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Honor of Kings@人物百科事典

【HoK Wiki】ヒーローデータ:姫小満(キショウマン)

最終更新日時 :
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作成者: 上官激推しbot
最終更新者: 上官激推しbot

【掲載日:2026年1月22日(木)】
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Honor of Kingsに登場する姫小満(キショウマン)についてのデータを載せています。

ヒーローデータ


姫小満(キショウマン)

入手方法

ステラ13888
バウチャー588

プロフィール

種族身長
人類163cm
系統本拠地
武道落陽海
所属身分
海都稷下の生徒
好きなもの嫌いなもの
--
特技日本語CV
-(未実装)
ストーリー
姫小満(キショウマン)は稷下(しょくか/しょっか)学院武道部一の問題児。類まれな才能と頭脳を持ちながら、その悪用ばかりに走る自由気ままな気質に、一番手を煩わされたのは孔子である。英雄の父を持つ姫小満にとって、英雄ほどバカな存在はないように思えた。当然、このまま稷下で教養をとり、いつかは隠居生活を送る気でいた。だがある不本意なきっかけで、彼女は母の遺言に示された海都へ、「ファイアホーク船長」を探す旅に出ることになる。それでも当初、彼女は任務を甘く見ていた。海都でバイロンという名の「バカ」と出会うまでは......。

人物伝記(翻訳済み)

▼ タップ・クリックして展開 ▼
簡略バージョン
かつて、稷下学院にとって最大の頭痛の種がいた。彼女の名は──姫小満。
天賦は並外れており、聡明さでは群を抜いていたが、同時に、常識から大きく逸れた「歪んだ発想」ばかりを思いつく、厄介な存在でもあった。

生まれつき気まぐれで、思い立ったら即行動。自分の心のままに振る舞う彼女は、いつも周囲を騒がせ、孔子の監視対象となっていた。
だが、それも当然だった。彼女の中には、英雄であった父に対する深い不満があったのだ。
そのため、姫小満はこう信じていた──「英雄なんて、全員ただのバカだ」と。

そんな彼女にも、ひそかな夢があった。稷下で教鞭を執り、いつかそこで静かに引退すること。だがその願いは、母の遺言によって断ち切られる。
「海都に向かい、ファイアホークという名の船長を探しなさい」
それが、死の間際に母が娘へと託した最後の願いだった。

姫小満は思った。
「そんなの、ちょろい任務でしょ」と。
少なくとも、海都で──あのどうしようもない「バカ傭兵」に出会うまでは。
詳細バージョン①
稷下学院武道部で最も頭痛の種となっている生徒──それが姫小満である。天賦は比類なく、聡明さも抜群だが、思考回路は常に斜め上。自由を愛する彼女は、学院長であり「人類最強」と謳われる孔子から特別監視の対象とされていた。
彼女の母は海都を飛び出し、玄雍(げんよう)の若き英雄・姫雲初(キウンショ)に一目惚れして結ばれた。こうして大陸横断の恋から生まれたのが姫小満である。
幼い頃、子どもたちがこぞって「父が英雄ならいいのに」と夢を見るなかで、彼女だけはヒーロー稼業を厄介事の塊だと悟っていた。英雄には期待が付きまとい、その期待に応えることは往々にして自己犠牲を意味する。英雄はもはや血肉を持つ人間ではなく、アイドルであり記号に過ぎない。人生には無数の可能性があるのに、英雄を選ぶのは最悪の手だと彼女は信じていた。

だが父が国境防衛の任務に出ているあいだに、母は帰らぬ人となる。その出来事は、英雄観をさらに強固なものへと変えた。遺された姫小満は孔子の許へ預けられる。魔道の適性はゼロだったが、武芸においては規格外の才能を示し、入学試験では思いも寄らぬ奇策で試験官を打ち倒し学院を騒然とさせた。
しかし入学後は授業中に舟を漕ぎ、試験は最低限で切り抜け、頭脳は専らサボりと仮病に投入。諦めかける教師たちを尻目に、孔子だけが彼女を「磨けば光る原石」と見抜く。孔子の伸縮自在の戒尺(かいしゃく)が何度も唸りを上げるが、姫小満はその度に対抗策を練り、やがて完全にかわし切るまでになる──稷下に彼女を縛るものはもはや存在しなかった。

成年を迎えると、孔子は機巧トランク一式を持たせて海都行きの舟に放り込み、「母の遺言を果たさねば退学だ」と脅しをかける。気乗り薄のまま引き受けた任務だったが、鋼鉄の義腕を振るうバカ者・バイロンに出会った瞬間、運命の歯車は回りだす。窓から放り出され逃げるのが最善と知りつつも、瀕死のバイロンを見捨てられず、人生で初めて「面倒な方」を選んだのだ。それが、彼女が「愚かなる英雄」への一歩を踏み出した瞬間だった。

「武とは、常に変化するもの。人生も同じことってワケ」
詳細バージョン②「小満なれば、即ち安らかなり」
・その1
「今日は僕が大英雄・姫雲初を演じるんだ!」
木刀を構えた少年は、階段に腰掛け乾燥小魚を頬張る六歳の姫小満をおそるおそる見上げた。髪型も装備もばっちり──だが当の英雄の娘からのクレームが怖い。子どもたちのごっこ遊びでは、威厳ある蒙恬将軍よりも、伝説の姫雲初の方が断然人気なのだ。姫小満は最後の一尾を飲み込み、にっこり笑った。
「いいわよ」
ほっとした少年が息をつくのも束の間、姫小満が続ける。
「じゃあアタシ蒙恬将軍ね。姫雲初、東通り黄家(こうけ)で塩コショウ味の乾燥小魚を三両分、買って来て」
「なんで僕が?」
アタシはあなたの上官、蒙恬大将軍だからよ、英雄殿」
「その役、ほかじゃダメ?」
姫小満は困ったふりをしてから微笑んだ。
「いいわ。それならアタシは玄雍の万民を演じる。英雄様は民の頼みを断らないでしょう?」

姫小満は「小満」の月に生まれた。
「小満なれば、即ち安らかなり」──父はそう説いたが、「安」の意味は人によって違う。姫小満にとってそれは家庭のぬくもり、父にとっては民を護る豊かな国。玄雍の子どもたちが英雄を夢見る頃、姫小満の記憶に残る父の姿はいつも去り際の背中だった。英雄は象徴に変わり、家には不在のだけを残す。人々が憧れるのは想像上の姫雲初──現実には妻と娘を持つ一人の男なのに。

黄家特製の大袋を抱え帰路についた姫小満は、久々に帰宅した父と鉢合わせた。父は彼女を担ぎ上げ、肩車のまま母の手を取る。
「二日後には東の国境へ向かう。血族の件も調べねば……」
父の小声を姫小満は聞き取った。母は微笑み、肯定の眼差しを返す。娘の胸には小さな失望が芽生え、察した父は家族三人で市へ出かけようと言い出した。
稷下の機械、長安の口紅、雲中(うんちゅう)の美玉、海都の顔料──雑多な市は異国の宝庫。母は海都の商品を語り、姫小満は物語に目を輝かせる。夕暮れまで歩き、母は海都商人に手紙を託した。大枚を叩いて描かせた家族肖像では、父が母を抱き、母が姫小満を包む。
「これが小満の安らぎ......」
姫小満はそっと笑みを浮かべた。
・その2
十二歳の誕生日の二日後、父は何かを聞きつけ蒙恬と徹夜で協議し、翌朝また旅立った。今回は長い──調査は核心に迫ったのだろう。

夏至の夜、姫小満は蒙牙の作った柄杓で池の錦鯉を掬おうとしていた。そのとき屋根の上に深紅の双眸を見つける。黒装束のが幾人も、ただ目だけが紅い。母が庭へ出て静かに呼びかける。
「遠来の客人さん、姿を隠す必要はありません」
母は姫小満の頭を銀糸の手袋で撫で、「何があっても外に出てはだめよ」と優しく告げ、扉に鍵を掛けた。
だが「覗くな」とは言われていない──三秒で東窓に張り付き、彼女は目撃する。赤い目の刺客たちが母へ殺到し、冷たい刃が月光を裂く。間一髪、空中に複雑な紋章が閃き、敵の何人かは倒れ、何人かは虚空に消えた。だが闇からは際限なく追手が現れる。
誰一人として母の間合いに入れない。やがて刺客が数え切れぬほどに膨れあがると、眩い光が母を包み、金髪が風に舞う。それほどの力を姫小満は知らなかった。

轟音は遂に玄雍軍を呼び寄せ、蒙恬自らが先頭に立つ。刺客は潮の引くように退いた。乱戦の果て、母は蒙恬に何事かを告げ、伝書鳩が夜空へ飛び立つ。母は戻って姫小満を抱き締め、少女は取り返しのつかない事態を悟った。
その後、母は病に伏す。理由を悟りつつ娘には語らず、客を断っても玄関の灯だけは絶やさない。灯は父の帰りを待つ光。

半月後、母は生涯離さなかった首飾りを姫小満の首に掛け、成年したら海都で「ファイアホーク船長」を訪ねるよう告げる。
「あなたにはまだ重すぎる真実だけど、ファイアホークが全てを導いてくれる。そして、お父さんを責めないで。彼はいつだって私の英雄なの......」

母に呼ばれ蒙恬を探しに出た瞬間、風塵にまみれ目を腫らした父と鉢合わせた。彼は正殿へ駆け込み、やがて抑えた嗚咽が家じゅうに響き渡る。母の最期に間に合わず、父の髪は一夜にして白んだという。
「英雄なんて……ただの愚か者だ」
十二歳の姫小満は泣きながらそう吐き捨てた。


・その3
刺客事件は、姫雲初に対する報復であり、同時に警告でもあった。玄雍はもはや安全な場所ではなくなった──それは、姫雲初がついに彼らの「逆鱗」に触れたことを意味していた。
姫雲初は左将軍の職を辞し、玄雍を離れ、王者大陸を一人旅しながら、その神秘的かつ危険な黒幕組織を密かに探ることを決意する。
彼は最愛の娘を、人類最強の存在──稷下学院の学長・孔子に託し、再び旅立った。彼は姫小満にこう約束した。十八歳の誕生日、大人になったその日に、自らの手で彼女を海都へと連れて行くと。
稷下に来たばかりの姫小満は、学長の屋敷に住まわせてもらい、孔子は彼女をまるで実の孫のように扱ってくれた。
時折、珍しい品を見せては喜ばせ、姫小満もまた徐々に稷下の生活に馴染み、孔子と気安く言葉を交わすようになっていった。

入学試験の日。姫小満は父の見守りを期待していたが、彼の姿はどこにもなかった。代わりに現れたのは、将軍・蒙恬だった。
「お前は非凡な才を持っている。将来、きっとお父さんをも超える英雄になるだろう」
蒙恬が頭を撫でるその時、姫小満の心は静かに沈んでいった。
彼女は英雄になることなど望んでいなかった。ましてや、父と同じ道を辿るなど、まっぴらだった。
彼女はすぐに自分なりのやり方で、静かに身を隠すようになった。目立たず、人の記憶から消えるように。
人々の記憶に残っているのは、何事にも無頓着で、日がな一日、孔子に追いかけ回されている彼女の姿ばかりである。
かつて入学試験で注目を集めた天才少女だったことなど、とうに忘れ去られていた。



姫小満は、そんな生活に満足していた。
だが、夜が更けて静けさが訪れる頃、時折思い出すのだ──すでに二年連続で誕生日を共にできていない、いまどこにいるのかも分からない父のことを。
普段の姫小満は、何事にも自由奔放で、どんな問題も軽やかに乗り越えていくように見えた。
だが、こと父のこととなると、心には複雑な想いが渦巻いていた。
清明節の休暇、姫小満は正門を見渡せる大木の枝に腰掛け、人々が次々と帰省していく様子を眺めていた。
日が沈むまでそうしていて、ようやく重たい身体を起こし、住まいへと帰っていく。

しかし、曲がり角を過ぎたその時──姫小満の目に、不意に差し込んだ灯りが飛び込んできた。
それは、孔子が玄関に灯してくれていた明かりだった。
その瞬間、姫小満は気づいた。どれだけ遅くなっても、孔子は必ず灯りを点けて待っていてくれる。
その光は、まるで心の奥底にまで届くように、優しく温かかった。

姫小満は、ふとした衝動に突き動かされ、孔子の庭へと向かう。
門の外には、ほのかな炎の光が滲んでいた。
孔子先生、こんな時間に寝ないで、こそこそ何してるんですか〜?」
姫小満は火の光を目指して歩み寄る。
「チッチッチッ! 孔子たるもの、正々堂々と、『とある人物』の追悼をしておるのだ!」
孔子がぞんざいに手を振るその様子に、姫小満の心の翳りもどこか晴れていく。
彼女は、いたずらっぽく大袈裟な調子でからかった。
「なんだ〜、もうこの世に居ない可哀想な人だったんですね。きっと生前も不幸だったんだろうな〜」
「居なくなったどころか、どっかで腐ってる可能性もある。まあ、生きてた頃も大した人間じゃなかったしのう。そいつのせいで不幸になった奴も少なくない」
「えー、気になる気になる! その人って、どんな『ご立派なご経歴』をお持ちだったの?」
「ふむ……そこまで大したものでもないが……」

姫小満は耳を傾けながら、太古の魔導師・太公望の物語を聞く。
稷下の微風に頬を撫でられ、焚き火の炎がその瞳の奥で揺れながら、あたたかく優しい輝きを灯していた。
その光景は、まるで幼い頃、母が語ってくれた海の怪物の物語を思い出させる。
いつからだろう──姫小満は、この稷下を自分の「家」だと思うようになっていた。

稷下で教鞭を執り、稷下でその生を終える。そんな人生も、悪くない。彼女はそう思った。
──もし、教職初日にそのまま即・定年退職できたなら、それは人生の最終理想なのかもしれない、と。
詳細バージョン③「武道部の異端児」
・その1
姫小満は確信していた。孔子は完全なる「教育バカ」だ。かつて彼が亡き友・太公望を偲んでいた場面に偶然出くわし、その語られた「もっと教育バカだった」という伝説の事績にも耳を傾けたが──それは所詮、過去の話。今目の前で伸縮自在の戒尺を振り回し、彼女を地面に叩きつけて「開眼の時間だ!」と叫ぶ男こそが、本物の変人だ。普通の生徒なら、数回叩かれれば観念するだろう。だが「従順」という言葉は姫小満の辞書にはなかった。孔子の戒尺は、ただただ面倒な存在だ。どうにかしてこれを終わらせる方法はないか──彼女は戒尺に打たれながら、頭の中で真剣に考えていた。

半時後、演武堂裏の林の中。姫小満は地面に大きな円を描き、孔子とのやりとりを脳内で何度も再現する。風が吹き上がり、落ち葉が舞う。思考の中の孔子が葉と共に動き、あらゆる技を繰り出す。姫小満はそれを避け、打ち、蹴り返す。イメージが速くなればなるほど、孔子の動きも速くなる。そして、戒尺によって捕縛され、円が描かれる──そこで全てが止まった。弧を描いていた動きは円の外で消え去る。姫小満は思考の静止の中にいた。次の瞬間、幻想上の孔子の肩に一滴の水が──次いでまた一滴、また一滴。気づけば、現実でも彼女の身体に雨が降り始めていた。

「あそこにいるの誰? 傘もささずに……」
「武道部のあの変わり者じゃないか?」
林を通りかかった通行人が不思議そうに呟く。だが姫小満は気にも留めない。円の中心に落ちる雨粒を見つめるその瞳は、何かを捉えていた。やがて微笑みが浮かぶ。逃げ場がないなら──逆に進めばいい。彼女は濡れることも厭わず、ゆっくりと円の中心へと歩き出し、そこにひとつの答えを書き記す。

「攻撃は最大の防御なり」


・その2
一週間後、姫小満は荘子先生の鯤(こん)を撫でに行こうとした道中で、再び孔子に遭遇する。お決まりのように戒尺で縛られかけたその瞬間、彼女は不意に逆方向へ跳んだ──孔子の頭上へ。戒尺が持ち上がると、その上を足場にして彼の肩へと飛び乗る。次の瞬間、孔子が戒尺を引いて振り払おうとしたが、彼女は一回転して華麗に空中で身体を翻し、走って柱の横に着地した。彼女は勝ち誇ったように笑っていた。
「今の、どう?」

孔子は怒らなかった。むしろ、にやりと笑いながら戒尺を引っ込めた。
「悪くない。だがな......」
彼は突然跳躍し、彼女の額に一撃。
「このワシの肩に乗るとは何様のつもりだ! お前がワシに勝とうとは、まだ百年早い!」
「はいはい、孔子先生は最強、孔子先生は天下無敵~」
姫小満は頭をさすりながら、面倒くさそうに欄干に座った。
アタシが下って? アンタが上ってのが前提でしょうに」と、心の中で呟きながら。

孔子はその態度に少し苛立ちながらも、真面目な口調に変わる。
「お前の武には致命的な弱点があるのを知っているか?」
「あら、もちろん孔子先生には敵いませんけど?」と姫小満ははぐらかす。
「お世辞は要らん」
孔子は眉をひそめた。
「お前は賢い。だからこそ、基本の型を馬鹿にしている。小さな力で大を制す、最小限で最大効果を得る──それが賢い戦い方だと思ってるな。だがそれでは、真の極致には届かない」
彼女が欄干に背を預けたまま、真剣に聞いていない様子を見て、孔子は苛立ちを隠さない。
「いつか、お前は『小手先』が通じない、本当の災難に出くわす。その時、どうするつもりだ?」
「その時はその時よ。成り行きに任せるわ」
姫小満はあっさり答えた。
「だって、英雄ぶりたい人はいっぱいいるでしょ」
そう言って、ふと誰かを思い浮かべたように視線を逸らす。
「誰かがどうにかしてくれるわよ」

孔子は鋭く問い返す。
「じゃあ、目の前に『見捨てられない人』がいたら? 逃げられない状況だったら、どうする?」
「稷下の三賢者は、アタシよりずっと強いでしょ?」
姫小満は言い返すが、孔子は彼女の「逃げ」をすぐに見抜いていた。
「話を逸らすな。これは『もしも』の話だ」
「……わかりました。ありがとうございます、孔子先生の教え、心に深く刻んでおきます」
姫小満は諦めたように笑い、争うのをやめた。孔子はため息をつきながら、緑色の巻物を彼女に手渡す。
「ほら、『リターンドリーム』の受験票だ。名前を書け。仲間を探せ。お前には戦う相手だけでなく、共に進む者も必要だ」

……それから二年。バイロンアレッシオと共に海上で戦っていたある瞬間、姫小満の脳裏にあのやり取りがよみがえる。あの時は、何も考えずにふざけた答えで返した。今はわかる。孔子の言葉が、あの時から心に根を下ろしていたことを。彼女は思わず、苦笑する。

「……やっぱり、あの教育バカの言うことは、侮れないわね」
詳細バージョン④「劫火の果てに、ささやかな幸運を」
・その1
「──アンタたち、正気なの?」
姫小満には、いま起きている出来事があまりに理不尽で、到底受け入れられなかった。
しかしファイアホーク号の仲間たちは、その理不尽を現実へと変えようとしていた。
旅の果て、海風の生臭さが塩気を孕んで遺跡に吹き込む。
その場に現れたのは、出所不明のアルカナ貴族と、顔に傷を負った男──そして突如として現れた巨大な神像。
あまりにも突拍子もない展開に、姫小満の想像は容易く追い越された。
術式の中で汚染はゆっくりと逆流していたが、それを許さぬ存在がいた。ここを護る神明──その意志が、はっきりと感じ取れたのだ。
これほどまでに、力量の差を明確に思い知らされたことはなかった。まるで時を遡ったように、千年前の海都に立たされる──神の力の前では、人間など蟻に等しい。
姫小満は脳内で必死に勝利の道筋を模索した。しかし、どのルートも行き着く先は「死」だった。
神明の意志を打ち破ることは不可能だ。たとえそれが残された「意思」の欠片であっても、全身の細胞が逃げ出せと悲鳴を上げていた。

にもかかわらず、仲間たちは神像の前に立ちはだかる。まるでカマキリが車輪を止めようとするかの如く、高みに君臨する神に挑んでいく。
アレッシオは神像に吹き飛ばされ、バイロンは砕けた壁に激突し、瓦礫が舞う。
汚染がバイロンの脚を這い上がるなか、彼は姫小満に背を向け、巨大なハンマーを掲げた。
その背中が、不意に、幼い頃に見た父の姿と重なった。

「何様のつもりなの!? 海都の救世主にでもなったつもり!?」
「結局は墓碑に名を残し、話のネタにされ、姿も実像も失われて──六歳の子どもたちのごっこ遊びの素材になるだけ!」
「本当にアンタたちを悼んでくれるのは、家族と友達だけなんだよ!!」
門で明かりを灯し続けながら待ち人を迎えられずに白髪になった母。扉の向こうで泣き崩れた父。記憶の奔流が姫小満の理性を一気に押し流す。
彼女は怒りに震え、嗚咽混じりの声で叫んだ。

「逃げてよ! 英雄ごっこなんかやってる場合じゃない! 全員バカなんだから!」
「……悪ぃな」
バイロンは一瞬呆気にとられたように振り向き、そしてその目に宿るのは、揺るぎない信念。
「でも俺は──そういうバカなんだ」
彼は無理に笑おうとしたが、汚染に蝕まれたその顔は歪んでいた。
「お前は行け。巻き込んで悪かったな」
そう言って、彼は再びアレッシオと連携し攻撃に転じた。
姫小満の胸は締めつけられ、視界が滲む。彼女は首元の貝殻のネックレスに触れた。そこには、かつての誕生日に塗り潰した父の名前が刻まれている。

アレッシオは火砲の力で辛くも槍の一撃をかわし、血を垂らした。
バイロンは神像に吹き飛ばされ、辛うじてハンマーで着地を支えたが、次の一撃──それは致命的だった。

──彼は、死ぬ。
──皆、死ぬ。
──その命の消失を、誰が哀しむ?

「チャールズ!」
アレッシオが叫ぶが、もはや槍を止めるには遅すぎた。バイロンの身は、すでに避ける余力を失っていた。
次の瞬間──その槍は軌道を逸れ、心臓を外れた。火花が閃き、バイロンの右腕で鋼がこすれ合う。
姫小満が長槍を蹴って身を翻し、バイロンの隣に舞い降りていた。

──アタシだ。

「そんなに英雄になりたいって言うなら……」
人間って、本当に愚かだ。破滅が見えていても、それでも感情が理性を凌駕する。蛾が炎へ飛び込むように。
彼女は自分の選択が何を意味するかを理解していた。
それでも、仲間の死を見過ごすという結末だけは──どうしても受け入れられなかった。
「……仕方ない、アタシが最後のバカになってあげる」

──私たちは、死ぬ。
汚染が傷口に侵入し、意識が遠のく。だが思考はかつてないほど鮮明だった。
左肩に一撃を受け、地面に叩きつけられる。
わずか十数回の交戦で、三人は全身傷だらけとなり、もはや立ち上がることすらできなかった。
バイロンの義手が火花を散らし、アレッシオの砲は手元から転げ落ちる。口の中に広がる血の味、痺れるような痛み。体力が底を尽きかけたそのとき、彼女の脳裏に孔子の言葉がよぎる。

「いつか、お前は『小手先』が通じない、本当の災難に出くわす。その時、どうするつもりだ?」
あのとき、彼女は「父の名」でリターンドリームに応募した。問題を器用に片付けたつもりだった。だが、運命はそれを赦さなかった。
神像が槍を構え、バイロンアレッシオへと歩み寄る。止めようとしても、もはや体は言うことをきかない。
姫小満は、自嘲気味に笑った。
孔子先生、これが……アンタの言ってた「代償」ってやつね。
・その2
神像は、ハイノと名乗る貴族の男によって、命を賭して封印された。
人魚の歌声が、静かに周囲を包み込み、ひどく傷ついた仲間たちの傷を癒していく。
アレンは気を失ったハイノを背負い、バイロンは巨岩をどかして術式の下へ潜る。
そこには──汚染に蝕まれ朽ち果てながらも、法陣をその身で押さえつけていた一体の骸があった。

衣服の破片と眼鏡で身元を確認したアレッシオは、バイロンと視線を交わす。
二人は静かに跪き、震える手でその遺骨を丁寧に集め始めた。
姫小満も何も言わず、その作業に加わる。
誰も言葉を発さず、誰も涙を流さない。だがその無言こそが、かつてこの地を護ろうとした英雄への最大の敬意だった。

やがてアレッシオは、一束の手紙を姫小満に手渡した。
それは、海都文字で書かれた「ファイアホーク親」の一文とともに、防水袋の中に大切に収められていた。
姫小満はひと目で、それが母の筆跡であると気づいた。
彼女はそれを黙って受け取り、胸元にしまい込む。
やがて一行は、静かに帰路についた。

ようやく肩の力が抜けた姫小満は、少しだけいつもの調子を取り戻していた。
「……稷下に戻ったら、先生に文句のひとつでも言ってやらないとね」
だが、あの得意満面で説教する孔子の姿を思い浮かべると、少しだけ背筋が伸びる。

そのとき、左手の指先に妙な違和感が走った。
指先は癒えていない。むしろ、神像の槍に刺された部分から──汚染がじわじわと広がっていた。
白かったはずの肌が、群青の透明へと変わり始めている。
星のような金の粒が浮かび、虚と実の境界のような深い闇が、指先から広がっていく。
彼女はそっと指を押し合わせる。感触はある。だが、冷たく、硬質で、もはや皮膚の温もりはなかった。

──このまま、広がっていけば?

姫小満は思い出す。母が、決して外さなかった銀の手袋を。
病に伏していた母の姿。見たことのない、遺体。
死の間際、言いかけてやめた言葉。父の過剰な愛情。封印された魔導の資質。孔子の過保護。
いつも無関心だった荘子先生さえ、海都へ行けと背を押した。
それら全てが一つに繋がっていく。姫小満の中で、点と点が線になって走り出す。

彼女は慌てて、胸元の手紙を開いた。
読み進めるにつれ、心が海の底へ沈んでいく。

──隠者は消え行く宿命を懐き、天賦と詛いは共に歩む。
──盛りなれば、即ち溢れ、小満なれば、即ち安らかなり。

ようやく、姫小満は自分の名の意味を悟った。

「ファイアホーク号の冒険、これにて大団円だな! 帰ったら、最高級の『落陽海・スペシャルプレート』を奢ってやるさ!」
バイロンの声が海風を突き抜けて響く。まるで戦いがなかったかのように明るい。
アレッシオは老船長の遺品を丁寧に仕舞い込み、アレンは目を覚ましたハイノの肩を抱いてからかった。
「おい、魚たちがお前の周りでぐるぐるしてるぞ!」
ドリアは照れて顔を赤らめる。
ファイアホーク号には、賑やかな声と笑いが満ちていた。
死地を共にくぐり抜けた仲間たちの絆が、確かにそこにあった。

「どうした、珍しくスペシャルプレートに反応がないな?」
アレッシオが海を見つめる姫小満に声をかける。
するとバイロンが、アレンの焼いた小魚の干物を彼女に手渡した。
姫小満は変化した左手をさりげなく背後に隠し、いつもの笑みで答える。
「めんどくさいから、いらない」
バイロンは気づかぬまま、また輪の中に駆け戻っていった。

「なあ、アルカナの貴公子さんよ! ファイアホーク号には、まだ空きがあるぞ〜!」
姫小満はゆっくりと振り返る。蒼い空と碧い海。どこまでも広がる水平線。
風が吹いた。潮の香りが、胸いっぱいに満ちる。
姫小満はそっと目を閉じ、小さな声でつぶやいた。

「……願わくば、劫火の果てに、ささやかな幸運を──」


他のヒーローとの関係

▼ タップ・クリックして展開 ▼
ヒーロー名解説

孔子
・武道の先生
姫小満にとって稷下はまさに家であり、孔子は祖父のような存在だった。
孔子との「知恵比べ」に明け暮れる中、その厳しい教育に隠された深い愛情を、姫小満は感じていたのだ。

バイロン
・友達
姫小満とバイロンは拳を交えながら、苦楽を分かち合う仲へとなっていった。
バイロンは姫小満が最も嫌うマヌケなヒーローそのものだったが、次第にバイロンの勇気と優しさに心を動かされ、あの「面倒な」決断を下すことになった。

アレッシオ
・仲間
任務の標的かと思いきや、まさかのニセ船長。
そのままファイアホーク船長を探す旅に出ることになったけど、どうもこの人、バイロンと同じで、あまり賢くはなさそうだ。

ドリア
・仲間
初対面の相手でもすぐに打ち解け、いつもアタシにあれこれ質問し、笑顔が絶えない元気な奴だ。
マーメイドでありながら雨の日を忘れ、人間の食べ物全般、特にジャムに夢中。

ハイノ
・仲間
フェイト一族の貴族で、一見冷たそうだけど心は温かいの。
この中では唯一まともな考えを持ってる人ね。

アレン
・仲間
バイロンよりもさらにタチの悪いバカで、冗談半分に言ったことでもすぐ真に受ける。
からかうと実に面白い。

PVリンク集


コメント (姫小満)
  • 総コメント数2
  • 最終投稿日時 2025年06月30日 21:10
    • Good累計30 上官激推しbot
    2
    10カ月まえ ID:ubtsvt5s

    >>1

    ご指摘ありがとうございます。

    当該箇所につきましては、先ほど修正を行いました。

    • 名無しの稷下学院生
    1
    10カ月まえ ID:roo9n2yq

    スキル1B)弱い奴対策

    範囲内の敵に400.0+(追加攻撃力*125%)+(対象の最大HP*10%)の物理ダメージと1秒間のノックアップを与える。

    範囲内の敵に400.0+(追加攻撃力*125%)+(対象の現在HP*10%)の物理ダメージと1秒間のノックアップを与える。


    ダメージ低下20〜30%→20〜40%

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