「主影の赫忍」せつな

<街中>

主人公「……。」

せつな「……。」

主人公「……！」

せつな「……。」

主人公「（いる！）」

主人公「（ちょっと散歩してくるからその間は自由行動でいいよって言ったのに、ばっちり俺のあとつけてるじゃん！）」

主人公「（つまり！ いつもと！ 一緒じゃん！）」

主人公「（いや、それはまだいい……、それがせつなの自由行動なら、俺は何も言わない）」

主人公「（でも……）」

男の子「ママ！ あそこに誰か……、」

「……！」

お母さん「あそこ？ 誰もいないじゃない。」

男の子「あ、あれっ？」

男の子「で、でも、さっきまでは誰かいた気がするんだ！ 怖いお面を付けた人が、あの木の影からどこかをじっと見てた気が……、」

お母さん「お面……？ 顔を隠してるってことは、不審者かしら？ やだ、物騒ねえ。」

主人公「（アーッ！）」

主人公「（どうしようどうしよう、せつなが危ない人扱いされかけてる！）」

主人公「（ごめん、せつな……！ こんな不甲斐ない俺のせいで……！）」

<紹介所・回想>

主人公「ただいま帰りましたー。」

せつな「主！ やっと戻られたのですね！」

せつな「主がご無事で何よりです！ もし主の身に何かあったらと思うと、俺は……！」

主人公「ちょっとそこまで 買い物に行ってただけなんですけどね……。」

せつな「しかし、どうして今日は 俺をお傍に置いてくれなかったのですか？ 俺がどこかで主のお気を害してしまったとか……！？」

主人公「そ、そういうわけじゃないんです！ 今日はその……特別で。」

せつな「特別……？」

主人公「じゃ、じゃーん。」

せつな「お面、ですか？ しかも、和の国の……、」

主人公「はい。このあたりで商人さんが売ってるって聞いて買ってきたんです。」

主人公「……せつなさん、いつも俺のためにありがとう。ほんの気持ちなんですけど、喜んでくれたら嬉しいです。」

せつな「主……、」

主人公「今日せつなに『待っててください』って言ったのはこれをこっそり買いに行くためで……、」

主人公「お、俺がせつなを嫌いになったわけじゃないんです！ 不安にさせちゃってすみません！」

せつな「……いえ、謝るべきは俺の方です。」

せつな「主がこんなに深く俺のことを思っていてくれたのに俺は自分のことばかり……。己の未熟さをつくづく思い知らされました。」

せつな「俺はまだ弱く……、でも、とても幸せな忍びです。」

主人公「せつな……。」

「このお面、生涯大切にいたします！」

主人公「せつなっ！？」

「ぐすっ……、あ、主、どうかお気遣いなく！ 忍びとはみだりに涙を見せぬもの！」

主人公「泣いてるの！？」

主人公「あ、ああ～、すみません！ 急にこんなもの渡されたらびっくりしますよね！」

主人公「だから泣かないで！ あと姿を隠さないでー！」

<街中>

主人公「（あのお面、せつなが喜んでくれるかなと思ったけど、よく考えたら姿を隠す仕事と派手なお面って相性最悪なのでは……？）」

主人公「……。」

「ねえ、あそこにお面をつけた人が……、」

「お面マンが……、」

「お面……、」

主人公「……。」

<山の河原>

せつな「……。」

主人公「（申し訳なさしかない！）」

主人公「（お面の不審者情報が聞こえてくるのが辛くて人気のないところで反省しようと思ったのに、せつなもこっそりついてきちゃったよ！）」

主人公「（もういいんだ、せつな……。俺みたいなダメ主なんて放っておいてくれていいんだ……！）」

主人公「（……ていうか、つけてくれるのは嬉しいけど せつなもお面外さないのかな）」

主人公「（いや、俺が外しづらくしちゃったのか……。そりゃサプライスにして、特別に買ってきたんだ、なんて言われたらなぁ）」

主人公「（ごめん、せつな……。俺はまだまだ未熟なある……）」

主人公「じっ……？」

せつな「主！」

主人公「うわあぁっ！？ せ、せつな！？」

せつな「ご無事でしたか！」

主人公「あ、ありがとう！ でも、足を滑らせただけで大袈裟じゃ……、」

せつな「いえ、それだけではありません！」

ノーズホーン「グルルルゥゥア！」

主人公「ええっ！？」

せつな「この時期のノースホーンは産気づいて過敏であることが多いと聞いていましたが……、主のお傍についていてよかった！」

せつな「しかし、この場所では不利と見ました。主、俺の肩に掴まってください！」

主人公「あ、ああ！」

せつな「疾っ……！」

主人公「うひゃああぁぁ！？」

主人公「せせっ、せつな、せつなさん！？ いっ、今俺たち、川……川の上を走った！？」

せつな「はい、川を渡ってモンスターと距離を取りました！」

主人公「そんなあっさり……。」

ノーズホーン「グルルゥウ……！」

せつな「追ってきたか……！」

せつな「主、俺の後ろに！ あのモンスターを迎え撃ちます！」

<紹介所>

主人公「ありがとう、せつな。さっきは本当に助かりました……。」

主人公「最近、いつもよりずっと俺についていてくれようとしてたのはモンスターが過敏だって知ってたからだったんですね。」

せつな「はい。 しかし、そのために主に不安を抱かせてしまい……、」

主人公「不安？」

せつな「俺の尾行中、俺をちらちら見ていたでしょう？」

主人公「あ、ああ……。全然不安なんか感じなかったので、気にしないでください。」

主人公「（罪悪感はめちゃくちゃ感じてたけど！）」

せつな「主？」

主人公「あ、あはは……。」

主人公「あー、あの、せつな。そのお面、喜んでくれたみたいで嬉しいんですけど 別にずっとつけてなくても……、」

せつな「え？ 何故そう思われるのですか？」

主人公「え、ええーと……。何と言うか、め、目立つんじゃないかと……。」

主人公「あっ、せつながそのお面をすごく大切にしてくれてるのは分かるんです！ だからこそ俺のことは気にしなくてもいいっていうか……！」

せつな「……。」

主人公「あれ？ せつな？」

せつな「……俺がまだ今よりずっと幼く、未熟だった頃、このような面をつけている子供を見て どこかうらやましく思ったことがありました。」

せつな「されども、忍びとは影の者。みだりに己の存在を明かすようなものはつけられぬと、幼い俺はそう己に言い聞かせていました。」

せつな「ですが俺は……、あなたからこの面をいただいた時、どうしても、この面をつけたいと思ってしまったのです。」

せつな「俺が、他ならぬあなたの影であるという証明のために。」

主人公「せつな……。」

せつな「それに、この面が目立つことなど些末なものです。俺が誰の目にも止まらぬよう、更に技を磨けばよいのですから。」

主人公「……そうですね。せつなさんならきっとできますよ。あんな風に、水の上も渡れるんですから。」

せつな「はい！ このせつな、必ずや主のご期待に応えてみせます！」

主人公「あ、でも……。」

せつな「どうされましたか？」

主人公「せつなが本当にそこまで技を磨いたら、俺にもせつながどこにいるか分からなくなって ちょっと怖いかも、なんて……。」

せつな「ご心配には及びませんよ。」

せつな「誰の目に留まらずとも、俺はいつでも、あなたのお傍におりますから。」