁」に戻った。李おじいさんが欠伸をしながら羊の尻を叩き、笑う。 「いい羊じゃねぇか。二ヶ月も育てりゃ、旨い焼き肉だ」 「試してみれば? 羊が先に焼けるか、あんたが先に焦げるか」 戈婭は吐き捨てるように言い残し、背を向けた。 「ちっ、減らず口め」 李おじいさんは小声で悪態をつき、羊に草をやった。隣の王さんが駆け寄り、興奮気味に囁く。 「大事件だ! 昨日の夜、磐牙団の本拠地が燃えたんだとよ! 火の手は空まで届いて、丸一晩燃え続けたらしい! 一人も生き残っちゃいねぇ! 一体、誰がやったんだか……」 「俺たちじゃねぇ。それで十分だ」 李おじいさんは王さんを蹴り飛ばし、立ち止まった。風の中で、あの音痴な娘の声がかすかに響いた。 「もしもつばさがあったならば......ドナドナ──」 |
| 詳細バージョン④「落日」 |
| ニッコロ・ポーロは見ていた──少女が燃えるような勢いで戦場を駆け抜け、熱砂の落日へと突き進んでいく姿を。 その光景は、彼にとある夕暮れの記憶を呼び起こした。あのときも同じように、太陽は沈みゆく空を赤く染めていた。調査隊を導いていた「あの子」──無垢な笑みの裏に、獣の爪と牙を隠した娘が、突然牙を剥いたのだ。 だがすぐに返り討ちに遭い、砂にまみれた顔の中で光ったのは、透き通るような蒼の瞳。 彼の息子と同じ色だった。 その瞬間、ニッコロの心に迷いが生まれた。思わず手を緩めたことで、彼女は隊に加わることになった。 少女は勝てないと悟ると、牙を引っ込めた。だが、爪を隠した豹も、やはり豹である。食事のたびに茶碗を地面に叩きつけ、油のついた手でニッコロの服を汚し、わざと挑発してくる。 夜、夏虫の声が響く中、皆が眠りについたあとも、彼のテントの外では金属の音が鳴っていた。少女はどこからか工具を集め、彼の砂舟を分解しようとしていたのだ。 教授であり、父親でもあるニッコロは、反抗的な子どもの扱いをよく知っていた。 彼は落ち着いた様子で少女の前に立ち、静かに問いかける。 「乗ってみたいのか?」 少女は一瞬きょとんとしたが、すぐに飛び乗った。 ハンドルを握る手に力を込め、彼の動きを真似てみせる。 砂漠の子は、生まれながらにして砂を支配する術を知っている。半刻も経たぬうちに、砂舟は風を切って走り出した。 月光が砂丘に反射し、少女の姿はまるで燃える焔のようだった。 やがて舟が戻ると、ニコロは散らばった工具を拾い集め、少女の腕にそっと載せた。 「お前は名前がないと言ったな。では、『戈婭』と呼ぼう。戈壁(ゴビ)砂漠の『戈』に、穏やかな女の子を指す『婭』──まさしく、『砂漠の娘』だ」 少女は何も言わず、工具を抱えて走り去った。 だが翌朝、食卓に呼ぶと、黙って座り、初めてナイフとフォークを手にした。 その日から、ニッコロは戈婭に文字を教え始めた。だが、それは彼にとって最も難しい授業となった。 戈婭が砂舟を自在に操り、砂嵐をも恐れず突き進むようになっても、彼女はなお、自分の名前を綴ることができなかった。 やがて、彼女は大人用の砂舟を無理に動かそうとし、転倒した。ニッコロはその足を固定しながら、苛立ちと心配の入り混じった声で叱った。 「無茶するな! 自分を壊す気か!」 しかし、返ってきたのは予想外の言葉だった。 「……誰にも、こんなふうに怒られたことがない」 その言葉に、ニッコロは気づいた。牙を失った小さな豹は、ただの子猫だったのだ。彼は声を和らげ、少女の頭を撫でた。 「海都だったらな、こんな乱暴したら罰金を取られるぞ」 「罰金?」 戈婭が首を傾げる。 砂漠にはそんなものはない。 ニッコロは笑いながら語った。警備庁のこと、病院のこと、法律や都市伝説のこと……そして、海都で暮らす人々の話。 その話を聞きながら、戈婭の表情に微かな影が落ちた。落日の光が彼女の髪を照らし、彼女はぽつりと呟く。 「……砂漠の娘には、何もない」 「あるさ」 ニッコロは、彼女のために造った小型の砂舟を指さした。彼女の体格に合わせ、精密に調整された機体だった。 「これはお前のものだ」 そして、彼は不自由な足を引きずりながら戈婭を抱き上げた。 「それに、俺もいる。調査隊の仲間もいる。俺たちは砂漠を知らないが……お前にはこの砂がある。俺たちはお前の家族だ。お前も、俺たちの家族なんだ。」 「お前が望むなら、海都に連れて帰る。だが、もし砂漠に残るのなら──いつか、お前自身の『家族』を見つけろ」 黄砂の向こう、太陽がゆっくりと沈みゆく。風の中で、ニッコロの思考は現実に引き戻された。遠くで魔族の咆哮が響く。 十五分前、彼は「死海文書」の半巻を戈婭に託した。砂嵐の只中で、彼女に言った。 「生きて、この書を守れ」 戈婭は頷いた。彼女は、約束を決して違えない。ニッコロはそれを信じていた。 ただ、今の彼にはひとつの懸念があった──文書の謎は、彼自身と共に黄砂の底へ埋もれてしまうのかもしれない。 だが、そのとき、湮滅の地の中心──風暴の渦の奥に、微かな光が差していた。 ニッコロは最後にもう一度、落日を振り返り、ゆっくりと光の方へと歩み出した。 |
| 詳細バージョン⑤「払暁」 |
| 「……じいさん、目ぇ覚ましたか?」 戈婭は扉を押し開け、寝台の傍らに座る李おじいさんのもとへ歩み寄った。 「どうだかなぁ」 李おじいさんは肩をすくめて答えた。 「俺が昼夜通しで看病してやって、二日二晩だぞ? 豚でも起きて『ブヒッ』と鳴く頃合いだ。だがこの爺さんは、まるで死人だ。ったく……半身も羊を食えねぇ歳になって無理をしやがって。今ごろ閻王様にでも言い訳してるだろうさ」 その軽口に、戈婭が黙りこむと、李おじいさんは慌てて言い直した。 「お、おい、臭ぇ娘、そういう意味じゃねぇ……。あいつはな、お前を助けられて、きっと嬉しかったんだ。笑って死んだはずさ」 戈婭は静かに首を振る。 「……あたしは、あの人が損だと思う」 「損なんかじゃねぇ」 李おじいさんは椅子に座り直し、唇の端を上げて語り出した。 「あの爺さんはな、いつもは言わねぇが、心にずっと引っかかってることがあったんだ」 寝台の上で、アンゴの瞼がわずかに動いた。 「俺たちはな、金苑城(きんえんじょう)から鉄壁まで、ずっとあいつに着いてきた。俺とティーグ、それにエイアって若造がいた」 「エイア?」 戈婭が眉をひそめる。 「もう知らねぇだろうな。ずっと昔に死んじまった。俺がまだ若くて、そこそこ見た目のいい男だった頃の話だ。お前みたいなガキが砂で遊んでた時代だよ」 李おじいさんは目を細め、懐かしむように続けた。 「エイアは最初、ただの下っ端兵士だった。だが、あっという間にアンゴの近衛になり、次には鉄壁の第二部隊長にまでなった。話もうまく、腕っぷしも強くて、何より情が熱かった。俺やティーグは流民の定住区を作ってたが、あいつはいつもアンゴの隣に立ってた……。そうさ、まるで息子みたいに」 李おじいさんは鼻を鳴らし、「合理的な分業ってやつだ」と言い訳を足すと、続けた。 「アンゴはよく言ってた──『あの若造なら、いずれ俺の跡を継げる』ってな。俺とティーグは面白くなかったが、エイアは毎回『李じい』なんて呼んで、笑いながら狐の毛皮をくれてな……。いい奴だったよ。もしあの年の飢饉がなけりゃ、きっと今ごろ、鉄壁を任されてただろうよ。俺たちも砂漠の外を見に行けたはずだし、アンゴだってこんな姿にならずに済んだろうに」 李おじいさんはため息を吐き、戈婭の顔をうかがう。だが彼女はただ、遠い過去を見るように目を伏せていた。十歳の頃、焼き餅一枚のために命を落としかけた自分の姿が、脳裏にちらつく。 沈黙を破るように、李おじいさんは床脇の壺を掴み、米酒を一口あおって続けた。 「エイアは『この砂漠にはもう未来がない』と言ってた。新しい道を探すべきだと。アンゴは悩んだが、結局八十人を任せて送り出したんだ。奇しくもその年、ディンの野郎が研究してた『刺旋花(トゲヒルガオ)』が初めて咲いた。みんな『吉兆だ』と言ってたが……」 「……何があったの?」 戈婭が問う。 「天闕山(てんけつざん)で『骸爆(がいばく)』に遭ったらしい。全滅だ。アンゴは、それを自分の責任だと思ってる……。エイアを守れなかったってな。バカだよな」 李おじいさんは鼻をすすり、静かに言葉を続けた。 「それからあいつは、お前たちみたいな若ぇのをやたら大事にするようになった。最近は特にひどかった──『鉄壁には、もう俺たちみてぇな老いぼれはいらねぇ。若ぇ奴らが必要だ』ってな」 部屋の中に、焚き火のような蝋燭の音がパチパチと響く。戈婭は無言で李おじいさんの酒壺を取り上げ、ひと口飲み干した。 そして立ち上がると、淡々と告げる。 「巡防は再配置した。怪我人の避難もティーグじいさんに任せた。点火の儀式の後始末も済ませた。ハロルドには借りができた……。あたしは、湮滅の地へ行く。探すべき真実がある。沙海の未来にも関わることだ」 「おいおい、戈婭!」 李おじいさんが慌てて立ち上がる。 「お前まで無茶を──」 「心配いらない」 彼女は微笑み、ゴーグルを持ち上げた。 「あたしはしぶとい──鉄壁を継いだ以上、しばらくは『首領』をやるさ……。それより、病人に酒は控えなよ」 「こ、これはな、消毒用だ。ほら、傷口を拭くために……!」 李おじいさんは慌てて酒壺を背中に隠した。 「ほら。ドナの毛が伸びてたから、膝当てを作った。じいさんに届けてやって。鉄壁の英雄が足痛で唸ってたら、笑われるでしょ」 そう言い残し、戈婭は部屋を出た。 夜が白み始め、遠くの空が淡く染まる。屋内では、李おじいさんの怒鳴り声が響いた。 「お前なぁ! いい加減にしろよ! 若ぇ娘に全部押しつけて寝てる場合か!」 寝台の上のアンゴは、苦笑まじりに咳き込みながら呟いた。 「……あの子の心は、鏡みたいに澄んでる。誰にも無理やり動かすことなんてできやしない。決めたことは、誰にも止められん」 扉の外でその言葉を聞いた戈婭は、わずかに笑みをこぼし、心の中で「老狐め」と呟いた。 そしてゴーグルを装着し、朝焼けに染まる空の下、湮滅の地へと砂舟を走らせた。 |
他のヒーローとの関係
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| ヒーロー名 | 解説 |
|---|---|
![]() ハロルド | ・盟友 点火の儀式で出会った珠城(しゅじょう)の第一王子。 派手好きでおしゃべりな奴だが、意外にも頼れる男だ。 |
![]() 伽羅 | ・盟友 千窟城(せんくつじょう)で名高い文化人。 彼女に師事して、多くの文字と知恵を学んだ。 |
![]() 啓 | ・盟友 ハロルドの友人で、ませた小僧のような少年。 ……なんだって? 私が特別に可愛がってるって? ──そ、そんなわけないだろう! |
![]() 蘭陵王 | ・盟友 ハロルドの幼なじみで、いつも仮面をつけて冷たく装っている。 だがその奥には、どこか懐かしい「同類」の匂いを感じた。 |
![]() マルコ・ポーロ | ・? 二人のあいだには、どうやら深い縁があるようだ。 |
![]() 溟月 | ・敵対関係 エイアの背後に潜む黒幕──それこそが彼女だった。 鉄壁を襲撃し、雲中砂漠を混乱へと陥れた元凶。 この砂漠の怒り、必ずや晴らしてみせる。 |
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