「奉唱の沫雪翼」ベレリィナ

主人公「うわっ、もうこんな時間か！」

メルク「紹介所のお姉さんから頼まれたお使い、思ったより時間がかかったのです……。」

ベレリィナ「焚き火のあかり　揺らめく日　雪がきらりと輝けば　こよいは楽しい冬想祭♪」

メルク「みゅ？空から歌声が降ってくるのですよ……？」

主人公「すごく綺麗な声だな……。」

主人公「って、女の子が空を飛んでる！？」

ベレリィナ「さあ外に出て　歌い踊ろう　人々手をとり楽しげに……♪」

ベレリィナ「……。」

メルク「みゅ？歌が途切れたのですよ？」

ベレリィナ「……あれ？この続き、なんだっけ？」

主人公「……歌詞を忘れたのか。」

ベレリィナ「あっ。」

主人公「うわ！？翼が砕けた！？」

メルク「みゅ～！大変なのです！このままだと女の子が地面にぶつかってしまうのです！」

「よし、俺が受け止めて……！」

メルク「みゅみゅ！主人公さん、見事なスライディングなのです！」

メルク「これなら女の子も……！」

ベレリィナ「……はい！うまく着地できました！」

主人公＆メルク「……えっ！？」

(場面切り替え・夕方の紹介所)

ベレリィナ「ごめんなさい、主人公。わたしのせいで怪我をさせちゃって……。」

主人公「ちょっと手を擦りむいただけだから大丈夫だ。それにベレリィナの回復魔法のおかげですっかり良くなったしな。」

ベレリィナ「……よかった、それなら安心です！」

メルク「それにしても、ベレリィナさんは歌がとっても上手なのです！」

メルク「さっき出会った時も、怪我の手当ての時も、思わず聞き惚れてしまったのですよ～！」

ベレリィナ「えへへ、ありがとうございます！褒められると嬉しいです！」

ベレリィナ「……でも、やっぱり１曲歌いながら飛ぶのは難しいです……。」

主人公「１曲分飛ぶって？」

ベレリィナ「それが……。主人公、わたしの翼をさわってみてください。」

主人公「えっ、冷たっ。」

ベレリィナ「うう、そうなんです。これは雪で作った偽物の翼です。」

主人公「っていうことは、ベレリィナは空の国の人じゃないのか？いやでも、頭の輪っかはあるし……、」

ベレリィナ「お母さまは翼も輪っかも生まれもった、空の国の民なんです。」

ベレリィナ「わたしはハーフとして生まれたからなのか、お母さまと同じなのは頭の輪っかだけで……。」

ベレリィナ「でもその代わり、お父さまに似て寒さに強い体なんです！」

ベレリィナ「雪の国でも珍しい雪肌族といって、裸足で雪の上を歩いても全然平気なんですよ！」

主人公「なんだかすごい両親だな！？」

ベレリィナ「うーん……。お父さまとお母さまはすごいけれど、わたしはまだ未熟者で……。」

ベレリィナ「長くは飛べないんです。歌を１曲歌い終わる前に翼が溶けて、砕けちゃいます。」

メルク「そうだったのですよ……。ベレリィナさんは生まれつき、翼がなかったのです？」

ベレリィナ「はい。やっぱり、ハーフだからなんでしょうか。でも、ないなら作っちゃえばいいんです！」

ベレリィナ「きっとこの雪の翼でも、頑張って練習すれば、飛べるようになるはずです！」

メルク「みゅ～！ベレリィナさんはとっても前向きで、応援したくなるのですよ！」

ベレリィナ「えへへ、ありがとうございます！」

ベレリィナ「でも、わたしには時間がなくて……。はやく飛べるようにならないと、冬想祭に間に合いません……。」

主人公「冬想祭？雪の国で１番寒い日に行われる祭りだよな？その日になにかあるのか？」

ベレリィナ「お友達と、サプライズを予定しているんです。」

ベレリィナ「ふたりで決めたんです。」

ベレリィナ「冬想祭の日、村の人たちに日頃お世話になっているお礼をしてびっくりさせようって。」

ベレリィナ「自分たちができることで村のみんなにお返しを……、プレゼントをしようって、ふたりでゆびきりしました。」

メルク「みゅ～、ベレリィナさんもそのお友達さんも、思いやりが素敵なのですよ～！」

ベレリィナ「ちなみに計画名は『ドキドキ！　空から歌とお花プレゼント大作戦』です！」

主人公「なんだか雑なサプライズ名で少し先行きが不安になるな……？」

ベレリィナ「そうですか？でも、わたしが飛べれば計画はばっちりです！」

ベレリィナ「まず、わたしとお友達が入っている聖歌隊の出番がくるのを待ちます。」

ベレリィナ「聖歌隊が歌いだして、わたしのソロパートの時になったら……。」

ベレリィナ「空を舞って、お友達が育てたお花を村のみんなに配ります！」

メルク「それは……。想像しただけで素敵な光景なのですよ……！」

ベレリィナ「えへへ。みんなが喜んでくれたら嬉しいです！」

ベレリィナ「まだまだ力不足だけど……。わたし、次の冬想祭までに少しでも長く、この翼で飛びたいんです！」

主人公＆メルク「……。」

主人公「メルク！」

メルク「はいなのですよ！」

ベレリィナ「んん？どうしたんですか？」

メルク「ベレリィナさん！」

ベレリィナ「は、はい！」

メルク「一緒に行くのです！」

ベレリィナ「え？行くって、どこに？」

メルク「さっきの森なのです。」

主人公「近くにうってつけの場所があったよな。」

ベレリィナ「ちょ、ちょっと待ってください！ふたりとも突然どうしたんですか！？一体何をするんです？」

主人公「何って……。」

主人公＆メルク「練習！」

(場面切り替え・夜の森)

主人公「ベレリィナ、頑張れ！」

メルク「下から応援してるのですよ！」

主人公「もし着地に失敗しそうになっても、次は俺が受け止めてみせるからな！」

メルク「みゅ～、主人公さんがめずらしく主人公っぽいのですよ！？」

主人公「ひどいな！？」

ベレリィナ「えへへ。」

ベレリィナ「(もう夜かあ。今日は新月だから、飛んでいると、お星様がきらきらしているのがよく見えます)」

ベレリィナ「(きっと、冬想祭の日の終わりも、こんな夜空なんだろうなあ)」

ベレリィナ「(フロリリア、待っていてね。必ず、あなたとゆびきりした約束を果たしてみせるから)」

主人公「ベレリィナー！」

メルク「頑張れなのですよー！」

ベレリィナ「主人公、メルク！」

ベレリィナ「わたし、ぜったいに計画を成功させます！でも、その前に……！」

ベレリィナ「わたしが今贈ることのできる、めいっぱいの『ありがとう』を……。」

ベレリィナ「歌にこめて、主人公とメルクにプレゼントさせてくださいっ！」