「白花冠の返礼」チック

メルク「みゅ～！ チックさんは本当に花冠を作るのが上手なのですよ～！」

チック「えへへ、そうかな。」

チック「はい、これはメルクにあげる～。」

メルク「私がもらってしまっていいのですよ？」

チック「うん。そうしてくれたら嬉しいな～。一緒に旅に出てくれるお礼のつもり。」

メルク「ありがとうなのです！ チックさんの花冠、繊細で可愛いのです～！」

チック「よかった～。」

メルク「それにしても、チックさんはどうして主人公さんの荷物に紛れていたのですよ？」

チック「う～んなんでだろ……。わたし、本当は王国の観光地に行きたかったんだけど……。」

チック「気がついたら主人公の荷物の中にいたんだ。」

チック「よくあるんだよ～。」

メルク「そ、そうなのですよ……？」

チック「幼馴染が心配するからしっかりしなくちゃって思ってたんだけどね～。」

チック「最近はそういうことが減ってきてたから、ちょっと油断しちゃったみたい～。」

メルク「みゅ～。なんだかチックさんは不思議な方なのですよ……。」

主人公「おーい、チック。言われた通りマーガレットの花を摘んできたぞ。」

チック「主人公、ありがとう。とっても助かっちゃった～。」

チック「１人だとどうしても大きな花を摘むのは大変なんだよね～。」

メルク「ずっと思っていたのですが、どうして大きな花冠を作るのです？ 誰か渡したい人がいるのですよ？」

チック「うん。お礼をしたいんだあ。」

主人公「お礼？」

チック「主人公とメルクに出会う前に、巨人さんに会ってね～。」

チック「その巨人さんに困ってたところを助けてもらったの～。だからそのお礼がしたいなって。」

メルク「みゅ～！ 巨人さんといえばこのあいだ私も本で読んだのです！」

メルク「お城よりも背が高いと書いてあったのですよ！」

メルク「これはすごいのです！ 私も会ってみたいのですよ～！」

チック「う～ん。でもお城ほどは大きくなかったかなあ。背はたしかに主人公よりは高かったけど……。」

チック「巨人さん、騎士の格好をして、赤い色の長いマフラーを巻いてたよ。」

主人公＆メルク「……あっ。」

メルク「……私、わかっちゃったのです。」

主人公「……俺も。」

メルク「チックさんが会ったのは巨人さんじゃなくて背が高い人間さんだったのです……。」

メルク「だから妖精のチックさんには巨人さんに見えたのですよ～。」

主人公「騎士の格好をしてたってことは、騎士団の人だな……。」

チック「なるほど、巨人さんじゃなくて人間さんだったのか～。」

チック「あれ？ なんで２人ともがっかりしてるの？」

メルク「な、なんでもないのですよ～！」

メルク「それより、その騎士さんにどんなふうに助けてもらったのです？」

チック「えっとね。うっかり木の枝に引っかかって動けなくなってたところを助け出してもらったんだ～。」

主人公「そうだったのか……。」

メルク「その人のお名前は聞いたのですよ？」

チック「うん。面倒くさそうだったけど聞いたら答えてくれたよ～。」

チック「名前はヴェルデさんっていうの。」

主人公「騎士のヴェルデさんか……。名前がわかってるなら、意外と早く見つかりそうだな。」

メルク「みゅ～！ よかったのです！ ひとまず安心なのですよ。」

チック「でも、会うにはまだ早いかなって～。」

メルク「どうしてなのです？」

チック「主人公に摘んできてもらったお花で花冠を作りたいから～。」

メルク「それが『お礼』なのですね～！」

チック「うん。人間さん用のサイズだし、ちょっと時間がかかりそうなんだよね。」

主人公「俺たちも手伝おうか？」

チック「ありがとう。」

チック「でもこれは助けてもらったお礼だから。」

チック「ここからはわたし１人で作らせてほしいなって～。」

主人公「そっか。」

チック「せっかく申し出てくれたのに、ごめんね。」

チック「ふふふ。なんだか主人公たちにはいつも助けてもらってるな～。」

チック「誰かの荷物に紛れちゃったときに探してくれたり、飛び疲れたら頭の上に乗せてくれたり～。」

主人公「これくらいどうってことないさ。」

メルク「そうなのです！ チックさんはもう旅の仲間なのですから、困った時は遠慮なく言ってほしいのです！」

チック「うん、ありがと～。」

チック「２人は優しいね。」

チック「人間さんの国へ来るまでは、人間さんがこんな風だって知らなかったよ～。」

チック「よ～し、さっそく主人公に摘んできてもらったマーガレットで花冠を作ろう～。」

主人公「そういえば、頼まれた時に『できたらマーガレットがいい』って言ってたけど、何でなんだ？」

チック「えっとね～……。」

メルク「主人公さん……！」

主人公「どうしたんだ、メルク。急にひそひそ声で。」

メルク「主人公さんは、マーガレットの花冠でお礼をしたい、チックさんの乙女心を全然わかってないのです！」

主人公「な、なんだよ、突然。」

メルク「マーガレットの花言葉は……。」

メルク「『真実の愛』なのですよ～！ これは恋の予感なのです！」

メルク「助けてもらったことから始まるラブストーリー！ みゅ～、素敵なのですよ！」

主人公「な、なるほど……！ それは応援しないとな。」

チック「マーガレットを選んだのは別にたいした理由じゃないんだけどね～。」

メルク「……みゅ？」

チック「ヴェルデさんの赤いマフラーにこのお花が合いそうだからかな～。」

主人公＆メルク「えっ。」