「昔日望む悪童」オランジェ

＜森の中＞

ラビューン＆ラビューン＆ラビューン「キュイィッ！」

迷子の男の子「うわあぁっ！」

オランジェ「チッ。」

ラビューン＆ラビューン＆ラビューン「キュイッ！？」

オランジェ「癒されてねーモンスターか。それも群れてんな。」

迷子の男の子「あっ……！ だ、誰？」

オランジェ「誰ェ？ そう言われんのは久々だぜ。」

オランジェ「地元じゃー、『ショコラ・ノワール』のオランジェって言やァ手の付けられねー悪ガキって有名だったんだがねー。」

オランジェ「おいボク、こっち来な。ケガしてもしらねーぞ。」

迷子の男の子「う、うん！ ありがとう……！」

ラビューン＆ラビューン＆ラビューン「キュイイッ！」

オランジェ「グループのやつらがいりゃ、こんなの何でもねーんだが。」

オランジェ「オレ１人でガキのお守りしながらとなると、隙を見て逃げるべきだな……。」

ラビューン＆ラビューン＆ラビューン「キュイィィッ！」

オランジェ「多勢に無勢ね。」

オランジェ「まあいいぜ。このオランジェ様がちょっとばかし付き合ってやるよ。」

＜森の中・雨＞

迷子の男の子「へくしっ。」

オランジェ「んな薄着でいるからだ。ほら、こいつ羽織ってな。」

迷子の男の子「あっ。ありがとう、オランジェ！」

迷子の男の子「……僕、さっきからオランジェに助けられてばっかりだね。」

オランジェ「ま、気にすんなよ。」

オランジェ「オレも昔、オメーみてーに守ってもらったことがあってさ。」

オランジェ「それでつい、はやっちまった。昔オレを守ってくれた人みてーにカッコつけてやりてーってな。」

迷子の男の子「オランジェにも、そんなことがあったんだ……。」

オランジェ「……もう、昔の話だけどな。」

オランジェ「あーあー、やめやめ。シケちまう。」

オランジェ「そうだ、もうじき昼菓子の時間か……。」

迷子の男の子「あっ、それ……！ チョコレート？」

オランジェ「ん？」

オランジェ「あー、なるほどね。故郷（くに）の外じゃ、菓子はメシじゃねーんだったな。」

迷子の男の子「オランジェって、お菓子の国の人だったんだね！」

迷子の男の子「ねえ、オランジェ。ちょっとだけもらっていい？」

オランジェ「おいおい、こいつはブラックだぜ？ とびきり苦い大人の味ってやつ。お子ちゃまにはまだ早えーよ。」

迷子の男の子「そ、そうなんだ……。」

オランジェ「……。」

オランジェ「ほら。」

迷子の男の子「あれ？ これって……。」

オランジェ「お子ちゃまの口にゃ、ミルクたっぷりのスイートなのが合うんだろ。」

オランジェ「……！」

オランジェ「オレにゃやることがある。そこで昼菓子食っていい子にしてな。」

オランジェ「……。」

迷子の男の子「ねえ、何してるの？」

オランジェ「弓の手入れ。」

迷子の男の子「さっきのオランジェ、すごくかっこよかった！ どうやったらあんなに強くなれるの？」

オランジェ「いい先輩に教えてもらえりゃ、どんなヘタレでも上手くなる。オレがそうだった。」

オランジェ「あとは……。武器かな。」

迷子の男の子「この弓のこと？ これ、すっごくかっこいいね！」

オランジェ「触んな。」

迷子の男の子「あっ……。ご、ごめんなさい……。」

オランジェ「……コイツは元々オレのモンじゃねーんだよ。昔はオレの先輩が使ってたんだ。」

オランジェ「……あの人が戻ってきてくれたら、コイツを返すつもりなんだ。でも……。」

迷子の男の子「オランジェ？」

オランジェ「シトラスさん……。何で戻ってきてくれねーんだよ。」

オランジェ「どうして昔みてーに、一緒にバカやってくれねーんだ？」

迷子の男の子「……。」

迷子の男の子「……そのシトラスさんって、オランジェにとって、どんな人なの？」

オランジェ「憧れの人だよ。」

オランジェ「ずっとあの背中を追いかけてたのに、あの人はオレの目の前からいなくなっちまった。」

オランジェ「代わりにオレがリーダーになって……。みんな、オレについてきてくれてる。でも、本当のリーダーはシトラスさんだけだ。」

オランジェ「オレたちはあの人の帰りを待ってるのに……、あの人はもう戻らないって言ったんだ。」

迷子の男の子「どうして？」

オランジェ「分からねえ。」

オランジェ「あの人に何度説明されても、バカなオレにゃ分からなかった。オレには、今のあの人がちっとも理解できねー。」

オランジェ「……何かの間違いに決まってんだ。あの人がオレたちを置いてっちまうなんて。」

迷子の男の子「……。」

迷子の男の子「……オランジェは、その人の話をちゃんと聞いたんだよね？」

オランジェ「ああ。」

迷子の男の子「どうして、その人が間違ってるって言うの？ 今まで、オランジェに優しくしてくれた人が急にオランジェたちに冷たくするなんて……、」

オランジェ「ありえねーって言いてーのか？」

オランジェ「オレだってそう思ってるよ。でも……。」

迷子の男の子「そ、そう思ってるなら、もうちょっと話し合ってみようよ！ そしたら、何か分かるかもしれないよ？」

迷子の男の子「何か分かったら……、仲直りできるかもしれないよ！ オランジェと、オランジェの大切な人なら……！」

オランジェ「テメエ……、何知ったようなクチ利いてんだよ。」

迷子の男の子「あっ……。」

オランジェ「……。」

オランジェ「悪ィ。カッとなっちまった。」

迷子の男の子「……ごめん。僕も、勝手なこと言っちゃった。」

オランジェ「いーよ。……ありがとよ、いいこと言ってくれて。」

迷子の男の子「……！」

迷子の男の子「……よかった。僕、オランジェの力になれたかな？」

オランジェ「……。」

オランジェ「……ほんと、昔のオレそっくりだな。」

＜紹介所＞

主人公「あっ、オランジェさん！ 散歩から戻ってきてたんですね。」

オランジェ「おう。」

主人公「その……、気晴らしになりました？」

オランジェ「ああ。」

オランジェ「オレがここ最近思いつめちまってたの、やっぱ気づいてたのか。年下に気ィ遣わせちまうようじゃ、オレもまだまだだな。」

主人公「……はい。オランジェさんのこと、正直心配でした。」

オランジェ「もう気にすんな。外出たおかげで、ケジメをつける覚悟がついた。」

主人公「えっ……！」

オランジェ「……アイツにあれだけ言われたんだ。オレも、１度向き合ってみなきゃならねー。」

オランジェ「セレスチャンファンクラブに。」

主人公「……。」

主人公「はい？」

オランジェ「シトラスさんを骨抜きにしたセレスチャンとやら……。どんなヤツか、オレがこの目で確かめてやる。」

主人公「はい！？」

オランジェ「よし、まずはグループの集会にカチコミに行くか。ヤツらは集会で同じ服に同じハチマキを巻いてるって話だったな……。」

主人公「オランジェさん、何で真顔でショッキングピンクのハチマキを巻き始めてるんですかー！？」