「豪刀の追風」ヴァレリー_ストーリー
主人公「ヴァレリーさん、お久しぶりです!」
ヴァレリー「よ、主人公。久しぶりだな。元気でやってるか?」
主人公「はい、おかげさまで。ヴァレリーさんこそ、仕事が忙しいって聞きましたけど、休暇なんてとって大丈夫だったんですか?」
ヴァレリー「大丈夫大丈夫。この休暇は5番隊全体の休暇だからな。」
主人公「あ、そうだったんですね。」
ヴァレリー「ま、隊長は体力を持て余してるみてーだけど、隊長のバカみたいに無尽蔵な体力に合わせて仕事してたら、他のやつらがまいっちまうからな。」
ヴァレリー「最近、あちこち飛び回ってたし、そろそろ隊員の体も休めてやらねーと。」
主人公「おお……、さ、さすが副隊長って感じですね……。そういう気遣いはバルトロメイさんじゃできなさそうだし……。」
ヴァレリー「ははは、まーな。隊長の足りないところを補うのが、副隊長の役目ってワケさ。」
主人公「なんか、いいですね。そういう関係って。最初から、そんなに息ぴったりだったんですか?」
ヴァレリー「いやー……。むしろ、最初は隊長のこと、全然認めてなかった。なんでこいつが隊長なんだとすら思ってた。」
主人公「ええ!?」
ヴァレリー「……昔さ、隊長が5番隊に来る前、フォルクスさんっつー人がいたんだ。」
主人公「もしかして……、」
ヴァレリー「ああ、前の5番隊の隊長さ。しょーもないダジャレばっかり言ってる人だったけど、調査の腕は確かでさ。」
ヴァレリー「新人の頃、すげー世話になって、いろんなことを教えてもらった。」
ヴァレリー「オレの斥候としても技術や、擬態したモンスターの見分け方、地図の読み方も、全部、その人に教わったことだ。」
主人公「バルトロメイさんとは違った方向で、すごい人だったんですね……。」
ヴァレリー「ああ。銃の腕も見事なもんでな。多彩な人だったよ。」
ヴァレリー「けど……、ある時の調査で負った怪我がもとで、前線を退くことになってな。今は、新人教育してる。」
主人公「そうだったんですね……。」
ヴァレリー「あの調査は、オレもフォルクスさんも、これ以上ないってほど事前に徹底的に調べ上げて挑んだ調査だった。」
ヴァレリー「もちろん、辺境調査なんて、実際に何か起きるかわかんねーってのはみんなわかってた。」
ヴァレリー「それでも……。オレたちは自分の調査に自信を持ってた。それが油断につながったのかもしれねー。」
ヴァレリー「調査ではわからなかった、モンスターの群れに遭遇した時、結局、動けたのはフォルクスさんだけだった。あの人のおかげで、オレたちはなんとか帰還に成功した。」
ヴァレリー「代わりに、あの人が全部背負っちまったけどな。」
ヴァレリー「それから……。オレは調査隊をやめようと思った。けど、あの人がオレに隊を任せて、辞めていったから、オレはあの人の代わりになれるよう、頑張るしかなかった。」
主人公「フォルクスさんは……、ヴァレリーさんに調査隊をやめてほしくなかったんですね。」
ヴァレリー「……オレには才能があるって、かってくれたからな。」
ヴァレリー「しばらくして、今の隊長が5番隊にやってきた。」
ヴァレリー「後で知ったことだが、他の隊で持て余されたあの人を、フォルクスさんが、うちの隊に推薦したらしい。」
ヴァレリー「ま、それを知ってたとしてもうちの隊の連中がすんなりあの人を受け入れてたとは思わねーがな。」
ヴァレリー「あの人は、いきなり隊長なんてとこにぶち込まれた上に、フォルクスさんとは、あまりにタイプが違いすぎた。」
ヴァレリー「若くて、脳筋バカで、空気読めなくて、フォルクスさんみたいな頼りがいはゼロだった。みんな、こいつが隊長で大丈夫なのかって思ってたよ。」
主人公「でも、今は、みんな、認めてるんですよね。バルトロメイさんを、隊長だって。」
ヴァレリー「ああ。……あんなの見せられちゃ、認めるしかねーよ。」
主人公「あんなの?」
ヴァレリー「あれは……、隊長が隊長になって、数回目の調査のときだった。」
ヴァレリー「オレは副隊長として、隊長にいろいろと教えてもらえてたけど、隊長は天気の読み方も、モンスターと雪の見分け方も全く覚えてなかった。」
ヴァレリー「なら戦闘は、と思えば、うっかり雪を崩して雪崩を起こすし、貴重な植物をなぎ払うし、間違えて隊員をぶっとばすしで、基本的に荷物持ちしか任せられなかった。」
主人公「た、隊長なのに……、」
ヴァレリー「普通はそう思うよなs。けど、あの人はショックを受けつつも、なんだかんだで楽しそーに荷物運んでてさ。」
ヴァレリー「役には立たねーけど、悪いやつじゃねーし、あの人を隊長としてじゃなく、隊員としてなら受け入れられるかもって、みんな思い始めてた。」
ヴァレリー「それが、一変したのは、調査が佳境に入ったころだった。」
ヴァレリー「オレたちは、フォルクスさんのこともあって、慎重に調査を進めてた」
ヴァレリー「息の合う数人の先行組と、後援組にわけて、なにがあっても対処できるようにしていた。」
ヴァレリー「だが……、やっぱり何が起こるかわかんねーもんだよな。先行組と後援組の間に、植物に擬態した新種のモンスターがいてさ。」
ヴァレリー「あっというまに、分断されて、先行組が罠にかかっちまった。おまけに、モンスターが仲間を呼んで、絶体絶命のピンチだ。」
ヴァレリー「先行組を助けようとすれば全滅。調査結果を運んでる後援組だけでも帰還させようと、オレたち先行組の中で話はついた。」
ヴァレリー「けど……、その矢先に、あの隊長がさ。調査結果も何もかも投げ出して、助けに来るんだよ。」
ヴァレリー「人が、どんな気持ちで、帰還命令だそうとしてんのかもわかんねーでさ。」
ヴァレリー「……あの時の隊長の言葉は、今でもなんか忘れらんねーんだよな。」
ヴァレリー「『オレは細かいことはわかんねーけど、とりあえずこいつらをぶっ飛ばせばいいってことはわかる!』ってさあ。なんもわかってねーよ!って、思ったけど、驚くべきことに、ほんとになんとかしちまえたんだよなー。」
ヴァレリー「山ほどのモンスターをひとりでなぎ払って、罠を力任せにぶっこわして……、あの時、この人はすげー人なんだって、思ったんだよ。」
ヴァレリー「オレたちがどれだけ努力しても、どうにもならなかったことをたった一振りの剣だけmたったひとつの体だけでぜーんぶ、どうにかしちまうんだからさ。」
ヴァレリー「結果、あの人がモンスターを追い払って、全員が助かった。みんあ、信じられねー気持ちで、隊長を見てた。そしたら、隊長ってホント空気読めねーからさ。」
ヴァレリー「運んでた調査結果をぐちゃぐちゃにしたことを責められてるんだと勘違いしてな。」
ヴァレリー「『ごめん!でも、調査結果はまた調べにくればいいだろ!?それにはお前らが必要じゃん!』って。ホントバカだって思ったけど……、もう、隊長をただの隊員だと思ってるやつはいなかった。」
主人公「ほんとにすごい人だったんですね……。」
ヴァレリー「ははは、んな風にみえねーだろ?」
ヴァレリー「……その後に、オレは今度こそ隊をやめようと思った。こんな人がいるなら、オレはもういらないだろうってさ。オレじゃ、あんな風になれないからってのも、あった。」
ヴァレリー「けど……、いつもオレを引き止めるのは隊長なんだ。辞表を渡したら、血相変えて、オレに愛想をつかしたのかって聞いてくるんだ。」
ヴァレリー「んで、お前がいなかったら、オレがめちゃくちゃ困るから、残ってくれってさ。」
ヴァレリー「オレがやったことなんて、ちょっとしたサポートくらいだったのにな。でも、それが必要なことだったんだろうな……。」
ヴァレリー「そういうわけで、オレは今でもこうして副隊長をしてるってワケさ。あの人をオレたちの隊長と仰いでな。」
主人公「そんなことが……、」
ヴァレリー「……なんだかんだで、あの時辞めなくてよかったと思ってる。隊長が、あの人でよかったとも。……ソフィーヤとも、出会えたしな。」
主人公「相変わらず、仲がよさそうで、うれしいです。あっ、そういえば、これからリュビーの町に行くんですよね?」
ヴァレリー「ま、まーな……。」
主人公「って、あれ?ソフィーヤさんと会えるのに、どうしてそんな顔を……。」
ヴァレリー「ソフィーヤとは会いたい。ものすごく会いたい!けど、待ち構えるソフィーヤのお兄さんがだな……。」
主人公「が、頑張ってください。役に立つかわかりませんが、相談ならいくらでも聞きますから。」
ヴァレリー「主人公……。そうだよな、普通はそう言うよな。それなのに、隊長ときたら……、」
主人公「えっ、また邪魔されたんですか?」
ヴァレリー「頑張れって、イイ顔しながら、ハゲカツラとメイド服渡された。どうしろと!」
ヴァレリー「こういう時ばかりは、前の隊長が恋しくなるぜ……。」